絵本をめくっていくような、楽しい恋愛小説。
文庫のカバーには次のように書かれていて、なかなかうまい説明だなと思いましたので、そのまんま載せます。
ジュゼッペのあだ名は「トリツカレ男」。何かに夢中になると、寝ても覚めてもそればかり。オペラ、三段跳び、サングラス集め、潮干狩り、ハツカネズミetc、そんな彼が寒い国からやってきた風船売りに恋をした。無口な少女の名は「ペチカ」。悲しみに凍りついた彼女の心を、ジュゼッペは、もてる技のすべてを使ってあたためようとするのだが…。まぶしくピュアなラブストーリー。
列車の中で一気に読んでしまいました。2時間もあれば読み切れるくらいの文字数、そしてテンポよく読める文章です。
夢中になるととことんつき進んでしまうジュゼッペ。それがペチカという少女に恋をしたらどうなると思います?もちろん最後はめでたしめでたしなのですが、その途中で彼女のことがいろいろわかってくる。でも、トリツカレ男はひたすら彼女の幸せのために尽力します。読み進むうちにジュゼッペが車寅次郎に見えてきました。私欲も地位も名誉もなく、ひたすら相手の幸せだけを願うところはジュゼッペと寅次郎に共通。もっとも寅は自分の出番がなくなったことを感じた途端に旅に出てしまいますが。
ジュゼッペの親友ハツカネズミがこう言います。
「そりゃもちろん、だいたいが時間の無駄、物笑いのたね、役立たずのごみでおわっちゃうだろうけれど、でも、君が本気を続けるなら、いずれなにやちょっとしたことでむくわれることはあるんだと思う」
この小説のテーマにかかわる一文ではないかと思っています。
いしいしんじという作家の作品を読んでみたくて、ブックオフで100円で買いました。価値ある100円でした。
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