MRIのすべて(all about MRI)

磁気共鳴イメージング(MRI)に関するさまざまな経験や知識を提供しつつ今後の展望を切り開きたい.

しばらく休筆

2006-04-20 01:16:41 | Weblog

ISMRM(国際磁気共鳴医学会)が近づいてきました.当研究グループでは,今年は,ポスター6件の発表です.

そこで,そろそろポスターを作成しなければなりません.それもあり,予算申請,依頼原稿など,さまざまなものが重なって,首が回らなくなってきました.

開始以来,4月16日まで毎日続けてきたブログですが,23時過ぎには,ブログの編集画面に入ることができず,ついに,4月17日に,穴があいてしまいました.

さらに,この状況です.

と言う訳で,しばらく休筆いたします.

近々復活します.ISMRMのニュースかも知れません.

乞うご期待.

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MRIの歴史的論文(29)

2006-04-18 00:01:14 | Weblog

Stimulated echo(スティミュレーテッド・エコー)というのは,3個(以上)のパルスにより観測されるエコー信号のことです(上図).このエコーは,Erwin Hahnの有名なSpin Echoの論文にも,既に掲載されています.

上の図で,P1,P2,P3がRFパルスで,①,②,③,④,⑤がエコーです.

①は,P1とP2によるスピンエコー
②は,P1を励起パルスとし,P2とP3をひとかたまりのリフォーカス(収束)パルスとみたときのエコー(これがstimulated echo)
③は,①のエコーが,P3によって収束されたスピンエコー,
④は,P2とP3によるスピンエコー
⑤は,P1とP3によるスピンエコーです.

このように,②以外のエコーは,スピンエコーとして解釈できますが,②は,また別の解釈になります.

さて,いずれにしても,RFパルスを繰り返していくと,さまざまな条件でエコーが出ます.勾配エコー法においても,このようなエコーがたくさん発生しますので,これらをうまく解釈する方法が必要です.

これが,spin phase diagram(スピン位相図)です.

この紹介は,また明日.

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MRIの歴史的論文(28)

2006-04-16 22:40:26 | Weblog

勾配エコー法の解説は,まだまだ終わったわけではありません.そう簡単ではないのです.

勾配エコー法(この日本語自体,たいへんマイナーな言葉で,多くの日本語の文献ではグラジエントエコー法と呼ばれています:傾斜エコー法はもっと少ない)の理解には,いくつかの方法があります.また,勾配エコー法の理解には,定常状態ばかりでなく,初期状態から定常状態への変化も追う必要があります.

初期状態から定常状態への変化は,4月13日と14日に示したように,核磁化の分布を,計算機シミュレーションで追いかける方法があります.ただし,これでは,核磁化の全体を直感的に把握するのは困難です.

そこで,核磁化の動きを直感的に理解する手法である,spin phase diagram(スピン位相図)という手法を紹介しましょう.

これを理解するためには,まず,3個のRFパルスによる,stimulated echoを知る必要があります.その紹介は,また明日.


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MRIの歴史的論文(27)

2006-04-15 22:49:23 | Weblog

さて,TrueFISPの話をかなり長くやってきました.ここで,これまでのお話を,少し復習をしたいと思います.

勾配エコー法は,「横磁化のコヒーレンスが保たれる方法」と,「保たれない方法」に分けることができます.前者が,(True)FISP,後者がFLASHです.

GRASSや(False)FISPは,一画素の中に,TrueFISPにおける静磁場のオフセットによる横磁化の強度変化を組み入れたものと理解できます.ただし,これがGRASSやFISPだ,というはっきりしたシーケンスは,意外と書いてありません.

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MRIの歴史的論文(26)

2006-04-14 23:24:27 | Weblog

昨日,「核磁化は複雑な分布となります」,と書きましたが,フリップ角が60度のRFパルスをTRの2倍の時間までの核磁化分布しか示していませんので,「複雑」とは言えないかも知れません.

そこで,上に,さらにTRが4倍までの核磁化分布を示します.ここまで来ると,核磁化分布は,じゅうぶん,複雑と言えるでしょう.

さらに,TRを増やしていくと,RFパルス直前の核磁化は,z軸の回りにランダムな分布となり,平均すると,縦磁化成分だけになり,しかも,ほぼ一定のものとなります.そうすると,次にRFパルスを加えた時には,一定の信号が発生します.これが定常状態です.

すなわち,定常状態というのは,「ミクロに見ると核磁化の分布はあるが,平均してみると,一定の核磁化が生成されている状態」だということができます.

これで,定常状態,というのがお分かりいただけでしょうか?現在の勾配エコー法は,いずれも,このような定常状態で撮像されています.

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MRIの歴史的論文(25)

2006-04-13 22:44:24 | Weblog

前日書きましたように,核磁化がz方向を向いた「熱平衡状態」から,「平衡状態」まで,どのように移行していくか,ということは,TrueFISPなどのような高速イメージングのシーケンスを実施するには,特に重要なテーマです.

というのは,パルスシーケンスを始めてから,実際に撮像を開始するまでには,核磁化が平衡状態となる必要があり,これには,しばらくの時間が必要だからです.

多くの場合,T1の程度の時間を待てば良い,と言われています.たとえば,T1=1秒の被写体を,TR=100msで撮像する場合,データ収集を開始するためには,10回くらいの空のシーケンス(ダミーシーケンス)を走らせれば良いと言われています.ただし,これは経験的なものです.

これに対し,きちんと結論を出すためには,核磁化(分布)に対する計算機シミュレーションをしなければなりません.

上に示したのは,その一例です.静磁場のオフセット(ずれ)を有する核磁化に対して,繰り返しRFパルスを印加したときの核磁化の動きを,Bloch方程式を用いて計算しています.このように,核磁化は,複雑な分布となります(ただし,簡単のため,緩和時間は考慮していません).

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MRIの歴史的論文(24)

2006-04-12 06:56:13 | Weblog

TrueFISPは,核磁化の平衡状態としては,比較的単純(?)とも言えるものですが,では,いったい,核磁化がz方向を向いた「熱平衡状態」から,「平衡状態」まで,どのように移行していくのでしょうか?

実は,この部分が,一つの技術的ネックになっていて,TrueFISPの実用化が遅れたとも言えるかもしれません.

すなわち,4月9日のブログで示したような核磁化の平衡状態は,TrueFISPのシーケンスを繰り返すだけで達成できるのか,また,その達成までに,どれくらい時間がかかるのかは,必ずしも良く分からなかったのです.しかも,その平衡状態に,早く近接するために,どのようなパルスシーケンスを使えば良いかについても,提案はありませんでした.

上に示すシーケンスは,その疑問に答えるものです.

すなわち,まず最初に,-α/2だけフリップさせて,その後に,+α,-αと印加していきます.この方法を使うと,直ぐではありませんが,比較的早く熱平衡状態に近づくと言われています.このように,繰り返しのパルスシーケンスの前に加えるパルスのことを,プレパレーションパルス(準備パルス)と言っています.
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MRIの歴史的論文(23)

2006-04-11 22:22:57 | Weblog

昨日,TrueFISPという言葉を断りなしに使いました.TrueFISPという言葉は,1995年頃から使われ始めた言葉で,私自身は,確か2000年のDenverの国際磁気共鳴医学会(ISMRM)と日本磁気共鳴医学会(JSMRM)で,はっきり意識するようになったと思います.

初出の報告は,

Heid O, Deimling M, Multiecho true FISP imaging, 3rd ISMRM, Niece, 1995.

のようです(実は,その1年前のISMRMにもあるようですが,こちらの方が有名です).

2000年のJSMRMで,TrueFISPの講演をしている人に,TrueFISPとFISPの違いを私は質問しましたが,満足のある回答は得られませんでしたし,「TrueFISPと言うのなら,TrueのつかないこれまでのFISPは,FalseFISPだったのですか」,と毒づきたくもなりました.

さて,実際,旧来のFISPとTrueFISPは,どうちがうのでしょうか?

それを理解するために必要なのが,昨日示した,静磁場のオフセットに伴う信号強度変化のグラフです.

すなわち,静磁場が均一で共鳴条件を満たしていれば,均一な画素強度を持っていますが,共鳴条件からずれると,画素強度は低下していき,この変化は静磁場強度の変化と共に,繰り返していきます.

よって,均一磁場の中で短いTR(10ms以下)で撮像するのがTrueFISP,あまり均一性が良くない静磁場の中で,長めのTR(数10ms以上)で撮像するのが(旧来の)FISP,ということが言えると思います(でもこのとき,実際には,完全に対称なシーケンスは使われていないようです).

旧来のFISPにおいて,画素強度は,静磁場の不均一性に関して,画素強度のグラフを積分したものになっています.上に示す画像は,TRを変えることによりdark bandの幅が狭くなり(dark bandの幅はTRの逆数)画素の中に吸収されていく様子を示しています.これらの画像を見ていけば,TrueFISPと(False)FISPの関係が分かると思います.

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MRIの歴史的論文(22)

2006-04-10 23:28:54 | Weblog

昨日,核磁化の位置の静磁場強度が共鳴条件からずれた場合に,二種類の運動があることを示しました.では,静磁場強度が,共鳴条件から少しずつずれていった時,NMR信号の大きさ(横磁化の大きさ=画素強度)は,どのようになるのでしょうか.

それを示すのが,上に示す画像(試験管の断層像)とグラフです.ファントムは,内側の試験管にベビーオイル,外側の試験管に,硫酸銅水溶液を入れたものです.

上の画像は,均一な静磁場に,シムコイルを使って一つの方向に勾配磁場を加え,(True)FISP法を用いて撮像したものです.このように,勾配磁場方向に垂直な,多数の黒い帯が発生します.これが,一画素の中にy’軸と-y’軸方向に集まる核磁化を含むことにより,信号強度が低下するbanding artifactです.

下の図は,banding artifactに垂直な方向に沿って,画素強度をプロットしたグラフです.このように,banding artifactの部分を除くと,ほぼ一定の画素強度が得られます.このグラフを理解すれば,(True)FISPが一体何であるかを,理解することができます.

詳しくはまた明日.

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MRIの歴史的論文(21)

2006-04-09 07:41:08 | Weblog

核磁化の位置の静磁場強度が,不均一性などのために,共鳴点(共鳴条件)からずれた場合,上に示すように,二種類の運動が可能です(もちろん高周波パルスは,x'方向に沿って,互い違いに加えられます).

上の図は,回転座標系をz’軸から見た図ですが,歳差運動周波数(ラーモア周波数)が少ししかずれていない場合には,図の左に示すように,奇数番目のエコーでy’軸の正の方向,偶数番目のエコーでy’の負の方向に来ます.

いっぽう,ラーモア周波数がかなりずれた場合には,図の右に示すように,偶数番目のエコーでy’軸の正の方向,奇数番目のエコーでy’の負の方向に来ます.

このように,どれくらいラーモア周波数がずれているかによって,核磁化が集まる位置が正反対になります.正反対になるということは,一つの画素の中で,静磁場の分布があった場合,画素の中で足し合わせると核磁化の大きさが小さくなる,ということです.これが,banding artifactの原因です.また,このメカニズムを知っていれば,なぜ,1986年に発表されたFISPの画像に,banding artifactが見られなかったかどうかが分かります.

このように,FISPは,みかけは単純ですが,奥の深いシーケンスなのです(実は,ここに書いてあるより,もっと奥が深い).
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MRIの歴史的論文(20)

2006-04-08 23:46:58 | Weblog

昨日,初めてこのシーケンスを見て,核磁化の運動を読める人は,どれくらいいるでしょうか,と書きましたが,上に示すのが,共鳴点における,平衡状態のときの核磁化の運動です(高周波パルスは,もちろんx'方向に,互い違いに加えられます).

このように,核磁化は,緩和のλコーンの曲線の上を左右に運動します.すなわち,常に横磁化が発生している状態なので,これによる信号を用いて,大変効率の良い撮像することができます.

ただし,このような運動を行うためには,勾配磁場が,完全にリワインドされていること,静磁場が共鳴点から(あまり)ずれていないこと,核磁化の平衡状態が実現されていることなどが必要になります.

静磁場の不均一性により,共鳴点からずれたときに,核磁化がどのような運動をして,その結果,どのような画像となるかについては,明日,お話しましょう.
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MRIの歴史的論文(19)

2006-04-07 23:26:28 | Weblog

高速勾配エコー法として,FLASHの次に有名になったのは,FISPではないかと思います.FISPは,Fast Imaging with Steady Precessionの略ですが,FLASHと異なり,全く意味不明の言葉です.これが,FISPを,ある意味地味なものにしていると,言えるかも知れません.

原論文は,

A. Oppelt, R. Graumann, H. Barfuss, H. Fisher, W. Hartl, W. Schajor
FISP – a new fast MRI sequence
Electromedica vol 54, 15-18 (1986).

です.雑誌も,極めてマイナーな雑誌です.

さて,上に示すのが,FISPのシーケンスです.対称性の良い,非常に綺麗なシーケンスですが,初めてこのシーケンスを見て,核磁化の運動を読める人は,どれくらいいるでしょうか?

さて,私は,FISPは,FLASHに刺激を受けて開発されたものだとばかり思っていました.ところが,原論文を読んでみると,FISPは,SSFP(Steady State Free Precession)に触発されて,FLASHとは独立に開発されたと書いてあります.また,Philipsから提案されたFFE(Fast Field Echo)も,これらとは独立のようです(真相は分かりませんが).

この論文を見て不思議に思うのは,FISPの撮像パラメタが書いていないことです.すなわち,128×128画素の画像が9秒以下で撮れると書いてあるのに,TRが書いてありません.NEX=1ならばTR=70msとなるはずですが,でも,TE=35msとは,とても思えません.

また,後年,TrueFISPとして,リバイバルしたこのシーケンスに見られるBanding artifactが見られません.このあたりも謎が深いシーケンスです.

これから,しばらく,このシーケンスの解剖を行っていきましょう.
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MRIの歴史的論文(18)

2006-04-06 23:44:38 | Weblog

MRIでは,acronym(頭字語)と呼ばれる言葉がたくさん使われています.頭字語というのは,各語の頭字をつづりあわせて作った語のことです.昨日まで解説していたFLASHは,その代表例で,ネーミングで言えば,トップクラスだと思います.ただし,FLASH(閃光)というにしては,撮像に数秒程度を要しますので,かなり誇大広告のような気もします.

NMRで一番古いacronymは,FID(free induction decay)でしょうか.スピンエコーは,SEと呼ばれることもありますが,acronymとしては,特別なものではありません.NMRではDANTEなどのacronymがあります.これは傑作です.

FLASHが提案された後,FISP,GRASS,FFEなどの勾配エコーシーケンスが提案されますが,いずれにしても意味不明です.GRASS(Gradient Recalled Acquisition in the Steady State)というのは,草とか芝という意味ですので,なぜ,MRIに芝生が出てくるのだろうと,思ったことがあるのは,私だけではないでしょう.理由をご存じの方は,教えて下さい.

さて,上に示す画像は,TR=2.4ms,TE=1.2ms,64×64画素のFLASHで150msおきに撮像した,鉛直な円管内の静止した粘性流体中を沈降する球体の画像です.高流動コンクリートのモデルとなっています.このように,1秒以下の時間分解能を得ることは難しくありませんが,0.1秒を切るとなると,EPI(Echo Planar Imaging)しかないでしょう.

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MRIの歴史的論文(17)

2006-04-05 08:04:44 | Weblog

昨日お話しました,FLASH誕生のいきさつに関して,Jenz Frahmが書いていることを紹介したいと思います(上の図の左がAxel Haase,右がFrahm).

まず,FLASHは,突然生まれたのではなく,STEAM(Stimulated Echo Acquisition Mode)という,現在では,局所スペクトロスコピーに使われている方法が母胎になって生まれた,ということが述べられています.そして,ある金曜日(日付は記載していない)の朝,初めてFLASHの実験が行われたことが書かれています.

その日に撮れらた代表的な画像は,TR=15ms,128×128画素,全撮像時間1.92sの手の画像だということでした.そして,FLASHという名前は,その日のうちに付けられたということでした.

彼らは,1985年2月12日にドイツ特許を出願し,その後,まず口頭発表でインパクトを与えることを考え,SMRM(国際磁気共鳴医学会:ISMRMの前身)やRSNAのアブストラクトの投稿は行いましたが,それらの口頭発表が終わるまでは,論文投稿を控えるという戦略を採りました.

ところが,色々なルートで情報は漏れるもので,1985年8月にLondonで行われたSMRMでは,すでに複数のメーカーが,臨床用MRIを用い,FLASHと同様のシーケンスを用いた人体の画像を展示していました.

また,Frahmらの(インパクトが期待された)発表は,その学会の最終日に予定されていたため,FLASH開発のニュースは,学会が終わるまでには,既に広まっていた,ということでした(GEなどは,SMRMの1週間前に,ある研究者がFrahmの研究室を訪問し,FLASHを見せられてその重要性に気づき,さっそくミルウォーキー(GEの医用機器事業部の拠点がある)に連絡し,急遽実験を行って,SMRMの展示に間に合わせたとのことでした).

このため,彼らの論文の日付は,1985年10月となっています.また,すでに特許が出願されているようなシーケンスでも,他社は,将来への布石として,遠慮なく,どんどん使っていくということも良く分かりますね(いずれ,クロスライセンスなどで解消する:ただし,特許は公開されていないので,元々分からないのですが).


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MRIの歴史的論文(16)

2006-04-04 23:56:22 | Weblog

FLASHの発明者の一人のJens Frahmは,NMR Encyclopediaという本で,「1984年,医用MRIの開発は,一つの終わりを迎えていた」,という書き出しで始まるFLASH誕生のいきさつを紹介しています.

確かに,1984年は,スピンエコーによる撮像法の基本が完成し,臨床用MRIが多くのメーカーから発売され,「(プロトンの)MRIは,もうやることはない」,という雰囲気が充満していたことは事実です.そして,当時,私自身は,臨床機開発の責任の一端を終え,flow imagingやchemical shift imagingという,臨床装置にはない新しい価値を付加する実験に取り組んでいました.

そこに,FLASHの発表があり,臨床用MRIの世界では,いわゆるさまざまな勾配エコーシーケンスが開発されていきます.

一方で,Peter Mansfieldの発明による,究極の高速イメージング法であるエコープラナーイメージング(EPI)を追求するグループもあり,FLASHは,それに比べると1桁は遅いため,プロの世界では,あまり高く評価されませんでした(私も,その一人でした).

ところが,当時の臨床機では,EPIはとても実施できなかった(できるようになったのは,それから10年後のことです)ため,臨床機で容易に実現できるFLASHは,実用的高速イメージング法として,熱烈に迎え入れられました.

上に示す図は,約10年前に,TR = 4.82 ms,TE = 2.70 msのFLASH法で,上から下に動いていくファントムを,約0.6秒の時間間隔で撮像したものです.

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