油屋種吉の独り言

日記や随筆をのせます。

涼をもとめて。  (3)

2024-08-08 20:46:49 | 小説
 前にも書いたがとかく盆地は夏あつく冬さむい。

 ついのすみかになりそうな、関東の北部鹿沼の山
あいから西に小一時間ほど車で行った佐野市もまわ
りが小高い山にかこまれているせいか、近ごろテレ
ビのお天気番組によく出て来るようになった。

 ちょっと前は、もっと南寄り、埼玉の熊谷市が一
位だった。
 次に群馬の舘林、そして佐野市と続いた。

 年々北へ北へと最高気温を記録する土地が移って
きた。
 これらの事象が何を意味するのか、浅学の私であ
る。よく判らないが、ひょっとして、温暖化のせい
で、偏西風なるものがくねくねと曲がるからかもし
れない。

 佐野市の人びとは、外出して涼をとるとしたら、ど
こに行かれるのだろうか。

 現役をしりぞかれ、ゆうゆう自適の方なら、唐沢
山で森林浴されるのも趣があっていいでしょう。

 年に一度催される足利の花火大会を見物されるの
も一興ですね。

 現役バリバリで、お天気のことなど四の五の言っ
ていたら、仕事にならぬ方は事務所や車中でのエア
コンにたよるしかない。

 わたしが三十歳目前だったころ、建具屋の営業マ
ンだった。
 乗る車はほとんどがトラック。
 小さいものから大きいものまで、ガソリンで動い
たり軽油で動いたり。
 当時、ほとんどの車に、冷房装置などついてはい
なかった。

 窓を開け、自然の風にたよった。
 普通免許をとったばかりで、北関東一円をめぐっ
た。
 得意先で注文をとったり、頼まれた建具を運び
入れたりの忙しい日々だった。

 ある日ある時。
 前橋市内だったろう。
 突如として笛が鳴った。

 なんだろな、と軽トラックを停止し、左右を確認
すると、ガードレールから若い男の警察官が身を乗
り出している。

 馴れない道である。
 一時停止のサインを見逃してしまった。
 桐生の街でも、そんなことがあった。

 道路の両脇を確認すれば、違反はまぬがれたので
あったが、坂道をくだっているさなかだった。

 がたんと窪地にタイヤが落ちただけだと思ったが、
すぐに道路わきから、美人のおまわりさんがとび出
してきた。
 「ここは踏切でしょ。両毛線。良く観て運転、お願
いします」
 「はい、わかりました。これから気をつけます」
 素直に応じた。

 怖がりな性分でそれほど速く走らなかった出さなか
ったから、そちらの違反はゼロ。

 このところ、罰則が厳しくなった。
 当時、四千円だった罰金が、八千円まで上がった。
 それに、減点。
 任意保険のランクがゴールドからシルバーに下がり、
保険金が高くなった。
 ご存じの如く、五年から三年へと更新時期が短い。

 ドライバーにとって、冷や汗もの。
 わざわざ涼をもとめずとも、いいくらいですね。

 (これで一日分の日当が飛んでしまった)
 「あんた、ほんとおばかさんね。一体どこ観て運転
してたのよお」
 おかんむりのかみさん。

 運転されるみなさん。
 一時停止線の手前で確実にとまり、右見て左見て。

 車の往来がなければ、そのまま進むことにしましょ
う。
 ジェスチャアを交えて、確認される電車の運転士
さんを思い起こされるといいですよ。

 ぽんと停まっただけでは停止したことにはなりま
せん。おまわりさんがいらっしゃるのに気づかず、進
んでしまうとサイレンを鳴らされてしまいます。

 今回、通知ハガキが来た。
 認知機能検査付きの高齢者講習。
 費用が八千五百円。

 車を運転できなけりゃ、バスや電車で遠方に行く
しかない。

 なんとしても、合格するぞ。
 気持ちばかりが先走っている。
 
 
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする