MRIのすべて(all about MRI)

磁気共鳴イメージング(MRI)に関するさまざまな経験や知識を提供しつつ今後の展望を切り開きたい.

T1強調画像とT2強調画像の使い道

2006-01-18 23:34:22 | Weblog

ここで気分を変えて,実際にT1強調画像や,T2強調画像が,どのような目的に使われるかを紹介しましょう.

上に示す画像は,私の研究室で開発したコンパクトMRI(手専用MRI)で,H君が,撮ってくれた私の左手の画像です.左の画像が,T1強調画像,右の画像がT2強調画像です.

T1強調画像は,主に,解剖学的構造,すなわち,どのような組織がどのような形状をしているかを,比較的高い分解能で示す画像です.GRASSという方法で撮られたものですので,スピンエコーによるT1強調画像とは少し異なりますが,コントラストは,ほぼ同じと考えても結構です.

T2強調画像は,主に,病変部を描出する画像で,病変が起こった部分が,高い輝度で現れます.このため,臨床診断にはきわめて有用な画像です.なお,この画像では,皮下脂肪や骨髄などの脂肪組織は,「脂肪抑制」という手法で抑制されています.

上の画像は,私の左中手骨に,bone erosion(骨糜爛)があることを示しています.これは,永年の装置作りによるものだと思います.


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

MR画像のコントラスト

2006-01-18 23:04:21 | Weblog

だんだん理屈っぽくなってきましたが,MR画像の見方を理解するためには,もう少し我慢してお付き合い下さい.

前回の解説では,MR画像(スピンエコー画像)の画像コントラスト(濃淡)は,5個のパラメタで決定されると書きました.

5個もパラメタがあると,大変複雑なように思えますが,実は,意外と簡単なのです.

実際には,5個というよりも,ρ,TR/T1,TE/T2の三つの値で画像のコントラストは決まります.すなわち,TRとT1の比,TEとT2の比を考えればいいのです.これを式で書くと,画素の強度(明るさ)Iは,

I=kρ(1-exp(-TR/T1))exp(-TE/T2)

とあらわされます(kは定数です).

そして,上の表に示すように,TR/T1が(1より)大きいか小さいか,TE/T2が(1より)大きいか小さいかの4個の組み合わせの場合で,撮像が行われ,それぞれの場合が,昨日お話した,T1強調画像,T2強調画像,プロトン密度強調画像となるのです.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

MRIにおける内部パラメタと外部パラメタ

2006-01-18 22:33:19 | Weblog

MRIで撮像される物質を特徴づけるパラメタとして,T1(縦緩和時間:ティーワンと呼ぶ),T2(横緩和時間:ティートゥー),そしてプロトン密度ρ(ロー)の,3つの組織パラメタ(内部パラメタ)があります.

これらが何を意味するかは,また後でお話しますが,プロトン密度というのは,分かりやすい概念ですね.

これらの3つのパラメタの分布を,うずらの卵で計測したものを,上の画像に示します.これらの画像は,プロトン密度は,黄身と白身ではあまり変わらないものの,T1とT2は,黄身で短く,白身で長いということを示しています.

さて,これら3つの組織パラメタを持つ物質を,スピンエコー法という撮像法(これは,またあとで詳しくお話します)で撮像するときには,繰り返し時間TRと,スピンエコー時間TEという二つの時間パラメタが,重要な役割を果たします.これらのパラメタを,外部パラメタと言っています.

以上をまとめますと,MR画像(多くの場合スピンエコー画像です)は,

内部パラメタ:T1,T2,ρ

外部パラメタ:TR,TE

の合計5個のパラメタで決定されます.そのメカニズムは,次回お話しましょう.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする