夜ふけの空
人と、草木のねむるとき、空はほんとにいそがしい。星のひかりはひとつずつ、きれいなゆめを背(せな)に負い、みんなのお床(とこ)へとどけよと、ちらちらお空をとび交うし、つゆひめさまは明けぬまに、町の露台(ろだい)のお花にも、お山のおくの下葉にも、のこらずつゆをくばろうと、銀のお馬車をいそがせる。花と、子どものねむるとき、空はほんとにいそがしい。
―金子みすず―