九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

私が好きな九州のアジサイ二種

2018-06-11 23:37:16 | 日記
私が好きな九州のアジサイ二種
長崎のアジサイと湯布院のガクアジサイの花
九州を離れてから数年過ぎたが、アジサイ(紫陽花Hydrangea macrophylla)の花が咲くころになると思い出すのは長崎のアジサイと湯布院のガクアジサイだ。どちらもしとしと降る雨のときが一番美しい。
長崎のアジサイはシーボルトが愛した花でオタクサという。彼は文政6年(1823)長崎に来航し、長崎市鳴滝2丁目7-40に診療所を構え日本人患者を治療することを幕府から許された。彼と現地妻お滝さん(楠本滝)との出会いと別れについては様々の話がある。そのあらすじはもう忘れたが、彼はお滝さんと恋に落ち二人の間に娘イネが生まれ、そのイネさんは日本最初の西洋医学を学んだ産科医になり明治時代に活躍した。お滝さんから娘イネ、孫娘と女系3代続きみな美しい人だったらしい。
アジサイは長崎ではオタクサ(お滝草)と呼ばれ、この植物をシ-ボルトが園芸植物とし初めて西洋に紹介したそうだ。
長崎のアジサイは子供の頭ほどある大きな花で、小さな花が集まったボール状の花だ。長崎でそのアジサイが一番美しいと思ったのは、初夏のしとしと降りだした小雨を避けて飛び込んだ、雨宿りの喫茶店の軒先にあった鉢植えのしっとりと濡れているアジサイだ。大きな花のアジサイはどことなくしゃれた西洋風の長崎の町角に降る雨によく似合っていた。ざぁーざぁーと音を立てて降る雨はアジサイの花房が重くなり無様だが、それでもアジサイは雨に濡れて咲く花で、九州では梅雨明けになると花がぱっと終わる。
大分市に移ってから初めのころ湯布院へ時々温泉と食事に出かけた。雨の湯布院にはガクアジサイが一番よく似合う。ある時、妻と降り出した小雨を避けて飛び込んだ湯布院のある喫茶店の前にあった、ガクアジサイを眺めながらコーヒを飲んだ。しとしとと降る雨に濡れて、これこそ湯布院を代表する花だと思った。だから九重自然史研究所を建てた時、私はその茶屋に頼んで一ガクアジサイを一枝もらって庭に挿し木した。
その研究所がある九州のチベットと呼ばれる地蔵原は寒冷地で春の音連れが遅いと聞いたので、わざわざ寒地に強いだろうと取り寄せたノルウエーカエデと東北のブナを1本ずつ植えたが、毎年春の氷雨に打たれ葉が枯れ、前者は数年続けてまた芽吹いたがついに根負けし本当に枯れた。東北のブナは「九重昆虫記」でお馬鹿さんブナとけなしたが頑張り、そこを去るころ大きくなり氷雨のあたる部分の葉だけが枯れた。私の好きな染井吉野は何度植えても育たなかった。代わって植えたヒメリンゴはよく育ちその花の満開とニシキギの開花が遅い春の訪れだ。もちろん湯布院からもらったガクアジサイも毎年花をつけた。
図版の1~2と4はエルシテイ草津弐番館の園芸同好会が咲かせたアジサイだ。品種改良によって作出された小さな庭に小さな花をつける都会のアジサイだ。写真3は我が家の庭の北米原産カシワバアジサイだ。これはこのマンションの前の持ち主が一階の坪庭に植えたもので、花房の頭が下がるとブドウの房のように見える。咲くまでは威張って堂々と立っているが雨が降ると、深々と頭を下げて御免なさいと謝っているようだ。


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