永続優良企業への「変化と継続」井上経営研究所

中小零細ファミリー企業版『長寿幸せ企業』の実践経営事典2019
なぜあの会社が短期間で無借金会社に生まれ変わったのか?

井上雅司の経営相談申込カレンダー

第6章 健全企業の経営実学「時務学」を学ぶ(1)経営者の「六芸」

2017年06月26日 | 第6章 健全企業の「時務学」を学ぶ

章 健全企業の経営実学「時務学」を学ぶ

 経営者の「六芸」

 伊與田先生は著書「己を修め人を治める道 『大学』を味読する」1の中で人間は生まれながらにして、「徳性」が授けられている。ただ太陽が雲に隠れるように、人間の「我」や「私」が強くなると徳性を隠す雲のようになってくると書かれています。

 「我」という漢字は「手」と「矛(ほこ)」からなっており、武器を持って威嚇している様子を表しており、「私」という漢字は五穀を意味する「禾」と肘を曲げている様子を表す「ム」でなって、穀物を独り占めする様子を意味しています。

 私は初めての伊與田塾で、「人間学」とは人間が生まれながらにして持っている徳性を育てるための学問であり、知識や技術を習得するための学問を「時務学」ということを知りました。

 昔は「学(問)」といえば人間学のことで、時務学のことを「芸」といったそうです。そういえば「東京学芸大学」の「学芸」とは人間学と時務学のことで、東京学芸大学という名は正にその「使命(ミッション)」を明確に表しているといえますね。大学のホームページ2を見てみると目的として
 「東京学芸大学は、人権を尊重し、すべての人々が共生する社会の建設と世界平和の実現に寄与するため、豊かな人間性と科学的精神に立脚した学芸諸般の教育研究活動を通して、高い知識と教養を備えた創造力・実践力に富む有為の教育者を養成することを目的とする。」とあります。

 縦糸である人間学は時代が変わっても不易ですが、横糸である時務学は時代とともに変化していかなければなりません。孔子の時代の時務学「六芸」は礼(礼儀)、楽(音楽)、射(弓)、御 (馬車を操る) 、書(文学)、数(算数)を表しました。
 それでは、現在において『長寿幸せ企業』を目指す中小零細ファミリー企業のトップが身につけなければいけない時務学とは何なのでしょうか。

 「六芸」にあやかって、『長寿幸せ企業』の「時務学」を「ヒト・モノ・カネ」の三芸と考えて話を勧めていきましょう。

(2) 「時務学」 「ヒト」に関する知識と技術 ①人手不足と採用

 経営の三要素と言えば、ヒト、モノ、カネの順番で言われるくらい、その中で、何年やっても難しいのがヒトの問題です。紀元前何千年前から人類はずっとヒトの問題で悩み続けているのですから。
 私が経営再建のお手伝いをする場合もそうです。
 相談者の最初の悩みはただ資金繰り、つまりカネのことのみです。
 続いて、それを解決する手段としてのモノ、商品と製造と流通に関する仕組みづくりや、【日繰り資金繰り表】、【PDCA事業計画書】【連動式財務三表】などの作成や自社で月次決算書を毎月10までに作成する仕組みづくりなどモノの解決が沢山出てきます。
 これらを克服して経営危機を脱し、とりあえずカネの問題もなくなって初めて出てくる相談の多くはヒトのことなのです。経営危機の時には縁のなかった賞与や昇給の問題です。多くの中小零細企業の多くは「場当たり経営」ですので、ここで相談もなく、後述するように、
「優しさ」と「甘さ」を間違って気前よく大盤振る舞いをしてしまって、再び経営危機に陥ってしまうなどという笑えない現実も散見します。
 

 最初に確認しておきたいことがあります。それは、戦略や戦術を立てる前に 「あなたは何のために、何処に行きたいのか?」をはっきり答えられますかということです。従業員さんの採用から退職までの基本的な考え方を決めるということは人事戦略を決めるということです。第1章でお話したように、まず、何のためにという「使命(ミッション)」何処に行くのかという「目的地(ビジョン)」をはっきさせる。次に数字としての「経営目標(ターゲット)」を決めて、経営目標をどのようにして達成するか、やりかたをはっきりさせるのが「戦略(ストラテジー)」でしたね。戦略は幹から伸びた大きな枝です。この枝から、小さな枝がたくさん出て、葉が茂り、果実が出来るのです。

人事戦略も同じです。


 世の中には成功事例を紹介したハウトゥー本が溢れています。活字中毒と言われたくらいこの種の本を読んだ私は、これで知ったやり方をそのまま真似ても殆どの場合うまくいかないということを数多く体験しています。失敗から学べばいいじゃないかと言われるかもしれません。しかし、自分の会社という樹の幹に立派に実がついた枝を接ぎ木してもうまくいかないどころか、私のように、元の樹を枯れさせてしまう場合さえあります。
 これから、お話することはあくまでこのような理念や考え方をお持ちの方に向けてのものだということをご理解ください。

 「まず、社員を幸せにする」の使命を持ってDelivering Happiness(幸せを届ける会社)3」のキャッチフレーズで顧客を惹きつけたアメリカのネット靴店ザッポスはコアバリュー(理念)に合わない人には、ザッポスに勤めてほしくないと採用面接でふるいにかけているそうです

 理念や「行動規範(モラルコード)」に合わない人は採用しない。迷った場合でも、試用期間中に自社の理念や「行動規範(モラルコード)」にあっているかを見極めて、そうでない時は正規採用しない勇気が必要です。
 とくに小規模零細企業の場合は穴埋め的なパッキン採用がほとんどですので、即戦力になるからこのくらいは目をつむってという考え方は絶対に避けてください。あとで、大きな問題になるケースが多々見受けられます。

 業務処理能力は高いが、道徳力が低い応募者と業務処理能力は低いが、道徳力が高い応募者のうちどちらかを採用しなければならない場合は、迷わず後者を選ぶべきです。
 特に、管理職以上を中途採用するときは、この点に注意しなければなりません。
「隣の芝生は青く」見えるものです。
 私も繰り返しこの過ちを犯しました。有能な会員経営者の方でも同じような間違いをする例が多くあります。
よくある健全企業の採用として悪いケースは、取引先などで大変お世話になっている管理職やいろいろな現場でお会いする競合会社の管理職から「実は・・」と言って退職の相談を受けたりする場合です。
 特に、「自分の力を発揮させてくれない」とかう「ちの経営者にはビジョンがない」とかを口にする時は最注意です。

 「徳性のある人には地位を、能力ある人には金を与える。」という言葉を忘れないようにしてください。

 

 会社と人との関係は本当に不思議なものです。多くの会社に訪問させて頂いていますが、社員は概して高学歴で、ひとりひとりの能力は高く、熱意もないわけではないのに、なぜかバラバラでうまく機能していない会社があります。
 一方で、ひとりひとりの能力はけっして高くないのに、うまく機能している会社があります。そんな会社では、社員さんが全員同じ方向に向かって、知恵を出しあっています。その結果、衆知が集まって大きな力になり会社が発展しているように思います。

 

 21世紀前前半、経営の効率化やロボット機械などによって省人化がおこなわれようとも日本では「人材不足」が経営の大問題になってきます。中小零細企業にとっては、何も手を打たなければ人材どころではなく、「人手不足」が慢性的になり、長寿どころか「人手不足倒産」という言葉さえ現実となってしまいます。
 私は、中小零細企業が長寿企業であるために必要なことは、高収益企業や高成長企業であることより、その企業に関わる経営者や家族は勿論のこと、従業員のみなさんが、この企業で働けてよかった、この企業があってよかった、と誇りに思えるような企業で在り続けることだと考えています。
 また、従業員さん
からみた『長寿幸せ企業』とはどんな企業かというと
(1)家族を養い、幸せな家庭を築ける給与を得ることができる企業
(2)人生設計ができる長期継続して健全な企業
(3)上記を満たした上で、やりがいを実感すること出来る企業
というふうに捉えています。


 採用の方法や賃金規定や評価方法はこれらの経営理念が根や幹のうえに立っていることを忘れないでください。
 今までは、会社側の都合で採用や就業の仕組みを決めてきました。パート従業員、非正規社員や派遣社員というのはまさに会社側の都合でした。この方法を続けていけば、今後本格的に少子高齢化に入っていく日本において
他社との人材獲得合戦で給与戦争の泥沼に自ら踏み込んでしまいます。まるで一時代のスーパーマーケットの目玉商品などの価格破壊競争なような状況になってしまいます。働き手は一時的に高給を得ることが出来ますが、過剰な人件費の負担に耐え切れなくて倒産してしまえば、上記(2)の人生設計が出来る会社ではなくなってしまいます。それでは今後はどのような仕組みで採用や就業を考えていけばいいのでしょうか。 それは、働く側の環境や身体的能力?に応じて働き方を変えてそれをうまく組み合わせて会社側の都合に近いものにしていく仕組みが必要になります。
 学生、妊婦、その夫、小さなお子さんのいる夫婦、寡婦、寡夫、障害者、その家族、高齢者、要介護者などのいる家族。これらの方は現在の勤務体系でははじかれている人びとです。月20日勤務は出来なくても、8時間勤務はできなくても、彼らなりの働ける時間が少なからずあります。能力があっても今の会社側の都合による就業規定や賃金規定では働けないだけです。
 

 私は「働き方革命」が叫ばれる10年以上前から、「スーパーレデイ」や「スーパーシニア」という言葉で埋もれている潜在労働者採用の仕組みを会員企業に提案してきました。「パート」や「非正規」などという言葉をなくし、すべてのひとが同じ呼び方の「従業員」であるべきだと言い続けています。
 働き方だけでなく、いままでの雇用形態や賃金規定、評価方法ではこれからのヒトの変化の時代を乗り切れません。多くの先駆的な取り組みを学び、「ヒト」に関する技術や知識を学び、実践し技能や知恵に変えていかなければ、21世紀前半を乗り越えるのは難しいといえるでしょう。

1 伊與田覚著 致知出版社

2http://www.u-gakugei.ac.jp/01gaiyo/mokuteki.html

3 トニー・シェイ著[ザッポス伝説]ダイヤモンド社

 

 このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017」は井上経営研究所が毎週火曜日に発信しています。

 次回は 第6章 健全企業の経営実学「時務学」を学ぶ の 第2回『長寿幸せ企業』の賃金規定と人事評価方法
を予定しています。

 井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年、「追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業を『経営再建プログラム』で再生させる「経営救急クリニック」事業を創業。さらに再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせる企業再生手法を確立。2010年、長寿永続健全企業をめざす中小ファミリー企業のための「『長寿幸せ企業』への道」事業を開始。


コメント

第5章(6)人生の義務は、ただひとつしかない。それは幸福になることだ。

2017年06月20日 | 第5章 健全企業の「人間学」を学ぶ

第5章 健全企業の経営実学「人間学」を学ぶ

(6)人生の義務は、ただひとつしかない。それは幸福になることだ。


 広辞苑を開くと、「人間学」は「認識し行動する人間の本質の解明を課題とする哲学上の立場」、「時務」は「その時に必要な務。当世の急務。そのときの政務。」とあります。
 また、この章の第1項にご紹介したように、伊與田先生は、人間には個人としての人と社会人としての人の二面があり、社会人としての大事な要素は、「本学」の道徳習慣と「末学」の知識技術で、それぞれを「人間学」と「時務学」と呼ばれています。1


 経営実学の「人間学」について話していますが、私自身がけっして「人間学」を習得できているわけではありません。
 私は、これから経営者の道を歩もうとする人に対して

  • 人の上に立つ者としての修己と治人の基礎(人間学)を習得すること

  • 経営のプロとしての経営知識と技術の基礎(時務学)を習得すること

を目的とした両潤塾というマンツーマンコーチングをさせていただいていますが、残念ながら、私は他人にお教えできるような道徳習慣を持つに至っていませんので、「人間学」については一緒に学び続けていきましょうと申し上げています。

 私が、「人間学」の必要性を感じ始めたのは、会社の倒産を経験してどん底に陥ってからでした。
 「なんで人より何倍も勉強し、働いてきたのに自分の会社が倒産という結果になってしまったのか。」と毎日「忍辱」「辛酸」「後悔」の日々で「何が足りなかったのか?」と問い続けていました。

 もちろん倒産に至る原因は複合的で一つではありませんが、あえてその原因のひとつ選ぶとすれば自分自身の中にありました。それは「慢心・驕り」です。
 自分は他人とは違うんだと、不道徳な人やマナーを守らない人に対しては指摘したり、非難したり、また馬鹿にしたりすることが度々ありました。

 このような場面でも、人間学を学んでいくと、孔子の言う
「賢を見みては斉(ひと)しからんことを思い、不賢を見ては内に自から省(かえり)みるなり。」2
が頭の何処かに残っているのかどうかわかりませんが、
「自分自身も似たような不道徳なことやマナー違反をしていないか」を時々省みることができるようになってきています。
 人間学を学び続けているから、こんな私も不賢まで陥ることなく、なんとか間違いを起こさないで留まっていられるのだと思います。

 書籍やセミナーなどを通じて「人間学」を学び自分の中に刷り込み続けていると、会得と言うには甚だ遠すぎる段階ですがまず道徳を意識する習慣が身についてきます。そうすると、自分の道徳行動が道から外れていることをやってしまってから気づき、後悔することが出来るようになります。


 孔子の
「過(あやま)ちては改むるに憚(はばか)ること勿れ」です。


同じく、
「過ちて改めざる、是(これ)を過ちという」

を意識していけば、「次は気をつけよう」と思うようになりますが、これが重要です。何回か同じ過ちを繰り返して入るうちに、「間が置ける」ようになってきます。この一息の間が置けるとしめたものでやがては習慣となってしまいます。

 挨拶、目上の人を敬すること、時間を守ることなどの礼儀は簡単そうですがなかなかうまくいきません。
私は自分が客の立場でも「ありがとう」ということを意識してきました。診断業務で出張すると、列車の指定席などで検札を受けます。このとき検印して返してもらうときに「ありがとう」というのはそう難しくないのですが、本を読むのに夢中になっていたり、弁当を食べているときに検察され中断されると最初の頃は嫌な顔で切符を突き出すようにしてしまい後悔していたのですが、笑顔で「ありがとう」と返すことができ、車掌さんも少し笑顔を見せてくれると得したような気になってしまいます。
 移動中の街での会員企業様との会員面談はレストランやコーヒーショップを利用して行うことが多いのですが、無愛想な顔をしたままマニュアル通りの挨拶とともに水とお絞りをだす店員さんも、会員様と私がメニューを渡したり、注文を取ったり、食事や飲み物を運ぶたびに、「ありがとう」や「ありがとうございます」を連発しますので、無愛想な接客をしていた店員様も笑顔で「コーヒーおかわり大丈夫ですか」、「お水よろしいですか?」と聞いてくれるようになってなんだか得したような気になることがあります。実は、経営再建プログラムを終了された会員様企業の多くは経営理念や行動規範を再構築しますので、「笑顔でありがとうを言う」という行動規範をお持ちの会員企業様が多いのです。

 人間学を学び、行動に移して、習慣化すると、必ず「幸せ」を感じるようになります。その結果、とても心落ち着き、自分のまわりが安寧に感じられます。


 経営危機で心がすさんでいる経営者の場合、おなじような無料経営相談のレストランやコーヒーショップ場面では、「早く向こうへ行け」という態度で接せられる方が時々おられます。「恒産なければ恒心なし」でそれどころではないというのが実情でしょう。かく言う私も倒産前は同じような状態でした。

 しかし一方、経営危機に陥って精神的に余裕のない状態にも関わらず、変わらない素晴らしい道徳習慣を失っていない経営者やそのご家族ともたくさんのご縁をいただきました。

 すべての企業が再建できるわけではありません。そして、企業再生の可能性がなくなっても、個人の生活は続きます。
 このような道徳習慣のある人間性の高い方々には、
「自暴自棄になりかけた私でも、再起できたのです。あなた方のような人間味のあるご家族は再び、必ず幸せな生活を手に入れることができます。」
と申し上げ、

「あなた方ご家族には、幸せにならなければならない義務がある。」
と申し上げます。

 「人生の義務は、ただひとつしかない。それは幸福になることだ。」3 ヘルマン・ヘッセ


1「人に超たる者」の人間学 p25~ 致知出版社

2子曰、見賢思齊焉、見不賢而内自省也。(論語 里仁第四)

3「車輪の下」 ヘルマン・ヘッセ


 このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017」は井上経営研究所が発信しています。

次回は 第6章 健全企業の経営実学「時務学」を学ぶ の第1回です。

 井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に

  1. 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
  2. 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
  3. 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業

 に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。 

 1.「経営救急クリニック

 2.「長寿幸せ企業への道

 3.「事業承継・M&A

コメント

第5章(5)未来へ、社員へ、家族へ、社会への「推譲」

2017年06月06日 | 第5章 健全企業の「人間学」を学ぶ

第5章 健全企業の経営実学「人間学」を学ぶ
)未来へ、社員へ、家族へ、社会への「推譲」

4章(4)健全企業から優良企業、無借金企業へ・・そして、まず「幸せ企業」を実現 第2回 で

「推譲」とは
従業員や家族はもちろん地域や社会の未来のために「分度」して残したものを譲っていくことです。幸せ企業をめざす中小零細ファミリー企業では、配当が「推譲」より優先することはあってはなりません。
 二宮尊徳は
 「富と貧とは、元来遠く隔たったものではない。ほんの少しの隔たりであって、その本はただひとつの心がけにあるので、貧者は昨日のために今日つとめ、昨年のために今年つとめる。それゆえ終身苦しんでも、そのかいがない。富者は明日のために今日つとめ、来年のために今年つとめるから、安楽自在ですることなすことみな成就する。それを世間の人は今日飲む酒がない時は借りて飲む。今日食う米がなければまた借りて食う。これが貧窮に陥る原因なのだ。」
と言っています。
 こうして、幸せ企業に近づけば近づくほど、経営者も従業員もさらに「至誠」を向上させ、いっそう「勤労」し、積極的に「分度」「推譲」していくサイクルに入りこんで行くことが出来るのです。

と話しました。

 

 「推譲」については多くの偉人がその重要性について箴言、金言を残しています。

 フランスでは、「ノブレス・オブリージュ(高貴さは(義務を)強制する)」として身分に応じて社会的義務が発生すると言われています。

 「金を稼げるだけ稼ぎ、維持できるだけ維持し、与えられるだけ与えるのは男の義務である。」といったのは ロックフェラーです。

 聖書の中にも「人にしてもらうことを期待するより、人にしてあげることを喜びにしよう1」という言葉が出てくるそうです。

 日本でも、渋沢栄一は
できるだけ多くの人に、できるだけ多くの幸福を与えるように行動するのが、我々の義務である」と言い、
 出光佐三は「働いて、自分に薄く、その余力を持って人のために尽くせ。」2
の名言を残しています。

 一方で、古くから、

孟子は、「恒産なくして恒心なし3

管子は、「倉廩(そうりん)満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」4 

などの箴言を残すなど、わたしのような一般人にとって「推譲」の難しさについての名言やことわざも多く存在します。

 

 その中で、二宮尊徳は一般人ができる「推譲」への実践方法をを私達に教えてくれています。

 「富と貧とは、元来遠く隔たったものではない。ほんの少しの隔たりであって、その本はただひとつの心がけにあるので、貧者は昨日のために今日つとめ、昨年のために今年つとめる。それゆえ終身苦しんでも、そのかいがない。富者は明日のために今日つとめ、来年のために今年つとめるから、安楽自在ですることなすことみな成就する。それを世間の人は今日飲む酒がない時は借りて飲む。今日食う米がなければまた借りて食う。これが貧窮に陥る原因なのだ。」と言っています。

「世の中が無事に治まっていても、災害という変事がないとは限らない。変事が仮にあっても、これを補う方法を講じておれば、変事がなかったも同然になるが、変事があってこれを補うことができなかった場合は、それこそ大変なことになる。
 古語に『三年の蓄えなければ国にあらず』といっている。外敵が来たとき、兵隊だけあっても、武器や軍用金の準備がなければどうしようもない。
 国ばかりでなく、家でも同じことで、万事ゆとりがなければ必ずさしつかえができて、家が立ちゆかなくなる。国家天下ならなおさらのことだ。人は、わが教えのことを、むやみに倹約ばかりさせるというが、むやみに倹約するのではない。変事に備えるためなのだ。また、わが道のことを貯蓄ばかりさせるというが、貯蓄が目的なのではない、世を救い、世を開くことが目的なのだ。5

 私がほんとうの意味で二宮尊徳を知ったのは、残念ながら倒産後でした。倒産前の私は、「恒産なければ恒心なし」で自分の見栄や驕りのために借りてきて経営をどんどん会社を「倒産への負の連鎖」に追い込んでしまう「貧すれば鈍する」の状態でした。それに気づいたのは倒産してすべて失って二宮尊徳の本に再び出会ってからです。
 何もない状態から、まずとにもかくにも働くこと(勤労)、そして身の丈に合った生活をして(分度)、必需品だからといって分割払いせずに我慢をして、まずは未来の家族と自分のために蓄え(推譲)していくと、今度は耐久財でも現金を貯めてから買うという癖ができてきました。まさしく、知らないうちに、尊徳のいう「明日のために今日つとめ、来年のために今年つとめるから、安楽自在ですることなすことみな成就する」に近づき、少なくてもお金のことで苦しまなくて済むようになってしまいました。

 倒産から10年も経ったころにはいつも幸せを感じ、自分は幸せものだと感謝できるようになりました。

 そして、「衣食足りて・・」「恒産あれば・・」の状態になれば、こんな私でも、「人のために役立ちたい」という社会への「推譲」を心するようになって、今はその実現を楽しみにしています。

 

 事業再生コンサルタントとしての仕事でも、私の【経営再建プログラム】の基本スキームは

「至誠」

「勤労」

「分度」

「推譲」

です。

 これが我慢して実行出来たクライアント様は意外と短期間で経営危機から脱出し、健全企業から優良企業に変わることが出来ました。
 それだけではなく、家族や従業員それに社会の幸せのための「幸せ企業」に近づき、何代も続く「長寿」企業へ道が拓けてくると確信しています。


1中村芳子「生きる力を与えてくれる聖書88の言葉」ダイヤモンド社

2木本正次「士魂商才の経営者出光佐三語録」PHP文庫p20

3「孟子」梁惠王上

4日本では一般に「衣食足りて礼節を知る」と知られる

5二宮翁夜話百八十三

(6)「人生の義務は、ただひとつしかない。それは幸福になることだ。」 (仮題)を予定しています。  

 井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に

  1. 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
  2. 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
  3. 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業

 に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。 

 1.「経営救急クリニック

 2.「長寿幸せ企業への道

 3.「事業承継・M&A


 

コメント

一人で悩まないでください!

 「心の富」を無くさない限り必ず再起のチャンスがあります。  形のあるものを手放すことが再起への最短距離です。時間が掛かっても迷惑をかけた方々に対して道義的責任を果たせる近道なのです。  「倒産」は犯罪ではありません。  「倒産」という言葉の響きは実態とかけ離れすぎているのです。「倒産」という言葉は一人歩きしすぎています。一般の方は倒産の実態についてあまりに無知すぎるのです。自分自身の世界で倒産を空想しないで下さい。倒産は事業にとっての最後の権利なのです。もがき苦しんでいるあなたを救ってくれる最後の手段なのです。  もちろん私は「倒産」など薦めているわけでは決してありません。 私の仕事は医師と同じく経営危機に陥った会社の検診をし、適切な薬をお渡しし、時には手術を施して健康体にすることです。 しかし病気に末期症状があるように事業にも薬や手術ではどうにもならない状態があります。こうした状況になっても会社や財産を手放そうとしないことが再起へのチャンスさえも失わせることになるのです。  「捨てなければ得られない」 重荷を捨ててみてください。今までのことが嘘のように安寧な生活を得ることができます。貧しくても心の平和や充足感からこそ新しいエネルギーが沸いてくるのです。

井上経営研究所とは

 井上経営研究所は中小零細企業の再生・再建から健全企業化、さらに『長寿幸せ企業』への道をお手伝いする経営コンサルタント事務所です。  ホームオフィスは、紀伊半島の最南端から少し北西(大阪寄り)に戻った 南高梅や紀州備長炭で有名な自然に恵まれた「みなべ町」という小さな町にあります。この町から日本全国にクライアント様を持ち、対応させていただいています。私、井上雅司がこの不便な田舎価値を起点にビジネスを展開している理由は、プロフィールをお読み頂ければお分かりいただけると思いますが、私が人生の危機に陥った時、全てを掛けて私を助けてくれた、年老いた両親がいるからです。  また、コンサルタント事務所といっても、総務以外は、すべてのサービス業務やプログラム診断業務はもちろん、経理も、このホームページ作成も、全て私一人で対応させていただいています。  というわけですので、無料相談といえどすべて私が直接責任をもって対応させていただいています。

井上経営研究所代表者のプロフィール

 井上 雅司(いのうえ まさじ) 1951年和歌山県生まれ。 早稲田大学教育学部卒業後日本航空開発株式会社を経てスーパーマケットを創業。20余年の経営の後倒産。自らの経験を踏まえ「倒産から学ぶ『経営実学』」を研究。自分と同じ体験をする人を一人でも少なくしたいの信念のもと「追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を目指して、2002年、「経営救急クリニック」井上経営研究所を設立。2002年、「追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業を『経営再建プログラム』で再生させる「経営救急クリニック」事業を創業。  さらに再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、優良企業、無借金企業(超優良企業)そして、企業に関わる多くの人が幸せになれる「幸せ企業」にまで一気に生まれ変わらせる企業再生手法を確立。  2010年、永続幸せ企業をめざす中小零細ファミリー企業のための「『長寿幸せ企業』への道」事業を開始。 ●企業再生コンサルタント   ●論語指導士(論語教育普及機構認定資格) ●M&Aシニアエキスパート(一般社団法人金融財政事情研究会認定資格) ●事業承継・M&Aエキスパート(同)