
日本中が中心気圧900ヘクトパスカルという台風におののき、九州での被害が心配された9月17日は敬老の日。午後3時過ぎの大阪環状線、大阪城公園駅は内回りホーム、外回りホームともに、ちょっと異常な雰囲気に包まれていました。
ある特定の世代しかホームにいないのです。敬老の日を祝ってもらうにはまだ少し若い、ポスト団塊の世代というべきか、50代中頃から60代中頃と思しき世代の人たちだけでホームは一杯。男女比はほぼ同じくらい。おそらく長年連れ添ってきた夫婦と思われる人たち。
その大集団は改札口を過ぎてさらに大阪城ホールまで続いています。この駅の掲示板によれば約9000人だといいます。彼らが向かうのは、「君と歩いた青春」と銘打ったコンサート。午後4時開演です。出演するのは、伊勢正三、イルカ、太田裕美、尾崎亜美、杉田次郎、南こうせつ。ほかにサプライズゲストもあるとチケットに書かれています。
ホールの中も、制服を着た主催者側のスタッフを除けば、当然「ある特定」の世代ばかりです。自分の席を探すのに、メガネを外してチケットと座席のシールを比べなければならない世代。だんだん埋まっていくシートを、目を凝らして探してみますが、その世代を外れると思われる人を見つけることはできません。不思議なことに夫婦らしき二人連ればかりが多くて、男性グループや女性グループというのはあまり見かけません。
私は、知り合いの夫妻から、「一緒にどう?」と誘われたご主人様に連れてこられてこの現場にいます。会場の主たる世代よりも少し若いはずです。杉田次郎はあまり響いてこなかったけれども、学生時代、教室では誰かがギターを弾いて、かぐや姫や風やイルカを唄っていた、そんな世代です。
コンサートはスタートから年齢の話です。先に記した出演者のうち、50代は尾崎亜美と太田裕美だけで、あとはすべてオーバー還暦組だとか…。ステージ上と客席、ほぼ同年代。コンサートの中身は、何ヶ月か前にBSジャパンでたまたま見た、「イルカスペシャルライブ」(河口湖ステラホール、2011年夏のコンサート)とよく似た雰囲気でした。出演者も重なっています。「まあるいいのち」も「うちのお父さん」も再現されたくらいおんなじ。
驚くべきことに、3時間半ほどの間に歌われたほとんどの曲を口ずさむことができました。歌って忘れないものですね、昨夜の晩ご飯も思いだせないのに。ただ、おいしくて満腹なのに、「何を食べたの?」と尋ねられて、即座に答えられない、バイキング料理を食べた後のように、誰のコンサートだったかがよくわからないのが、残念なところ。
コンサートなんて随分久しぶりだと思います。ましてあんな大きな会場は初めてかもしれません。ステージ横に大きなスクリーンが吊り下げてあって、出演者の顔が大写しになっています。折角ライブを楽しんでいるのに、画面ばかりを見てステージを見ないのはなんとかならないものだろうかと、自分で思いました。まるで、美術館で絵の横の説明文だけ読んで、絵を見ずに納得してしまうようなものです。
こういうコンサートに特定の世代しか集まらないとしたら…ひどいことを書きますが、フォークと呼ばれた音楽ジャンルは特定の世代にしか共感を呼ばなかったということかも知れませんね。もちろん、これだけの人たちがこのコンサートに集まるわけですから、評論家のように知ったかぶりをして言うのも余計なお世話ではあります。
楽しく過ごせたひとときでした。可哀想だったのはご主人様。私より少しだけ若いだけで、彼女の心の中には今日の出演者たちが宿ったことがない。コンサートが終わり、階段のところで母親に連れて来られたらしい中学生くらいの女の子を見かけました。今日の観客の中で一番の若手かも知れません。ご主人様は「可哀想に…」とつぶやきました。
特定の世代なのは仕方ないですね。
顔ぶれからもそういう狙いだと思います。
コブクロとかは、形式は同じでもフォークとは呼ばないですからね。
でもその中学生、実はフォークが好きだったのかも知れませんよ(^^)
そういう企画なんでしょうね。あのミュージシャンたちも現役ですから、「今」の曲もたくさんあるはずなのですが、当日の曲はほとんどが数十年前の曲でしたからね。同窓会的コンサート。マーケットとしても、定年を迎えた世代を取り込む大きなターゲットなんでしょうね。
そうそう、その中学生、私より当時の曲をよく知っていたりして…