くまくまDays~アデレードな日常~

新しい環境の中で感じたことをつれづれに書きつづります。

値下げ競争鶏肉にも

2011-03-31 18:50:10 | アデレードでの生活について
大手スーパーマーケットである、ウールワースとコールズの間で、自社ブランド牛乳の値下げ競争が起きている記事を書いたところですが(過去の記事はこちらを参照)、その余波は、牛乳以外にも広がっているようです。

店舗によって違うみたいですが、一例と取ると、コールズでは、鶏肉(むね肉)は、通常$13/kgで販売されているのが、$10.9/kgと、約16%値下げされています。また、あまり表には現れませんが、卵にも値下げ競争の兆しがあるようです。

日豪プレスの記事 → こちら

また、牛乳にも新たな動きが出ています。

当初、自社ブランド牛乳の値下げにとどまっていたのですが、他社ブランドの牛乳も概ね値下げ傾向にあります。例えば、オーストラリアではメジャーな牛乳である、Dairy Farmers社の牛乳ですが、例えばウールワースでは、通常3.5ドル(2L)のものが、2.99ドルに値下げされていました。こちらも約15%の値下げです。

額自体は確かに小規模ですが、それが産業単位となると、その影響ははかり知れません。15%安くなった分のコストは誰が負担するのか?小売店、生産者?

値下げ開始からそれほど時期がたっていないので、正確な統計は取れていないようですが、コールズなどによると、値下げ以降、牛乳の売上は値下げ前と比べて伸びているようです(ただし、値下げ分を賄うほど売り上げが伸びているのかは明らかにされていません。)

インフレ体質のオーストラリアでは珍しい現象。以前にそう書いたと思います。確かに生産者の気持ちを考えると簡単には賛成しかねる面もありますが、何でも値上げ!!で凝り固まっているオージーに、食品流通を抜本的に見直すいい機会になっているということだけは確かだと思います。

食料品は生活必需品なので、この値下げ競争がどこまで広がるのか、これからも注目ですね。


東京の桜

2011-03-30 21:53:21 | その他
2日ほど前になりますが、東京でも桜の開花宣言がされたそうです。開花時期は、平年並みだそうですが、昨年よりも6日遅い開花だそうです。今年はやはり寒かったということでしょうか。

桜が咲く時期。桜の中の入学式。いい光景ですね。
日本ではまだまだ辛いことが続いていますが、春の代名詞とも言える桜が咲いているのは素直に喜ぶべきだと思います。

東京の桜スポットと呼ばれている場所はたくさんありますが、個人的には、霞が関の外務省前の桜が好きです。
それほど大がかりじゃないけど、無機質なビル群の中でひっそりと咲いているようでなんだか気持ちが温かくなるような気がするのです。
もし、お時間がある方は是非見に行ってください。
(私は海外なので見に行けませんが、情報によれば既に外務省前の桜は既に開花しているようです。)

丸の内線、日比谷線霞が関駅から徒歩0分。地下鉄直結で桜が見られる場所というのはもしかしたらここくらい・・かも!?


アデレードはすっかり寒くなりつつあります。最高気温は20度前後。もう、Tシャツ1枚では寒いです。
今日、テレビでアナウンサーさんが、「すっかり秋ですね!」と言っていて、おもわず激しく同意してしまいました(笑)

クリケット:キャプテン突然の辞任表明

2011-03-29 23:33:02 | オーストラリアについて
オーストラリアクリケットナショナルチームのキャプテンである、リッキー・ポンティング(Ricky Ponting)氏(36)が突如、キャプテン辞意を表明しました。この会見はテレビで生中継され、また、夕方のニュースでもトップ項目で取り上げられるなど大きな騒ぎとなっています。

オーストラリア在住の方にはおなじみだと思いますが、クリケットはオーストラリア(英国圏全体)では国技であり、そのナショナルチームは絶大な人気があります。そのキャプテンが人気があるのはもちろんのことです。各種会見を主に一人でこなし、まさに、「オーストラリアクリケットの顔」として活躍してきた人です。人気のある競技の人気あるキャプテンの辞任いうことは、日本でいえば、相撲の貴乃花が引退表明したくらいのインパクトはあると思います(言い過ぎかも?)

リッキー・ポンティング氏は、2004年からキャプテンをつとめており、チームの精神的支柱であったと言えます。私もたまに彼の会見などをみますが、非常にハキハキしていて、英国紳士のような対応で、非常に好感が持てる選手でした。

今日の会見内容をまとめると、

○(現在開催されている)クリケットワールドカップの敗退や、(イギリスとの)アッシュ杯の敗退によりキャプテン辞任の決断した。
○キャプテンは辞任するが、選手としては現役続行。これからもチームに貢献したい。
○次期キャプテンは、マイケル・クラーク(Michael Clarke)氏となるだろう。
○今回のキャプテン辞任表明のタイミングは、時機を得ている。

とのことでした。

詳細は → こちら(英語)

7年もキャプテンをやっているのですから、確かにどこかで後進に道を譲るということも必要でしょうし、W杯敗退の責任を取るという意味もあるのでしょうが、一部報道では、チーム員との確執も伝えられています。紳士のスポーツであるクリケットチームにも一部「あらくれもの」もいて、キャプテンとして、手を焼いていたようですし。

いずれにしても、あまり日本では報道されないことだと思うので、少々詳しめに解説しました。
(個人的に、何度見ても、クリケットのおもしろさ(オージーがなぜあんなにも興奮するのか)が未だに理解できないのは、ここだけの秘密です。)




Waffle's

2011-03-28 23:04:00 | アデレードグルメについて
ハインドリーStから一本入ったレイSt。石畳になっていて両脇にはオシャレなレストランなどが並ぶこの通りに「Waffle's」というお店があります。ちょうど味千ラーメンの真向かい(道を挟んで)くらいの場所です。どうやら、韓国経営のお店のようです。店員さんも韓国人。客層はアジア系(特に中国人)が多いようです。

外観はこんな感じ。こざっぱりした雰囲気でしょうか。このマーク(写真右)が目印です。そのまんまですね。


店内は意外に広く、店内奥のレジで注文する形です。


メニューには写真もあって親切ですね。どれもおいしそうに見えます。


ものすごく迷って、ベーシックなベルギーワッフルとリエージュワッフルを一つずつ注文。食べ過ぎだと思ったのですが、決めきれませんでした。

まずは、Half Belgium Waffle($4.9)。これでハーフサイズです。ノーマルサイズは一人では食べきれない大きさです。要注意。ノーマルといっても、メープルシロップとチョコレートソースがかかっています。

肝心のワッフルの味は、うーん、ものすごく微妙。ワッフルといえば、サクッかフワッのいずれかの感触が欲しいところですが、モチっとしていて、どっちつかず。ワッフルの味自体もイマイチ深みがなく、自宅で作ったパンケーキをしばらくしてからチンした感じの味。
(その後アイスを乗せたら、アイスの味にマッチしてそれなりの味になりましたが・・。)


次は、Cream Cheese Waffle($4.5)。土台になるワッフルは↑と同じ味でした。クリームチーズに期待していたのですが、酸っぱさと甘さのバランスが取れていなくて(甘すぎる)、うーんと唸ってしまう感じでした。


店内の様子や店員さんの対応はよかっただけに非常に全体的に残念なお店でした。
大勢でワイワイ行くのであれば、大き目のやつを頼み(アイスは必ず乗せること)、皆でシェアするというのであればアリだと思います。朝食もやっているみたいです。

Waffle's

Shop 2, Leigh St, Adelaide
Tel: 08 8231 7677

Mon-Thur 7:30am-6:00pm
Fri 7:30am-10:00pm
Sat 12:00noon-6:00pm

F1オーストラリアグランプリ

2011-03-27 19:54:12 | オーストラリアについて
F1オーストラリアグランプリが、メルボルンで開催されました。アデレード在住の方にはおなじみですが、実は1995年まではアデレードでF1が行われていたというのですから、ちょっと残念。

メルボルンのコースは市内からすぐ近くのアルバート公園。テレビを見ていただければわかるかと思いますが、後ろに街並みが見えてきれいですよね。

結果はご存知のとおり、ベッテルの優勝となったわけですが、日本にいるときとまた違った気分でF1を見ることができました。

もちろんテレビの実況中継は英語なので、早口で話していると何を言っているのか100%は理解できないのですが、日本よりも情熱的に、でも、落ち着くところは落ち着いていてなんだか安心して見ることができました。日本だとたまに叫ぶような実況中継・・ありますよね・・。

メルボルンにいる方に話を聞くと、やはりF1というのは大人気で、その前後ではホテルも全て満室。ホテルの値段もかなり上げられるようです。
経済効果ももちろん大きいのですが、騒音、コストなども非常に大きいらしく、開催に反対している人も多いようです。それならアデレードに戻してやってくれればいいのに・・と思ってしまいますが。

ちょっと嬉しかったのは、選手たちがレース前に記念撮影をしたのですが、その看板に「がんばれ、日本」と書いてあったこと。地道に少しずつでも支援の輪がこれからも広がっていったらいいな~と思いました。

ただ、テレビを見ながら思ったのですが、F1は直接見るよりもテレビで見る方がいいのでは。
もちろん現場の臨場感は伝わらないですが、時速200キロ近くで目の前を通り過ぎていく車は、下手をすれば誰の車であるかさえ、区別できないこともあるでしょうし、細かい状況(給油時間、チームラジオ)などわからないことが多いですよね。

小林の8位入賞はもちろんアッパレです!!
→と思ったら、車両規定の違反で失格って!!残念!!

アースアワー

2011-03-26 22:28:42 | アデレードでの生活について
日本でも少しニュースになっていたかもしれませんが、今日は、アースアワーと言って、現地時間の夜8時半~9時半の間、家庭、企業などの不必要な電気を消して地球温暖化を少しでも防止しようという世界的活動が行われた日でした。(毎年3月最終土曜日に行われることとなっているイベントです。)

最近知ったことですが、このアースアワーの歴史は意外にも浅く、2007年にWWF(世界自然保護基金)オーストラリア支部とシドニーの地元紙であるシドニーモーニングヘラルドが始めたものが、世界に広がったもの、のようです。今年は130の国・地域がこの運動に参加したそうです。

ウィキペディアは こちら

WWFのページは こちら

私が知らないだけかもしれませんが、それほど大がかりで盛り上がることもなく、この時間帯もテレビは通常通り放映されていました。ただ、今日行われたNSW州議会議員選挙の、現・州首相の敗北宣言が、電力事情を察してなのかわかりませんが、アースアワー終了後に行われたことくらいでしょうか。

アデレードも、何か変化があるのかな?と思って我が家からシティーを眺めていたのですが、アデレードの街自体がもともと暗いのでそれほど劇的な変化は感じられませんでした。強いて言えば、ヒルトンの看板の電気が消えていたことくらいでしょうか。

いずれにしても、まだまだ、被災地をはじめとして、関東地方では厳しい電力事情が続いています。
今回の震災を通じて、電気のありがたさを少しでも感じることができたのは、きっと日本人だけではないと思います。ほんとうに、我々の生活は電気なしでは語れないですね。世の中便利になりすぎるのも一面では考えものですが、便利さと不便さをどのようにマネージしていくかが本当に価値のあるものなのだと思いました。

New India

2011-03-25 23:09:52 | アデレードグルメについて
ハンドリーStとモフェットStの角にある、「New India」というインド料理のお店にランチに行ってきました。
お店のホームページは → こちら

外見は少し暗い感じ。ただ、ガラス張りで店内の様子がわかるのでそれほど恐怖感はありません。


店内は意外にも広く、天井が高い。贅沢すぎるくらい机と机が離れているので、合計40席程度しかないでしょうか。ガラーンとしている印象です。店内のお客さんはほぼインド人。アジア人はくましかいなくて非常に浮いていました(汗)


ランチメニューは、7.9ドル~9.9ドルと非常にリーズナブル。夜は、ランチよりもたくさん種類があります。


くまは、チキン&ビーフを注文(9.9ドル)。ライス付きです。


じもてぃーが来るようなカレー屋だったら辛いかな・・と覚悟したのですが、ビーフ、チキンいずれもピリ辛程度。野菜がたくさんいれてあるのか、非常に甘みを感じます。肉が少なかったのはご愛嬌・・というところでしょう。ライスはもちろんロンググレイン。

総合的には、ボリューム&味的ともに、少し物足りない。レストランというよりもテイクアウェーであれば適切なレベルかもしれません。インド人はこれで満足できるのかな・・。ただ、立地的にはUni SA West Campusのすぐ近くなので学生さんとかにはいいかもしれません。

New India Restaurant
167 Hindley Street, Adelaide
Tel:08 8212 8212

Monday to Friday:12.00 NOON TO LATE
SATURDAY CLOSED
SUNDAY 5.00 PM TO LATE

教会の街③~聖ピーターズ教会~

2011-03-24 23:58:05 | アデレードの見どころについて
「教会の街」シリーズ。もう半年以上サボっていたのですが、第3弾です。少し前に行った聖ピーターズ教会を紹介します。
聖ピーターズ教会は、ノーステラスから、King William Rdを10分ほど歩いた場所にあります。

この教会は、アデレードのシンボル的存在でもあり、1904年に完成したゴシック式の尖塔が印象的な建物です。
どうやら、キャンベラの都市計画を担当したグリフィン氏によって設計されたようです。
中はステンドグラスが素敵です。
写真を撮るのはマナー違反だと思ったのでやめておきました。ご自身の目で確かめてください。一見の価値アリです。

なんといってもこの教会が素敵なのはライトアップ。
昼間の姿も荘厳ですが、夜の姿はなおさら素敵ですよ。(まわりがそれだけ暗いということでもあるのですが・・)

日本赤十字社:募金額速報

2011-03-23 23:21:44 | その他
日本赤十字社のHPを見たところ、3月14日から3月22日までに寄せられた募金額(速報)が掲載されていました。

【参照URL】
http://www.jrc.or.jp/contribution/l3/Vcms3_00002096.html

その額、228億278万18円。自分が募金した額はほんの少しですが、目に見える形で金額が示されると非常に頼もしくなります。

一方で、内閣府が試算したところによると、今回の地震・津波による被害額は、16兆円~25兆円。日本のGDPを0.5%引き下げるほどの影響があるようです。

【参照URL】
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110323-OYT1T00691.htm

億と兆。

ケタが違いすぎて一瞬言葉を失いましたが、千里の道も一歩から。
息の長い支援が必要ですね。

募金を初めて1週間ほどでこれほど集まったのもすごいことだと思いますが、全国各地・世界各地で集められた募金が次々と日本赤十字社に集められていきます。いろいろな会社・団体・芸能人などが募金活動を行っていて、その募金先を調べてみたのですが、日本赤十字社になっているところが多いようです。そのため、日を追うごとに募金額、各地からの支援は増えていくように思います。

実は、芸能人による募金活動(○○基金などの設立)には、個人的には懐疑的でした。「何かしたい」という気持ちはよく分かりますが、そういう時に新たな組織を立ち上げるよりも、知名度を活かして、積極的に日本赤十字社や中央共同募金会への募金を呼び掛けるほうが効果的なのでは、と思っていました。実際、お金の管理の問題もありますし、善意の気持ち(お金)がどの程度集まり、どのタイミングで、どの団体に募金されたか等はしっかりと把握する必要があると思います。(過去にも、この種の事件は起きていますからね・・)それにしても、芸能人による「○○基金」はいくつも立ちあがっていますよね。分散するよりも大括りになったほうがお金を有効かつ効果的に使えるという面もあると思いますし。

ただ、それらの基金のお金が、すべからく、赤十字社や募金会に行くのであれば、そういう形の支援もアリなのかなと思います。結局、どのような団体を経由したとしても、被災者の方へ支援の手が行けば、最終的にはいいのですから。(乱立しすぎとの感は否めませんが、間口が広いというのは決して悪いことではないのかも・・?)

繰り返しになりますが、募金する側としては、キチンとした団体なのか、募金先はどこなのか等しっかりと見極める必要があると思います。募金してしまった後は、ある程度はブラックボックスなので。皆さんの善意を無駄にしないためにも。

いずれにしても、どこに募金していいのか分からない場合は、赤十字や共同募金会に直接募金しましょう~!!

「保護する責任」から見たリビア空爆(その3)

2011-03-22 21:37:09 | 大学について
リビア空爆は今日も続けられたようです。オバマ大統領は、訪問先のチリでインタビューに応じ、(飛行禁止空域を設定した)「国連安保理決議に忠実に行動する」と述べ、介入が限定的であることを示唆したようです。

【参考:asahi.comより】
http://www.asahi.com/international/update/0322/TKY201103220136.html

リビア情勢は依然として予断を許さない状況ですが、昨日に引き続き、「保護する責任」から見たリビア空爆を考察してみます。

一昨日、昨日にも述べたとおり、「保護する責任」は、国際的に広く受け入れられつつある概念であることは間違いないと思います。ただ、それが国際規範になっているかといえば疑問を挟まざるをえません。というのも、「保護する責任」にもいくつかの論点が内在されているからです。これら一つ一つを論じていくと、修士論文になってしまうので、そのうちの大きなもの、「right authority」について考察します。

「right authority」とは、簡単にいえば、誰が武力行使を認めるのか?ということです。
二度の世界大戦を経て、世界では、自衛戦争を除き、武力行使が一般的に違法とされています。「世界政府」といったものがない以上、武力行使を「容認」したり、「否認」したりする権利は理論上はどこにも存在しないことになります。

ただ、前述の、「主権と介入に関する国際委員会」ではこの問題も当然のことながら議論され、当面、国連安保理以外にこの役割を果たしうる機関はないとしています。(安保理が機能不全に陥った時には、国連総会がその役割を代替すべきとも言われています。)

現実問題として、国連安保理以外に権威ある国際機関はないというのは大方納得いただけるのではないかと思います。ただ、国連の成り立ちを考えた時に、この安保理が未来永劫にわたって、長期的に権威ある組織であり続けるのかは疑問が残るところです。

安保理の決議があったからといって、従来からの、「武力不行使」「内政不干渉」といった国際規範を乗り越えられるのかということも問題になります。
(バンキムン事務総長は今回の介入は、「内政干渉」に当たらないとのメッセージを出しています。)

以上、3回にわたり、「保護する責任」の一端を紹介しました。
私個人として、介入に賛成・反対の意思表示をするつもりはありません。国際関係論において主流になりつつある、「保護する責任」という概念を皆さんに示すことで、感情的な議論を排し、世界各地で起きている事象に目を向けてほしかったのです。

もし、ご要望があれば、保護する責任について、さらに詳しく説明しますが、ひとまず今日で終了します。リビア情勢が再び大きな転機を迎えた時に、また、この話題は更新します。


「保護する責任」から見たリビア空爆(その2)

2011-03-21 23:03:35 | 大学について
昨日に引き続き、リビア空爆について考察してみます。
とはいえ、日本ではまだまだ地震関連のニュースが多いですね。昨夜のNHKニュース7ではさすがにリビア関連のニュースがあるかなと思っていましたが、30分間全て地震関連でした。確かに被害の大きさを考えれば当然かもしれませんが。

さて、今日は、昨日記した、「保護する責任」の4つの要件が今回のリビア空爆に当てはまるかなどについて考察してみます。

(a)正しい意図(right intention):介入の主要な目的が、人間の苦痛の排除にあること
連合軍がリビア空爆の目的としているのは、「飛行禁止空域」の設定であり、ガタフィ政権側による反政府勢力への無秩序な空爆をやめさせることと言われています。ご案内のとおり、「飛行禁止空域」を国際社会が設定すると言っても、それが実効あるものになるためには、敵側の制空権を抑える必要があります。そのために、連合軍は、ガタフィ政権側の対空能力を奪うべく、軍事基地などを攻撃しています。

この時点では、連合国として、ガタフィ政権の打倒まで直接的に踏み込んだわけではありません。国際社会の足並みが若干乱れる中、そこまで踏み込んで言及してしまえば、空爆への了解が取れなかった可能性さえあります。

ただ、多くの国が、そこまで見通しているのもある程度事実だと思います。実際、イギリスのヘイグ外相は、「ガタフィ大佐を攻撃目標とすることは、状況次第」(時事通信より抜粋)として、含みを持たせています。

人道的介入の歴史をたどっても、饗場(2008)によれば、「介入主体の意図・動機には人道目的の利己的要素が付随し、場合によってはそれが主要な部分を占めうるのがむしろ一般的」である。また、Frank&Rodley(1973)は、「自国に利益がない時には介入しないのが一般的」とさえ言っている。

考えてみればそれも理解できる。自国民の兵士を危険にさらす以上、いわば理想主義的な人道目的以上に、実利的に、自国民に武力行使を納得させうる「利益」がなければならない。そのため、大国が人道目的以外を念頭において軍事行動を行ったからと言って直ちに非難されるべきではないと考える。必要なのは、人道目的と、それ以外の目的のバランスである。

連合軍の意図として、「飛行禁止空域」を設定することで、ガタフィ体制側を停戦交渉のテーブルにひっぱりだそうとしており、それ自体は純に人道目的と言えると思います。

(b)最後の手段(last resort):あらゆる非軍事的選択肢が尽くされたこと
国連安全保障理事会における決議、旧宗主国のフランスをはじめとした欧州各国による調停、国連から派遣された特使、アフリカ連合(AU)による仲介など、報道されている限りにおいても、国際社会が各種の外交的努力をしてきたことは紛れもない事実だと思います。

問題は、すでにその外交努力が決裂するほどの状態なのかということです。ただ、政権側の反政府部隊への攻撃は悲惨さをましており、その攻撃はとどまるところを知りません。こういう中で、停戦合意をいっこうに進めようとしない政権側の態度は国際社会の受忍限度を超えたと言えると思います。

(c)比例的手段(Proportional means):軍事規模の行動・期間が必要最低限のものであること
中国・ロシアなどが今回の軍事作戦に積極的に賛成していない(安保理決議でも棄権した。)以上、大規模な軍事作戦に発展することは、英米仏としても避けたいはずです。また、オバマ大統領が述べているとおり、アメリカ軍は陸上部隊の派遣を決して、決してしないと繰り返し言及しています。陸上部隊が投入されれば長期化は避けられませんからね。(a)でも述べたとおり、連合国による攻撃は政権側の軍事基地などに対して行われているようです。

(d)妥当な見込み(reasonable prospects):軍事行動により事態が改善する見込みがあること
繰り返しになりますが、連合軍としては、「飛行禁止空域」を設定することで、ガタフィ体制側を停戦交渉のテーブルにひっぱりだそうとしており、実際、ガタフィ政権側は、「即時停戦に応じるよう全部隊に命令した」と発表しています。ただ、この命令がどの程度実効性のあるものなのか、あるいは見かけ倒しなのか、それはここ何日かの推移を見守る必要があると思います。


今日もだいぶ長くなってしまいました。
明日は、「保護する責任」に内在する論理的な問題点を中心に考察します。

「保護する責任」から見たリビア空爆(その1)

2011-03-20 23:19:41 | 大学について
地震関連のニュースとともに、大きく報道されているのは、英米仏などによるリビア空爆開始のニュースです。中東・北アフリカの各国で頻発する民主化デモは、今回の空爆により、新たなフェーズに入ったと言えます。

ここ1週間ほど、地震・津波関連のニュースが多かったので、私自身十分キャッチアップできていないところもあるかもしれませんが、国際関係を学ぶ身として、今回のリビア空爆について思うところを、今日から数回にわたり、まとめてみたいと思います。まずは、ニュースでも取り上げられる「人道的介入」についてです。

「人道的介入」とは、読んで字のごとく、大規模な人権侵害などを防止するなど人道的な目的を持って、他国の主権を一時的に侵害して、それを防ぐことです。この介入には、武力行使のみならず、経済制裁などの貿易面、また外交ルートを通じた交渉など様々な面を持っています。

国際関係において、特に、ウェストファリア体制以降、「国家主権」というものは絶対視されてきました。いかなる理由があろうとも、国家主権を侵害するようなことはできないというのが現代国家における暗黙の了解でした。

ただ、「国家主権」を盾にして、自国民を虐げるようなことを国際社会が放置していいいのか?という問題が起きます。コソボはその事例としてよく取り上げられます。

それらの問題に一つのヒント(答え)を与えるものとして登場したのが、「保護する責任」(Responsibility to Protect)です。これは、当時の国連アナン事務総長の呼びかけで作られた、「介入と国家主権に関する国際委員会」(International Commission on Intervention and State Sovereignty)によって提唱された概念で、国際関係論においては、「R2P」と呼ばれています。また、私ごとですが、先学期には、「保護する責任」をテーマにして論文を書きました。

従来の「人道的介入」が、国家主権を「管理としての主権(Sovereignty as Control)」と捉えていたのに対して、「保護する責任」においては、「責任としての主権(Sovereignty as State)」と捉えなおし、避けられる惨害から自国民を保護する責任が各国政府にあるとしたうえで、それを当該政府が果たさない場合(または果たせない場合)、国際社会が当該政府に代わって、その責任を果たすべきという概念です。

これまで、「国家主権」vs「介入」の二者択一だったものが、国際社会による関与を理論的に認めることで、水と油のように相対する二つの概念をつなぐものになることが期待されています。R2Pは、その後、国際社会で広く支持を集め、2005年のサミットにおいてもその概念が認められるなど国際的地位が高くなっています。

細かい議論は省略するとして、R2Pにより、どのような場合に、武力行使が認められるのか。上記委員会の報告書では、それを細かく論じていますが、大別すると以下の通りです。

(a)正しい意図(right intention):介入の主要な目的が、人間の苦痛の排除にあること
(b)最後の手段(last resort):あらゆる非軍事的選択肢が尽くされたこと
(c)比例的手段(Proportional means):軍事規模の行動・期間が必要最低限のものであること
(d)妥当な見込み(reasonable prospects):軍事行動により事態が改善する見込みがあること

では、今回のリビア空爆を以上の4つの基準に当てはめて考えた場合、どのように解釈できるのでしょうか?
だいぶ長くなってきたので、明日以降続きを書くことにします。

エクストラスーパームーン

2011-03-19 22:44:40 | アデレードでの生活について
友人から教えてもらったことですが、今日は、特別に月が大きく見える日のようです。
調べてみると、月の公転軌道の影響で、地球から月までの距離は常に一定ではなく、そのため、月が大きく見える日、小さく見えう日というのが毎年あるようです。

今年は、今夜、3月20日(厳密にいえば明日早朝4時頃)が、地球と月の距離が短くなる日(=月が大きく見える日)となるそうで、「スーパームーン」と呼ばれているそうです。地球との距離が一番近い日(=スーパームーン)の日と、一番遠い日の月の大きさ(≒見え方)は、13%も違っているようです。

さらに、スーパームーンの中でも、とりわけ今年のスーパームーンは、19年ぶりに地球と月の距離が最短となることから、特別に、「エクストラスーパームーン」と呼ばれているそうです。

ふと月を見上げてみました。夜なのでうまく写真はとれませんでしたが、確かにいつもより大きく、そして明るい月が見える(気がします)。きれいですよね。



明るく、大きな月が日本を照らしてくれることを祈るばかりです。



不謹慎とは何か。

2011-03-18 17:18:02 | 考えたこと
おちまさとさんのブログに、「不謹慎とは何か。」という題で、ブログが更新されています。非常に考えさせられる内容だったので、紹介します。
http://ameblo.jp/ochimasato/entry-10830934123.html

(略)
『不謹慎』にはハッキリとした境界線がないがどこに境界線を置こうと
その境界線の向こうには必ず労働者がいることを忘れてはならないような気がする。

(略)

『不謹慎』のボーダーを探り探りまさに空気を読みながらその『不謹慎』の領域を少しずつ狭めて行くはずだ。
阪神大震災から16年。
まさにこの状況から始まり年々状況が変わって行き
この間の金曜日までは『不謹慎』ではなかった100のことの内98までは『不謹慎』の領域に入っている気がする。

(以下略:転送終了)

時を同じくして、セ・リーグが25日に開幕すること、東京タワーが19日から営業再開すること、ディズニーランドが21日以降も当面休園することなどが明らかになりました。

もちろん、今も東北地方では多くの方が苦しんでおり、避難所で辛い生活を送っている方からすれば、野球どころではないというお気持ちも十分理解できます。

ただ、おちまさとさんがいうように、「不謹慎」ということについての明確なボーダーがないまま、何もかも自粛してしまうのは非常に怖い気がします。

昨日の日記にも書きましたが、このような悲惨な状況下においても、日本経済は動いており、それを動かし続けなければいけません。そして、経済と言う血流を循環させるためには、「電力」という食事が必要不可欠であり、経済の立ち直りにしたがって、必要なカロリーも増えていくのはある意味当然の帰結だと思います。
ただ、問題なのは、電力供給が不足していること。そして、短期間では大幅な回復の見込みがないこと。なんだと思います。

不要不急の外出を避ける、節電をするというのはもちろんのことですが、
東京では、「普通」の生活をすることが、ひいては経済を回し、被災者の方への間接的な支援となるのではないかと思うのです。
「普通」の生活では、無駄に食料を買いだめしたり、ガソリンを入れたりしないですよね。

もちろん日本経済をまわしているのは、東京だけではありません。
日本各地が一体となって、被災地の分まで働いているのです。

もちろん、明白に「不謹慎」と思えるような事例はたくさんあります。そして被災者の方のお気持ちは察するにあまりあります。
ただ、中期的な目で見た場合、ゼロリスク作戦で事態が収まるまで何もしないというよりも、経済を動かし、その動かした利益で被災者を支援するという方が、個人的にはプラスになるのではないかと思うのです。

それから、「何かしたい」と思う気持ちはもちろん大切にするべきだと思います。
ただ、それが本当に被災者の方の役になっているのか、単に混乱を助長させるだけではないのか、特に一部の芸能人の方には考えていただきたいと思います。彼らの言葉の影響力は非常に大きいですから。

これも、おちまさとさんのブログに書かれていたことですが、まさに今回の事態の本質をついているような気がします。

(抜粋)

今回の敵・放射線は
『宇宙戦争』か
『クローバーフィールド』か
今となっては
得体の知れない
一般の人間では太刀打ちできない
ものである。

知らなくて
分からなくて当然。

そこを

「語るな危険。」

妻が昨日ポツリと言った
一言が耳から離れない。

(転送終了:文字サイズ、着色はくまがしました。)

春よ来い

2011-03-17 23:54:34 | その他
地震から約1週間が経ちました。時間の流れは残酷なほど早く、そして今でも自分の国内で発生した事態が信じられない状態です。

いろいろな方、政治家、芸能人などが地震に際してメッセージを発したり、募金をよびかけたりしています。
その中には考えさせられるものも多くあります。明日以降取り上げていきたいと思います。

それにしても、皮肉だなと思うのは、計画停電と経済復興のバランス。
発電所の供給能力が下がっている現状で、鉄道をはじめとして、経済を動かすためには電気が必要。
しかし、増えた電力需要に対応するために、計画停電の地域と時間が増え、その影響で経済が停滞する。
そのための節電でしょうが、これには限界があります。
鉄道などの社会インフラはもちろん動かすことが必要ですが、これを平時のレベルまで戻すのはまだタイミングが早いですよね。

非常事態にどのように対処するのか、まさに危機管理の問題ですが、これは多くの日本人が体験したことのない問題です。
我々がいかに便利な生活を送っており、社会インフラに依存しているかがよくわかります。
まだ早いでしょうが、こういう時のために、社会規模で大きな危機管理マニュアルを作る必要があるし、それがワークするようにしなければいけません。

私を含めて、災害はどこか「他人事」な感じがしていました。
ただ、東京人を含めて、それが浅はかな考えだったというのは今回の震災で十分理解できたと思います。
大切なのは教訓を活かして、行動に移すこと。私個人としても考えますが、皆さんもぜひ考えてみてください。

今日は、日本各地で真冬並みの寒さに戻ったとか。
今年ほど春が待ち遠しい年はありません。例年、3月下旬~4月上旬には東京でも桜が開花します。
のんきなことを言っている場合ではないでしょうが、そういった春の息吹が少しでも力になることを期待しています。

春よ来い。