
バスセンター周辺も河童橋周辺もまだ、人影は少ない。シューズの紐をぐっときつく結び直して出発します。朝日は河童橋周辺にはまだ届いておらず、照らされた穂高方面がまぶしい。宿泊客の朝の散策の時間帯でもあり、ハイキング姿というよりは観光客という姿の人も多いように見えます。
ここから明神までは、梓川の両側に歩道が作られています。9年前の経験から右岸を歩くことにします。登山が目的の人は距離が短い右岸を通ります。しかし左岸は川から少し離れていて、林の中の歩くので景色としては退屈です。一方右岸は湿地に木道が作られていたり、川辺に近いところもある上に、朝日もさして明るく見晴らしがいい。私の前にも後ろにもほとんど人の気配はありません。持参の一眼レフを首から提げて、片手でカメラを押さえて(でないと、歩くたびにボディが胸に当たって痛い)、元気よく歩きます。朝日の中で何もがキラキラと光ってきれいです。紅葉には少し早いものの、木の種類によっては黄色だったり赤だったりというものもあります。右岸には治山林道も作られているので、時折お仕事用のクルマが結構な速度で走っていきます。
梓川に合流するせせらぎはシャッタースピードを落として写真を撮る。まだ朝露が残っていて風景全体がしっとりとしています。振り返ると焼岳が見える。朝日によってできる木影の模様も結構楽しい。
あちらこちらでシャッターを押していたので、バスを降りてから明神橋に到着するのに75分かかりました。
明神橋では二人の作業員が橋のメンテナンスをしています。「失礼します。通ります」と声をかけて左岸に渡る。ガイドブックで見た写真に倣って、橋の主塔の上に明神岳(と見当をつけたピーク)を配置する写真を撮りました。
それから前回同様に穂高神社奥宮へお参りします。日頃は信心なんて言葉に縁のない私。今回は、家族も含めて健康が心配な人が何人かいるので、お守りを頂きました。神社の手前の小さな池には岩魚らしき魚が泳いでいます。今回も明神池に入りました。青空と明神池に写る山の景色がとっても美しい。
常緑樹の緑と色づいた葉のコントラストもきれいです。でも、境内で大きな木が2本根っこを持ち上げるように倒れているのにも気づきました。この夏は台風が立て続けにやってきましたから、大風の影響でょう。そういえば、昨日の河川環境楽園でも根っこから倒れている木を見たのでした。台風はどんどん強力になり、雨といえば大雨。どこかの大統領は、「地球温暖化はでっち上げだ」などと言っているそうですが、本当かな?30分ほど滞在してシャッターを切りました。
さぁ、では徳澤を目指そう。8年前、明神橋を渡るとき右岸の上流から若い女性が一人歩いてきたのを覚えているのですが、ここから上流は歩道は左岸のみになるらしい。橋を渡って明神館の前を通って徳澤へ歩きます。木立の中の林道のような道であまり景色らしい景色も見えません。ちょうどジムニーが一台走るくらいの道幅で、タイヤ跡のような二本。多くの人は轍のような二本のどちらかを歩きます。右岸と違って歩いている人の多いこと。ディパックの人も登山のいでたちの人も、観光地と間違えているのかな(いやいや、観光地には違いありません)という服装の人も歩いています。特に目立っているのが、私よりずっと先輩でしょと思われる男女の登山パーティー。上から下まで登山用品店で買いそろえましたという鮮やかな出で立ち。男女比でいえば圧倒的に女性が多い。高齢の(失礼)女性はお元気です。彼女らからすれば私なんぞまだ若造ですが、前述のように知恵も体力も装備もありません、おまけに私には先達になってくれる友達もいない。山登りは遠い夢です。
左側の見晴らしが開けた箇所がありました。明神岳、前穂高岳あたりが見えているのではないかと思いますが、シロウトです。正確なことはわかりません。今日はヘリコプターが何度も上空を行き来しています。山小屋の建築資材を運んでいるのかな?食料品を届けているのかな?また、単調な木立の中の道を歩きます。こちらは荷物も軽く、後に体力を温存しておく必要もありませんので、人々の流れを追い越していきます。
途中で、梓川へ出られるところがあったので、行ってみます。休憩のついでに昼ごはん。昨夜高山のスーパーで買ったミニクロワッサンです。まったく手つかずの自然のような顔をしていますが、梓川の水の流れは明らかに人工的な水路の匂いがします。川の向こうも見上げる山の姿も先ほどとはずいぶん変化しました。
歩道に戻ってさらに上流に歩くと、工事中で迂回せよと書かれてあります。パワーショベルが入って河川工事中です。こんな山の中でも重機が入り込めるんですね。
徳澤への到着は11時。穂高神社を出て65分です。気温は10℃とどこかに表示されていました。テントがいくつも張ってあって、ここをベースにして登山する人もいるんだ。登山者たちの拠点ですからにぎやかなこと。ガイドブックなどでとても静かなところだと勝手に思い込んでいた徳澤園は、昼時でもありお客満杯。徳澤園に来たしるしに、珈琲でも静かに飲もうと思っていたのは甘い考えでした。
徳澤園から少しだけ歩いて川べりに出てみました。山頂辺りは雲がかかっていました。電話を取り出して確認すると、DoCoMoは3G、SOFTBANKが4Gで飛んでいるようです。2時間も歩いてきたのに携帯の通話エリア。少々がっかり。もう一度徳澤園の前まで戻ってきたとき、カラスの鳴き声が聞こえたような。いっぺん行ってみたいと思っていた徳澤園は、来てみたらふつうの場所でした。バスを降りて(寄り道をしながらではありますが)3時間も歩いて到着したところは特別わくわくするようなところでもなかった。
では、引き返しましょう。林の中の歩道は退屈です。退屈しのぎに外国人と思われる人たちに「こんにちは」と声をかけようと目標を立てました。アジアからのお客さん、欧米からのお客さんと思われる人たちもいます。結構な人数です。外国人と思しき人たちは、概ね「こんにちは」と返事をします。が、彼ら彼女らから声をかけてはきません。いや、この国の人たちも必ず返答をしてくるとは限りませんよ。返答率の悪いのは、一人きりで本格的な山登りをするぞという出で立ちの人。装備でいうと、ヘルメットとサンダルをバックパックに縛り付けている比較的若い人。勝手な想像でいえば、「こんな俗世間で他人に愛想してられっかよ」という感じです(勝手な感想ですからね、客観的なデータはありません)。でも、山登りの達人という感じのあんな出で立ちに憧れますわ。恰好だけでも真似て似非登山者になり、小難しそうな顔をして河童橋辺りでウロついてみようかと思うくらいです。
明神館からは左岸を通って、12時40分くらいに上高地ビジターセンターに到着。期待するほど素敵な徳澤ではなかったけれど、50代の上高地は徳澤まで歩くという目的は達成できました。13時30分発のシャトルバスに乗りました。
(つづく)
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