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くまくまDays~アデレードな日常~

新しい環境の中で感じたことをつれづれに書きつづります。

新年度、炭素税、固定価格買取制度

2012-07-01 23:16:37 | オーストラリアについて
今日から7月1日。今日からオーストラリアでは新年度である。

オーストラリア関連のニュースを見ているとやはり大きなテーマは、いわゆる炭素税(carbon tax)であり、新年度(つまり今日)から、この炭素税が導入された。

炭素税については既にふれたので(詳細は → こちら)、説明は省略するがラッド元首相が政治生命をかけて取り組んだテーマであり、かつ、国論を二分するテーマであった。

私が留学している際には、これらの税を導入する法案が可決されていたので、既に大要は決まっていたが、それでも今日から導入をなると、いよいよか。という気持ちが高まってくる。産業界に対するインパクトは決して小さくないと思われる(オーストラリア経済・産業のぜい弱性が高いことはここではとりあえず無視しておくにしても。)のでオーストラリア国内の反応はしばらくの間は強いと思うが、あくまで私見であるが、おそらく、いわゆる普通のオーストラリア人はこれらに慣れてしまうんだと思う。

いかんせん、いい意味でも悪い意味でもオーストラリアは環境に対する意識が非常に強い国である。自由経済を基調としながらも、乱暴な言い方をすれば、「環境」というテーマが絡んだ瞬間に政府の役割云々が強くなることを人々は許容してしまう傾向にあると思う。

同税の導入により物価の上昇、電気料金等の上昇が懸念されているが、そもそも同税が導入されていない場合であっても、ゆるやかなインフレが続くオーストラリアでは生活費の上昇が続いており、電気料金の上昇を炭素税のみのせいにするのはちょっとフェアではないと思う。

そして、さらに乱暴な言い方をすれば、一般論として環境に「よいこと」をしている同税は、一定程度経過したのち国民には所与のものとして感がられるのではないだろうか。やはり自分自身に直接関係しない事項については関心が薄れていくのが当たり前なんだと思う。

偶然といえば偶然であるが、日本でも、今日から、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がはじまった。太陽光、風力、バイオマス等の再生可能エネルギー電気について、国から認定を受けた発電所で発電される電気について電力会社に一定期間、一定価格での買取を義務付ける制度である。

原発事故等を背景にして再生可能エネルギー等の新エネルギーの役割が今後ますます重要になってくるのはいうまでもない。ただ、その原資となるのは我々の電気料金を通じた国民負担であり、それらの負担増をどの程度享受できるのかもあわせて考えていかなければならない。

炭素税もFITも、今日という日をモーメンタムにして、これから歩んでいくという記念日的な日なので、ちょっととりとめのない記事になってしまいましたが、備忘録として書き記すことにします。

メタボ解消のために

2011-10-14 23:54:51 | オーストラリアについて
オーストラリア政府が健康的な食生活を促すキャンペーンである、「Swap it! Don't Stop It!」というキャンペーンをはじめました。

キャンペーンのホームページはこちら → http://swapit.gov.au/

SWAP(交換する)をキーワードに、オーストラリア人が大好きな好カロリーな食べ物を健康的な食べ物に変えることで、体重を減らし、ついでに糖尿病などの病気も未然に防ごうというものです。このキャンペーンの背景には、オーストラリア人の肥満度の高さへの危機感があります。

統計上の、過体重(overweight)と肥満(obesity)をあわせた、いわゆる[太り過ぎ]の割合が、1995年には56%だったのが、2007年には61%に上昇しており、国民の3人に2人はと太り過ぎいう異常な状態が続いています。OECDの統計によれば、BMIが30以上の[肥満]割合は24%(2007年)とされており、OECD加盟国の中でも、アメリカ(33.8%;2008年)、ニュージーランド(26.5%;2007年)に次ぐ世界第3位の肥満大国です。

ちなみに日本でも、メタボがはやっている?とはいえ、統計上は3.9%とオーストラリアの足元にも及びません。単純に計算すると、日本の肥満人口が約500万人(総人口1億3千万人×3.9%)よりも、オーストラリアの肥満人口約530万人(総人口2200万人×27%)の方が多いという事実だけをみても、オーストラリア人がいかに太っているかお分かりいただけると思います。医学的な要因(遺伝子など)はわかりませんが、油もの中心の食生活が影響していることは間違いないと思います。
それを改善するための方策として考え出されたのが今回のキャンペーンなのです。

メインキャラクターをつとめるのは、エリックというオージー。典型的な樽型のおなか周りに悩む。太り過ぎに悩む彼が、愛する妻(エリカ)と二人の子供のために食生活を見直すという細かいストーリー設定。


提言の中では、食生活を少し見直すことが重要!と説いています。そのキーワードとして、「Swap(交換)」があげられています。具体的には、「Swap A for B」(AをBに変えてみよう!)を掲げています。その具体例が面白いのでいくつか紹介します。

・Swap Fried for Fresh(揚げ物を生野菜へ!)←上記のポスターのもの
・Swap a caesar salad for a garden salad(シーザーサラダをグリーンサラダへ!)
・Swap a bowl of ice-cream and topping for a bowl of low-fat yoghurt with frozen berries(アイスクリームを低カロリーのフローズンヨーグルト&木の実へ!)
・Swap a meat loaded pizza for a vegetarian pizza with low-fat cheese(お肉たっぷりのピザを、チーズと野菜中心のピザへ!)

また、上記のように、食生活に関するものだけではなく、日常生活の細かい改善も指摘しています。

・Swap lying on the beach for playing beach cricket(ビーチで寝転がっているのではなく、クリケットをやろう!)
・Swap surfing the internet for surfing at the beach(ネットサーフィンではなく、ビーチでサーフィンをやろう!)
・Swap an email or phone call for a face to face chat(emailや電話ではなく、対面で話そう!)
・Swap a girls night in for a night out dancing(ガールズトークではなく、夜はダンスにくりだそう!)

効果が現れるのかどうか疑問に思うものも多々ありますが、一般論としては体を動かし、健康的で規則正しい生活を送ろうといった内容です。夜はダンスへ!というのがいかにもオーストラリアっぽいですね。さらにいえば、キャラクターを用いて、堅苦しいイメージの政策を柔らかく伝えるというのは、日本人よりもオーストラリア人(欧米人)の方が得意な気がします。

Go for 2 & 5」でも紹介したとおり、少なくとも政府レベルでは現状に強い危機感を抱いています。ただ、人間の食生活というものは簡単に変えられるものではなく、人間の生活が豊かになるにつれて肥満が増えるというのはある意味、歴史の必然なのかもしれません。急激な変化をもたらすためには、オーストラリア全土で、Chipsの販売を禁止するとかいうくらいの強い政策を取らないと根本的には解決しないですね。まあ、無理な話ですな。

とはいえ、歳を経るごとに代謝量が落ち、気をつけていないと自分も太ってしまう可能性があると思うと恐ろしいですね。まわりに嫌というほど太ったオージーがいるので、それを反面教師にして太らないように気をつけようと心に誓ったのでした。

難民法案こう着状態に。

2011-10-13 22:52:56 | オーストラリアについて
ボートピープルと呼ばれる難民の処理をめぐって、ギラード政権が、マレーシアで難民交換協定(豪州で難民認定を待つ800人を送り出し、その代わりに難民認定を受けた4000人をマレーシアから受け入れる)を結ぼうとしたところ、連邦裁判所が待った!をかけたというところまでは、以前のブログで紹介しましたが、今日はそれについての新たな動きです。
(過去の記事 → 「難民マレーシア移送に「待った」がかかる!」&「オーストラリアと難民政策」)

連邦裁判所は、人道上の理由から、難民条約を批准していない国(マレーシア)へ難民を送ることはできず、さらに政府がそれを行う法的権限がないと指摘しました。ただし、難民交換を可能にする法案を採択することは否定しておらず、人道上の懸念はさておき、ギラード政権にとってみれば、法案さえ可決されれば、難民交換協定は可能になるのです。

そのため、ギラード政権は、難民交換協定を結び、オーストラリアの領域外で難民処理することを可能にする難民法案改定案を議会に提出しました。領域外で処理ということで「offshore processing」と呼ばれており、反対に領域内で処理することを「onshore processing」と呼びます。

法案の主旨として「offshore processing」を謳ってはいますが、重要なのは単にマレーシアをターゲットにしたものではないということ。もっといえば、保守連合が主張するところのナウルでの処理も本法案の範疇に含まれるということです。

結論から言うと、本日採択されるはずだった難民法案は、賛成が過半数に達しないことが明らかになったので、採決がおこなわれませんでした。昨日の炭素税法案同様に票読みがギリギリまで行われており、最終的には、(政府案への賛成をほのめかしていた)西オーストラリア州選出の国民党議員であるクロック氏が政府案に反対票を投じるといったことで流れが決定的となりました。

ニュースでは、「難民法案否決!!」となっているところもありますが、それは間違いで、単に採決されなかっただけです。ニュースを見て、私もてっきり採決されたものと思って、下院HPで採決結果を議事録で探してみたのですが、いくら探しても見つかりませんでした(笑)報道によれば、政府提出法案が議会に拒絶されたのは82年ぶりとのこと。今回の事態がいかに「異常」であるのかがよくお分かりいただけると思います。

ギラード氏の会見は終始アボット氏を非難するものでした。「(難民法案を廃案にした)アボット氏の決断は、著しく国益を損ない、さらに多くのボート難民がオーストラリアに押し寄せることになる」と述べ、不快感をあらわにしました。会見の表情から、かなりご立腹であることがうかがえました。

一方、保守連合は採決を避けた与党の姿勢を「ひきょう者」(cowardice)と非難しました。ただ、採決の結果否決されることが分かっていながらあえて採決する与党はいないでしょうから、その意味で「ひきょう者」という批判は的を得ていないと思います。仮に否決されたとすればギラード氏のリーダーシップは失墜し、政権運営がさらに難しくなるでしょうから。

今回の法案には、通常、労働党の政権運営に協力的な姿勢をとっているグリーンズ(緑の党)も反対していました。グリーンズの主張としては、人権人道上の立場から、オーストラリアよりも適切な保護が受けられないoffshore processingそのものに反対していました。

同法案はoffshore processingを一般法定化するものであり、将来的に保守連合が政権奪取し、ナウルに難民を送る場合にも必要となるものなのですが、offshore processingとして「ナウル」はいいけど、政府案を可決してしまうと、難民が「マレーシア」へ送られてしまう事になるため法案に反対するという主張であり、若干矛盾する点を含むことを忘れてはいけません。

ただし、労働党も、保守連合も、マレーシアやナウルに難民を送るoffshore processingが、なぜボート難民の来豪を防ぐことができるのかについての説明は出来ていません。口では威勢よく「Stop the boats」と言っていますが、国境警備は別にして、その問題が、マレーシアだのナウルだのマヌス島だの、難民が来た後の処理をどう行うのかという議論にすり替わっているのは、どう考えても解せません。

昨日は、懸案の炭素税法案を可決させて上機嫌だったギラード氏ですが、1日たって状況は一変。労働党と保守連合の1勝1敗というところでしょうか。ただ、いまでもボート難民は増え続けており、領域内の難民処理センターはキャパ不足です。さらに難民が地元コミュニティーといざこざを引き起こすことも少なくないので、難民処理の妙案があるわけではありません。

オーストラリアの人口が1000万人を超えたのは、今から約50年前の1959年。短期間で人口が倍になったのは、難民含め、移民に寛容な多民族国家を国是としてきたオーストラリアの歴史でもあります。昨今、ヨーロッパでも右派勢力が議席を伸ばすなど、移民・難民への風当たりが強くなってきているのは確かで、その流れで、オーストラリアが急激に保守化しているともいえます。保守化することがすべて悪いとは思いませんが、「多様性」がオーストラリアの国力の源泉であった時代を考えると、ちょっと寂しい気もします。

いずれにしても、ギラード氏の政権運営はさらに難を極めるでしょう。これが政権のネックとなるのか・・、それとも妙案をひねり出すのか。ギラード氏の対応が注目されるところです。

炭素税法案可決

2011-10-12 22:29:34 | オーストラリアについて
以前、炭素税(carbon tax)についてまとめたことがありましたが(その時の記事 → こちら)、今日はいよいよ炭素税法案が下院(House of Representative)で可決されるに至りました。

単純に「炭素税法案」といっても、実は18コの関連法案からなる税法改正も含めた法案で、与党・野党それぞれの思惑から、18コをまとめて採決にかけるのではなく、いくつかに分割したうえで投票が行われました。

先週末から今週頭にかけての議会での駆け引きはすごかったですね。なにしろ、与党(労働党)の議席数は72議席と、下院の過半数(75議席)を有しておらず、議席数では保守連合(73議席)が上回っています。この法案に限らず、法案成立のためには、党所属議員全員はもちろん、独立系議員、緑の党の議員の賛成も得なければならず、それだけでもハードルは決して低くないです。

党議拘束(のようなもの)がかかっているとはいっても、党所属議員全員が同じ投票行動をするというのは決して簡単なことではありません。それは、永田町の議論を見ていてもわかるとおりで、議員個人の意見が党の意見をはみ出すことも十分ありえるのです。そのため、先週頃から、「A議員は、労働党にもかかわらず反対票を投じる」や、「B議員は、当日棄権するため、可決のためのハードルが1票下がる」とか、いわゆる「票読み」が推測の世界で多数報じられました。

なにせ議席数は拮抗しているので(しかも、労働党は議長を選出しているので、さらに1票少なくなっている。)、1票が重要なわけであり、普段は名前も取り上げられないような議員の奇抜な行動が注目を集めるにいたったのです。日本で言うところの郵政法案採決時の票読みや、今年6月の内閣不信任案採決直前のような、異様な雰囲気まではいかなかったけど、似たような感じです。

結論からいうと、炭素税価格を賦課する本体の法案は、賛成74票、反対72票、棄権2票、欠席1票で可決されました。議長は投票に参加しませんので、合計150票になりますよね。ただし、採決自体がすんなりと言ったわけではなく、保守連合が提出した修正案(法案の採決自体を次期総選挙後まで延期するもの)はちゃんと否決されています。
(注:仮に次期総選挙で保守連合が政権を奪取した場合は、炭素税を廃止するとアボット氏は主張しているが、一度導入した税制を廃止するだけでも莫大なコストがかかるため、それを見越して採決を先延ばししようとしたものと思料。)

今後、同法案は上院(senate)に送られ審議されることになりますが、上院は議席数76に対して、労働党31、緑の党9と法案に賛成する勢力が過半数(38)を超えるので、同法案の成立は確実です。予定通り来年7月から炭素税が課税されることになるでしょう。

法案の中身は別にして、一番喜んだのは緑の党(グリーンズ)ではないでしょうか。もともと、この政策はグリーンズが労働党政権に圧力をかける形で検討がはじまり、長い議論の末可決されるに至りました。その間、労働党は、ケビン首相からギラード首相にリーダーが代わり、さらにギラード首相の支持率は戦後総理大臣の中で最低レベルまで低下。労働党苦難の道のりは、決して炭素税の問題だけではないですが(例えば、難民問題など)、国民の間で不人気な政策である炭素税を、グリーンズの政治的圧力によって、導入せざるを得なかったというのが本音ではないでしょうか。

だからこそ、保守連合が今も批判するのは、昨年夏の総選挙前に、ギラード氏が、「There's no carbon tax under the government I lead」(私の内閣では、炭素税は導入しない)と述べたにもかかわらず、総選挙で過半数がとれないことが判明するや否や前言を翻し、炭素税へまっしぐらとなったこと。議会でのディベートも、炭素税の内容そのものというよりも、ギラード氏の言動や選挙前の発言とのブレ、さらにはそれから生じる労働党政権の正統性への疑問が多かった気がします。こういう攻め方はあまりスマートではないですよね。政策的に問題があるのであればそこを丁寧に攻めていく。それがあるべき野党の姿だと個人的には思います。

いずれにしても、労働党政権ですから、ギラード内閣が行う各種政策に、労働党が責任を負うのは当然のことです。ただ、炭素税という不人気な政策を、労働党が矢面に立って批判を受け、グリーンズはキャスティングボートを握るからということで、それを後ろからプッシュするという構図は、ちょっと労働党がかわいそうな感じもします。本来であれば、グリーンズが議論の矢面に立つべきところなんですがね。法案成立を受けて各党がコメントを出していましたが、緑の党議員の嬉しそうな顔といったらなかったですね。

同法案が可決されたとしても、ギラード氏には受難の道のりが続きます。炭素税法案は、まだグリーンズの賛同を得ているのでいいのですが、早ければ明日には、さらに不人気な難民法改正法案(マレーシアへ難民を移送することを合法化するための法案)が採決されます。これは緑の党も反対しているので、下院でも上院でも成立のメドは立っていません。これについては日を改めて書くことにします。

それにしても、数人の議員がキャスティングボートを握り、国の運命を左右するというのは、末恐ろしいですね。

NRLグランドファイナル

2011-10-02 23:54:44 | オーストラリアについて
昨日は、AFL(オーストラリアンフットボール)のグランドファイナルについて書いたが、今日は、NRL(ナショナルラグビーリーグ)のグランドファイナルについて。

NRLは、いわば、オーストラリア及びニュージーランドにおけるプロラグビー。オーストラリアで「ラグビー」といえば、2種類ある。まずは、日本でもおなじみの15人制のラグビーと、オーストラリア特有のラグビー(13人制)のものがあり、NRLは後者。

前者と後者の違いは、人数の違いだけではなく、ルール(攻め方)に大きな特徴がある。基本的なルール(ボールを前に投げてはいけない、ノックオンしてはダメなど)は一緒であるが、後者はむしろアメフト(のような)のルールをとりいれ、攻撃側が5回、攻撃する権利を持ち、相手に倒された場所からプレーを再開する。細かいところでいえば、ラインアウトがない、スクラムがおざなり(一応組み合うけど、必死には押さない。)、ボール回しが少なく、タテの攻撃が多いなどである。

今日の試合は、シドニー主体の「マンリー」vsニュージーランドの「ウォーリヤーズ」。結果はマンリーの勝利であった。

せめて決勝戦の日程を1日ずらしたのは、AFL、NRLともにテレビの視聴率を気にしてのことだろう。それにしても、ラグビーのワールドカップがNZで行われているというのに、彼らは招集されていないということだろうか?ラグビーの種類が違うから招集枠が違うということなのかもしれないが、イマイチよくわからない。

試合の「迫力」という意味でいえば、前者の、つまり日本人が慣れ親しんでいるラグビーの方がおもしろいと思う。前者は、常にボールが生き続けており、前進やパスなどが常時行われるのに対して、後者は個人の力でとりあえず突破するんだ!(攻撃回数が5回もあるため、1回くらい失敗してもどうってことない。)という攻撃が多く、正直、攻撃スタイルがワンパターンだな。と思った。

AFLもNRLも結局のところ、大陸から押しつけられたスポーツは嫌!ということで、オーストラリア独自に進化したもので、その志は高く評価されるべきだと思う。ただし、もうひとひねり(特に頭脳を使うという意味で)があれば、もっと面白くなるのにな~と思う次第です。でも、地元のオージーが気にいっているんだから、まあ、それはそれでいいのかもしれないが。

そうそう、今日からサマータイム。部屋の中の時計をすべて調整したにも関わらず、一番身近な腕時計の存在を忘れていて、はっとしてしまった。まさに灯台もと暗しの1日でした。

AFLグランドファイナル

2011-10-01 19:11:48 | オーストラリアについて
オーストラリアの国民的スポーツである、AFL(オーストラリアンフットボール:通称フッティー)の決勝戦(グランドファイナル)が行われた。AFLは3月に開幕して、今日の試合は、年間王者を決めるもの。ほぼ毎週末行われてきた試合の総決算というだけあって、人気も期待値も高い。

○AFL(オーストラリアンフットボール)について

AFLは、フットボールといいつつも、アメフトとラグビーとサッカーを足して3で割ったようなスポーツ。名前が示す通り、オーストラリア原産のスポーツである。簡単にルールをまとめると以下の通り。

・得点
ゴール付近には、4本のポールがたっており(写真)、足でキックしたボールが真ん中の2本を通過した場合は6点。端の2本を通過した場合は1点のみ。6点入った時の盛り上がり方は異常なほどで、逆に1点入ったとしてもほぼ盛り上がらない。


・パス
手渡しと足でキックしたものの2種類がある。手渡しの場合、プレーが継続されるのに対して、キックの場合は、ボールをノーバウンドでキャッチした地点でプレーが止まり、キャッチしたチームのボールとしてプレーが再開される。

・タックル
ハイタックル(首以上へのタックル)は禁止されているものの、幅広く黙認されている。プッシングや肩と肩をわざとぶつけることも日常茶飯事。

・ドリブル
基本的には、上記の「パス」で前線へボールを運んで行くが、バスケットボールのドリブルのように、個人がもって歩くことも可能。ドリブル(ボールを1回地面にたたきつける)ことなしに歩ける距離は15メートルと決まっているが、厳密に測っているというよりも審判の裁量が広い。

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オーストラリアに来た当初はルールそのものが分からなかったが、日本でプロ野球が毎日放映されるのと同じくらいテレビで放映されているので、自然とルールがわかるようになった。アデレードには、プロチームは、アデレードクロウズとポートアデレードという2チームがある。今日のグランドファイナル(決勝戦)は、ジーロングvsコリンウッド。いずれもメルボルン近郊が本拠地のチームである。

結果はジーロング(119)vsコリンウッド(81)のジーロングの圧勝であった。途中までは一進一退の試合展開であったが、最後はジーロングが一気に攻めた感じ。コリンウッドは2連覇ならず!というところ。

私は、自宅のテレビで試合を見ていたのだが、得点が入る度に、「ウオー」という奇声が外から聞こえてくる。街の至る所にあるパブでスポーツ観戦するというのがオージーの王道のようで、仮に、テレビを見ていなくても得点シーンはわかるくらい盛り上がる。

一般論として、フッティーの観客層は、ゴデゴテのオージーであることが多い。球場では、お酒を片手に、お気に入りチームのマフラー、帽子、旗などを手に、野次を大声で飛ばす。いい意味でも悪い意味でも、this is Australiaなのだろう。

初めて試合を見た時は、そのおもしろさが全く理解できなかった。ただ、いわゆる巧いチームのプレーをみていると、単純にボールを回しているだけではなく、キック、パスなどを通じて戦略的に(これは言い過ぎかも)前線にボールを回していた。そうでないと、単純にお手玉しているといった印象はぬぐえない。

同時にラグビーW杯の試合が行われており、ワラビーズ対ロシアの試合があり、最終的にワラビーズの圧勝だったが、理路整然とルールに従って試合が進められるのは、迫力もあり、見ごたえもあった。「テキトー」がモットーのオーストラリアでは、AFLが人気なのも理解できるが、私個人としては、やっぱりサッカー、ラグビーなどちゃんとルールがある方がおもしろいな~と思う次第です。

いずれにしても、ジーロングの皆さん、おめでとうございます。

Go for 2 & 5

2011-09-27 22:03:30 | オーストラリアについて
「Go for 2 & 5」という文言が出ていたので何だろう?と思って調べてみたら、「毎日、2サーブのフルーツと5サーブの野菜を食べよう!」というオーストラリア政府の消費拡大の宣伝文句だったらしい。テレビ、CMなどでもよく取り上げられているこおとを思い出した。せっかくの機会なので、ちょっと詳しく説明。

野菜・フルーツの摂取不足は、日本のみならずオーストラリアでも深刻な問題となっており、政府をあげて消費拡大に取り組んでいる。その先頭を走るのが、「Go for 2 & 5」というわけである。しかも、この言葉はちゃんと商標登録されている。このあたりは抜け目がないというか、さすが契約社会だな。と関心させられる。

○サーブとは?

野菜や果物によって、栄養価が全く違うため、○○グラム食べればよいと単純化出来ないのが実情であるが、それでは消費者にとって不便であるため、平均値をとって、摂取の基本単位を定めたものが、「サーブ」と呼ばれるもの。日本でも取り入れられている考え方である。

○1サーブとは?

Go for 2 & 5」の説明によれば、1サーブの野菜の代表例としては、以下のものがあげられる。

・概ね75グラムの野菜
・半カップの調理された野菜
・中サイズのジャガイモ
・1カップの生野菜を使ったサラダ

また、1サーブの果物の代表例としては、以下のとおり。

・150グラムの果物(生)
・125mlの100%ジュース
・小さじ1.5程度の乾燥果物

果物2サーブ、野菜5サーブの目標は、平均的な成人を念頭に置いて考えられており、子どもや妊娠中の女性などは別個に基準が作られている。全体的な傾向としては、野菜・果物摂取不足で、例えば成人男性では、果物1サーブ、野菜2~3サーブ程度が標準的のようである。

同様の施策は日本でも行われている。日本では、「果物200グラム、野菜350グラム」をターゲットとしている。食習慣が違うため単純に比較はできないが、オーストラリアの方が若干、必要摂取量が多くなるという計算である。

健康的に、多種類の野菜・果物を、平均的に取るのが理想的ではあるが、なかなかそうもいかない。そう考えてみると、オージーに果物ジュースバーが人気だったり、丸かじりリンゴが人気だったりするのは、理にかなっているともいえる。(もちろん彼らの多くが健康に気を使っているわけではないと思うが。)

自分の食生活を振り返ってみると、ほぼ毎日自炊しているものの、マーケットやスーパーで購入する野菜、果物は、ほぼ毎週同じ。わけのわからない野菜や果物(又は大きすぎる野菜)が多いので、手が伸びないのが実情であるが、保守化してしまっては、栄養バランスにも偏りが出てしまうことに、いまさらながら気がついた。食生活は簡単には変えられないし、2&5は簡単には実現できそうもないけど、まずは、毎日果物を食べるところから始めてみようと思います。

失業率5.3%に悪化

2011-09-08 18:50:14 | オーストラリアについて
本日、オーストラリア統計局(ABS)から発表された、8月の雇用統計によると、オーストラリア全体の失業率は、先月(7月)の5.1%から0.2%悪化し、5.3%になったそうです。フルタイムの雇用が12600人失われ、2900人のパートタイムの雇用が創出された結果、相殺で9,700人の雇用が失われた結果になるそうです。市場では、鉄鋼ブームなどを背景に、失業率が改善することを予想していただけに、「サプライズ」としてとらえられているようです。

一方で、昨日発表された、第2四半期のGDPは、対前期比で1.2%の伸びとなり、クイーンズランド州の洪水などの影響から復興が着実に進んでいることがうかがえます。特に、クイーンズラン州のGDPは対前期比3.5%と大きな伸びを示しています。

スワン財務相やギラード首相は、「オーストラリア経済のファンダメンタルは依然として強い」として、経済運営に自信を見せていますが、一進一退というのが正直なところではないでしょうか。今週行われたオーストラリア準備銀行(RBA)の理事会では10か月連続で金利を据え置くことを決定したばかりです。個人消費や住宅などが頭打ちする一方で、鉄鋼ブームなどの一部のセクターは過剰な拡大を続けていることに、どのようなバランスをとるのか、といったところがポイントとなっています。

個人的感想をいえば、概して、オーストラリア経済は、調整局面に入ったと言えると思います。もちろん、西オーストラリア州を中心とした鉄鋼ブームは短期的に終わるものではないと思いますが、インド、中国などの新興国がどのタイミングで金融引き締めをはかるかわからず、さらに、鉄鋼ブームの恩恵が、それ以外のセクターに広がっていないことが、政治的にも、経済的にも問題となっており、一般の庶民と呼ばれる人々の生活は、連邦政府が予想するよりも苦しいものになっていると考えられます。

さらに、最近では、主要企業によるリストラの動きも出ています。先月のことになりますが、カンタス航空で1,000人規模、ウェストパック銀行で1,000人規模、ニューサウスウェールズ州公務員で390人など、世界経済の不透明さから、早くも解雇・整理の動きがでており、今回の失業率悪化も、それらの動向を反映したものであるといえます。

これは裏付けがなく、直感的なことで恐縮ですが、オーストラリア人の特性として、easy goingなところがあげられます。つまり、経済がうまくいっている時はそれを実感することはなく、ちょっと悪くなったら、大変だ~!!と騒ぐところ。大して大変でもないのに、「Tough」と言う人が多いのには、個人的にはいつも??でした。

一方でインフレは進行しており、賃上げ要求は着々と進んでいます。雇用さえ守れない状況で、賃上げなんて・・と思いますが、それとこれは別の話。ということなのでしょうか。

単純には比較的ないでしょうが、日本の直近(7月)の完全失業率は4.7%。これらの数値は宮城、福島、岩手の3県以外の数値となっているので、あくまで参考でしかないですが、超円高などこれだけ厳しいと言われている日本経済でさえ、5%を下回る失業率ということは、いかに日本経済が、経済の底力をもっているか、の証左ではないでしょうか。

それにしても、毎月発表される各種経済統計に市場は振り回されますね・・。一種のお祭りのようになっているのを、どこか冷めた目で、ゲンキンだなと思ってしまうのは、私がまだまだ経済人間になりきれていないということですかね。

難民マレーシア移送に「待った」がかかる!

2011-09-01 21:32:08 | オーストラリアについて
昨日の記事(オーストラリアと難民政策)の続きを書くことにします。

やっとのことで、マレーシアとの合意に至ったギラード首相でしたが、今度は国内から思わぬ「伏兵」が登場します。それが、裁判所。難民移送を「違法だ!」と訴える人々の仮処分申請を受理し、その審査が終わるまでは、難民移送を行わないようにと勧告したのです。それだけでも、ギラード政権には痛手でしたが、昨日、連邦高裁が、ギラード政権の難民移送を「不法」と認定し、難民移送を中止するように求めました。さらに、「移民省には、難民申請を待っている人々を、マレーシアに送る法的権限はない」とまで言われてしまったのですから、ギラード政権の面目は丸つぶれです。

高裁の発表によれば、マレーシアは、「難民の地位に関する条約」に署名・批准しておらず、さらに、難民を適切に保護するための国内法の整備もされていないため、マレーシアに移送された難民が人道的扱いを受けることは考えられず、そのため、今回の措置は違法だ。という論法です。

ギラード首相も、移民相であるボーエン氏も、高裁の決定を「very disappointing」(非常に遺憾だ)としたうえで、難民処理に関するあらゆる選択肢を検討すると述べています。

三権分立は、中学校の教科書で習ったとおりですが、それが如実に示されているのが今回の事例ですよね。今回の措置により、実質的に、難民をマレーシアに送ることはできなくなってしまいました。「法的権限がない」と言われたことに対抗する意味で、議会で、「難民申請者を他国に移送する法律」を作れば、一応の問題は解決しますが、労働党は、議会で過半数を得ておらず、政権パートナーである緑の党は、マレーシア移送を激しく批判していることから、この法律が通る可能性はゼロです。

ただし、ミソなのは、○○という難民政策がいいという判断を、裁判所は今回行っていないことです。もちろん、それを考えるのは政府の役割であり、ギラード氏の仕事なのですが、ギラード氏としては、「じゃあ、どうしたらいいんだよ。」と泣きごとを言いたくなるのも分かる気がします。

打開策が見えないのも、今回の問題を大きくしている背景です。保守連合としては、ハワード政権時代に用いていた難民政策、つまり、難民認定者を、ナウルに送るという策を主張しています。ナウルは、外交・防衛面から見て、オーストラリアの影響下にあり、保守連合が主張するところによれば、ナウルは、難民条約を批准しており、かつ、難民受入の意思も示している。ナウルであれば、難民条約に基づいて、適切な人道的扱いがなされるのに、どうしてそれを利用しないんだ。というのがトニー・アボット氏の主張です。

ただし、労働党は、ナウルの難民キャンプを、政権奪取前に強く批判しており、それを採用することは事実上不可能でしょう。しかし、現在、労働党政権としても、ナウル以外の国、例えば東ティモールに移送するなど似たようなことはやっているだけに、非常に苦しい立場に置かれています。

では、なぜ、マレーシアではダメで、東ティモールでもダメで、ナウルならOKなのか。保守連合として、その答えは出せていません。オーストラリアとそれ以外の国の生活水準は自ずと異なり、難民とはいえ、オーストラリアにいる場合と、その他の国に送られた場合の扱いに差が出るのは当然のことです。だからこそ、先進国であるオーストラリアを目指して海を渡ってくる難民があとをたたないわけですが・・。

個人的な感想を言えば、社会的弱者である難民の保護に関する施策は、出来る限り、政治的なイシューからの独立したところで処理されるべきであると思います。外国人排斥は現在・過去問わず、さらに地域を問わず行われているところですが、それらがもたらすのは必ずしもハッピーな結末でありません。だからといって、悪い言い方ではありますが、勝手に来てしまう難民の数を減少させる「秘策」があるわけではないのですが・・。

オーストラリアと同じ海洋国家として日本も同じ運命をたどる可能性は十分にあります。単に「国外追放」にするのは簡単ですが、「許容」と「多様性」を国是としてきたオーストラリアが、この問題でどこまでコンサーバティブに戻るのかは非常に関心のあるところです。

付け加えると、難民をマレーシアに移送することは「不法」だされましたが、難民をマレーシアから受け入れることについては、特に判断は下されなかったので、素直にこれを解釈すれば、もともとの協定どおり、マレーシアからオーストラリアに来るはずだった4,000人は、予定通りオーストラリアに来る可能性があります。オーストラリアにとっては、難民が減らないばかりか、逆に増えてしまう・・というだけでも、ギラード氏にとってはふんだりけったりでしょう。

オーストラリアと難民政策

2011-08-31 23:33:28 | オーストラリアについて
多文化主義(multiculturalism)を標榜するオーストラリアですが、昨今の難民問題には頭を抱えています。2007年にケビン・ラッド氏が率いる労働党が政権を奪取して以降、いわゆる「ボートピープル」として、オーストラリアに来る人の数は劇的に増加しています。というのも、労働党は、保守連合のハワード政権時代、難民をナウルなどの太平洋諸国に送っていたことを批判しており、難民の生活条件改善を公約とした背景があります。オーストラリアにいけば、まともに対処してもらえるらしいとの口コミ?が広がり、アフガニスタンなどから難民が押し寄せてきました。

以下は、ボートピープルの数です。急増の様子がお分かりいただけるでしょうか。

2006年   60人  
2007年  148人  
2008年  161人  
2009年 2849人 
2010年 6879人

難民として、庇護を求める人については、当該国が「難民」と認定したうえで、難民条約という国際条約に基づき、政府が、人道的扱いを行う必要があります。難民全員を受け入れる必要は必ずしもなく、治安上の理由等で、政府は拒否することもできます。ただ、上記のとおり、ボートピープルが増えると、まず、「難民」と認定するだけで時間がかかるようになります。

そのうち、難民の収容施設が満杯になったり、難民の間にも、まだ認定されないのか!というフラストレーションがたまったりしてきます。さらにいえば、これら難民は、当然のことながら、職についておらず、収容施設のある地域の住民を中心に、治安悪化への不安が高まり、難民排斥の動きが見られるようにもなります。

労働党政権はもちろん、保守連合も、'Stop the boats'が合言葉となり、ボートピープルをなるべくオーストラリアに来させないようにする方策を練り始めます。ボートピープルにしてみれば、これまで受け入れに寛容だったオーストラリアが、急に手のひらを返したように冷たくなるのは、いささか納得のいかないことだったのでしょう。

難民収容施設で、暴動の類が起こったり、ボートピープルとして、上陸しようとしていた船が転覆し、多くの方が犠牲になるなどの悲惨な事件を経て、難民受け入れを制限しようという動きが民衆レベルでも徐々に出始めます。

そんな中、ジュリア・ギラード首相は、これらの事態を改善するための秘策を打ち出します。オーストラリアで難民申請を待っている800人をマレーシアに移送し、その代わりに、マレーシアで「難民」として認定された人を4,000人受け入れるというもの。難民の数自体は減らないというか、むしろ増えるのですが、とりあえず、難民申請待ちという目先の人たちを減らすことができるという奇策です。「難民交換協定」('Malaysia Swap deal'とも呼ばれています)を、7月末に正式にマレーシアとの間で結びました。オーストラリアは移民の国であり、Immigration Minister(移民相)がいるくらい、移民政策は重要視しているのですが、この協定は、国民から総スカン。。

だいぶ長くなってきたので、続きは明日以降に記すことにします。

Clean Energy Future

2011-08-19 21:08:52 | オーストラリアについて
とある日、家のポストに、「Clean Energy Future」と題されたパンフレットが入っていた。来年7月から導入される予定の炭素税(Carbon tax)をアピールするために政府が作成したパンフレットであり、一般の理解を得るためのものである。

面白いなと思ったのは、このパンフレットとともに、地元選出の労働党の国会議員の紹介が入っていたこと。おそらく、政府のパンフレットは、労働党の下部組織・地元組織によって各戸に配布されているのだろう。あくまで推測にすぎないが、政府としても郵便代金の節約になるし、労働党としても実績アピールになるから、一石二鳥というところか。


内容を細かくみていくと、以下のとおり。


まず、【炭素税の必要性】について。
○人口一人当たりの温室効果ガス排出量で見れば、オーストラリアはアメリカ、中国、インドよりも多い。
○何も対策をとらなかった場合、2020年までに排出量は毎年2%上昇する

【次に、炭素税の内容・効果について】
○炭素税は、個々人に対する税ではなく、汚染物質を大量に排出する事業者に対して、1トン当たり23ドル(この額は年々上昇する)を課税
○火力などから、太陽光、風力などへの再生可能エネルギーへの投資を促進させる。
○炭素税導入により、2020年までに1.6億トンの温室効果ガス削減効果あり。これは、4500万台の車の排出量に匹敵する量。

【炭素税によってもたらされるマイナス面】
○炭素税によって、消費者に価格転嫁されることもありうるが、年間の生活費を0.7%程度押し上げるのみ。
○0.7%という数字は、2010年度のインフレ率(2.9%)よりも小さい数字。
○週単位で見れば、1家庭あたり9.9ドルの支出増であり、そのうち電気代増が3.3ドル、ガス代増が1.5ドルという試算。

【素税の影響を緩和するために・・】
○約90%の家庭が、所得税減税、年金増のいずれか、または両方の恩恵を受ける。
○9.9ドルの支出増に対して、10.10ドルの収入増パッケージを用意。
○年ベースで、年金生活者は338ドル、子ども手当を受け取っている家庭は110ドルの手当てが追加支給。
○年収8万ドル以下の労働者(750万人)が、所得税減税を受けることができ、最低でも、一人300ドルを受け取り可。

(以下、考察&雑感)
・オーストラリアの人口が極端に少ないのに、人口一人当たりの排出量を比べてもあまり意味がないのでは??
・政策の良しあしは別にして、具体的数値を用いて説明する姿には好感。
・気候変動対応の必要性は認めるものの、生活費上昇の補償を政府が直接行うということは、
そもそも、国民生活に炭素税が大きく影響しているということを認めていることと同じであり、
若干の論理破たんをきたしている気がする。
・オーストラリア経済が継続的に成長することを前提にしているので、その前提が崩れた場合どうなるのか?
・インフレ基調の現在のオーストラリアにおいて、さらにインフレを招く税を、生活費増で苦しむ国民が受け入れるのか?
・昨今、資源ブームにも一定の陰りがみえはじめ、失業率上昇の中、支持率の低いギラード政権がどこまで求心力をたもてるのか?

などいろいろ考えることはあります。
来年7月から施行される炭素税ですが、保守連合は、自陣営が政権をとった場合、これらを廃止するといっており、全く予断を許さない状況です。

インフレ、世界経済の不透明さ、失業率増など向かい風の状況の中で、炭素税がどうなるのか?現在、国を二分するほどの大論争(どちらかといえば反対が多い気がしますが。)来年7月にはくまはオーストラリアにいませんが、これは見ものですね。

以上、炭素税に関するパンフレットのまとめとそれに関する雑感でした。

余談ですが、上記の内容は、www.cleanenergyfuture.gov.auから見ることができます。URLをフレキシブルに設定するのも、オーストラリアらしいともいえますね。

ジェットスタージャパン

2011-08-16 21:16:33 | オーストラリアについて
日本でも大きなニュースになっていると思いますが、JALと、カンタス航空会社子会社であるジェットスターは、新たに、格安航空(LCC)として、「ジェットスタージャパン」を設立し、日本の国内線のみならず、中国など短距離国際線にも進出することを発表しました。JALとカンタスはワンワールドグループでもあり、これまでにもコードシェアなどの協力関係もあるので、その辺はうまく行ったと思いますが、オーストラリアの国内線でも何回か使ったことがあるジェットスターが日本でも乗れるようになるかと思うとちょっと不思議な気分です。

マレーシアのLCCである、エアアジアも、エアアジアジャパンを設立することになっていますし、これから本格的に、日本にもLCCの時代がやってくるということになりますね。さて、どこまでJAL,ANAに食い込めるのか。かなり見ものです。

これに連動して、カンタスの国際線運営に関する戦略見直しが発表されました。正確にいえば、ジェットスタージャパンの設立も、国際線運営の見直しの一環です。カンタスグループとして、「アジア」に軸足を置き、ジェットスタージャパンにくわえて、アジアのどこか(未定)に、新ブランドを設立し、国際線運営を見直すことになるようです。

カンタス航空CEOのアラン・ジョイス氏の言葉を借りれば、一連の見直しは、オーストラリアから出国する際に使用される航空会社のうち、カンタス航空本体が占める割合が18%まで低下しており、ナショナルフラッグキャリアとして、危機感を抱いたものだそうです。

人口が増えているとはいえ、大幅な需要増が期待できないオーストラリア国内ではなく、需要増が期待できるアジアに目を向けようというのは、ある意味賢明な選択なのかもしれません。

これにともない、エアバス380(A380)の購入を最長6年間延期し、コスト削減を図るとともに、1,000人の人員削減を実施するとのことです。国内では、雇用が失われることへの警戒感が強く、パイロット、組合ともに、今回の案に反対しています。パイロットが反対する理由の一つには、カンタスのパイロットと、ジェットスターのパイロットでは、待遇(給与)に差があり、ジェットスター重視戦略となると、自身の給与が減ってしまうという事情もあると思います。

オーストラリア国内をみると、LCCのジェットスターかバージン・オーストラリアが、カンタスよりも必ずしも料金的に安い場合ばかりではないんですよね。LCCの料金は、残席と連動しているので、空きがたくさんある場合は、もちろんカンタスよりも安いのですが、カンタスの方が、一般論として、便数が多い(1日に何往復もしているため)ので、結果的に見ればカンタスの方が安いなんてこともあります。数十ドルでシドニー・アデレードを移動できるなんて場合もありますが、こういうチケットはすぐに売れてしまうので。

タイガー航空の運航停止処分も解除され、これからますますオーストラリアの航空業界は盛り上がって行くんでしょうね。ジェットスタージャパンもいいですが、まずは、運行休止中の、成田・パース便、成田・ブリスベン便を早期に復活させて、さらに、欲を言えば、1週間に1便でもいいから、成田・アデレード便を作って欲しい・・。これが、いまの切なる願いです。まあ、アデレード便は、おそらく難しいというか不可能に近いでしょうが(笑)

オーストラリア版新幹線~シドニー・ブリスベン間3時間で~

2011-08-04 17:56:17 | オーストラリアについて
労働党政権が選挙の際公約にしていた、東部の都市間を結ぶ高速鉄道に関する実用可能性報告書(feasibility study)が発表されました。それによると、総延長は1600キロで、ブリスベン・シドニー・キャンベラ・メルボルンのオーストラリアの総人口の3分の2を占める4大都市を結ぶことになるそうです。

最高時速は350キロ。都市圏を走る際は、200キロの設定となるそうです。その結果、現在14時間かかっている、シドニー・ブリスベン間がたったの3時間。同様に、現在11時間かかっているシドニー・メルボルン間も3時間以下で結ぶことが可能になるそうです。余談ですが、現在は、上記の東部都市間は、日本の特急のような位置づけで、XPTという電車(XPTはExpress Passenger Trainの略。最高時速160キロ)が結んでいます。

オーストラリアの高速鉄道計画は、実はこれが初めてではなく、これまでに何回か計画されては、コスト面、路線をめぐる対立などから頓挫した経緯があるので、今回の計画も、10年後、20年後を見据えた対応が必要です。

今回の計画も、610億ドル(約5.2兆円)から1080億ドル(約9.2兆円)程度かかるとの見積もりが出ており、野党からは早速コスト面での批判が出ています。人口が少ないオーストラリアにおいて、それだけの巨額投資をする価値があるのか?、さらに、産業としてペイするのか?などは今後の議論が必要なところでしょう。

高速鉄道の議論では、海外の事例も積極的に引用されます。日本の新幹線(もはや、「Shinkansen」は国際語で、ニュースでもそのまま使われています。)は、高速鉄道の安全性を示すものとして積極的に用いられています。1964年の開業以来、シビアインシデントを起こしていないこと、死者を出していないことなどが評価されています。ただ、日本の新幹線(例えば、のぞみN700系やはやぶさ)が300キロ程度の走行をしている中、いくら田舎を走るからといって、オーストラリアの技術で350キロを出すというのはちょっと心配な面もあります。

野党の中にも、例えば、前国民党党首のTim Fischerのように、「Now or Never」と述べ、今回のプロジェクトを歓迎する声も一部にありますが、総じて、保守連合の反応は冷ややかで、今回の計画がすんなりと進むとは思えません。

与党としては、人口が急増している東部地域の発展と、温暖化ガス削減を狙っているようですが、コスト面の検証はこれから。来年には、第2弾の報告書がでるようです。

電車好きのくまとしては、ぜひ、この高速鉄道を実現してほしいな~と思う次第です。シドニー・メルボルンが3時間で着くのであれば、空港でのチェックインやらなんやらを考えれば、十分時間的な面では対抗できると思うので。まあ、これが実現するとしても、20年後くらい後の話でしょうか。

オーストラリア準備銀行、政策金利据え置き

2011-08-02 23:31:18 | オーストラリアについて
オーストラリアの中央銀行であるRBA(オーストラリア準備銀行)は、政策金融決定会合を開き、政策金利を現行の4.75%に据え置くことを決めました。利上げ、利下げと双方の予測が出ていたものの、おおかたは、据え置きと予想していたようなので、概ね「予想通り」と受け止められていますが、それでも、豪ドルは米ドルや円に対して下落する展開となっています。

先月末に発表された、第2四半期消費者物価指数がRBAのターゲットである2~3%をわずかに上回る数値(年換算3.6%)であったことから、金融引き締め(利上げ)への期待が高まる一方で、先ごろ発表された、新規住宅着工件数や、小売販売データは、国内経済が足踏み状態に陥っていることをしめしており、RBAの判断が注目されていました。

今回、金利が据え置きとなった背景には、アメリカや欧州の金融不安がくすぶっていることも大きく影響しており、RBA自身もそれを認めています。加えて、史上最高値(1豪ドル=1.1083米ドルまで上昇)の豪ドルの行方も気になるところです。

日本円も、1米ドル=80円を超える超高値圏内が長引いていますが、日本よりも経済規模が小さいオーストラリアは、豪ドル高に必ずしも対応しきれていない感じがします。オーストラリア経済は、資源ブームを背景にした好景気が依然として続いているものの、その恩恵が、資源産業以外のセクターに広がっていない(少なくとも、国民の多くはそう感じていない)のが大きな問題です。逆にいえば、これだけ景気がいい(はずの)経済下で、なぜ、多くの国民は、生活苦を訴えるのか?は非常に興味深い問題ですね。

いずれにしても、オーストラリア経済は、世界経済の影響を大きく受けます。豪ドルの値動きも、ここ数日乱高下が続いています。留学生として生活する上では、もう少し円高豪ドル安になってくれた方が嬉しいですが・・。

留学してからというもの、オーストラリア経済だけではなく、アメリカ経済を含めて、世界経済の動き(失業率、金利等)に敏感になったと思います。それによって、自分自身が、儲かる、儲からないという短期的なことではなく、月並みな言い方ではありますが、世界はつながっているんだな~と思い知らされることが多くなったような気がします。

コストコがシドニー&キャンベラ進出、小売二強体制を崩せるか?

2011-07-22 22:23:56 | オーストラリアについて
アメリカ資本の小売大手である、コストコ(Costco)が、今週木曜日にシドニー店を、そして今日(金曜日)にキャンベラ店を相次いでオープンさせたとの記事が大きく取り上げられていました。The Australian紙によれば、シドニー店は初日から大盛況で、駐車場750台分のスペースがすぐにいっぱいになったとか。

コストコは日本にも進出しているので比較的メジャーだと思いますが、「会員制倉庫型店舗」(コストコHPより)です。あらかじめ年会費を払った会員のみが買い物をでき、大量仕入れを行い、棚に大量に積むことにより、細々とした棚卸のコストを省き、さらにまとまった量をパッケージにして売るなど、非常にユニークはお店です。

コストコの、オーストラリアにおける歴史をひも解いてみると、2009年にメルボルン店がオープンしたのが最初ということなので、比較的歴史は短いです。シドニー、キャンベラと連続してお店を進出させましたが、今後3年間でさらに全豪で6店舗進出計画があるようです。日本では、幕張、多摩、金沢シーサイドなど9店舗が営業中です。

以前も紹介しましたが、オーストラリアの小売は、約70%がウールワースとコールズに独占されています。コストコの資本力は世界的に見ても大きいものですが、オーストラリアの市場にどの程度食い込めるのか、もっと言えば、ウールワースとコールズにどの程度対抗できるのか?が非常に見ものです。

コストコの経営戦略など細かい点は見ていないのですが、倉庫型店舗という販売方式は、オーストラリア人のスーパーでの購入スタイルにマッチしており、その意味で可能性は十分あると思います。こちらの家族は、週末ともなれば、車でショッピングセンターに行き、カートいっぱいに食品等を購入する。という姿が一般的です。

日本人には考えられないくらいの大きさと量の商品(例えば、1キロ単位の粉チーズとか)が、スーパーで当たり前に売っています。こうした「大きさ」に慣れているオーストラリア人にとって、コストコは非常に魅力的にうつるのではないでしょうか?くまも幕張店に1度だけ行ったことがありますが、商品の大きさにただただ驚くばかり。「○○は欲しいけど、10コもいらないな~」というものばかり。一人暮らしには完全に不向きで、家族連れまたは複数の家族で品物をシェアするくらいでちょうどいいかなと思いました。ただ、商品は豊富で、売り場も広いので、お買いもの自体が楽しかったのはよく覚えています。

メルボルン、キャンベラ、シドニーは比較的距離が近いので、配送などのロジスティックスを考えてもコストが少ないので、出店地としての合理性はありますが、次はどこになるのか?アデレードにコストコが来る日は来るのか?これもまた見どころの一つですね。

ちなみに、コストコの会員になるための会費は、年間60ドル。高いのか安いのか・・。