若草幼稚園 岡林道生 園長にご相談して、「高知ファンクラブ」でも連載させていただく事にしました。
高知市若草南町にある若草幼稚園は、幼稚園が所有する「すくすくの森」を活用した体験教育を早くから実施している事で有名です。
いま全国的な盛り上がりの中で、高知市神田の「アジロ山自然の森」をはじめ、県下でも「森のようちえん」に関する取り組みが高まって来ています。
この盛り上がりを一過性のブームに終わらせないで、
森林率84%で全国一を誇る、"森の国・高知"ならではの、「かしこくてたくましいこどもを育てたい」という、親をはじめとする、みんなの共通の願いを実現するための、取り組みの大切な一つとして、「もりのなかでこどもはかがやく」を応援していけたら・・・と考えています。
先進の「若草幼稚園」と連携しながら、高知にふさわしい「森のようちえん」について、今後特集しながら、みんなで考えて行けたら・・・と思っています。
「すくすくの森」と子どもたち~21年の歩み~
若草幼稚園 岡林道生
1 なぜ子どもたちに森を
(1) 自然の中で遊ぶ子どもたちの姿から
今から21年前の1988年に、若草幼稚園は、子どもたちのために「すくすくの森」を購入しました。どんなことが動機だったのか思い返してみますと、やはり、森や川、海で遊ぶ子どもたちの姿が、私たちの心を動かしたからではないかと思います。
当時、私たちは、スクールバスを利用して、子どもたちを季節毎に森や川、海に連れ出していました。また柿狩りやみかん狩り、いも堀りにも出かけていました。
自然の中にいる子どもたちは、目の前に現れる景色や生き物に心を奪われ、時が過ぎるのを忘れてしまうほどです。そんな子どもたちのなかでも、特に私たちが喜びを感じたのは、普段の生活の中では余り表情を変えず、物事に積極的に関わろうとしない子どもたちの笑顔と能動的な動きでした。
例えば、場面緘目児と診断されたAさんは、自然の中に行くと「先生、この間より川の流れが速いね。」と話しかけてきたり、「お兄ちゃんはね、深いところまで行きよって、お父さんに叱られたが」などと話し始めるのです。
自ら、友達や先生に話しかけ、会話が弾むほどでした。また、体が弱く病気がちで幼稚園をお休みすることの多かったB君は、余り身体を動かして遊ぼうとせず、食も細くて、食べ終わるにも時間がかかる子どもでした。
ところが、自然の中では、B君の大好きな昆虫やさまざまな生き物が、彼の好奇心や探究心を刺激します。生き物を追いかけて走り回るB君は、お腹もペコペコ、よく食べるし、食べ終わるのもあっという間でした。
一方、初めて山などに行くと、登り坂を見ただけで「行けん、行けん」としゃがみこみ、坂道を下りようとするだけで「恐い恐い」と泣き出し、虫や葉っぱに触るだけで「先生!先生!」と顔をひきつらせる子どももいます。
しかし、回を重ねていくうちに段々慣れてきて、どんな子どもも自然の中で遊ぶことが大好きになります。
子どもたちが変わっていく、本来持っている躍動感があふれてくる、自然は私たち人間には及ばない何かがあるのでしょう。存在そのもので、相手を変える力を持っているのです。
いつしか、私たちにとって最も身近な自然である「森」が、幼稚園にあればどんなによいだろうと考えるようになりました。また、このような思いを強くした背景には、社会の変化に応じて出てきた子どもの問題がありました。
(文中の画像は、若草幼稚園より提供していただいたものを中心に、編集者が選んで挿入したものです) 〔『保育の実践と研究』(第15巻第2号)より転載〕
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