2007年12月27日
井上経営研究所に相談される経営者の多くが、
「経費削減は既にとことんやっています。もう、絞りきった雑巾のようです。乾いた雑巾からはもう1円の経費も削減できません」
という旨をおっしゃられます。
しかし、井上が実際にお伺いして「経費削減対策」を実行すると、削減できる経費が山ほど出てきます。なぜなら、小規模企業のみなさんが行われている経費対策は、「経費節約」ではあっても「経費削減」とは呼べない場合が多いからです。
少なくとも、領収書を経理に持っていけば現金をもらえる会社や、社長が「これ出して」と言えば簡単にお金が出てくる会社は、「経費節約」しかできていない会社だと断言できます。
では、なぜ多くの会社が経費節約しかできないのでしょうか?
その大きな原因は次の2つです。
① 経営者自身では、「見栄」「プライド」「しがらみ」などを断ち切ることができない。
② 経費削減の「ものさし」がない。
会社が正常な時と経営改善期間中とでは、経費に対する「ものさし」が違っていなければなりません。会社が正常な時には適正な経費であっても、改善期間中には不要だと考えるべき経費がたくさんあるのです。
そして、経費削減を実現するためには、元帳や経費帳で一項目ずつ要素分解して、それらに「新しいものさし」を当てて判断していく必要があります。
経営再建期間中の経費削減対策の「ものさし」とは、
●この経費を使わなければ、売上が必ず下がる
●この経費を使わなければ、利益が落ちる
●この経費を使わなければ、安全や信用に影響する
の3つです。この3つのものさしに当てはまらなければ、すべてゼロ予算とすべきです。
同時に、予算にない経費の領収書を経理に持ってきても、それがたとえ社長であっても現金が支給されないような仕組みを作らなければなりません。
たとえば、新聞を何紙も購読しているケースを例にとりましょう。
経営改善期間中の経営者が、取引先との会話に世界情勢を話している余裕はあるでしょうか? 大企業ならまだしも、小規模事業や中小企業の経営者に、世界の経済の動きはあまり関係ありません。1紙購読していれば、後はテレビやインターネットで十分です。正常企業に戻られた後、お好きなだけ雑誌や新聞をご購読ください。
もうひとつ重要なことは、
経費削減は贅肉を殺ぎ落とすことが目的であり、
筋肉まで殺ぎ落としてしまうと売上に大きな影響を与えてしまい、
縮んだ胃袋のようにますます売上が減少してしまう
ということです。そうなると、改善計画が頓挫してしまうことがありますので、人件費や販売経費を削減する際には慎重な対応が必要です。
「経営改善プログラム講座」を進めていけば、経費削減のやり方が詳しく理解でき、稟議や規定などの判断基準もわかるはずです。
さらに、『実務テキスト』では、経費の科目ごとに詳しく削減のポイントを述べています。その中から、いくつかの科目の考え方について、内容の一部を28~29ページにご紹介しましょう。
【広告宣伝費】
売上不振になると、多くの経営者が心理的不安にかられ、広告や宣伝に使う費用を増加させる傾向にあります。しかし、売上が下がっているのに経費を上げてしまうと、資金繰りはますます苦しくなります。経費倒れになっているにもかかわらず、資金繰りのために安売り広告を続けている企業が多く見られます。
【備品消耗費・事務消耗費】
すべての経費科目について言えることですが、経営改善期間専用の「ものさし」を利用して稟議システムを導入しなければなりません。特に、備品消耗費・事務消耗費は、小額の場合が多いため見逃されがちです。購入先も洗い直し、品目ごとの購入先を決定しておく必要があります。
また、購入頻度が高い品目については改めて数社から見積もりを取り直す必要があります。
【地代家賃】
地代家賃の値下げ交渉は、絶対に行うべきです。この種の交渉は金融機関交渉と同様、粘り強い交渉が必要になります。1回や2回の交渉で相手がすんなり値下げに応じてくれるとは考えないでください。
小売業以外では移転も視野に入れるべきです。売上や人員がピーク時の状態の、だだっ広い事務所や倉庫を依然として使い続けている企業は、考え直さなければなりません。特に倉庫については、「倉庫がなければ経営が維持できないか」をものさしとして判断してください。倉庫がなくなったり小さくなれば自然に在庫を洗い直す必要も生じ、資産・負債対策上でも効果が上がります。
【接待交際費】
経営状態の悪化に加えて、資金繰りをさらに悪くしている要因に、「経営者の見栄とプライド」があります。そしてその見栄とプライドは、多くの場合、この接待交際費に現れます。みなさんの会社では、経営者個人のプライドを保つための経費が発生していませんか? たとえば、ロータリー、ライオンズクラブ、JCなどは退会することも視野に入れてください。これらの会の価値は認めますが、そのために会社が倒産してしまったら、元も子もありません。
接待交際費として使っていいのは、「営業や売上に直接的な効果を発揮する場合」だけです。「この接待交際費をカットしてしまうと、たちまち営業や売上に支障をきたす」という経費以外は、すべて0円にしてください。他の科目に比べて、厳しいものさしを使うのです。そうすれば、新しい予算が必然的に決まってくるはずです。
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