
「ファインマン物理学第4巻 電磁波と物性」を読み終えた。第3巻の「電磁気学」を読み終えたのが4月4日だったから、ひと月以上もかけてじっくり読んだ。とは言ってもLinuxパソコンを準備したり他の本を並行して読んだり、興味が別の方向にそれていたからでもあるが。
この第4巻は内容が盛りだくさんで骨が折れた。第3巻の電磁気学の内容を発展させ電気回路のしくみ、電磁気理論の特殊相対性理論への拡張、電磁気的な観点から解き明かす物質の性質、磁性と磁性体、物質の弾性、流体力学、一般相対性理論での曲がった時空などが詳しく説明されている。金属が光を反射して光沢を放つ理由がわかるようになる。金属は格子状に配置する原子から構成され、電磁波(つまり光)が作用にした結果、マクロな目でそれが光の反射として捉えられるのだがそのしくみが詳しく説明されている。また物質が電磁波の波長の違いにより反射したり吸収したりするということは、人間の体をX線が透過することも説明でもある。X線やラジオやテレビの電波にとって人間の体は透明なのだ。この巻ではそのようなことが理解できるようになる。
流体力学の章で円柱のまわりに(水のように)粘性のある液体が流れる運動の複雑さについて説明している。流体の粘性を考慮に入れることでそのの運動方程式は多少複雑になるが、極端に複雑になるわけではない。実際に実験してみると流れの速さに応じて円柱の後ろ側に複雑な渦が動き回るのが観察される。その様子はこのページの一番下に動画で示されている。しかしこの運動の方程式は求めることができるものの代数的な演算では解くことができない。現在ではパソコンで簡単にシミュレーションできるわけだが、この本が書かれたころは無理であった。計算を行うまでくらいにはコンピュータは発達していたが、それを動画としてディスプレイに再現できるようになったのは近年のことである。
ファインマン先生はこの例を通じて方程式による自然現象の理解の限界について述べている。方程式自体が簡単に見えても自然はときに複雑な様相を示す場合がある。上で紹介した円柱の周りを流れる流体の力学もその一例だ。ある自然現象の根本原理を示す方程式がわかったとしても、実際の現象が複雑な形で私たちに提示されるとき、その複雑さを説明するすべを私たちは持っていない。物理や数学による理解の限界を見た気がした。しかし自然の複雑さに対して私たちは無力なわけではない。話を逆にたどれば、導いた方程式から自然の複雑さをコンピュータで再現できるということが、その方程式がその現象の原理を明らかにしていることに他ならないからだ。
第3巻の記事で結局のところ僕は磁力の本当の原因について理解していないと書いたが、この巻の磁性についての箇所を読んでわかったことは、
1) 磁力とはローレンツ力のことである。つまり電子(電荷)が磁場の中を動くときに受ける力のことで実験結果(経験則)である。
2) 磁場はマクスウェルの方程式で記述される。
3) マクスウェルの方程式により電場と磁場、電荷と磁荷説明されるが電荷は実在するが「磁荷」というものは実際には存在しない。つまり電荷はマイナスの電荷単体で存在するが、磁荷はN、Sかならずペアでしか存在できないのでNだけ、Sだけのような「磁荷」は存在しない。(ディラックは「磁荷(モノポール)」を予言しているが。)
4) (鉄などの)物質の磁性の原因は原子の中の電子が動いていることによる磁場の発生により説明される。この場合の電子の動きとは2種類あり、1つは原子核の周囲を回る電子の公転運動であり、もう1つは電子自身のスピン(自転)によるものである。磁性はこの2つの効果の総合的な結果として発生する。後者のスピンによる磁性については量子力学によってのみ説明され、古典力学(マクスウェルの方程式)では説明できない。つまり物質の磁性の理由は量子力学での磁気モーメントの理解なしには得られない。第5巻「量子力学」の「磁気モーメント」の箇所を再び紐といてみたが、磁気モーメントの発生理由については書かれていなかった。
と、磁力についての理解はここまでである。電子が動くと磁場が生じ、磁場の中で電子が動くとローレンツ力という力を受ける、と説明されてもそれじゃローレンツ力はどうして生まれるかということの答えにはなっていない。つまりどうして磁力が発生するかという本当の理由はわからずじまいだった。今後の学習に期待しよう。ところで磁石や磁性の不思議についてはこのページで上手に解説されている。
反対にクーロン力(電子と電子の間の斥力、電子と原子核の間の引力)の原因についても理解していないと書いてしまったが、今後素粒子物理学を勉強すると「クーロン力の原因は電子と原子の間で光子がやり取り(交換)されることによる」ものであるらしい。どうもピンとこないが。今の段階では文字どおり受け取っておくことにする。この理屈でクーロン力の逆2乗の法則(距離が2倍になれば力は4分の1になる)が説明できてしまうのだろうか。。。
そもそも電子や電荷についても僕は理解できていない。電子とはどういう存在なのだろうか?マイナスの電荷とは電子そのものなのだろうか?ミリカンの実験により「素電荷」と呼ばれる1つの電子が持つ電荷の単位量が求められた。しかしその後だいぶたってからファインマン先生や朝永振一郎先生の「くりこみ理論」では「裸の電子」という言葉からもわかるように、電子のまわりには仮想光子の雲があり、裸の電子そのものが持っている電荷を遮蔽しているそうだ。つまり電子は構造を持っている。裸の電子が持つ電荷が最小単位だとするならば、電子からその電荷を除いた部分というのはあるのだろうか?繰り返しになるが電荷そのものが電子ということなのだろうか?また、電子は微小な時間で考えれば常に光速で運動している。電子の速度が遅く見えるのはブラウン運動のように頻繁に方向を変えるためである。光速で運動すると進行方向に対して物体は長さゼロに押しつぶされて見える。(特殊相対性理論で説明されるローレンツ収縮)同様に電子の刻む時間も(周囲に対して)無限に遅くなる。電子は構造を持つと説明したばかりだが、長さゼロのぺしゃんこに押しつぶされた電子が構造を持つとはどのようなことか?謎は深まるばかりだ。
ある電子はは別の電子と全く区別することができない。大きさも質量も全く同じであるし他の電子と異なる性質はないからだ。全宇宙にある無数の電子がすべて同じな(無個性な)理由は大きな謎である。この謎に対してアインシュタインの先生のミンコフスキーは次のような説を彼に示したそうだ。つまり「もともと電子は1つしか存在しない。」というもの。過去から未来を通じ、全宇宙に存在するすべての電子はたった1つの電子が「同時」にあらゆる時刻と場所に存在している結果なのだそうだ。ひとつのリンゴが鏡に映って2つに見えるように、自然法則が私たちに1つの電子をあらゆる時刻と場所に無数に見せている。これが電子が無個性で他の電子と区別できない理由である。
今さらながら思ったのだが、物理学は自然の法則を数学で表現する。自然を構成しているモノやコト、時間や空間を数式を使って解明していく。つまり数学による方程式は、それが取り扱う変数(スカラーやベクトル、テンソル、実数、複素数)の関係を関数や演算規則によって示すものであるわけだから、モノやコトの関係を示す以上にそれらの発生原因までを説明し得る手段になれるのだろうか。ふとそんなことを思った。力や重力はF=maやアインシュタインの重力方程式によって記述されているが、未だにその本質は解明されていない。
重力方程式はこのように比較的シンプルな形をしているが、この方程式を展開して微分方程式にするとこのように複雑な形で表現される。この微分方程式は代数的演算(つまり紙と鉛筆では)解いて関数の形に書くことはできず、コンピュータで数値的に解くしか方法がない。後者の微分方程式のほうがより具体的な重力の表現なのだが、重力場を理解するという目的のためには前者のシンプルな方程式のほうが適しているのは言うまでもない。しかし、いずれにせよ重力の本質、つまり何が重力の原因となっているかを私たちが読み取れないことに変わりはない。わかることは物質の質量によって時間や空間がどのように、どの程度曲がるかということだけである。
ともかくこの巻を読み終えたことで昨年の11月から読み始めたファインマン物理学の全5巻を読み終えたことになる。それぞれのレビューとこの第4巻の目次は次のとおりである。
第1巻「力学」のレビュー
第2巻「光、熱、波動」のレビュー
第3巻「電磁気学」のレビュー
第5巻「量子力学」のレビュー
「ファインマン物理学第4巻 電磁波と物性」の目次
第1章: AC回路
インピーダンス
発電機
理想的な素子の回路網; キルヒホッフの法則
等価回路
エネルギー
はしご回路網
フィルター
その他の回路素子
第2章: 空洞共振器
実際の回路素子
高周波におけるキャパシター
共鳴空洞
空洞のモード
空洞と共鳴回路
第3章: 導波管
伝送線
矩形導波管
遮断周波数
導波管内の波の速さ
導波管内の波の観測
導波管の結合
導波管のモード
導波管の波に対する別の観点
第4章: 電磁気学の相対論的記述
4元ベクトル
スカラー積
4次元の勾配
4次元記号で書いた電気力学
動く電荷による4元ポテンシャル
電気力学の方程式の普遍性
第5章: 場のローレンツ変換
動く電荷の4元ポテンシャル
一定速度の点電荷の場
場の相対論的変換
相対論的記号による運動方程式
第6章: 場のエネルギーと運動量
局所的保存則
エネルギー保存と電磁気
電磁場におけるエネルギー密度とエネルギー流
場のエネルギーの不安定さ
エネルギー流の例
場の運動量
第7章: 電磁気的質量
点電荷の場のエネルギー
動く電荷の場の運動量
電磁気的質量
電子のそれ自身に対して及ぼす力
マクスウェルの理論を修正する試み
核力の場
第8章: 電磁場内の電荷の運動
一様な電場あるいは磁場の中の運動
運動量分析
静電レンズ
磁気レンズ
電子顕微鏡
加速器の誘導磁場
交替勾配収束
直交する電場と磁場の中の運動
第9章: 結晶の幾何学的構造
結晶の幾何学的構造
結晶の化学結合
結晶成長
結晶格子
2次元の対称性
3次元の対称性
金属の強さ
転位と結晶成長
フラッグ・ナイの結晶模型
結晶構造の動的模型
第10章: テンソル
分極率テンソル
テンソル成分の変換
エネルギー楕円体
他のテンソル; 慣性テンソル
ベクトル積
応力テンソル
高階テンソル
電磁場運動量の4元テンソル
第11章: 密な物質の屈折率
物質の分極
誘電体内のマクスウェルの方程式
誘電体内の波
複素屈折率
混合物の屈折率
金属内の波
低周波、および高周波近似; 表皮厚さとプラズマ振動数
第12章: 表面反射
光の反射と屈折
密な物質内の波
境界条件
反射波と透過波
金属からの反射
全反射
第13章: 物質の磁性
反磁性と常磁性
磁気モーメントと角運動量
原子磁石の歳差運動
反磁性
ラーモアの定理
古典力学では反磁性も常磁性も説明できない
量子力学における角運動量
原子的な粒子の磁気エネルギー
第14章: 常磁性と磁気共鳴
量子化された磁気的状態
シュテルン - ゲルラッハの実験
ラビの分子線法
物質の常磁性
断熱消磁による冷却
核磁気共鳴
第15章: 強磁性
磁化電流
場H
磁化曲線
鉄芯を持ったインダクタンス
電磁石
自発磁化
第16章: 磁性体
強磁性の解釈
熱力学的性質
ヒステリシス曲線
強磁性体
特異な磁性体
第17章: 弾性
フックの法則
一様なひずみ
棒のねじり; ずりの波
棒の曲げ
バックリング(座屈)
第18章: 弾性体
ひずみのテンソル
弾性のテンソル
弾性体内の運動
非弾性的な振舞い
弾性定数の計算
第19章: 粘性のない流れ
流体静力学
運動方程式
定常な流れ - ベルヌーイの定理
循環
うず線
第20章: 粘性のある流れ
粘性
粘性流
レイノルズ数
円柱のまわりの流れ
粘性ゼロの極限
クエット流
第21章: 曲がった空間
2次元の曲がった空間
3次元空間の曲率
我々の空間は曲がっている
時空の幾何学
重力と等価原理
重力場における時計の速さ
時空の曲率
曲がった時空の中の運動
アインシュタインの重力理論
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この第4巻は内容が盛りだくさんで骨が折れた。第3巻の電磁気学の内容を発展させ電気回路のしくみ、電磁気理論の特殊相対性理論への拡張、電磁気的な観点から解き明かす物質の性質、磁性と磁性体、物質の弾性、流体力学、一般相対性理論での曲がった時空などが詳しく説明されている。金属が光を反射して光沢を放つ理由がわかるようになる。金属は格子状に配置する原子から構成され、電磁波(つまり光)が作用にした結果、マクロな目でそれが光の反射として捉えられるのだがそのしくみが詳しく説明されている。また物質が電磁波の波長の違いにより反射したり吸収したりするということは、人間の体をX線が透過することも説明でもある。X線やラジオやテレビの電波にとって人間の体は透明なのだ。この巻ではそのようなことが理解できるようになる。
流体力学の章で円柱のまわりに(水のように)粘性のある液体が流れる運動の複雑さについて説明している。流体の粘性を考慮に入れることでそのの運動方程式は多少複雑になるが、極端に複雑になるわけではない。実際に実験してみると流れの速さに応じて円柱の後ろ側に複雑な渦が動き回るのが観察される。その様子はこのページの一番下に動画で示されている。しかしこの運動の方程式は求めることができるものの代数的な演算では解くことができない。現在ではパソコンで簡単にシミュレーションできるわけだが、この本が書かれたころは無理であった。計算を行うまでくらいにはコンピュータは発達していたが、それを動画としてディスプレイに再現できるようになったのは近年のことである。
ファインマン先生はこの例を通じて方程式による自然現象の理解の限界について述べている。方程式自体が簡単に見えても自然はときに複雑な様相を示す場合がある。上で紹介した円柱の周りを流れる流体の力学もその一例だ。ある自然現象の根本原理を示す方程式がわかったとしても、実際の現象が複雑な形で私たちに提示されるとき、その複雑さを説明するすべを私たちは持っていない。物理や数学による理解の限界を見た気がした。しかし自然の複雑さに対して私たちは無力なわけではない。話を逆にたどれば、導いた方程式から自然の複雑さをコンピュータで再現できるということが、その方程式がその現象の原理を明らかにしていることに他ならないからだ。
第3巻の記事で結局のところ僕は磁力の本当の原因について理解していないと書いたが、この巻の磁性についての箇所を読んでわかったことは、
1) 磁力とはローレンツ力のことである。つまり電子(電荷)が磁場の中を動くときに受ける力のことで実験結果(経験則)である。
2) 磁場はマクスウェルの方程式で記述される。
3) マクスウェルの方程式により電場と磁場、電荷と磁荷説明されるが電荷は実在するが「磁荷」というものは実際には存在しない。つまり電荷はマイナスの電荷単体で存在するが、磁荷はN、Sかならずペアでしか存在できないのでNだけ、Sだけのような「磁荷」は存在しない。(ディラックは「磁荷(モノポール)」を予言しているが。)
4) (鉄などの)物質の磁性の原因は原子の中の電子が動いていることによる磁場の発生により説明される。この場合の電子の動きとは2種類あり、1つは原子核の周囲を回る電子の公転運動であり、もう1つは電子自身のスピン(自転)によるものである。磁性はこの2つの効果の総合的な結果として発生する。後者のスピンによる磁性については量子力学によってのみ説明され、古典力学(マクスウェルの方程式)では説明できない。つまり物質の磁性の理由は量子力学での磁気モーメントの理解なしには得られない。第5巻「量子力学」の「磁気モーメント」の箇所を再び紐といてみたが、磁気モーメントの発生理由については書かれていなかった。
と、磁力についての理解はここまでである。電子が動くと磁場が生じ、磁場の中で電子が動くとローレンツ力という力を受ける、と説明されてもそれじゃローレンツ力はどうして生まれるかということの答えにはなっていない。つまりどうして磁力が発生するかという本当の理由はわからずじまいだった。今後の学習に期待しよう。ところで磁石や磁性の不思議についてはこのページで上手に解説されている。
反対にクーロン力(電子と電子の間の斥力、電子と原子核の間の引力)の原因についても理解していないと書いてしまったが、今後素粒子物理学を勉強すると「クーロン力の原因は電子と原子の間で光子がやり取り(交換)されることによる」ものであるらしい。どうもピンとこないが。今の段階では文字どおり受け取っておくことにする。この理屈でクーロン力の逆2乗の法則(距離が2倍になれば力は4分の1になる)が説明できてしまうのだろうか。。。
そもそも電子や電荷についても僕は理解できていない。電子とはどういう存在なのだろうか?マイナスの電荷とは電子そのものなのだろうか?ミリカンの実験により「素電荷」と呼ばれる1つの電子が持つ電荷の単位量が求められた。しかしその後だいぶたってからファインマン先生や朝永振一郎先生の「くりこみ理論」では「裸の電子」という言葉からもわかるように、電子のまわりには仮想光子の雲があり、裸の電子そのものが持っている電荷を遮蔽しているそうだ。つまり電子は構造を持っている。裸の電子が持つ電荷が最小単位だとするならば、電子からその電荷を除いた部分というのはあるのだろうか?繰り返しになるが電荷そのものが電子ということなのだろうか?また、電子は微小な時間で考えれば常に光速で運動している。電子の速度が遅く見えるのはブラウン運動のように頻繁に方向を変えるためである。光速で運動すると進行方向に対して物体は長さゼロに押しつぶされて見える。(特殊相対性理論で説明されるローレンツ収縮)同様に電子の刻む時間も(周囲に対して)無限に遅くなる。電子は構造を持つと説明したばかりだが、長さゼロのぺしゃんこに押しつぶされた電子が構造を持つとはどのようなことか?謎は深まるばかりだ。
ある電子はは別の電子と全く区別することができない。大きさも質量も全く同じであるし他の電子と異なる性質はないからだ。全宇宙にある無数の電子がすべて同じな(無個性な)理由は大きな謎である。この謎に対してアインシュタインの先生のミンコフスキーは次のような説を彼に示したそうだ。つまり「もともと電子は1つしか存在しない。」というもの。過去から未来を通じ、全宇宙に存在するすべての電子はたった1つの電子が「同時」にあらゆる時刻と場所に存在している結果なのだそうだ。ひとつのリンゴが鏡に映って2つに見えるように、自然法則が私たちに1つの電子をあらゆる時刻と場所に無数に見せている。これが電子が無個性で他の電子と区別できない理由である。
今さらながら思ったのだが、物理学は自然の法則を数学で表現する。自然を構成しているモノやコト、時間や空間を数式を使って解明していく。つまり数学による方程式は、それが取り扱う変数(スカラーやベクトル、テンソル、実数、複素数)の関係を関数や演算規則によって示すものであるわけだから、モノやコトの関係を示す以上にそれらの発生原因までを説明し得る手段になれるのだろうか。ふとそんなことを思った。力や重力はF=maやアインシュタインの重力方程式によって記述されているが、未だにその本質は解明されていない。
重力方程式はこのように比較的シンプルな形をしているが、この方程式を展開して微分方程式にするとこのように複雑な形で表現される。この微分方程式は代数的演算(つまり紙と鉛筆では)解いて関数の形に書くことはできず、コンピュータで数値的に解くしか方法がない。後者の微分方程式のほうがより具体的な重力の表現なのだが、重力場を理解するという目的のためには前者のシンプルな方程式のほうが適しているのは言うまでもない。しかし、いずれにせよ重力の本質、つまり何が重力の原因となっているかを私たちが読み取れないことに変わりはない。わかることは物質の質量によって時間や空間がどのように、どの程度曲がるかということだけである。
ともかくこの巻を読み終えたことで昨年の11月から読み始めたファインマン物理学の全5巻を読み終えたことになる。それぞれのレビューとこの第4巻の目次は次のとおりである。
第1巻「力学」のレビュー
第2巻「光、熱、波動」のレビュー
第3巻「電磁気学」のレビュー
第5巻「量子力学」のレビュー
「ファインマン物理学第4巻 電磁波と物性」の目次
第1章: AC回路
インピーダンス
発電機
理想的な素子の回路網; キルヒホッフの法則
等価回路
エネルギー
はしご回路網
フィルター
その他の回路素子
第2章: 空洞共振器
実際の回路素子
高周波におけるキャパシター
共鳴空洞
空洞のモード
空洞と共鳴回路
第3章: 導波管
伝送線
矩形導波管
遮断周波数
導波管内の波の速さ
導波管内の波の観測
導波管の結合
導波管のモード
導波管の波に対する別の観点
第4章: 電磁気学の相対論的記述
4元ベクトル
スカラー積
4次元の勾配
4次元記号で書いた電気力学
動く電荷による4元ポテンシャル
電気力学の方程式の普遍性
第5章: 場のローレンツ変換
動く電荷の4元ポテンシャル
一定速度の点電荷の場
場の相対論的変換
相対論的記号による運動方程式
第6章: 場のエネルギーと運動量
局所的保存則
エネルギー保存と電磁気
電磁場におけるエネルギー密度とエネルギー流
場のエネルギーの不安定さ
エネルギー流の例
場の運動量
第7章: 電磁気的質量
点電荷の場のエネルギー
動く電荷の場の運動量
電磁気的質量
電子のそれ自身に対して及ぼす力
マクスウェルの理論を修正する試み
核力の場
第8章: 電磁場内の電荷の運動
一様な電場あるいは磁場の中の運動
運動量分析
静電レンズ
磁気レンズ
電子顕微鏡
加速器の誘導磁場
交替勾配収束
直交する電場と磁場の中の運動
第9章: 結晶の幾何学的構造
結晶の幾何学的構造
結晶の化学結合
結晶成長
結晶格子
2次元の対称性
3次元の対称性
金属の強さ
転位と結晶成長
フラッグ・ナイの結晶模型
結晶構造の動的模型
第10章: テンソル
分極率テンソル
テンソル成分の変換
エネルギー楕円体
他のテンソル; 慣性テンソル
ベクトル積
応力テンソル
高階テンソル
電磁場運動量の4元テンソル
第11章: 密な物質の屈折率
物質の分極
誘電体内のマクスウェルの方程式
誘電体内の波
複素屈折率
混合物の屈折率
金属内の波
低周波、および高周波近似; 表皮厚さとプラズマ振動数
第12章: 表面反射
光の反射と屈折
密な物質内の波
境界条件
反射波と透過波
金属からの反射
全反射
第13章: 物質の磁性
反磁性と常磁性
磁気モーメントと角運動量
原子磁石の歳差運動
反磁性
ラーモアの定理
古典力学では反磁性も常磁性も説明できない
量子力学における角運動量
原子的な粒子の磁気エネルギー
第14章: 常磁性と磁気共鳴
量子化された磁気的状態
シュテルン - ゲルラッハの実験
ラビの分子線法
物質の常磁性
断熱消磁による冷却
核磁気共鳴
第15章: 強磁性
磁化電流
場H
磁化曲線
鉄芯を持ったインダクタンス
電磁石
自発磁化
第16章: 磁性体
強磁性の解釈
熱力学的性質
ヒステリシス曲線
強磁性体
特異な磁性体
第17章: 弾性
フックの法則
一様なひずみ
棒のねじり; ずりの波
棒の曲げ
バックリング(座屈)
第18章: 弾性体
ひずみのテンソル
弾性のテンソル
弾性体内の運動
非弾性的な振舞い
弾性定数の計算
第19章: 粘性のない流れ
流体静力学
運動方程式
定常な流れ - ベルヌーイの定理
循環
うず線
第20章: 粘性のある流れ
粘性
粘性流
レイノルズ数
円柱のまわりの流れ
粘性ゼロの極限
クエット流
第21章: 曲がった空間
2次元の曲がった空間
3次元空間の曲率
我々の空間は曲がっている
時空の幾何学
重力と等価原理
重力場における時計の速さ
時空の曲率
曲がった時空の中の運動
アインシュタインの重力理論
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EROICAというペンネームのものです。EROICAとは、ベートーヴェンの交響曲第3番の題名です。
検索エンジンで引っ掛かって、ファインマン物理学に一般相対性理論は書いてないはずだが、と思ってやってきました。
何と、ファインマン物理学に増補版が出ていたのですね。私は、ファインマン物理学を全部読んであったので、竹内薫さんの本を読んだとき変なことが書いてあるな、と、疑問に思ったのでした。今やっと謎が解けました。
早速増補版を買いに行かなくては。
また来ます。
コメントありがとうございます。僕がファインマン物理学を知ったのはお恥ずかしながら昨年のことでしたので、いきおい手に入れたのが「増補版」ということになっていたわけですね。
目次あたりを見てみると、2002年9月に訳者である戸田先生がこの増補版について述べていらっしゃいます。本のおしまいあたりを見ると「2002年9月27日に増補版第1刷発行」と書いてありますよ。
増補版で追加されたのは「第21章:曲がった空間」だけです。難しい数式は殆どなく、文章と図で一般相対性理論を概説しています。ですので、この章のためだけに本を丸ごと一冊買うのは(お金が)もったいない気がしますので、書店で実際にお手にとってから買うかどうか決めてくださいね。
EROICAさんのブログを拝見させていただきました。磁場とは電場の相対論的効果なのですね!ヒントをいただいたような気がしました。ありがとうございます。