とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

高校数学でわかる統計学:竹内淳

2013年09月22日 20時48分04秒 | 物理学、数学
高校数学でわかる統計学:竹内淳」(Kindle版

内容
高校数学でわかるシリーズの第7弾は、待ちに待っていた統計学です。正規分布、回帰分析、区間推定、仮説検証が高校数学でわかる!
テレビの視聴率、明日の晴れの確率、発ガンリスク、直下型地震の起こる確率、放射線のリスク、生産管理、在庫管理、物価変動、マーケティング…現代の私たちの生活は、「統計」なしには成り立ちません。しかし、統計学の正しい知識がなければ、数字に追われ、数字に踊らされ、数字に振り回されるだけです。本書は、高校数学の知識だけで本格的に統計学を理解することを目指します。 2012年2月刊行、254ページ。

著者略歴
竹内淳:ホームページ: http://www.f.waseda.jp/atacke/
1960年徳島県生まれ。1985年大阪大学基礎工学研究科博士前期課程修了。理学博士。富士通研究所研究員、マックス・プランク固体研究所客員研究員などを経て、1997年早稲田大学理工学部助教授、2002年より教授。専門は、半導体物理学


理数系書籍のレビュー記事は本書で231冊目。

いま取り組んでいる本が数式びっしりなので読むのに時間がかかっている。このままだとしばらく記事がかけないので(僕にとっては)易しめの本を併読して紹介することにした。

本書は統計学の入門書。これほど数式が多いブルーバックス本は珍しい。とはいってもこれまでブルーバックスから出版されている竹内先生の著書はどれも横書きで数式が多いのが「特長」だ。特に本書は数学の本なのだから数式が多いのは当たり前のこと。

でも恐れる必要はない。先生の著書はどれをとっても入門者に優しいお勧め本ばかり。紹介記事は書いていないけれども僕はほとんど読んでいる。

統計学の入門書は次のようなタイプに分類される。D)以上は統計学の専門書レベル。

A)数式はおろか算数も使わず文章だけで説明している本

B)算数レベルの数式で説明している本

C)高校の数IIIレベルの数式で説明している本。ただし確率分布の数式や確率密度関数は天下りに紹介

D)高校の数IIIレベルの数式で説明している本。そして確率分布の数式や確率密度関数の導出手順も示している。本書はここに分類される。

あと、Excelを使った実例があるかないかという違いもあるし、Excel中心で話を進める本もある。


幸い僕の地元には紀伊國屋書店があり、この店は書店の中では「中型店」とでも呼べるような広さの店だ。物理や数学の一般向けの書籍だけで天井まで届く本棚ひとつぶんくらいが割り当てられている。(あと天文、生物などその他の自然科学系で本棚がもうひとつある。)

今日現在この本棚には、A)のタイプが1種類、B)のタイプが4種類売られている。3年前まではC)のタイプが中心でB)のタイプが少数派だった。つまりレベルが下がっているのである。これは数学が苦手なビジネスマンや学生にとって統計学の必要性が高くなってきたためだろう。皮肉なことだが易しい本ほど幅広い層のニーズを満たすことができる現実がある。

この書店には置いていないのだがB)のタイプで僕が特にお勧めするのは「悩めるみんなの統計学入門:中西達夫」だ。(紹介記事

- 確率分布、確率密度関数、確率母関数、モーメント母関数まで数式がきちんと導出されている。(ただしF分布については証明が難しいので導出手順は省略されている。-> 参考:「F分布の導出」- T_NAKAの阿房ブログより)

- 説明が親切でわかりやすい。高度な内容であるにもかかわらずだ。

- 例題がタイムリーなこと。福島原発からの放射線による被爆量と癌の発生率を仮説検定するために必要な標本数を求めるという、多くの人が関心をもっているテーマで解説を行なっている。



- 統計学を発展させた学者たちのことが肖像画つきで紹介されている。他の分野の入門書では珍しくないことだが、統計学の本で統計学者のことがこれほど詳しく紹介されている本は僕にとって初めてだった。

- Excelによる実例も豊富。Excelを使って数値実験しているようで楽しい。

- 分量、価格が手頃なこと。


大学時代に数学専攻だったにもかかわらず、統計学は僕にとって鬼門だった。確率分布関数は天下り的に覚えるだけで理解していなかった。理解していない数式を使って仮説検定をしたり、区間推定をしたりすることに違和感をもっていたので好きになれなかったのが統計学だった。卒業後しばらくたち、パソコンでExcelが使えるようになってから「もっと真面目にやっておけばよかった。」と後悔していたのだ。とはいっても大学の教科書レベルの本で学びなおすのは今の僕にとって荷が重過ぎる。

そのようなわけで、たまたま選んだこの一冊は僕にとって「棚からぼた餅」のような本だったのだ。手軽に統計学の数式導出を学ぶことができる。

章立ては次のとおり。(詳細はこの記事のいちばん下に記載。)

第1章:サイは投げられた!- 期待値と分散
第2章:2つの確率変数 - 独立と共分散
第3章:グラフの近似 - 回帰分析
第4章:分布の女王、それは正規分布
第5章:視聴率20%は本当か - 二項分布が問題を明らかに
第6章:標本の統計学 - 母集団にどう近づくのか
第7章:区間推定と仮説検定 - 探偵のように
第8章:正規分布の惑星たち - カイ二乗分布と適合度検定
第9章:正規分布のプリンス、それはt分布
第10章:母なる関数とは


あと、次は僕がお勧めする統計学入門書の一覧。(これらは現在どれも地元(笹塚)の紀伊國屋書店の数学書コーナーには置かれていない本ばかりである。)

とね書店(統計学書籍コーナー)
http://astore.amazon.co.jp/tonejiten-22?_encoding=UTF8&node=48


竹内先生は本書のほか、次のような本をお書きになっている。

竹内淳先生の著書一覧
http://www.f.waseda.jp/atacke/list2.html


関連記事:

悩めるみんなの統計学入門:中西達夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/da51039e6f55f5d55bdd7b700f761584

無料で学べる統計学入門サイトのリンク集
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bbc07d148199e963ac8a7ec60de2e7e1

高校数学でわかるフーリエ変換:竹内淳
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/aa1e79d97684f88319d9d4e96e6a89a3


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高校数学でわかる統計学:竹内淳」(Kindle版


はじめに

第1章:サイは投げられた!- 期待値と分散
- サイは投げられた!
- 確率変数と確率分布
- 期待値
- 期待値とギャンブル
- 分布
- 分散
コラム:統計学は世界を予測するか?

第2章:2つの確率変数 - 独立と共分散
- 確率変数が2つある場合
- 平均と分散の加法性
- 独立な場合に共分散がゼロになること
- 共分散とグラフの関係
- 相関係数と決定係数
コラム:朝ご飯と成績の関係 - 因果関係か相関関係か?

第3章:グラフの近似 - 回帰分析
- 直線の近似、回帰分析
- 最小2乗法
- 表計算ソフトを使って回帰直線を求める
- 近似の良さを表す指標
- 最小2乗法を生み出したのは誰か?
コラム:二人のルジャンドル

第4章:分布の女王、それは正規分布
- 正規分布とは?
- 連続的な確率変数
- 正規分布の骨格
- 正規分布の規格化
- 正規分布の分散
- 正規分布と標準正規分布
- 標準偏差は正規分布のどこにあるのか?
- 正規分布と分散の関係
- 正規分布をグラフ化する
- 「-σからσ」と「-2σから2σ」の確率(面積)を求める
- 偏差値
- 標準偏差の範囲を決める不等式
- チェビシェフの不等式の証明
- チェビシェフ
- 分布の形を表す指標
コラム:18歳人口の推移

第5章:視聴率20%は本当か - 二項分布が問題を明らかに
- 視聴率20%は本当か
- 標本の大きさを100に増やすと
- ド・モアブル-ラプラスの定理
- ド・モアブル
- 確率pが小さい二項分布、それはポアソン分布
- 二項分布をポアソン分布で近似する
- ポアソン分布の導出
- ポアソン
コラム:ハインリッヒの法則

第6章:標本の統計学 - 母集団にどう近づくのか
- 標本の平均の期待値(平均)
- 母集団と標本の関係
- 標本の平均
- 標本の平均の分散は?
- 標本分散と不偏(標本)分散
- 大数の法則
- 中心極限定理
コラム:杞憂は杞憂でない

第7章:区間推定と仮説検定 - 探偵のように
- 標本平均から母平均を推定する
- 仮説検定
- 放射能によるガンの影響を調べるには何人のデータが必要か
- 二標本問題を1つの確率変数で扱う
コラム:ナイチンゲール

第8章:正規分布の惑星たち - カイ二乗分布と適合度検定
- 正規分布を取り囲む3つの惑星
- ガンマ関数
- カイ二乗分布
- 正規分布のカイ二乗分布
- 自由度2以上のカイ二乗分布
- カイ二乗分布の組み込み関数
- 標本分散のカイ二乗分布
- メンデルの法則
- 適合度検定
- ピアソン
コラム:本の統計分布は?

第9章:正規分布のプリンス、それはt分布
- t分布
- 回帰分析の相関係数の妥当性の検定にt分布を使う
- t分布を生み出した謎の研究者
- F分布
- フィッシャー
- 分散分析
コラム:紅茶にミルクと、ミルクに紅茶では味が異なるか?

第10章:母なる関数とは
- 確率母関数
- モーメントって何?
- モーメント母関数とは
- 確率母関数とモーメント母関数の関係
- 連続的な確率変数のモーメント母関数
- カイ二乗分布のモーメント母関数
- 2つの正規分布の平均の差のモーメント母関数
- 独立な確率変数の和のモーメント母関数=それぞれのモーメント母関数の積
- モーメント母関数はなかなか役に立つ

おわりに
付録
参考資料・文献
さくいん
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2 コメント

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F分布も導出 (T_NAKA)
2013-09-23 14:01:20
この竹内先生の本を参考にして、F分布も導出してみました。

 「F 分布の導出」http://teenaka.at.webry.info/201209/article_27.html

こういう導出が出来る道筋を与えているところが、この本の良いところですね。
統計学は、分布関数の導出など端折っていて、天下り的に数表を見て計算しろ、というので本当は私も嫌いでした。
計算して結果を求めても、それが正しいのか?どうも確信が持てませんでしたね。
学生時代にこういう本に出会っていたら、もう少し関心が持てたと思います。
なので、数学はそこそこ好きだが、統計学は苦手という若い人に読んで貰えたらと感じました。
返信する
Re: F分布も導出 (とね)
2013-09-23 18:18:38
T_NAKAさんへ

> この竹内先生の本を参考にして、F分布も導出してみました。
> 「F 分布の導出」http://teenaka.at.webry.info/201209/article_27.html

おお、すごい!ほぼ1年前にお書きになった記事ですね。後でじっくり読んで理解させていただきます。

大学時代の雪辱を果たせたという意味で、いい本見つけたなとうれしく思っています。

これからも統計学の本は読んでいくつもりですが、本書をすぐ手にとれる場所に置いておくつもりです。
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