
奈良市福智院町。奈良町と呼ばれるエリアにある蕎麦屋さん。このお店も「ミシュランガイド京都・大阪・神戸・奈良2012」に取り上げられているお店なのですが、ご主人様は10年くらい前に誰かに連れて行ってもらったことがあるらしく、機会あるたびに「げん」「げん」と言い続けていたのでした。私は、当然今回が初めての訪問です。
行ってみると、造り酒屋の今西清兵衛商店の敷地に入りこむようにあるお店なので、入り方も難しい。たぶん、奈良町の観光客が間違って入ってしまうような簡単な入口ではありません。また、看板の類も通りには出ていない様子。至ってマニアックなお店と言えるかもしれません。奈良町を何度もウロウロした私でも、どこにあるのか知らなかったわけです。奈良町のふつうの民家のたたずまい。門にかかっている暖簾がなければ誰も気づかないようなお店です。
中に入ると、2部屋続きで20畳くらいのところにテーブルが3列。10数人くらいの客がいます。中は結構暗い。そして人がいる割にみんな静かに話している様子。予約しておかなければ食べられないみたいです。せいろを1枚、いなかを1枚(それらを二人分)、ご主人様は予約したそうです。面白いですね、席ではなくそばを予約するのです。
先にやってきたのがせいろ。せいろに乗っているのは白っぽいそば。更科でしょう。お店の人は、「最初の一口は何もつけずに食べてみてください。塩で召し上がるのもいいですよ」と教えてくれました。添えてある塩(梅の入りかな?)を振ってみると、これがよく合う。そばがこんなに濃厚な、こってりしたものだと初めて感じたのでした。「あっさりと蕎麦でも…」なんて安直に言いますが、考えてみれば、蕎麦の実だって実、次世代の命を育むための栄養が含まれているはず。濃厚でも不思議はありません。次に田舎。これはそば殻を一緒に挽いたものですね。色も黒い。これは塩よりもつゆがよく合うように思いました。量が少ないので、これで腹を満たそうと思ってはいけませんね。あくまで味わう。でも、帰りがけにビッグマックを食べたくなったりして。
そしてもうひとつの驚き。蕎麦湯がやってきました。こんなに濃厚でおいしい蕎麦湯を初めて飲みました。言わずもがな、つゆもいいのでしょう。蕎麦湯がこんなにおいしいということは、湯がく過程でそれだけの成分が湯に流れてしまうということでもあるのでしょうね。
ちょっと目が覚めるような経験でした。そんなにたびたびは行かないでしょうし行けないと思いますが、年に一度くらいは味わっておきたいなと思いながら、帰ったのでした。
なお、このお店はWebサイトを開設していないみたいです。
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