とね日記

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高校数学でわかるマクスウェル方程式:竹内淳

2016年05月08日 19時03分17秒 | 物理学、数学

高校数学でわかるマクスウェル方程式:竹内淳」(Kindle版

内容紹介:
高校物理の最難関「電磁気」が完全にわかる。見慣れないたくさんの単位と式が、ドッと出てくる電磁気が、誰にでも見通し良く理解できる入門書。さらに、「マクスウェルの方程式」までわかってしまおう!
電気発見の歴史をたどりながら、電流、電圧、電界、磁界、磁束密度、静電容量…、そしてマクスウェルの方程式が見通しよく理解できる。電磁気学を学びたい人、学びはじめた人、しっかり原理を知りたい人の絶好の入門書。高校生から。
2002年9月刊行、224ページ。

著者略歴:
竹内淳:ホームページ: http://www.f.waseda.jp/atacke/
1960年徳島県生まれ。1985年大阪大学基礎工学研究科博士前期課程修了。理学博士。富士通研究所研究員、マックス・プランク固体研究所客員研究員などを経て、1997年早稲田大学理工学部助教授、2002年より教授。専門は、半導体物理学。


理数系書籍のレビュー記事は本書で304冊目。

本書は3年以上前に読んだのだが紹介記事を書くのを忘れてしまっていた。「最初に読んだ理数系書籍200冊」でも数え落としていたので、今さらだがレビュー記事を書いておこう。このような本があと2冊ある。いま読んでいる本が分厚く、レビュー記事を投稿できるまで時間がかかるのでちょうどよいかもしれない。

本書は竹内淳先生の「高校数学でわかる~シリーズ」の中では最初に書かれれた本だ。2002年には刊行されていたので僕が理数系本の読書を始めた頃には出回っていたことになる。

本の存在は知っていたが「高校数学でわかる~」というタイトルを見ただけで易しすぎるかな?と誤解してしまって長い間手を出さずにいた。いつだったかたまたま書店で手にとってみて素晴らしさに気づき、慌てて読んだのと思う。

本書は次のような3部構成だ。

第1部:エレキの謎を探る旅
第2部:電磁気学の統合
第3部:旅の終わりに


第1部は電磁気学の発展史をたどる旅である。平賀源内のエレキテルやフランクリン、クーロン、ファラデー、アンペールなどの科学者がどのような実験をし、どのような法則を導いてきたかが紹介される。電気と磁気が見せるさまざまな現象を彼らはどのようにとらえていたのかを読者は追体験しながら学べるのがとてもよい。

高校や大学で使う教科書ではとかく事実や結果の記述だけに終わることが多いので暗記物になりやすい。人物像も含めて学ぶことで、楽しみながら理解や知識を身につけることができる。


第2部では第1部で導いた個別の法則を組み合わせて4本の式から構成される「マクスウェルの法則」をていねいに導出する。高校レベルの微分や積分が使われるが恐れることはない。ひとつひとつ解説されるので、数式のもつ意味と電磁気現象の対応が確実に理解できるようになるはずだ。

マクスウェル方程式は微分形で紹介されることが多いのだが、本書で導出されるのは積分形であることに注意いただきたい。初学者は混乱してしまうことがあるかもしれないが、どちらの形でも本質的には同じことである。



それぞれの式は次のような電磁気現象をあらわしている。



その後、ローレンツ力や電磁波のこと、電磁波と光の関係、アンテナの原理、電気から光への変換、オームの法則が成り立つ原理、トランジスタ、RC回路などについての解説が続く。


第3部は「旅のおわりに」と題して、議論にもとづく真理の探究、科学の国際会議での議論のあり方、科学の役割などのテーマについて竹内先生のお考えが述べられている。また、マクスウェル方程式によって電磁気学が完成して以降、物理学がどのように発展していったかということについて簡単な解説をして、本書をしめくくっている。


僕のように数式を含めて物理学を学んでみたい方には、うってつけの入門書だと思う。本書の刊行後、同じシリーズで他の分野の本も刊行されているので、本格的な教科書に挑む前に読んでおくとかなり低くハードルを下げることができると思う。

なお、本書は電子書籍でも読むことができるが「固定レイアウト」なのでタブレット端末でお読みになるのがよい。スマートフォンだとかなり読みづらいので注意していただきたい。


「高校数学でわかるシリーズ」の書籍版はこちらから。
http://astore.amazon.co.jp/tonejiten-22?_encoding=UTF8&node=70

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高校数学でわかるマクスウェル方程式:竹内淳」(Kindle版



第1部:エレキの謎を探る旅

1 平賀源内の挑戦
- 謎の器械
- 1000年前の先輩
- エレキテルの中身
- 人間エレキテル
- 海の向こうのライバル
- 文明の最先端

2 クーロンの秘密兵器
- 琥珀の不思議な力
- 磁界のクーロンの法則

3 ファラデーの登場
- かえるの脚と磁石
- 製本職人の知恵
- 研究者と実験助手
- 遠隔作用とは異なる考え方
- 点電荷のまわりのクーロン力
- 電界の強さ
- 電圧とは

4 もう一人の天才、アンペール
- 電流のまわりの磁界
- アンペールの法則の別の表現--ビオ-サバールの法則
- 強い電磁石を作る方法
- 磁力の強さを表現する方法
- アンペールの力
- 電流の単位

5 最後の壁、電磁誘導
- 残された可能性
- Δφ/Δtの意味
- もっと正確な速度、それが微分
- IH
- 電磁気学をまとめあげる

第2部:電磁気学の統合

1 マクスウェルの方程式
- マクスウェルの方程式へのバージョンアップ
- ガウスの法則のありがたみを探る
- 静電容量
- 電極間の物質では何が起こっているのか
- コンピュータのメモリーの中身は?
- 磁気モノポールは存在しない
- マクスウェルの方程式の第2式
- アンペールの法則からマクスウェルの方程式の第4式へ
- マクスウェルによる拡張

2 電子のベール
- 電子の発見
- ローレンツ力

3 無限のバトンリレー
- マクスウェルの予言に迫る
- 電磁波と光の関係
- 電磁波の源となるアンテナ
- 電気から光への変換

4 エレクトロニクスへ
- オームの法則
- オームの法則が成り立たないもの
- RC時定数

第3部:旅の終わりに
- 議論に基づく真理の探究
- 国際会議の日本人
- 自由について
- もう1つの自由
- 科学の役割
- その後

付録
- ビオ-サバールの法則
- コンデンサーの電荷分布

あとがき
参考文献
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