とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

とね日記賞の発表!(2021): 物理学賞、数学賞、他

2021年12月10日 00時00分00秒 | とね日記賞
 
毎年12月10日、スウェーデンのストックホルムでアルフレッド・ノーベルの命日に行われるノーベル賞の授賞式の日程にあわせて、「とね日記賞」を発表している。今年で12回目。

ところが、新型コロナウィルスの世界的な流行により、昨年から授賞式はオンラインで行われるようになった。極めて異常な事態である。この記事トップの画像も例年とは違う画像を掲載している。

けれども、コロナが流行しようがしまいが、ノーベル賞を僕がもらう見込みはどうもないことに変わりはない。どうせもらえないのなら自分で賞を作って「あげる側」になってしまえ!という思いつきで始めたのが「とね日記賞」である。

「とね日記賞」はその年に読んだ物理学書、数学書の中から自分のためになった本、この分野を勉強している学生や社会人にお勧めする本を物理学、数学など各分野に分けてそれぞれ1~2冊発表する。あとテレビドラマ賞や贈り物にふさわしい本としてクリスマス賞も設けている。


名著であっても僕がその価値を理解できなければ受賞できない。昨年以前に読んだ本は自動的に選考対象から外されるし、どんなに良書であっても読んでいなければ対象外。何より僕の学習進度や理解度や好みに影響される。

メダルも賞金も授賞式もスピーチも晩餐会も舞踏会もないから、ありがたくも何ともなく、主観だらけのアンフェアな賞だ。

今年は次の賞を発表する。

- 物理学賞
 物理学の教科書、専門書から選考。

- 数学賞
 数学の教科書、専門書から選考。

- 教養書賞
 一般向け書籍から分野別に選考。

- ブルーバックス賞
 講談社ブルーバックスの書籍から分野別に選考。

- 新人賞
 書籍出版デビューを果たした方が書いた本から選考。

- 文学賞
 ジャンルを問わない小説、文学書から選考。

- アカデミー賞
 今年観た映画の中からよかったものを選考。

- テレビドラマ賞
 テレビドラマの中からよかったものを選考。

- クリスマス賞
 クリスマスプレゼントにふさわしい本を選考。


この1年で読んだのは20冊で、次のような本である。通算449冊~468冊目。昨年の11月から本業の仕事が忙しくなったため、以前のように年間30~50冊の本を読むことはできなくなった。(参考:「400冊の理数系書籍を読んで得られたこと」)

449/天秤の魔術師 アルキメデスの数学:林栄治、斎藤憲
450/理論疫学者・西浦博の挑戦-新型コロナからいのちを守れ!
451/物理学者のすごい思考法: 橋本幸士
452/ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環: ダグラス・R. ホフスタッター
453/東大の入試問題で学ぶ高校物理:吉田弘幸
454/探究する精神 職業としての基礎科学:大栗博司
455/三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題:浅田秀樹
456/場の量子論: 不変性と自由場を中心にして(量子力学選書):坂本眞人
457/数学に魅せられて、科学を見失う:ザビーネ・ホッセンフェルダー
458/世界は2乗でできている 自然にひそむ平方数の不思議:小島寛之
459/フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔:高橋昌一郎
460/アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた:深川峻太郎
461/オイラー入門: W.ダンハム
462/オイラー探検:黒川信重
463/入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として:堀田 昌寛
464/現代量子力学入門:井田 大輔
465/理性の限界―不可能性・不確定性・不完全性:高橋 昌一郎
466/現代解析力学入門:井田 大輔
467/量子力学10講:谷村 省吾
468/ORのはなし―意思決定のテクニック:大村平


今年の科学出版界を象徴するキーワードは「新しい量子力学の教科書」である。今年、従来の教科書とはまったく違う新しいタイプの教科書が3冊も出版された。量子コンピュータ、量子テレポーテーションに代表される量子技術を将来研究、応用の場で活躍したいと思う若者、学生たちが学ぶのにふさわしい量子ネイティブ指向の教科書が登場したのだ。

それでは2021年の「とね日記賞」を発表しよう。(書籍名と画像は本の購入ページにリンクさせておいた。)


* 物理学賞

入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として:堀田 昌寛


授賞理由: 今年の物理学賞はこの本をおいてありえない。量子ネイティブを目指すための新しい教科書で、昨年以来待ち望まれていた。著者の堀田先生は、以前から継続的にツイートで量子力学、量子現象に対する古い考え、誤った考えをご指摘なさっていた。しかし、それがひとつの形にまとめるとどのようになるのかは堀田先生以外ご存知ない。ようやく教科書として刊行された。そして、時期を同じくして「現代量子力学入門:井田 大輔」や初学者が読むのに最適な「量子力学10講:谷村 省吾」が刊行され、これら3冊の共通点が確認できたことで新しい量子ネイティブ指向の教科書のガイドラインが示されたのだと思う。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として:堀田 昌寛
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2db67370781114a62d354fd6ec27e1d7

量子力学10講:谷村 省吾
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/041d873912ef0ae30f12fcb5aa73916c

現代量子力学入門:井田 大輔
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/acbdefa011b68a9ed05ee25eed07b876


* 数学賞

今年の数学賞は次の2冊に授賞することにした。1冊に絞ることができなかったのである。

天秤の魔術師 アルキメデスの数学:林栄治、斎藤憲


授賞理由: 近代科学はニュートンやライプニッツが創始したと言われるが、アイザック・ニュートンは同じ科学者であるロバート・フックへ当てた手紙の中で、「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです。(If I have seen further it is by standing on the shoulders of Giants.)」と書いている。天才といえども、自分ひとりだけで研究をし成果を上げることはできないのである。ニュートンやライプニッツが研究の土台とした巨人のひとりが古代ギリシアの天才数学者アルキメデス(紀元前287年? - 紀元前212年)だ。数学だけでなく科学・技術全般に業績があるアルキメデスの成果のうち、面積や体積を求めるための「求積法」を解説した『方法』という著作の内容を実例をあげて紹介したのが本書である。ガリレイ、ニュートン、ライプニッツらは、ラテン語に翻訳されたアルキメデスのこの著作を読んでいた。この『方法』に書かれていた求積法を参考にしてニュートンやライプニッツは微積分法を考案し、これが1687年に刊行されたニュートンの『プリンキピア(自然哲学の数学的方法)』、近代科学の誕生に結び付いたと言ってよい。アルキメデスの天才ぶり、天秤を使ったアイデアの独創性を堪能できるのが本書である。そしてニュートンが肩に乗っていた巨人アルキメデスでさえも、彼より古い時代に生きたユークリッド以前の古代エジプトや古代ギリシャの幾何学研究者、そして天秤を発明した紀元前5000年より昔の古代エジプトの人々など、さらにいにしえの巨人たちの肩の上に乗っていたのだということに思い至った。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

天秤の魔術師 アルキメデスの数学:林栄治、斎藤憲
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/54693051fc92adcb0f20c52ce9d9841a

そして数学賞の2冊目はこちらである。

オイラー入門(シュプリンガー版)」(丸善版


授賞理由: アルキメデスの著作が膨大で、その研究が全生涯をかけたライフワークになるのと同様、18世紀の大数学者オイラーの業績も一生かけたとしても研究し尽せることはない。オイラーについて高校生が学ぶのは、せいぜい「オイラーの公式」くらいで、これは量子力学に欠かせない公式だ。物理学徒であれば解析力学で使われる「オイラー=ラグランジュ方程式」もご存知だと思う。このほかに彼はどのような研究で名を残したのだろうか。オイラー初心者がまず手がかりとして読むのに好都合なのが本書である。アクロバチックな数式導出に驚き、その影響が現代数学のあらゆる領域に及んでいった経緯を知ることができる。この本を読み、そこは「オイラー沼」であり、うかつに一歩を踏み出してはいけない世界だということがよくわかった。底無しともいえる禁断の世界を覗いてみたい方は、ぜひお読みになっていただきたい。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

オイラー入門: W.ダンハム
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b6a5d54f254fa7af0c2361d93995cea4


* 教養書賞(物理学部門)

次の2冊に授賞する。どちらも現在最前線で活躍されている著名な理論物理学者の生い立ち、関心ごと、理念や生きざまを知ることができる貴重な本だ。

探究する精神 職業としての基礎科学:大栗博司」(Kindle版


授賞理由:大栗先生の超弦理論入門」を始めとする数々の科学教養書をお書きになり、超弦理論研究の第一人者のおひとりでいらっしゃる大栗先生の「自伝」とも言うべき本である。理論物理学の解説書ではなく、科学者になるまでの先生の生い立ち、好奇心や探究心、学ぶことの大切さ、基礎科学の意義を語っている本だ。回顧録を書くには先生は若すぎる。しかし、コロナが全世界的に猛威をふるい、いつ命を落とすかわからない世の中、日本にとっても東日本大震災以来の危機である。いつもお忙しい先生が幻冬舎の担当編集者、小木田さんの提案を受け入れ、本書を執筆されたのはそのような背景があったのだろうし、回顧だけでなく東日本大震災後に先生が自問された基礎科学の意義を伝えることの必要性を再びお感じになったからである。今年ががそのタイミングだったのだ。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

探究する精神 職業としての基礎科学:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6a8ed519784843aad20780a2811f5d2d

そして授賞する2冊目はこちらの本だ。

物理学者のすごい思考法: 橋本幸士」(Kindle版


授賞理由: 理論物理学者の私的な考えを書いた本という点で、本書は上記の大栗先生の本と同じだ。お二人の先生が示し合わせていたわけではないのに、ほぼ同じ時期じこの2冊が刊行されたのは偶然であり、面白いと思った。何かの波動がお二人に働きかけていたのだろうかと科学的でないことをつい書いてしまう。本書は気軽に読める新書版のエッセイ集。コロナ禍で鬱々と過ごしている理系人に清涼感を与えてくれる楽しい本だ。著者は素粒子論、超弦理論研究の第一人者のおひとりの橋本幸士先生だ。書き溜めていたエッセイを本書で一気に放出された。日常にはこんなにたくさん物理があふれているのだなぁと驚くとともに、抱腹絶倒な書きっぷりは読者の期待を裏切らない。7月24日には朝日カルチャーセンターの中之島教室でお二人による「物理学者のすごい思考法」を「探究する」ためのオンライン講座と対談が行われたそうである。(参考リンク

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

物理学者のすごい思考法: 橋本幸士
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/991713ed3c54b8911a6d1be62de7bd7f


* 教養書賞(数学部門)

理性の限界―不可能性・不確定性・不完全性:高橋 昌一郎」(Kindle版


授賞理由: 人類が意思決定のよりどころとしている「理性」には限界があるのか?もちろん生物的、能力的な限界があることは誰でも知っている。しかし、その限界には数学的に証明されているものがあるのだ。20世紀になって発見、証明された3つの限界をとてもわかりやすく紹介しているのが本書である。アローの不可能性定理、ハイゼンベルクの不完全性定理、ゲーデルの不完全性定理をまったくご存知ない方は、まずこの本をお読みになるとよいだろう。これら3つの限界は数学的に証明されたものなので、教養書賞(数学部門)として授賞させていただいた。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

理性の限界―不可能性・不確定性・不完全性:高橋 昌一郎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a205007811d2516b994182423bd7d024


* 教養書賞(コンピュータサイエンス部門)

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環: ダグラス・R. ホフスタッター


授賞理由: 2016年に深層学習が脚光を浴びるようになってから、AIや機械学習の人気が爆発的に高まっている。コンピュータは果たして万能なのだろうか?もちろん人間が解決できない数々の問題をコンピュータは解決してくれる。しかし、もともとコンピュータはどのように位置づけられ、科学者たちは将来どのように発展すると考えられていたのだろうか?1979年に刊行された本書はこのテーマに沿って、未来のコンピュータが解き明かすであろう知の世界を予言した古典的名著である。コンピュータ技術を基礎付けている数理論理学、アルゴリズム理論には限界があることがゲーデルやチューリングによって示されている。機械学習といえども、その限界に縛られるのだろうか?一般の方が読むには少々難しくて分厚い教養書ではあるが、コンピュータやソフトウェアに関わるエンジニアの方にはぜひ読んでいただきたい本である。数理論理学の世界をエッシャーの絵画、バッハの音楽とのアナロジーを交えて、知的興奮を書きたてながら繰り広げている。コンピュータ技術の原点に立ち返って思考と想像をめぐらせながら読んでほしい。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環: ダグラス・R. ホフスタッター
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6220ca683bd90204f671b44633e56890


* ブルーバックス賞

三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題:浅田秀樹」(Kindle版
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授賞理由: この1年で読んだブルーバックス本の中で、ダントツに面白かったのが本書だ。古典力学の中にもみられるカオス現象に初めて気がついたのが、数学者のポアンカレである。(参考記事:「ポアンカレによるカオスの発見と先見性」)ポアンカレは重力を及ぼしながら運動する3つの天体の軌道を計算する過程で、カオス現象があることに気がついた。数学ではこのモデルを「三体問題」と呼んでいる。古典的な問題でありながら三体問題は未解決なことが多く、現代でも研究が続けられている。その研究の最前線を紹介しているのが本書なのだ。三体問題はもともとニュートン力学をベースに研究され、その後、一般相対性理論をベースにしたものへと発展した。そして2015年に重力波が観測され、ブラックホールの存在が確認されて以降、一般相対性理論をベースにした三体問題の研究は今後の天文学に新たな学問領域を開拓しつつあるのだ。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題:浅田秀樹
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e3018c965e45035d13bcf3d40d7b5783


* 新人賞

アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた:深川峻太郎」(Kindle版


授賞理由: 新人賞もブルーバックス本に授賞することにさせていただいた。この本以外にはないと思う。著者は科学本のライター、編集者を生業としている「ど文系」の方である。その彼が果敢にもアインシュタインの一般相対性理論に挑戦を挑んだのだ。本書は彼がそのように無謀な計画を抱くようになったきっかけから始まり、専門家から教えをいただきながら、学習を一歩ずつ進め、アインシュタイン方程式を理解するという目標にたどり着くまでの過程をつづった意欲的な専門書である。そしてこの本には大栗博司先生、村山斉先生という理論物理学の第一人者のお二人から推薦文をいただいている。素人ながらご自身の本をようやく完成、出版されたという偉業には賞賛という言葉しか思いつかない。今後の著作を期待して、新人賞を授賞することにした。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた:深川峻太郎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4a200a8594234b351980a81062eec683


* 文学賞

アンネの日記 増補新訂版:アンネ・フランク」(Kindle版


授賞理由: 人種差別、ジェンダー差別、国籍差別、分断の問題は、特にこの1年クローズアップされている。(参考ツイート)アンネの日記もユダヤ人差別の犠牲者となった少女、アンネ・フランクが書いた日記として刊行されてからずっと読み継がれている本だ。いつか読んでおきたいとずっと思っていたが、ようやく読むことができた。感性に豊かで文才にあふれる少女の日記。ナチスドイツの迫害におびえならがも、最後まで希望を失わない姿に心が揺さぶられる。また、想像していたのとはまったく違う内容も多く書かれていて、不謹慎かもしれないが楽しめる本でもあった。あらましを知っているのと実際に読むのとでは大違いである。まだ読んでいない方は、ぜひ手に取っていただきい。差別される側にいるアンネが、この問題をどのようにとらえていたか。それを知ることをきっかけに、差別の問題を自分なりに考えることの意義はあると思う。また、優れた文才に恵まれていたアンネがもし生き延びていたら、その後の人生で数々の名作を遺していたことだろう。それらの作品に授賞するという意味も込めている。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

アンネの日記 増補新訂版:アンネ・フランク
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ccfe571843376db1976902d4a9d4f491


* アカデミー賞

映画『パンケーキを毒見する』を映画館で観たが、その後の衆院選では与党勝利に終わってしまった。だからこの映画にアカデミー賞を授賞することができない。そこでブログ記事には書いていないが、今年アマプラで観た映画の中から選んで授賞することにした。

今年は映画『日本沈没(1973)(Amazon Prime VideoYouTube予告編)』に授賞させていただく。今後も自公政権が続くから日本は沈没するかもしれないという皮肉を授賞理由に含めているわけではない。



小松左京原作の同名小説は1974年にテレビドラマ化(全26話:Amazon Prime Video)、2006年にも映画化(YouTube)されている。そして今年はTBSで『日本沈没 -希望のひと-』として放送中で、12月12日(日)に2時間枠で最終話を迎える。

この中で授賞に値するのは、昭和の小林桂樹、丹波哲郎をはじめとする昭和の名優がたくさん出演している1973年版だ。そしてこの作品には地球物理学者の竹内均博士(紹介動画)が本人役で出演している。昭和の名優と竹内均博士が出演していること、原作に忠実であること、迫真の演技、緊迫感に満ちていることから授賞させていただくことにした。現在放送されているTBSドラマは、原作からだいぶ改変されてしまっているが、それなりに楽しんでいる。

原作小説をお読みになるのであれば、光文社文庫版をお勧めしたい。原作小説はもともと1973年に同社のカッパ・ノベルスから刊行されていたこと、そしてKindle版は当時の単行本の表紙の色とデザインを踏襲しているからだ。上巻は水色で黒い日本列島の影が沈んでいくデザイン、下巻はピンク色で黒い富士山の影が沈んでいくデザインだ。1973年刊行のカッパ・ノベルス版も中古本で購入可能である。(検索する

日本沈没(上) (光文社文庫):Kindle版
日本沈没(下) (光文社文庫):Kindle版
 


* テレビドラマ賞

この1年、NHKの大河ドラマのほか民放のドラマでは『知ってるワイフ』、『俺の家の話』、『にちいろカルテ』、『ナイト・ドクター』、『リコカツ』、『イチケイのカラス』、『ドラゴン桜』、『プロミス・シンデレラ』、『#家族募集します』、『彼女はキレイだった』、『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』、『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』、『最愛』、『婚姻届に判を捺しただけですが』、『ドクターX7~外科医・大門未知子~』、『日本沈没-希望のひと-』を楽しんだ。



この中でもイチ押しなのは。。。と考えたが今年は1つに絞れない。テレビドラマ賞は3つになってしまった。せめて序列をつけて発表することにしよう。

『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』


授賞理由: 視覚障碍者の女の子とヤンキー君の間ではぐくまれるの恋愛コメディー。とにかく楽しいし、ほろっとさせられるシーンが毎回見られるのがこのドラマの魅力。人種差別、国籍差別、ジェンダー差別だけにとどまらず、障碍者差別も現代社会が抱えている問題だ。このドラマを通じて視覚障碍者が見ている世界、感じ方、考え方が自然にわかるようにストーリーが組み立てられている。また、このドラマが素晴らしいのは、視覚障碍者が楽しめるように音声ガイドが副音声から聴けるほか、TVerやサブスクの配信にも音声ガイド付き動画がアップされていることだ。また途中の放送回で、登場人物のひとりがゲイであることが発覚する。ジェンダー差別もこのドラマがカバーすることになった。第1話~第3話のダイジェスト第4話~第6話のダイジェストをご覧いただくとどのようなドラマかお分かりいただけるだろう。

恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜:公式ページ
https://www.ntv.co.jp/yangaru/

YouTube動画: 検索する


『#家族募集します』


授賞理由: #家族募集します というSNSタグをきっかけに、1階がお好み焼き屋の2階に作られたシェアハウスで共同生活を始めるシングルマザー、シングルファザーの3家族が繰り広げる物語。生活信条や考え方が違う家族の心がひとつになっていく姿に心を打たれる。ひとり親世帯が増えつつある現代社会。実際にこのように理想的な共同生活ができるのか疑問は残るが、あくまでドラマである。出演している俳優、子役がとにかく魅力的だ。何度も繰り返して見たい作品である。なお、番組でお好み焼き屋の「にじや」としてロケに使われた建物は谷中にある古民家「谷中ビアホール」である。第1話~第3話のダイジェストをご覧いただきたい。

#家族募集します:公式ページ
https://www.tbs.co.jp/kazokuboshuu_tbs/

YouTube動画: 検索する


『江戸モアゼル』


授賞理由: 「粋じゃないねぇ」江戸時代からタイムスリップした吉原に生きる花魁、仙夏。野暮なこと筋が通らないことを嫌い、客だろうがお大尽だろうがキッチリと言い負かす。タイムスリップ物の恋愛コメディーは僕の大好物だ。そして第6話には松浦壮先生の「時間とはなんだろう」というブルーバックス本がちらっと映っている。ドラマの中でこの本を読んでいるIT会社の社長は、花魁の仙夏(せんか)が江戸時代からタイムスリップしたことをどうしても受け入れられず、「時間とはなんだろう」を読んでいるという設定だ。(参考ツイート

江戸モアゼル:公式ページ
https://www.ntv.co.jp/yangaru/

YouTube動画: 検索する


* クリスマス賞

今年のクリスマス賞は、次の本に授賞させていただこう。10月に刊行されたばかりの人気の児童書である。原作は『ハリーポッター・シリーズ』の原作者のJ.K.ローリング、日本語訳は同シリーズを翻訳された松岡佑子さんだ。友人やお子さん、自分へのクリスマスプレゼントにどうぞ。日本語版と英語版のAmazonの読者レビューをお読みになれば、素晴らしい作品だということがおわかりになるだろう。なお、過去のクリスマス賞で一押しの本は2015年に授賞した「アリスとキャロルのパズルランド 不思議の国の謎解きブック」である。

クリスマス・ピッグ: J.K.ローリング」(Kindle版
The Christmas Pig: J.K.Rowling」(Kindle版
 

このほかAmazon.co.jpからはドイツ語版スペイン語版韓国語版を、Amazon.frからはフランス語版を購入することができる。

内容: ジャックとぬいぐるみは、一緒に魔法の旅をはじめます。失われたものを取りもどし、一番の親友を見つけるために。J.K.ローリングが『ハリー・ポッター』のあとに初めて書いた児童書です。
ジャックは、小さい頃にもらったブタのぬいぐるみが大好きです。良いことがあっても悪いことがあっても、ぬいぐるみはいつもジャックのそばにいました。ところが、ある年のクリスマスイブ、恐ろしいことが起こります――ぬいぐるみがいなくなったのです。それでも、クリスマスイブは、起こるはずのない奇跡が起こり、叶うはずのない願いが叶い、あらゆるものに命が宿る日です――もちろん、ぬいぐるみにも。ジャックがクリスマスにもらった新しいブタのぬいぐるみ(消えた宝物のかわりにやってきた、口うるさい子ブタです)は、大胆な計画をくわだてました。ジャックと新しいぬいぐるみは、一緒に魔法の旅をはじめます。失われたものを取りもどし、ジャックの一番の親友を見つけるために。

【総集編】J. K .ローリング『クリスマス・ピッグ』インタビュー: YouTubeで再生 関連動画


(字幕付)『クリスマス・ピッグ』J .K .ローリングの朗読(再生時間12分): YouTubeで再生


* ノーベル物理学賞2021

最後になりますが、真鍋先生をはじめとする本日受賞される先生方、ノーベル賞受賞おめでとうございます!ちなみに真鍋先生は12月6日午後、米国ワシントンで受賞をすませている。(ニュース記事

記念講演はこの動画で見ることができる。

2021 Nobel Prize lectures in physics: YouTubeで再生


2021年 ノーベル物理学賞は真鍋博士、ハッセルマン博士、パリージ博士に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a98679530eb64ee5875d72eb3a84c8bf


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過去の「とね日記賞」一覧: 開く


 

 

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