Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

◆◇第56回「メイドインジャパンが世界に貢献したこと、するべきこと」」(改訂2版)

2013-05-12 19:48:18 | ■日本人はどこへ往く?

第56回「メイドインジャパンが世界に貢献したこと、するべきこと」(改訂2版)

前回は、日本および日本人のアイデンティティを振り返り、未来を探ってみました。

そこで今回は、
オバマ大統領の2013年一般教書演説の中で、米国製造業の新革命 Made in Americaの言葉を聞きながら、
日本企業の成果物である「メイドインジャパン」とグローバル化のかかわりを考えてみたい。
    
ここでは、ノーベル賞の対象となっている、物理学、化学や医学生理学などの自然科学分野には触れず、
ビジネスや生活分野でのグローバル貢献を主に論じます。

メイドインジャパンは、

生活や芸術分野では、
1.快適な生活追求(食べ物)と2.美的センスによって、

ビジネス分野では、
3.工業技術開発と4.組織経営/生産管理手法で、
世界に貢献してきました。

1.快適な生活追求は、食べ物と芸術分野に分けられます。
ある意味では、戦後の日本人は、生活の質的向上、心地よい生活、安全で安心できる生活を追求してきたとも
言えます。

食べ物は、健康志向の日本料理のことで、代表的なSushi(寿司)とTofu(豆腐)が挙げられます。
Sushiはカリフォルニア・ロールやbrown rice(玄米)の巻き寿司など、海外では、食材やねたが変わっているにせよ、
基本は鮮魚と生野菜から造られており、外形は日本の寿司を踏襲しています。
全世界に、Sushi restaurantがあり、Nigiri(にぎり)などは、欧米人やアジアの富裕層の健康志向に合致しており、
人気の高い食べ物です。
ただ、惜しむらくは、高級日本料理店の一部の経営者を除いて、一般の市民が食べられるSushi店の経営者は、
韓国人(アフリカ)だったり、台湾人(米国)だったりしているのが現状です。

2.美的センスとは、芸術分野での世界貢献のことで、一つは、すぐれた演奏家による芸術表現を意味します。
これまで数々の国際コンクールで優れた日本人演奏家が輩出しており、私たちの感性に美的な喜びと幸福感を与えてくれます。
3大国際コンクールの一つ、チャイコフスキー国際コンクールでは、ピアニストの上原彩子(第1位2002年)をはじめ
ヴァイオリニストの神尾真由子(第1位2007年)、潮田益子(第2位1966年)や加藤知子(第2位)、
チェロの藤原真理(第2位1978年)がいました。ショパン国際ピアノコンクールでは、内田光子が1970年第2位に、
エリザベート王妃国際音楽コンクールでは、ヴァイオリニストの 堀米ゆず子と戸田弥生がともに第1位
(1980年と1983年)に、諏訪内晶子と成田達輝が第2位(1989年と2012年に)、ピアニストの若林顕が第2位(1987年)となっています。
欧米の正統クラシックの只中に、アジアの日本人の感性が認められたのは、驚きとしか言いようがありません。
音楽だけでなく、デザイン、Manga(漫画)やアニメは、アジアや欧米で影響力を発揮しています。
また、文学分野でのHaiku(俳句)の影響も、米国など英語圏を中心に根強い人気を保っています。
これら芸術分野では、日本人の感性、自然観などが色濃く反映されたもので、世界に通用するオリジナリティを備えています。

さて、ビジネス分野に移りましょう。

3.工業化社会での洗練された技術開発

Made in Japanが世界を席巻したのは、1950年代の繊維製品から始まり、1960年代後半に鉄鋼、カラーテレビなど
家電製品、そしてソニーのオーディオ製品(ウォークマン)の1979年から1990年代までと言えましょう。
1980年代では、自動車・半導体が世界を席巻しました。この間、製造業での「匠の技」といわれる、
洗練された、こだわりの技術が日本人技術者の気性と合致し、それにより生み出されたMade in Japanの製品が、
欧米先進国の消費者ニーズを満たしたのです。
1997年に開発されたトヨタ・プリウスは、世界初の量産ハイブリッド自動車となり、環境に優しい技術の最先端に位置しています。

4.組織経営/生産管理手法

1970年代から80年代にかけて、日米経済摩擦が生じると、欧米の経営学者は、競って日本的経営の謎に研究主体を移しました。
1979年には、社会学者でハーバード大学教授のエズラ・ヴォーゲル氏の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が執筆され、日本の競争優位の源泉(日本人の学習意欲の高さなど)が分析されました。日本独自の生産管理技術(ジャストインタイム)や統合的品質管理技術(TQC:トータル・クオリティー・コントロール)などが世界の製造業をリードし、これら日本発の経営手法は、米国製造業を中心に広がっていきました。
更に、長期的視点での経営手法は、欧米とは異なる経営文化のかたちとして、世界の企業へと影響を及ぼしたのでした。特に、日本の集団主義の経営は、欧米の個人の能力開発中心から、チームワークによる全社的な生産性(収益性)向上の研究へと結実し、学習する組織(ピーター・センゲ1994年)などの著作が欧米で人気を博しました。
また、国の産業界への関わりの深さ(強力な国の産業政策)は、米国など先進国だけでなく、
今日では、新興工業諸国の産業政策に多大の影響を与えています。

さて、ここでは、
ビジネスと生活・芸術分野での
Made in Japanの要素を、

1.食べ物
2.美的センス
3.工業化社会での技術開発
4.組織経営/生産管理手法

の4つに分けました。

これらのMade in Japanの有用性(今後どれだけグローバル世紀<21世紀>で役立つだろうか)という視点で
考えると、

1.食べ物は、世界の民が裕福になるにつれて、日本人並みの味覚能力に達するに違いないので、
  先進国だけでなく、新興諸国に対しても、十分に貢献できる。

2.美的センスも、世界の国々に、金と時間に余裕ができてくると、(贅沢な)美的観賞に注意を向ける傾向になるため、その存在理由はなくならない。

3.工業化社会での技術開発については、これこそ、工業化社会へ突入していくだろう、新興諸国予備軍(VISTA、NEXT11)への技術サポートというソフトで、貢献できる。

4.組織経営/生産管理手法については、3と同じく、Made in Japanのソフト・コンテンツの開発が重要となります。
  なにせ、新興諸国(予備軍)での英文テキストが不足しているのです。
  ある時、ガーナの技術高等専門学校の校長がボロボロのKaizen(1986年刊)の英文テキストを示してくれたのが記憶に残っています。必要としている所に、必要な知識が届いていないのが世界の現状なのです。
  日本独自の生産管理技術は、もはや日本だけの財産ではなく、グローバル(ユニバーサル)な知恵となっているからです。もしかすると、韓国か中国の学者やコンサルタントあたりから、現場で使える英文のノウハウ本が出版されるかもしれません。

日本は、グローバル化のどこに集中すればいいか。

第52回「グローバリゼーション(グローバル化)~文化面とドラッカーのとらえ方~」で触れた、アパデュライのテクノスケープ(technoscapes。工業技術や情報技術の拡散によって支配される世界)で貢献するしかないのかな、と思います。そのための、ソフト(教材)開発と人材開発が急がれます。(初版2013-02-12)

(4月15日+5月12日追加)
現在、筆者はテキサス大学(オースチン校)にいますが、大学院入学のために、英語を勉強している中東諸国からの留学生(注☆☆参照)が実に大勢います。ちなみに当大学の国際学部(大学院入学準備、特別研究員や上級英語者のためのクラス)の約半数が中近東からで、次に多いのが南米、そして韓国からの留学生となっています。サウジアラビアやクウェートなどアラブ諸国からの留学生は、政府派遣の留学生で、入学金・授業料だけでなく、生活費も極めて十分なscholarshipが支給されています。アラブ地域からの男子留学生の大多数が、civil engineeringなどエンジニア志望です。もし、日本の理工学系大学が英語で授業を実施するようになれば、これら中近東からの留学生のニーズを満たすことができ、これまでの日本の科学技術の成果を世界の若者に教えることができるのになあ、とつくづく思います。グローバル教育とは、日本の得意とする学問の成果を、世界の若者と分かち合うことでもあります。

※写真は、NHKテレビ60年記念ドラマ「メイドインジャパン」のHPから、
そして堀込ゆず子のCDジャケットは、burleskeのクラシックブログから転載した。

☆☆テキサス大学オースティン校2013年spring semester(1月-5月期)留学生数
◆国際学部総数355名
アラブ系学生 175名(49%)
南米系学生 64名(18%)
韓国系学生 46名(13%)
中国系学生 19名(5%)
その他*  51名(15%)
*その他とは、
東欧、中央アジア(タジキスタンを含む)、アフリカ地域、
タイ、日本人は6名(1.7%)。
地域別の人数は、著者による推定。

☆なお、
Times Higher Education世界大学ランキング(2012-2013年エンジニアリング・技術分野)では、

テキサス大学オースティン校 13位
東京大学   28位
京都大学   47位
となっている。

◇また、
イギリスの大学評価機関、
クアクアレリ・シモンズ社(QS Quacquarelli Symonds)の
「QS世界ランキング分野別2013年(Civil & Structure Engineering)」では、

1位 インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)
2位 カリフォルニア大学バークレイ校
3位 東京大学
7位 京都大学
10位テキサス大学オースチン校
となっている。


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