甘裸哲学

哲学をするのに特別な知識は必要ありません。このブログはあなたの固定観念を破壊して、自由自在に考える力を育みます。

第四章【都合的現実回帰】

2013-02-09 01:56:48 | 自作小説
 ......目が覚めた。ここは......ああ、家か。起き上がって時計を見る。まだ午前七時か。僕はまた横になって布団の温もりに酔いしれる。
 うーん、何か忘れているような......。まあいいや。思い出せないものは無理に思い出さない方がいいだろう。人生、嫌なことを忘れたままで生きられるに越したことはないはずだ。僕はいつものように惰眠を貪り、時間ぎりぎりになると、急いで制服に着替え、学校へと向かう。
 
 学校ではいつも通り授業がある。名ばかりの夏休み。生徒は強制的に補習授業を受けさせられる。先生たちは生徒のためだと言われて夏休みに学校で授業することを強制され、その意図に反してせっかくの夏休みを潰された生徒たちは真面目に授業を受けず、うしろの方の席の奴らは携帯ゲーム機で通信プレイをしている始末である。日本の教育はどうかしている。夏休みは各個人が責任を持って自分のしたいことを自分のしたいようにするための自由時間として存在するべきだと思う。大人になるための準備期間なんだ、もう少し自由にさせてくれてもいいんじゃないか? 小学生の頃の方が自由だったなんて笑い話はごめんだ。大学生になれば自由だ、と言って、そのために受験勉強することを強制し、自由時間を奪っていく。ちゃんと志望校に合格できればいいのだが、残念なことに受かる奴がいれば必ず落ちる奴もいる。皆が受かるなら勉強なんてする意味がなくなってしまうから仕方ないのだろう。そうやって落ちた人間は浪人してもう一年勉強の苦痛を味わうか、あるいは職に就き、自由な大学生活を経験しないまま一生を終える。そんな人生嫌だから僕たちは必死に勉強する。妥協すれば楽だろう。でも、この国は受験大国なんだ。韓国ほどではないが、受験で、大学名でその後の人生の大半が決められてしまう。この国に生まれ、この国で育ってしまった以上、一般人はこの受験地獄から逃れることができない。親の期待を裏切ったら生活費を出してもらえなくなってしまい、いきなり生命の危機だ。僕たちは親に生かされているんだ。ペットとして飼われていると言った方がいいかもしれない。ああ、イライラしてきた。親なんて保険に入ってとっとと死んでしまえばいいのに。どうして僕たちはこんなにも不自由なんだろう。ああ、憎たらしい。......いや、待てよ。下の人間の中には受験なんてする気がなく、親にも全く期待されていない人間が大勢いるのかもしれない。この時期に、自由に遊び、恋愛し、将来はトラックの運転手にでもなる。そういう人生の方がよっぽど幸福なのではないだろうか。どうして僕は勉強しなくちゃいけないんだ。どうしてこんな人生を強要されなきゃいけないんだ......。能力が高いせいで損をしている。能力がない方がよっぽど幸せに......ってあれ? 似たような話について昨日も考えたような......確か......

「おい、お前も当てられてるぞ」後ろの席の奴が背中をつついてきた。」
 僕は瞬時に現実へと引き戻され、慌てて席を立ち、教科書を持って黒板へと向かう。国語の授業だった。1つの問題につき複数人が黒板に解答を書き、先生がそれを採点する。国語の解答は不自由だ。キーワードを、ポイントをちゃんと押さえた解答でなければ点数がもらえない。例えば、10点の問題があり、ポイントが2つあるとしたら、そのポイントが1つ含まれているごとに5点で、2つのポイントがちゃんと論理的にうまくつながっていれば10点、誤字や論理的なおかしさがあればそれ1つごとに2点減点していくような感じだ。まあ、僕はその場で考えて、適当な答えを書いて自分の席へと戻った。めんどくさい授業だ。どうして僕がせっかく考えごとしてたのに邪魔してくるかな。糞教師が。とか思ったけど、その後は授業を真面目に受けた。これが彼なりの対策なのだろう。確かにこの授業は寝てる人間が優先的に当てられるし、後ろの連中もゲームなどしている余裕はないだろう。しかし、僕みたいに考えごとをして真面目に授業を聞いてない人間もいるわけで......やめておこう。

 えっと、確か......そうだった。それで高学歴の人間が低学歴の人間よりも本質的に不幸だということになってしまうんだった。幸せに関するこの不平等を解決するために、一部の人間は詐欺的行為を行い、低学歴の人間から金品を巻き上げる。中には自分で宗教団体を作ってしまう強者もいる。しかし、低学歴の人間に高学歴の人間の気持ちが、この不幸感が分かるはずもなく、裁判を起こし、彼らを悪者にしようとする。悪者にされるのが嫌で、僕みたいに最初から社会的弱者を搾取しない生き方を選択しようとする者もいる。しかし、それは不幸な選択だ。そう、僕は不幸になる道を選んでしまった。自分より馬鹿な人間が青春を謳歌している時期に必死に受験勉強をし、それでまともな大学に合格できさえすれば、男女が向こうの方から言い寄ってきて、気がついたら結婚してしまっている。向こうが目当てにしているのは僕らではなく僕らの安定した収入だろう。その愛は本物か。偽物の愛によって育てられた子供が不幸になることは分かりきっている。不幸な僕から不幸な子供が生まれる。悪循環でしかない。そう考えていると生きているのがますますつらくなる。

 今日はお腹が空いていたので昼食を買って食べた。親から昼食代として毎日400円をもらえるのだが、いつもは断食と称して昼食は食べないので、お金がどんどん溜まっていく。今回は720円ほど使って食料を買い漁った。金に困ることなどありえないのだから、こういう日にこそ使うべきである。それにしてもどうしてこんなにお腹が空いていたんだろう......。まあいいや、とにかくお腹はいっぱいになった。
 
 午後の授業を受け、家に帰る。宿題を15分で済ませ、一人でゲームをしたり他人の実況プレイを観たりした後、眠くなったら寝る。もちろん途中で夕食を食べる時間がある。いつものパターンだ。そしてこれこそが僕の抵抗なんだ。受験勉強は最小限に抑え、できるだけ幸せを感じようと努力する。これを【勉強しなくても良い成績が取れる生意気な奴だ】、と低学歴の連中は評価するだろう。しかし、彼らは勉強なんかしなくても、もっと簡単に幸せが手に入るはずなんだ。この格差が、溝が埋まる日は来るのだろうか?......僕は眠くなったので、ベッドに横になる。眠いからすぐに眠れるんだ。眠いのに寝れないなんて残念なことにはならない。僕は本当に眠くてもう起きてられないという状態になってからベッドへと移動する。すぐに眠れる......。僕はそれ以上考えることなく眠りに落ちた。



【理解補助】:「ウサギとカメ」ウサギとカメがかけっこをする話ですよね。結局能力の高いウサギが能力の低いカメに負けてしまう。油断とか手加減とか、そういうことをするから負けてしまうんですよ。しかし、勝っても不幸だ。ウサギにとってカメに勝つのは当たり前だし......とにかく、ここでウサギが本気を出して、カメに圧倒的な力の差を見せつけることが、本文における、高学歴による低学歴支配にあたる。細かいことは気にしなくていいが、できればなんとなく分かってもらいたい。

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