九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

ジョロウグモとオニグモの交代

2016-05-10 21:30:11 | 日記
ジョロウグモとオニグモの交代
 九重昆虫記第9巻に九重自然史研究所ができた頃の研究所の庭の写真と2012年に写した同じ庭の写真が出ている。研究所は退官2年前に完成した。その頃、敷地は一度新地になっており、植えた樹木はまだ背丈が低く、オープンランドに毛が生えたような状態だった。庭にアブラナ科の雑草がまず生え始めた。建物を建てる前にどこからか土を運んで来て入れてくれたから、その植物はどうやら牧草についてきた外来植物らしかった。そこに発生したのはモンシロチョウPieris rapaeだった。初めの何年かはコムラサキとモンシロチョウが多かったが、樹木が茂り始めるとまずコムラサキが来なくなった。庭に丈の低い草がまばらに生え、地面が広く露出している庭ではコムラサキの雄が地面に翅を広げて止まっていた。縄張りを張っているようだが雌が現れたことはない。コムラサキApatura metisは地面の雑草が伸びるともう庭に来なくなった。私は子供の頃、母校彦根東高校の前身旧制彦根中学校の門近くあったカシワの樹液を吸いに来たコムラサキを採集した。だから森林性の暗い場所が好きなチョウだと思い込んでいたが太陽が当たる露出した地面を好むことを知って驚いた。
 その頃、庭を占拠しまず網を張ったのはジョロウグモNephila pilipes(図版)だった。研究所の前の道路は向かいの麻生さんが、時々、向かい側の樹木の枝を切り払い、私の側はまだそれほど植物が茂っていなかった。だから道路にそってジョロウグモが網を張った。このクモは昼間も夜も同じ巣にとどまっており、写真の大きいのは雌、小型の個体は雄である。写真2の上の方にいる小さな雄は大きな美しい雌に愛を告白するため駆けつけた。雌の腹面の四角い模様があるがそれが呼吸器官肺書でその上方に雌生殖口がある。
 ところで2006年6月27日、研究所の雨戸のレールでオニグモAraneus ventricosusを発見した。少年時代を過ごした彦根市石ヶ埼町の屋敷の庭はこのオニグモが毎晩網を張った。そこではジョロウグモを見たことがなかった。実は地蔵原でもオニグモがいることは知っていた。しかし研究所内で見たのは2006年が初めてだった。
 その後、植木が育ちだんだん森のようになると庭から次第にジョロウグモが姿を消し、代わってオニグモが進出した。クモにもオープンランド型と森林型があるらしい。そんな当たり前のことも自分で体験しないとわからないものだ。
 研究所の庭に常設灯火採集設備を設け白布を張り、そこに泊まった夜は必ず点灯した。多少の風雨が吹き荒れてもたいてい点灯した。いつの間にか風雨がやんだ後は多くの虫が飛来するからだ。しかし嵐のため何度蛍光灯や水銀灯を割ったかわからない。この白布は夜の虫を観察する場所でもあった。スズメバチ類の中でモンスズメバチだけが、夜、白布で蛾を狩った。
 その白布はアマガエルやヒキガエルも来たし、クモも現れた。よく見かけたのはサツマノミダマシNeoscona scylloidesが白布の支柱を利用して網を張った。ヌサオニグモも、時々、見かけた。クモは積極的に写真を撮ったわけではないので今写真を整理してみると図版に示した約30種の写真が残っていた。

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