こうして、じぶんの少年時代に起きたであ
ろうことを、ひとつひとつ順不同で記憶の引
き出しから取り出しては、小説仕立てにしよ
うとする試みは、作者にとって、とても恥ず
かしいことではある。
しかし、読んでくださる方にとっては、と
ても興味ある事柄にちがいない。
むろん、描かれていることすべてが、真実
だったかと訊かれると、否と答えるほかない。
けれども、ほとんど事実に近い。
わたしとしては、そう断言できそうな気が
する。
なぜかといえば、それらひとつひとつが年
老いて硬くなりそうな、わたしの脳に、いま
なお強烈に刻みこまれているからである。
いやだ、とか、うれしい。ぞっとした、と
か、とってもびっくりしたとか……。
激しい感情を伴っている。
思い出は、思い出にすぎない。
あらゆる人やものが白い霧におおわれては
いる。
しかし、ときどき、吹きすぎる風によって、
それらがあらわになる。
その瞬間をとらえ、言葉で表す。
その困難さを、いま、切実に感じている。
「想い出は、たましいの香り」
そうおっしゃった異国の方が、おられた。
ジョルジュ・サンドさんだったろうか。
百聞は一見に如かず。
言葉だけでもって、事象をあらわすことの
不完全さ、あいまいさを自覚せずにはいられ
ない。
映像があれば、と思ったりする。
小説は作り物であるから、当然、そのほと
んどは、うそで塗り固められてはいる。
だが、行間からにじみ出ている何かを、読
者が読み取っていただければ、作者としては
このうえない喜びです。
「公道で裸で寝ころがるくらいの度胸がな
いと、小説が書けないんだよ」
とおっしゃったのは、どなただったろう。
その言葉を誰に向けておっしゃたのか。
わたしとしては、男の方が、女の方に話さ
れたと記憶している。
多分に私小説の領域でのお話だっただろう
けれども。
小説とは何ぞや。
それもわからず、書き続けた十年。
まだまだ小説の森のなかで、迷いに迷って
いる。
これからは、つたない作品をいくつか、恥
ずかしげに、お届けするつもりです。
よろしく。
ろうことを、ひとつひとつ順不同で記憶の引
き出しから取り出しては、小説仕立てにしよ
うとする試みは、作者にとって、とても恥ず
かしいことではある。
しかし、読んでくださる方にとっては、と
ても興味ある事柄にちがいない。
むろん、描かれていることすべてが、真実
だったかと訊かれると、否と答えるほかない。
けれども、ほとんど事実に近い。
わたしとしては、そう断言できそうな気が
する。
なぜかといえば、それらひとつひとつが年
老いて硬くなりそうな、わたしの脳に、いま
なお強烈に刻みこまれているからである。
いやだ、とか、うれしい。ぞっとした、と
か、とってもびっくりしたとか……。
激しい感情を伴っている。
思い出は、思い出にすぎない。
あらゆる人やものが白い霧におおわれては
いる。
しかし、ときどき、吹きすぎる風によって、
それらがあらわになる。
その瞬間をとらえ、言葉で表す。
その困難さを、いま、切実に感じている。
「想い出は、たましいの香り」
そうおっしゃった異国の方が、おられた。
ジョルジュ・サンドさんだったろうか。
百聞は一見に如かず。
言葉だけでもって、事象をあらわすことの
不完全さ、あいまいさを自覚せずにはいられ
ない。
映像があれば、と思ったりする。
小説は作り物であるから、当然、そのほと
んどは、うそで塗り固められてはいる。
だが、行間からにじみ出ている何かを、読
者が読み取っていただければ、作者としては
このうえない喜びです。
「公道で裸で寝ころがるくらいの度胸がな
いと、小説が書けないんだよ」
とおっしゃったのは、どなただったろう。
その言葉を誰に向けておっしゃたのか。
わたしとしては、男の方が、女の方に話さ
れたと記憶している。
多分に私小説の領域でのお話だっただろう
けれども。
小説とは何ぞや。
それもわからず、書き続けた十年。
まだまだ小説の森のなかで、迷いに迷って
いる。
これからは、つたない作品をいくつか、恥
ずかしげに、お届けするつもりです。
よろしく。