MRIのすべて(all about MRI)

磁気共鳴イメージング(MRI)に関するさまざまな経験や知識を提供しつつ今後の展望を切り開きたい.

ISMRM2006第7日目(5月12日(金))の報告

2006-05-15 15:18:57 | Weblog

ISMRM2006の第7日目.

いよいよ最終日である.

プレナリーもきちんと聴きたいが,二日後に迫った講演(福島英一さんの70歳の誕生日を祝う研究会で45分講演を行いました)のため,ついに,会場でも,その作業をやるという最悪の事態になった.

でも,今回のISMRMは,そこそこ実りがあったと思う.

来年も,有意義な会にできるように,さらに頑張りたい(ネタはたくさんある).

以上で報告を終わります.


PS

上の写真は,ピッチャーが,イチローめがけてボールを投げているところで,イチローは振りかぶっています.また,ボールが,ピッチャーとイチローの間で,1mくらいの筋で見えています.シャッタースピードが計算できますね.確か,この打席は,サードゴロで,サードが,お手玉する間に,サードランナーが生還したシーンだったと思います.でも,この試合で,イチローは不調でした.


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ISMRM2006第6日目(5月11日(木))の報告

2006-05-15 15:06:23 | Weblog

ISMRM2006の第6日目.

朝から,MR Hardware/Engineeringのmorning categorical courseに出席.

最初の題目は,Transmit Arrays Design,講師は.Christopher J. Hardy(GE)である.

前日に,Transmit SENSEの話を聞いて置いたので,今回は,非常に分かりやすく聞けた.付加的なコイルを用いたinductive decouplingのやり方も良く分かった.

二番目の題目は,RF Pulse Design for Transmit Sense,講師は.Douglas C. Nollである.

内容は,任意の領域のRF励起を行うために,各コイルエレメントに,どのような高周波パルスを与えるか,という問題である.理論の流れは分かったが,実際に使う時にならないと,やる気はおこらないだろう.

さて,その次のLauterbur Lectureとプレナリーセッションは,出るべきかどうか迷ったが,せっかくのチャンスだと思い,出てみた.

内容は,すべてbrainに関するものなので,好き嫌いも出てくる.

この学会あるいは,医学界全体が,

brain
heart (cardiovascular)
body / musculoskeletal
engineering / basic science

という色分けになっており,brainは,非常に大きな勢力である.

Brainは,

重さは体全体の       2%
血流は体全体の      11%
エネルギー消費は体全体の 20%

と言われるように,特殊な臓器である(心臓もある意味特殊)ため,脳と心臓に関係する医者のは,中でも特別らしい.

内容は,多岐にわたったが,面白い話としては,

脳のイメージングに関する歴史的な年は,

1972年 X線CTの発明
1973年 MRIの提案
1975年 PETの発明
1980年 MRIの実用化(スピンワープの発明による)
1992年 functional MRIの発明(小川誠治氏による)

だそうである.

しかも,脳機能イメージングに本質的に重要な役割を果たす,BOLD(blood oxygenation contrast)の発見に関して,

1845年 ファラデーの電磁誘導の発見(NMR信号発生の原理)
1937年 ポーリングによるヘモグロビン(鉄を含む)の性質の解明
1990年 小川誠治によるBOLDコントラストの発見

を紹介していた.

しかも,脳に関する学術文献の引用回数に関して,2005年の分を調べてみると,

脳のイメージング全体で        35万件
MRIに関する文献(fMRI以外)  15万件
fMRI               15万件

だそうである.

このように,文献だけからみると,fMRIは,MRI全体と匹敵する分野になっており,米国神経科学会(American Neuroscience Society)という2万人が集まる学会でも,fMRIは,一番大きなトピックスだそうである.

ISMRMは,4000人くらいが参加する学会(今年は4,800人だったらしい)で,その巨大さには,最初はみんなびっくりするが,上には上がいるものである.

さて,もう一つ面白い話としては,脳の情報処理機能に関してである.

目に入ってくる外界の視覚情報の量は,ある根拠による計算によれば,毎秒10の10乗ビット(10Gbit/s)だが,視神経で変換できるのは,毎秒6×10の6乗ビット(6Mbit/s:USB1.1か,10Mbitイーサネット並である),大脳皮質の視覚野(そこで情報処理が行われる)に届くのは毎秒10の4乗ビット(すなわち,100×100画素の画像程度),そして,最終的に記憶されるスピードは,「毎秒1ビット」程度であるとの事である.

すなわち,ある人を見たとき,瞬間にその人のどこかに注目し(多くの場合は顔かも知れないし,そうでないかも知れない),100×100の画像パターンに変換して,マッチングを行い,誰々さんかを判断し,知人であるという判断が下れば(情報は1ビット程度),それに基づいて,名前を思い出したりするのであろう.

人の顔は分かるが,名前が思い出せない,ということは,人によっては,しばしばありますが,それは,知人という判断は下せても,それに基づいて,名前のデータベースからの検索が困難になっているのでしょう.

ただし,脳が壊れてくると,人の顔を見ても,知人かどうかの判断が難しくなり,本当に壊れると,家族の顔さえ,分からなくなるのでしょうね.

Brianの話は,話のネタとしては,尽きないのですが,brainがbrainのことを考える,という自己矛盾のようなところもあって(brainがbrainを理解できるか),話は収束しません.

この他には,脳のmorphology(形態学的なことなど)に関する発表もありましたが(脳がどのように発達していくかなど),説明が長引きそうなので,興味のある人は,アブストラクトを見て下さい.

いずれにしても,brain自身が,ビッグサイエンスなのです.


さて,午前中は,まだ,見ていなかった1500題くらいのポスターを,全部見た(と言っても,ほとんどは,その前を通り過ぎる程度).1題1.5mとして,2kmくらいは歩いたと思う.2時間くらいはかかった.ただし,興味のあるポスターに関しては,写真を撮ったり,念写をしておいた.

午後は,Emerging MR system conceptsのセッションに出た.かつて,Gradients and Systemsと言われるセッションである.

そこで,Stanford大学が,10年以上も前から取り組んでいるPre-polarized MRI(PPMRI)の話を聴いた.

PPMRIとは,不均一だが,強い磁場をパルス的に印加することによって核磁化(縦磁化)を生成し,弱いが均一な磁場によって核磁化の信号を読み出す(イメージングを行う)MRIのことである.

磁石のコストが大幅に低減できるということが,大きな(ほぼ唯一の特徴)になっているらしい.

でもスライス選択ができない,などの本質的な欠陥が,たくさんある.

今年は,0.4Tの分極磁場と,0.052Tの読み出し磁場を用いることによって,手首の画像を出していた.撮像のターゲットは,Extremityなので,関節リウマチなども,いずれ視野に入ってくるだろう.

かなりまともな画像になってきたが,H君の画像には,当然だが,遠く及ばない.

しかも,これで,磁石だけでも25,000ドルはするという.電源の値段は入っていない.

今年中に,膝の撮像を行うらしく,しかもシステムのトータルコストを100,000ドル以下(約1200万円以下)に抑えたいらしい(学会発表なので,コストを言うのは,ある意味タブーなのだが,PPMRIの最大のポイントが,磁石が安く作れるということなので,こればかりは,仕方がない).

このStanford大のチームには,Graig Scottなどの腕のいい研究者もいて(Steven Conollyもいるが,かれはBerkeleyに移った),また,優秀な大学院生もいるはずなので,彼らが,このような出口のないプロジェクトに動員されているのは,いかがかと思う.Macovskiのじいさん(Stanfordの終身教授?で,Medical imagingの世界の超大物)も,罪作りな人だと思う.

彼らのシステムは,仮に,うまくいっても,Esaoteに遙かに及ばず(値段でも性能でも),しかも,最近参入してきたParamedという会社のマシンに比べると,全く問題にならない(Paramedの技術者(エサオテから移った人)とは,今回の学会でも話した).

何とかしてあげなければ,と思った.

夜は,Closing Receptionが,Science Fiction Museumであったので,参加したが,落ち着いて食べるような雰囲気ではなかった.京都は,別格中の別格だった.

以上.


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ISMRM2006第5日目(5月10日(水))の報告

2006-05-15 14:50:42 | Weblog

ISMRM2006の第5日目.

朝から,例によって,Human MRI and MRS at High Static Magnetic Fieldsというmorning categorical courseに出席した.

最初の講師は,Mark Haackeという,パルスシーケンスの解説では有名な人で,

Why Is It Important for T1 Weighted Imaging, MRA and SWI?

という題目で講演を行った.

内容は,7T位の高磁場になると,プロトンのT1が延長して,T1コントラストがつけやすくなるため,それを活かした撮像法の解説などである.

ただし,高磁場になると,T2*による画像コントラスト(脳内の鉄の微粒子や,常磁性の静脈血など)も,重要なため,T1だけにウェイトをおいた解説もどうかと思った.

でも,通常の臨床では,病変の検出に,主にT2を用いているため,T1コントラストの重要性を認識するためには,いいのかも知れないと思った.


二番目の講師は,GEのYudong Zhuという若い人で,

Parallel Excitation: Making SENSE of High-Field Body MRI

という題目で講演を行った.

英語も大してうまくないし,解説も上手とは言えなかったので,なぜ,この人が,このような講演をするのか,不思議だったが,講演を聴いてみると,彼は,複数のコイルと勾配磁場を用いて,任意の領域を高周波励起する一般的方法を提案した人なので,このような解説を担当したのだと言うことが分かった(このようなことは,とっくに知っていなければならないのだが,必ずしも私の専門ではないので,スミマセン).

任意の領域(たとえば,あるスライスの中の,特定の矩形状の領域など)を,均一な高周波磁場を発生するRFコイルで励起する方法は,Stanford大学のJohn Paulyが,1990年頃に提案しているが,複数の,それぞれが不均一な感度分布を持ったRFコイルによる任意の領域の励起は,彼が初めて提案したのである(Philipsの人も独立に提案).

なぜ,この方法が重要かと言うと,現在流行の,Transmit SENSEの基礎をなす理論だからである.

すなわち,高い周波数(100MHz以上)になると,一つのRFコイルで均一に励起するのは難しくなるので,複数の不均一な分布を持ったRFコイルで,均一な励起(任意の励起の一つ)を行おうというものである.

最近,なぜ,Transmit SENSEというのが流行っているかも,良く分かった.

午後からは,今回の学会でも一番注目している講演である,
Felix Wehrliの

Quantitative Micro-MRI Demonstrates Significant Effects on Trabecular Bone Architecture in Response to Antiresorptive Therapy

を聴いた.

この講演に関しては,単に,聴くだけでなく,どうしても確認したいことがあったので,質問を胸に秘めて,集中して聴いた.講演そのものは,大変分かりやすく,立派な講演だった.

内容としては,

「更年期における骨密度の低下には,骨構造の変化が伴っており,これが骨強度をさらに低下させる」という仮定を,実験的に実証しようというものである.

このため,45歳から55歳の30人ずつ,合計60人の女性を対象に,一つのグループは,エストロゲン療法(老化がくい止められるが,子宮癌や乳ガンのリスクは高まる)を行い,もう一つのグループには,特に何も行わずに,骨微細構造の変化を,1年目,2年目とMRIで観察したものである.

MRI計測の部位は,撓骨(radius)と脛骨(tibia)の両方である.

結果は,エストロゲン療法を行ったグループは,骨密度も,骨の微細構造もほとんど変化せず(骨の老化がない!),それを行わないグループは,自然な老化の結果,腰椎の骨密度が3%程度低下し,骨構造は,さらに大幅に変化することが分かった.

すなわち,骨密度は3%程度しか変化しないのに,骨構造(骨質)を表すパラメタは,最大10%程度変化したのである.このように,骨質は,骨密度よりも,骨強度の低下を,鋭敏に捉えることが,実証されたのである.

ただし,アブストラクトでは,脛骨の結果しか出ていなかったので,質問では,「Did you measure both tibia and radius?」「Which is sensitive for bone structure evaluation?」などの質問をした.

(どうしても質問したいときには,講演が終わる前に,マイクの前に行って立っておく.講演が終わって,座長が,any questions and comments ? と言ってからでは遅い)

それに対し,彼は,両方測ったが,tibiaの方がいいようだ,と答えていた.

そうすると,撓骨用ではなくて,脛骨用のMRIを作るべきなので,この点,昨日の彼の「撓骨用のMRIはできませんか?」という質問と矛盾すると思い,講演後に,どうしても,直接会って確認をしなければならないと思い,彼の姿を追った.

通常は,広い会場で,簡単に会えるものではないが,たまたま,機器展示会場の近くで会うことができたので,どちらがいいのか,確認したら(彼は,どこかへ急いでいたようだが),実は,実験データは,まだ公開はしていなくて,アブストラクトだけを提出した段階だが,「骨折のリスク評価には,脛骨よりも撓骨の方が良い」ということを言ってくれた.

この後,ポスターを見る時間も限られているため,2499~3114までの約600枚のポスターを攻略した.

まだ,普通のポスターだけでも,1500枚くらいある.そのうちの200枚くらいは見たが,1000枚くらいは残っているので,明日は,それを見ようと思う.
(E-posterは,とても対応できない.)

何かしらの発見があるはずである.

以上.

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ISMRM2006第4日目(5月9日(火))の報告

2006-05-15 08:24:20 | Weblog

ISMRM2006の第4日目.

今日からは,morning categorical courseという,朝1時間ずつの教育コースが7時からあるので,朝4時半頃に起きて,6時過ぎに会場に着くというスケジュールになる.

朝の教育コースは6種類くらいあるが,だいたい,3年間くらいは同じことをやるので,昨年聴いたMRハードウェアのコースはやめて(学生さんたちは,こちらに出席),今年から始まった,Human MRI and MRS at High Static Magnetic Fieldsに出席した.

最初の講師は,あの,神様David Hoult.講演の格調は高いが,Jokeも高級で,発音も英国ナマリなので,分かりにくい(ただ,最近,化石化しているとの噂もあり,私自身も注意しなければならないと思う).

高磁場にするときの問題点を,うまくまとめてあり,特に,B1(高周波磁場)が,静磁場強度の4乗に比例して必要になることを強調していた.

次の講師は,Tommy Vaughan.RFコイルのプロである.

話はいつも同じで,高い周波数になると,単純な一つのRFコイルで,被写体を一様に励起するのは難しいため,RFシミングが必要であり,そのための,8CHの送信システムと,シミングができるRFコイルを使って,9.4Tで,一様な励起を行った,人体頭部の画像を出していた.

これは,彼の,いわゆる専売特許である.本当に,特許も取っている.

さて,1時間の教育コースの後は,二日目のプレナリーセッション(全体会議).

全体のテーマは,Technologies to accelerate applications.

このセッションのオーガナイザーは,藤田さん+αである.他にも,BerkelyのSteven Conollyなどが関与しているが,事実上,藤田さんが仕切ったようである.

最初の講演者は,Axel Haaseで,講演題目は,

1.5T vs 3.0T.

すなわち,現在臨床で使われているMRIの静磁場強度に関する比較である.

元々は,低磁場vs高磁場,という題目で依頼したようだが,もっとテーマを絞って,この名前になったそうである.

日本でも,3Tの装置が,20-30台導入されてきて,昨年の日本磁気共鳴医学会では,1.5Tの装置との比較に関する発表がいくつかあったが,Axel Haaseの発表は,個別の比較ではなく,包括的な比較であるので,誰がやっても難しい役回りで,彼でなければ,とてもできない講演である.

彼の講演は,Old people know that low field and high field comparison was discussed intensively in 1980’s….. という話で始まったが(私の教科書にも書いてあります),確かに,1980年代の後半に行われた,高磁場(1.5T)と低磁場(0.35T)の論争が,20年くらい経って,高磁場(3.0T)と低磁場(1.5T)になってきており,この点で,歴史の皮肉さを,まず感じさせるものだった.

(実は,事情は非常に異なる)

さて,まず最初に,マーケットの動向として,2005年の人体用MRIの販売実績として,

1.5T: 2200台/年,  1996年より直線的に増大
3T: 200台/年,     1999年より直線的に増大
0.5T以下: 600台/年, ここ数年ほぼ横這い

というグラフを出していた.現在の1.5Tの伸びは凄まじい.

このように,1980年代末から始まった1.5Tの天下は,あと10年くらいは続く勢いであるが,現在の情勢だけから見ると,10年後くらいには,主役の交代もありうるのではないか,と思わせるものだった.

(少なくとも,臨床研究,RFコイルなどの研究の中心は3Tに移っている.Brainは,そのうち,3Tでないと,お話にならないのではないか.)

Axel Haaseだけでなく,多くの人が言うのは,現在の1.5Tは,非常にうまく作り込んであり,非常に完成度が高いということである.

すなわち,この学会を見ただけでも,いわゆる1.5Tに関わるエンジニア(現場のPhDも含め)は,少なくとも1000人くらいはおり,装置も,全世界で10000台くらいはあり,あらゆることが改良され,あらゆることが最適化されている,ということでは
ないだろうか.

3Tにおける問題点として,Axel Haaseは,

1.電磁波の波長の効果で,一様な高周波励起が難しいこと

2.高周波磁場,電場の生体における吸収が大きいこと(SARの問題)

を挙げていた(他は,1.5Tより,いいことばかりである).

これらの問題に対して,彼は,マルチコイルとパラレルイメージングを組み合わせることにより,ほぼ解決できると主張していた.

すなわち,パラレルイメージングは,難しいが,高磁場向きなのである.

また,1.5Tから3Tへは,2倍しかSNRがあがらないが,パラレルイメージングを使ってエンコードの回数を減らしても,1.5Tに比べてSNRは下がらないため,3Tは,この点で,非常に有効だということを言っていた.

彼は,世界中から症例を集めて提示していたが,結局言いたいことは,技術の流れとして,10年後には,3Tが市場の主役になると言いたかったのではないだろうか(彼はそこをきちんと言っていないが,私が補足すれば,そのようなことである).

3Tの話だけで,随分話しが長くなったので,次の2つの講演は,簡単に紹介します.

二番目は,画像の冗長性を活かして,計測(位相エンコード)の回数を省略して,撮像のスピードを上げる話だった.

色々な工夫をすれば,確かに高速化はできるのだが,すべてをルーチン化するのは難しく,心臓などの高速撮像などのような,時間分解能がクリティカルな用途にしか,使われないのではないかという感じがした.

講演そのものは,Star Warsを下敷きにしたJokeの連発で,大変気の利いたものであった.このような講演は,その人のセンスが光る.

三番目は,96チャンネルのRFコイルのヘルメットを作って,世界中を驚かせた,奇人(天才?),Larwence Wald(MGH)の講演である.

トンボの複眼(28,000個あるらしい)を例にあげて,MRIで,どれだけRFコイルが増やせるかを議論していた.

RFコイルの製作も大変だが,プリアンプ,ケーブル,レシーバーそれぞれが,非常に大変である.でも,みんな,根性で頑張っている,という感じである.

午前中は,以上の講演だけで,かなり満足したので,一般講演の1つを聞き,ポスターをチェックし,ランチョンセミナーに突入.


さて,午後は,いよいよポスターセッション.

T君2題,O君2題,Iさん1題が重なっていたので,O君のポスターはH君にお願いし,私は,Iさんのポスターのところにいた.

出足は低調だったが,いつの間にか,Felixのところの若手がジャブで攻めてきたので,それを返り討ちにしていると,親玉のFelixがやってきたので,そこで,いきなり,色々な話に入る.

装置に関しては,誉めてくれたが,もちろん彼の関心は撓骨.それは,「1ヶ月以内にできます」と大見得を切った.

さて,ポスターで示していた,強制回復のシーケンスの重要性に関して,Felixは直ぐに,それを評価してくれたが,彼の助手のような役回りをしている,HK Songは,このシーケンスがすぐに理解できなかったようなので,Felixが,彼に説明していた.

Felixは,すべてのシーケンスを当然ながら良く知っているが,その下の世代になると,強制回復は,意外だったらしい.確かに,臨床機でやるのはエコータイムの件もあって,難しいだろう.

以上.

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ISMRM2006第3日目(5月8日(月))の報告

2006-05-15 08:08:12 | Weblog

ISMRM2006の第3日目.

今日から,いよいよ本大会の開催である.

例によって,最初は,Gold medalの授与式.日本人では,functional MRIを開拓した,小川誠治先生しか受賞者はいない.

今年は,以前から期待されていた,パラレルイメージングの発明者であるDaniel Sodickson(SMASH)と,Klauss Prussman(SENSE)の二人が受賞した.当然ではあるが,少し遅い感じもした.

Sodicksonは,1997年のバンクーバーの学会でSMASHを提唱し,そのときは,Young Investigator’s Awardを受賞していた.その頃,まだ20代だったと思う.彼はMDであるが,とても才能のある人で,何でもできる人である.

Prussmanは,大学院生のときにSENSEを発明し,その後もパラレルイメージングの中心的な存在であったので,数年前に35歳くらいで教授に昇進したようである(確認はしていないが).

いずれにしても,ここ10年くらいは,技術の中心はパラレルイメージングであったため,受賞は当然であった.


さて,この大会の最初の講演であるSir Peter Mansfield Lectureは,NIHのDirectorである,Elias Zerhouniが行った.

NIH(米国国立衛生研究所)は,米国の医療の中心的存在であるばかりでなく,世界の医療の中心であり,NIHの方針は,日本の医学研究かつ医療にも大きな影響を与え続けている.よって,NIHのトップの講演を聴けるのは,またとないチャンスである.

(NIHは,1万7000人の職員を抱え,1兆円の補助金を動かす大きな組織なので,米国人は,もっと真剣に聞いていたようである.彼は,元々,Johns Hopkins大のRadiologyの教授をしていた人で,MRIでも,心臓のタギングで先駆的な仕事をした人である.2001年に,日本磁気共鳴医学会が主催して東京で開かれた国際シンポジウムで,私が超並列の発表をしたら,同時に多数のマウスの心拍同期をどうとるのか,という質問をした人でもある)

講演の題目は,

Strategic Directions and the Role of Imaging in the 21st Century Healthcare: The NIH Perspective

である.

主題は,米国では,医療費は,1985年にGDPの10%,2000年に14%であり,2010年には17%と増大すると予測されている(日本は,GDPの8%程度である)ので,これを,どのような戦略で抑えるかというものである.

その戦略とは,医療費高騰の大きな原因を,「病気の慢性化」と,「国民の高齢化」などと捉え,しかも病気の進行の段階を,

Preclinical(症状が出る前の状態)
  ↓
Tolerable(症状は出たが,我慢ができ,病院には来ない状態)
  ↓
Intolerable(我慢できない症状が出て,病院に来た状態)

の三段階に分け,これまで,Intolerableの状態で行っていた治療は,大変お金がかかるので,Preclinicalの段階で治療を行うことによって,医療費を劇的に減らそうというものである.

(Preclinicalというのは,日本語だと,前臨床という,臨床試験の前のことを指すらしいが,ここでは,明らかに別の意味で使っているようだ)

これは,決して新しい考えではなく,たくさんのお金をかけてでも,病気をなるべく早い段階で発見することによって,治療費を大幅に下げ,これによってトータルの医療費を抑えようという,昔からの戦略と同じものである(医用機器メーカーが,高額の医療機器の
言い訳に,常々言っていた論理と同じ:これがPETバブルにつながっている).

これに,Preclinical(症状が出る前の状態)という目新しい言葉を与えたのが,NIHの戦略の一つの目玉かも知れない.


このPreclinicalにおける治療を行うためには,まず,病気になる前の症状の発見が大切であり,そのために,Medical Imagingが非常に重要であるというのが,NIHの主張である.

また,Medical Imagingは,

Non-destractive(非破壊的)
Quantitative(定量的)
Multidimensional(多次元)
High temporal resolution(高い時間分解能:病態の変化を捉える)
Spatially resolved(空間的な分解を行う)
High data density(高密度なデータを有する:生体のデータは複雑である)
Common standard(標準的な診断・評価基準を持っていなければならない)
(もう一つあったが,聞き漏らした)

という言葉で表されるものを持っていなければならず,また,それは,他の診断手法にはない,Imagingだけが持てる大きな特徴である,ということを強調していた.

この戦略の上に,Molecular Imagingや,MRIへの集中的な投資などがあるようだ.

このZerhouniという人は,RadiologyのProfessorをしていたいわば,実際の医療現場を知る人であるが,米国の医療政策のトップを勤める人に,このような人を抜擢するのが,米国の本当の強みだと思った次第である(この部分に感想があるのだが,差し障りがあるのでカット).


さて,このPeter Mansfield Lectureの後は,Plenary session(全体会議)で,Global Healthcare Challengeという題目で,インド,中国,米国の出身者が,それぞれ講演を行った.

Global Healthcare(世界的な医療)という,大変大風呂敷な題目であるが,風呂敷は大きければ大きいほど,色々な現象が見えてくるので,悪いことではない.

特に,中国とインドは,「Chindia」という新語でも知られ,中国は,「世界の工場」,インドは「世界のサービスの中心」と言われるように,21世紀では,主要な役割を期待される国である(でも日本を忘れないで下さい:現在でも世界第二の経済大国です).

インドの人は,感染症とMRIの話をしたが,あまり興味のある話ではなく,ただ一つ,Japanese Encephalitis(日本脳炎)の症例が出てきたのには,びっくりした.日本では,もう根絶されたが,東南アジアや,インドあたりでは,流行ることもあるらしい.

中国の人の講演は,さすがにやたらに元気が良かった.

13億人という,日本の10倍の人口の国で,MRIが,1110台と,日本の1/5しかない.すなわち,人口比では,1/50のMRIしかない.

でも中国は,日本に教わることを非常に嫌っており,また米国とは微妙な距離を保っているため,ドイツを味方につけようとしている.

これは,ロシアや米国や日本の背後に,味方を作ろうとする,中国古来の政策(敵の背後に味方を作る政策:何かの故事にありましたね)なのであろう.

このため,上海のリニアモーターカーでも,ドイツの製品を入れたように,MRIでも,ドイツのシーメンスを重用している.

このように,中国は,ドイツを「使えるカード」として考えている(中国とフランスは,共産主義の時代から,仲が良かったが,さすがに,フランスは「使えない」).

また,2008年には,北京オリンピックが開かれるので,何年か後には,上海で,ISMRMが開かれることになるのだろう.これに関しても,この講演者は,強烈にアピール
していた.

なお,米国でも,MRIの研究者,特に工学系の研究者には中国系が多く,彼らのバイタリティには,敬服することが多いが,コンパクトMRIだけは,日本独自の技術として,
大切に育てていきたいと,改めて思った.

ところで,オープニングセッションの前に,明日,プレナリーセッションで講演を行うAxel Haaseがいたので,ご挨拶に行ったら,明日の講演の後に,直ぐに帰国するとの事.2万人の大学の学長なので,忙しいのは確かである.

でも,こちらが何も言わないのに,12時半に会いたいので,レジストレーションの前に来てくれとの事.何か用があるのかと思ったが,特別なことはなく,雑談が中心だった.でも,20分位,色々と面白い話ができた(内容は秘密).

その後,ランチョンセミナーを聴講したが,私の隣の席に,Phased arrayコイルの発明者であるPeter Roemerがいたので,それをH君に教えてあげたら,凄い人がいるんですね,と感激していた.

この学会には,さすがに,LauterburやPeter Mansfieldはもう来ないが,David Hoult,Robert Turner,Bill Edelsteinなど,歴史的な仕事をした人も,ごく普通に来て発表をしており,本当に知的な刺激に溢れた学会である.

午後は,ポスターセッション,MSKのstudy groupに参加して終了.


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ISMRM2006第2日目(5月7日(日))の報告

2006-05-15 07:52:07 | Weblog

ISMRM2006の第2日目.

今日は,Weekend sessionの第二日目であるが,前夜遅くまでと,早朝よりアルバカーキで行う45分講演の準備をしていたので(まだ準備は終わっていない),10時半頃に会場に着いた.

着いてからメールをチェックし,インターネットカフェ(会場内にあるが,電波が漏れているので,かなり広い範囲で使える)に行くと,Y先生に会ったので,しばし情報交換.

午後は,ポスターを貼ろうと思ったが,会場の準備が整わず断念.大会の前日に貼れないことは,これまでにもほとんど無かったのではないだろうか.これも,Executive Directorが,代わったためだろうか.初日のレジストレーションでも混乱していたが.

そこで,15:30からのHigh field Systems & Applicationsのstudy groupのミーティングに参加.世界各地の7T以上の全身用MRIの設置・活動状況の紹介があった.


最初は,Nottingham大学からの発表.Mansfieldの後継ぎのRichard Bowtellが,Sir Peter Mansfield MRI Center(ノーベル賞を記念して創設されたらしい)に導入された,Philipsの7Tのシステムを紹介.これと言った特徴は無かった.


二番目は,韓国のZH Cho先生による,韓国に導入されたシーメンスの7Tのシステムの紹介.Cho先生は,故I先生とも親交が深く,韓国の大統領にも直接的な影響力のある方である.

装置は動いていたが,倫理委員会の許可が得られないということで,サルや,亡くなった人の頭の画像などが紹介されていた.例の,黄教授のスキャンダルの影響もあるのだろうか.

MRIだけの研究というよりも,PET-MRの開発が中心になるとの事.


三番目は,NIH(米国国立衛生研究所)に設置された,GEの7Tマシンの紹介.呼吸するときに,肺の位置が上下すると,それが,脳の位置における磁場強度に影響するとのデータを出していた.ナルホドと納得.このように,意外なデータもある.


四番目は,ニューヨークのマンハッタンの中に,7Tの装置を入れた,という,それだけに意味があるような発表だった.すでに3Tの装置が2台,1.5Tの装置が1台置いてある場所に,7Tの装置を入れるために,420トンの鉄材を使ってシールドを行ったとの事.

環境研のM先生のところの4.7Tの磁気シールドが,250トンだったそうだが,それを上回る重さに唖然として.そこまでして,入れる必要があるのかと,疑問に思った.

シーメンスの装置である.40mT/mの勾配磁場を生成するために,2000V,625Aの電源を使うとの事.RFのパワーは,7.5kWである.


五番目は,OHIO州立大学に導入したPhilipsの7Tマシンの紹介.

この大学は,1998年に,8Tの人体用MRIを構築したことで有名であるが,そのMRIとは,直接には関係ないらしい.


六番目は,Oregonに導入されたGEの7Tのマシンの紹介.5ガウスラインを確保するために,小学校の体育館くらいのスペースが必要だが,米国では,あまり問題にならないらしい.マンハッタンでは問題のようだが.

脳の白質と灰白質のT1の差が,かなり大きくなるので,それらの組織のsegmentationに便利との事.


七番目は,ドイツのMagdeburg大学(マグデブルグの半球で有名)に導入されたシーメンスの7Tのマシンの紹介.

Functional MRIをやるために,検査時の騒音を減らさなければならないが,現状の3TのマシンでEPIをやると,騒音が,何と「160dB」になるので,7Tでは,何とかしなければならないとの事.

この騒音を,hurtful(有害)と表現していたが,そんなものでは済まないだろう.


八番目は,イリノイ大学における,9.4Tの人体頭部用のマシンの紹介.高周波系は,ブルーカーである.

9.4TにおけるNaのイメージングの紹介であったが,T2が短いためにTEも0.25msと短く,撮像には苦労していた.結果に,どのような意義があるのかは不明.


九番目は,ミネソタ大学における,9.4Tの人体頭部用のマシンの紹介.

すでに7Tは,何年も前から設置してあり,7Tにおける全身の画像と,9.4Tにおける生きた人間の頭部の画像を,アピールしていた.


十番目は,UCSFにおけるGEの7Tマシンの紹介.Nova MedicalというRFコイルの会社のRFコイルを色々と試していた.

骨計測で有名がMajumdarも関与しており,踵骨の7Tにおける画像も出していたが,T君が出した1Tの画像と大して変わらない印象を受けた.


十一番目は,米国の名門MGH(マサチューセッツ総合病院:ハーバード大学医学部の基幹病院)にあるシーメンスの7Tマシンの紹介.

米国の名門大学に,GEではなくドイツのシーメンスのマシンが入ったことは,大きな問題になったそうだが,技術力の差としてどうしようもないようである.

高い分解能でのfunctional MRIがメインらしい.


以上のように,英国,ドイツ,韓国を除くと,8カ所が米国の大学等である.

そんな多くの大学に,1カ所10億円以上の予算をつけて,何をするのか理解に苦しむ.しかも,診断装置として見れば,1回10万円以上の検査料をとらないとペイしないので,
いったい,誰が検査を受けるのだろうかという気にもなった.

大金持ちが,使うのか?

コンパクトMRIとは,全く正反対の行き方である.

ただし,MRサイエンスとしては,面白いことも多いので,注目はしていこうと思うが,絶対に自分でやろうとは思わない.オリジナリティも限られているし,このようなプロジェクトを受けてしまったら,MRサイエンティストとしては,寿命が尽きるだろう.

設備費に最低10億円,運用に最低毎年1億円はかかりそうである.これだけあれば,もっとましなことができそうだ.

このセッションが終わって,企業展示会場でレセプションがあり,それで本日は終了.

以上.

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ISMRM2006第1日目(5月6日(土))の報告

2006-05-15 07:34:18 | Weblog

第一日目,5月6日は,weekend session(教育セッション)を二つ聴きました.

ISMRMは,いわゆる研究発表の本大会(月~金)よりも,実は,前の週の土,日に開かれるこの教育セッションの方が,実り多いとも言われています.

というのは,MRI技術が,だんだん複雑になってくると,最先端の研究発表そのものは,一部の研究者にしか分からず,またその意義付けも,発表時点では不明確なので,それを改めて整理して発表する教育セッションの方が,多くの参加者にとっても,だんだんウェイトが高まってきた,という事情があると思われるからです.

さて,一つ目の教育セッションは,今年から新たに始められた,RF Systems Engineeringです.

これは,藤田浩之氏がオーガナイズしたセッションで,「MRIのエンジニアの中核を占めるRFエンジニアが本当に知りたいことを知る」という目的で,始めたものだということでした(今朝,藤田さんから直接聞きました).

このため,以前行われていた,RF Boot campという,どちらかと言えば,初心者向けのセッションではなく,プロ向けの講演になっていました.

(確かに,あれは,ほとんど役に立たなかった)

私自身は,RFのプロではありませんが(MRIのプロではあるつもり),Edelsteinの,RFコイルにおけるSNRを理論的に計算する話(1983年12月1日に,GEの社内で行われた5インチのサーフェイスコイルを実例にあげて,その計算を行っていた)は,永年,私自身もやろうと思っていただけに,大変興味深いものでした.

(なお,Edelsteinの講演は,James Clerk Maxwell(Maxwell方程式の発見者)の廃屋の写真から始まるという印象に残るものでした)

ただし,Edelsteinの結論は,サーフェイスコイルと,一様な分布をした生体試料に対するSNRを計算した後に,実際の生体でやるためには,生体の不均一性(heterogeneity)きちんと考慮してやらなければならない,という,当たり前のものでした.でも,第一原理から,SNRを計算しようという試みは,非常に大切です.

その後,RFシステム,RFコンポーネントに関する色々な議論が行われましたが,SNRだけでなく,ダイナミックレンジの問題が,大きく取り上げられていたのが,非常に印象的でした.

また,現在の複雑化してきているRFシステムに対して,RFエンジニア自身が,戸惑っている(必ずしも色々なことが解決された訳ではない)ことも,分かりました.


さて,実は,私が,最も興味を持って聴いたのは,MR Physics for Physicistsというセッションで,Klaus Schefflerより行われた高速スピンエコー法に関する講演と,Brian Hargreavesにより行われた,勾配エコー法に関する講演です.

Klaus Schefflerは,RAREなどを発明したJurgen Hennigの高弟で,現在は,彼に代わって,色々な講演もこなしている人ですが,昨年までは,主に勾配エコー法の講演を行っていましたが,その分かりやすい講演には,私自身,ここ2~3年,魅了されてきました.

というのは,このセッションで,彼はここ2~3年,勾配エコー法の解説を行っているのですが,その内容が,年々,明らかに洗練されてきているのが分かっていたからです.

今年は,がらっと変わって,高速スピンエコー法の話でした.

主題は,高磁場化(1.5T→3T)されたとき,高周波磁場の生体内での損失が大きな問題となるので,リフォーカスパルスのフリップ角をいかにして小さくするか,という問題でした.

すなわち,通常のCPMGで使われる180度パルスの代わりに120度パルスや90度パルスを使おう,というものです.

結果から言えば,120度パルスや,90度パルスを使った場合,T2減衰を無視すると,スピンエコーの強度は,振動するが(第二エコーは,第一エコーよりも必ず大きくなる:これは,我々が,実験室でよく体験することです),何回かパルスを繰り返すと,それが一定の値に収束するということです(添付のグラフ:横軸パルスの数,縦軸はT2緩和を無視した振幅).

これで良く分かったことは,CPMGなどの多重スピンエコーで観測している信号は,横磁化と縦磁化の入り交じった定常状態の磁化を見ていて(なぜかと言えば,RFパルスは理想的には180度とは限らない)純粋な,横磁化のT2減衰を見ているものではない,ということです.


Brian Hargreaves(Stanford大)により行われた,勾配エコー法に関する講演も,それに劣らぬ(それをも凌ぐ?),印象に残る講演でした.

彼の勾配エコー法の解説は,まず,

繰り返しのRFパルスと,核磁化の緩和で決定される定常状態とは何か?

という根源的な疑問から始め,この条件に当てはまるいくつかの答え(定常状態)の中で,一番効率的(大きな信号が得られるもの)な答えとして,TrueFISPを導きました.

そして,TrueFISPの諸性質を説明した後に(これ自身は,私が教科書やブログに書いたものと同じです:特に誰にオリジナリティがあるわけでなく,現在,学会の合意になって
います),その用途を広げるために,リード方向とスライス方向に,一画素内で,核磁化を360度ひねるように勾配磁場を印加した勾配エコー法を,GRASSやFISPとして紹介していました.

この紹介の仕方は,言われてみれば当然で,私自身も,GRASSの紹介として,教科書でこのような書き方をしましたが,講演などで,改めてきちんと聴いたことはなく,私自身,自分の考えを再確認することができました(すでにどこかには書いてあるのかも知れないが).

勾配エコー法の解説として,少し古い教科書などには,きちんとまとまった分かりやすい解説はありませんでしたが,それは,TrueFISPに対する理解が欠けていて(これは,2000年頃までは,あまり知られていなかった),そのため,GRASSなどの意義付けができていなかったことによるものと思われます.

これで,勾配エコー法の解説が,ようやく完成したものと,私自身も,改めて確認した次第です.

以上のことだけでも,大変実りのある一日でした.


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休筆より回復(ISMRM2006の報告)

2006-05-15 07:27:32 | Weblog

久しぶりに帰ってきました.

ようやく,ISMRM2006(シアトル)が終了し,その後に,アルバカーキで開かれた,福島英一さんの70歳の誕生日を記念する50人くらいのミーティングも終了したからです.

このミーティングで,私は,45分くらいの講演を終え,ようやく一息ついたところです.

そこで,これから,ISMRM2006の会議の報告を,順次,お送りします.
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