2008年7月4日のブログ記事一覧-ギャラリー貴祥庵 ―《貴志 理の 日々の思いついたままのイメージ絵画、心に残る言葉、歳時の記録を綴る》―


二星(じせい)

 

二星適逢 未叙別緒依々之恨 五更将明 頻驚涼風颯々之声

(『和漢朗詠集』 七夕 213 小野美材)

出会う牽牛と織女の短い逢瀬の切なさを描いた詩です。

東儀秀樹氏「雅楽 天・地・空~千年の悠雅」(平12・TOCT-24293・東芝EMI)で「二星」を演奏。東儀氏の解説は次の通りです。

平安時代の中頃に歌曲として完成された朗詠は、中国やわが国で作られた漢詩に曲をつけ、一管ずつの笙、篳篥、龍笛の伴奏で歌われるものです。内侍所(宮中の神殿のある所。賢所)の御神楽の儀に奉仕していた殿上人たちが神楽歌(御神楽の儀で使う歌曲)のような旋律を宴席などで歌いたいと思い、それを漢詩につけて歌い始めたのがきっかけだとされています。古くは数百首近くあったといわれますが今では15首くらいしか残っていません。                    
 ひとつの詩を一の句、二の句、三の句と三つに分け、それぞれの句のはじめを独唱し、途中から斉唱(合唱)となります。二の句の独唱部は特に高音(通常より1オクターブ高い)なのが特徴的で男性にはとても苦しい音域となります。一の句が終り、いきなり高音をとるのが大変むずかしいことから、声につまる、つまり「二の句が告げない」という言葉はこの朗詠に語源があるのです。それでも私は二の句が好きで今回も二の句の独唱部を担当しました。                 
 「二星」というのは彦星と織姫のふたつの星のことで七夕にちなんだものです。年に一度の出逢いの喜びを語り合ううちに夜が明け始め、別れが近づく。出逢いの喜びと別れの悲しさの間の短い逢瀬のせつなさを描いた詩です。         
 現在残っている朗詠のほとんどが祝賀の内容を表わしたり自然描写で哲学的な表現をするものが多いなか、この「二星」はとてもロマンティックな内容をテーマにしている点が個人的に興味深いところなので収録しました

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