甘裸哲学

哲学をするのに特別な知識は必要ありません。このブログはあなたの固定観念を破壊して、自由自在に考える力を育みます。

第一章【使えない知識】

2013-02-05 15:59:31 | 自作小説
 中は明るかった。
 そして誰もいないように思えた。
 階段は見当たらないが、右や左に奥へつながる通路のようなものが見えるし、前の方に大きなドアが見える。
 僕は迷わず直進した。そして大きなドアを開ける。
「うぉっ!」
 そこはとても巨大な空間だった。
 ずっと遠くの方に教壇のような物が見える。
 椅子が整列しており、天井には絵が描いてある。真ん中が黒く塗り潰されており、その周りに沢山の人のような者が群がっている。
「......気味が悪いな」
 僕はまた前へ歩き始めた。
 教壇にどんどん近づいていく。
 部屋の真ん中くらいに差し掛かったとき、突然電気が消えた。
「!?」
 真っ暗だ。何も見えない。僕は歩くのをやめ、周囲を見渡すが何も見えない。
 僕は光を求めて先程の部屋に引き返すことにした。つまずかないようにゆっくりと歩く。左右の椅子を手で確認しながら慎重に前へ進む。
 どうやらドアの前まで無事たどり着けたようだ。
 僕はドアを勢いよく開けた。
 .......何かいる。部屋の真ん中に人のような者がおり、この建物の入口の方を向いている。
「あ、あのー。すいません。」
 僕は声をかけてみた。いや、この状況で無視するという選択肢はないだろう。
 人のような者は微動だにしなかった。僕は近づいてみることにした。
「あのー、誰かいませんか?w」
 ......その人のような者がゆっくりとこちらの方を向き直った。
 音もなく、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
 怖い。早く何か喋ればいいのに。黙って近づいてきやがる。
 僕は後ずさりした。そいつはよく見ると人ではなかった。
 いや、こんなの人間の顔だとは思えなかった。
 僕は後ずさりしていき、先程のドアの前まで追い詰められた。
 ......仕方ない。僕は素手で戦う覚悟を決めた。そしてそいつを殴ろうとした瞬間
「!!」
 右側から大きな音がした。そしてそいつの頭が吹っ飛んで身体は地面に倒れた。
 僕は右側の通路の方を向く。見ると女の人が銃を構えながらこちらに近づいてくる。
「あなたは誰?」
「えっ」
「喋れるってことは人間なのね」
 彼女はそう言って銃をおろした。
「あなたは?」僕は尋ねた。
「そんなことはどうでもいいわ。はいこれ。」彼女はそう言って僕にハンドガンを手渡す。
「あの......これは......」
「回転式拳銃[リボルバー]よ。撃ち方くらいは学校で習ってるはず。弾は今六発入ってるけど自分で調達して。じゃあね」
 彼女はそう言って立ち去ろうとする。
「あの、待ってください! ......弾の詰め方が分かりません。」
 彼女は呆れたような顔をした。
「そんなことも知らないの? まあいいわ、教えてあげる。」彼女はそう言って実演してみせた。
「なるほど。できれば他の種類の拳銃の弾薬の詰め方も教えてもらえませんか?」
「......しょうがないわね」彼女はそう言って、彼女が持っていた自動拳銃[オートマチック]と散弾銃[ショットガン]と小銃[ライフル]の弾薬交換を見せてくれた。
「なんとなく分かりました。ありがとうございます。」僕がそう言うと、彼女は
「じゃあね、私急いでるから」と言って反対側の通路へと消えて行ってしまった。
 あ......僕は先ほどの怪物についてまだ何も聞いていなかったのだが、仕方がない。彼女はもう行ってしまった。
 これからどうしよう......僕は銃を構えつつ、彼女が現れた通路の方に行ってみることにする。女の後をついて行ったらストーカー扱いされると思ってしまったからだ。
 ......大体銃の撃ち方なんて習ってねーし。なんだよ。てか学校ならそれくらい教えてくれてもいいんじゃないか? こういう不測の事態はいつ誰に起きるかも分からない。いざ起こってしまうと、その知識があるかないかで生死が決まってしまう。こないだ日本の東の方で起こった原子力発電所の事故のニュースを見ていた思ったことだ。人々の生死に関わることなのに、可能性が低いから対策しませんでした? 本当にそれでいいのか。実際、もし彼女が現れなくて僕が銃だけ持っていたとしても、先程の怪物を倒すことはできても、弾が切れた後、補充できずに他の怪物に殺されるだけだろう。きっと他にも怪物がいる。僕は何故だかそう確信していた。
 ここでふと重大なことに気づく。
「おいおい、この建物の玄関のドアって普通に開いてるんじゃね?www」
 僕は走って、来た道を戻った。そしてドアの前に着いた。
 ドアを開けようとする。もちろん簡単に開いた。拍子抜けだ。
 しかし、外は真っ暗だった。本当に闇以外の何物でもないと感じた。
 僕は仕方なく先ほどの通路まで引き返すことにした。ああ、面倒くさい。
 無駄な体力を使ってしまったが仕方ない。外が真っ暗なことくらい最初から分かっていたはずだ。
 僕は考え事をしつつ銃をいい加減に構えながら前へ前へと進んでいった。
 そして、ドア。目の前にドアが見える。ここから先は敵がいっぱい出てきそうな気がする。
 僕は深呼吸した後、ゆっくとそのドアを開けることにした。

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