甘裸哲学

哲学をするのに特別な知識は必要ありません。このブログはあなたの固定観念を破壊して、自由自在に考える力を育みます。

第四章【都合的現実回帰】

2013-02-09 01:56:48 | 自作小説
 ......目が覚めた。ここは......ああ、家か。起き上がって時計を見る。まだ午前七時か。僕はまた横になって布団の温もりに酔いしれる。
 うーん、何か忘れているような......。まあいいや。思い出せないものは無理に思い出さない方がいいだろう。人生、嫌なことを忘れたままで生きられるに越したことはないはずだ。僕はいつものように惰眠を貪り、時間ぎりぎりになると、急いで制服に着替え、学校へと向かう。
 
 学校ではいつも通り授業がある。名ばかりの夏休み。生徒は強制的に補習授業を受けさせられる。先生たちは生徒のためだと言われて夏休みに学校で授業することを強制され、その意図に反してせっかくの夏休みを潰された生徒たちは真面目に授業を受けず、うしろの方の席の奴らは携帯ゲーム機で通信プレイをしている始末である。日本の教育はどうかしている。夏休みは各個人が責任を持って自分のしたいことを自分のしたいようにするための自由時間として存在するべきだと思う。大人になるための準備期間なんだ、もう少し自由にさせてくれてもいいんじゃないか? 小学生の頃の方が自由だったなんて笑い話はごめんだ。大学生になれば自由だ、と言って、そのために受験勉強することを強制し、自由時間を奪っていく。ちゃんと志望校に合格できればいいのだが、残念なことに受かる奴がいれば必ず落ちる奴もいる。皆が受かるなら勉強なんてする意味がなくなってしまうから仕方ないのだろう。そうやって落ちた人間は浪人してもう一年勉強の苦痛を味わうか、あるいは職に就き、自由な大学生活を経験しないまま一生を終える。そんな人生嫌だから僕たちは必死に勉強する。妥協すれば楽だろう。でも、この国は受験大国なんだ。韓国ほどではないが、受験で、大学名でその後の人生の大半が決められてしまう。この国に生まれ、この国で育ってしまった以上、一般人はこの受験地獄から逃れることができない。親の期待を裏切ったら生活費を出してもらえなくなってしまい、いきなり生命の危機だ。僕たちは親に生かされているんだ。ペットとして飼われていると言った方がいいかもしれない。ああ、イライラしてきた。親なんて保険に入ってとっとと死んでしまえばいいのに。どうして僕たちはこんなにも不自由なんだろう。ああ、憎たらしい。......いや、待てよ。下の人間の中には受験なんてする気がなく、親にも全く期待されていない人間が大勢いるのかもしれない。この時期に、自由に遊び、恋愛し、将来はトラックの運転手にでもなる。そういう人生の方がよっぽど幸福なのではないだろうか。どうして僕は勉強しなくちゃいけないんだ。どうしてこんな人生を強要されなきゃいけないんだ......。能力が高いせいで損をしている。能力がない方がよっぽど幸せに......ってあれ? 似たような話について昨日も考えたような......確か......

「おい、お前も当てられてるぞ」後ろの席の奴が背中をつついてきた。」
 僕は瞬時に現実へと引き戻され、慌てて席を立ち、教科書を持って黒板へと向かう。国語の授業だった。1つの問題につき複数人が黒板に解答を書き、先生がそれを採点する。国語の解答は不自由だ。キーワードを、ポイントをちゃんと押さえた解答でなければ点数がもらえない。例えば、10点の問題があり、ポイントが2つあるとしたら、そのポイントが1つ含まれているごとに5点で、2つのポイントがちゃんと論理的にうまくつながっていれば10点、誤字や論理的なおかしさがあればそれ1つごとに2点減点していくような感じだ。まあ、僕はその場で考えて、適当な答えを書いて自分の席へと戻った。めんどくさい授業だ。どうして僕がせっかく考えごとしてたのに邪魔してくるかな。糞教師が。とか思ったけど、その後は授業を真面目に受けた。これが彼なりの対策なのだろう。確かにこの授業は寝てる人間が優先的に当てられるし、後ろの連中もゲームなどしている余裕はないだろう。しかし、僕みたいに考えごとをして真面目に授業を聞いてない人間もいるわけで......やめておこう。

 えっと、確か......そうだった。それで高学歴の人間が低学歴の人間よりも本質的に不幸だということになってしまうんだった。幸せに関するこの不平等を解決するために、一部の人間は詐欺的行為を行い、低学歴の人間から金品を巻き上げる。中には自分で宗教団体を作ってしまう強者もいる。しかし、低学歴の人間に高学歴の人間の気持ちが、この不幸感が分かるはずもなく、裁判を起こし、彼らを悪者にしようとする。悪者にされるのが嫌で、僕みたいに最初から社会的弱者を搾取しない生き方を選択しようとする者もいる。しかし、それは不幸な選択だ。そう、僕は不幸になる道を選んでしまった。自分より馬鹿な人間が青春を謳歌している時期に必死に受験勉強をし、それでまともな大学に合格できさえすれば、男女が向こうの方から言い寄ってきて、気がついたら結婚してしまっている。向こうが目当てにしているのは僕らではなく僕らの安定した収入だろう。その愛は本物か。偽物の愛によって育てられた子供が不幸になることは分かりきっている。不幸な僕から不幸な子供が生まれる。悪循環でしかない。そう考えていると生きているのがますますつらくなる。

 今日はお腹が空いていたので昼食を買って食べた。親から昼食代として毎日400円をもらえるのだが、いつもは断食と称して昼食は食べないので、お金がどんどん溜まっていく。今回は720円ほど使って食料を買い漁った。金に困ることなどありえないのだから、こういう日にこそ使うべきである。それにしてもどうしてこんなにお腹が空いていたんだろう......。まあいいや、とにかくお腹はいっぱいになった。
 
 午後の授業を受け、家に帰る。宿題を15分で済ませ、一人でゲームをしたり他人の実況プレイを観たりした後、眠くなったら寝る。もちろん途中で夕食を食べる時間がある。いつものパターンだ。そしてこれこそが僕の抵抗なんだ。受験勉強は最小限に抑え、できるだけ幸せを感じようと努力する。これを【勉強しなくても良い成績が取れる生意気な奴だ】、と低学歴の連中は評価するだろう。しかし、彼らは勉強なんかしなくても、もっと簡単に幸せが手に入るはずなんだ。この格差が、溝が埋まる日は来るのだろうか?......僕は眠くなったので、ベッドに横になる。眠いからすぐに眠れるんだ。眠いのに寝れないなんて残念なことにはならない。僕は本当に眠くてもう起きてられないという状態になってからベッドへと移動する。すぐに眠れる......。僕はそれ以上考えることなく眠りに落ちた。



【理解補助】:「ウサギとカメ」ウサギとカメがかけっこをする話ですよね。結局能力の高いウサギが能力の低いカメに負けてしまう。油断とか手加減とか、そういうことをするから負けてしまうんですよ。しかし、勝っても不幸だ。ウサギにとってカメに勝つのは当たり前だし......とにかく、ここでウサギが本気を出して、カメに圧倒的な力の差を見せつけることが、本文における、高学歴による低学歴支配にあたる。細かいことは気にしなくていいが、できればなんとなく分かってもらいたい。

第三章【無能の能】

2013-02-08 23:15:37 | 自作小説
 僕は走って最初の部屋まで戻った。
 玄関の外は真っ暗、教壇のあった部屋もどうせ真っ暗。
 僕にはもう女の後を追いかける道しか残されてないはずだ。うん、絶対にそうだ。
 僕は反対側の通路へと足を進めた。ゆっくりと歩きながら息を整える。どうも興奮状態が収まらない。まあ、仕方ないか。
 通路に沿って歩いていくと階段にたどり着いた。上にも下にも行けそうだ。途中にいくらかドアがあったがどうせ大したものはないだろうから無視してきた。
 僕は階段を下に降りる。......あれ、暗いぞ。ああ、僕が馬鹿だった。階段を引き返し、二階へと登っていく。
 僕は二階をがむしゃらに歩き回った。怪物の死体が所々に転がっている。確かに臭いけど、そんなことは気にならなかった。
 二階を探索した結果、この施設について色々と分かったことがある。
 まず、この施設にはトイレがない。これは狂っているとしか思えないが、どうも費用が足りなかったらしい。
 また、あの怪物の多くは、それを生み出した甘裸自身の手で殺されたようだ。そしてそれを殺すのに使われた銃は、どうやら在日米軍からもらってきたらしい。甘裸が何者なのかは分からないが、そんなことができるんだからきっとヤバイ奴に違いない。にしてもこんなカルト宗教団体が平和な日本で危険な武器を隠し持っていたなんて恐ろしい話だ。しかし皮肉なことに、そのおかげで僕は弾薬も手に入れ、こうやって安心して探索を続けることができるんだ......。
 僕は一階に戻って無視してきた部屋を探索してまわった。案の定、階段のすぐ近くの部屋で懐中電灯が見つかった。急がばまわれ......か。もしかしたらこれで家に帰れるのかもしれないが、ここまで来てしまった以上、この施設を踏破したいと思う気持ちが強まってしまい、なかなかそういうわけにもいかなくなっていた。それに急がばまわれなんだろう? 帰るのは施設を全部見てまわってからでも遅くはないはずだ。地下に行きたい。僕は自分の欲求に従った。
 懐中電灯を片手に暗い道を進んでいく。本当に静かだ。耳が聞こえない人はいつもこんな感じなのだろうか......。
 歩いているとふいに何かが腕に触れた。びっくりして懐中電灯を向けるとそこにはあの怪物がいた。僕はとっさに銃を構えて撃つ。
 怪物は音もなく崩れ去った。油断していた。まだ生き残りがいるということを完全に忘れていた。ところであの女はどこに行ったんだろう? こいつらを無視して先に進んだのだろうか? 
 そんなことを考えているうちにまた何かが腕に触れた。僕は不意を突かれて地面に銃を落としてしまった。あの怪物に違いない。僕はポケットに入れていた血まみれのナイフを慌てて突き立てる。胸にナイフが刺さり、怪物は音もなく転がる。転がるときすら音がしないというのはとても不自然だが、そんなことを考えてる余裕はないだろう。
 僕は急いで銃を拾い、死体からナイフを抜き取る。......おっと、今気づいたのだがこいつは女だったようだ。顔は皆醜く、男女の判別には役に立たない。胸があるから女だと判断した。ああ、こいつらにも性別があるということを完全に忘れていた。今まで殺してきた奴らは全部男、あるいは貧乳だったのだろうか。それに、もしかすると、今殺した奴はニューハーフだったのかもしれない。ややこしいなあ。もう性別なんてどうでもいいじゃないか。うん、そんなもの関係ないはずだ。彼らは醜く平等になったんだ。
 それにしても、あの怪物に対しては全く性欲がわかなかった。女は顔が悪くても身体が良ければ愛せるものだと思っていた。僕が間違っていた。こんな怪物と交わる気には到底なれない。致命的な弱点があったらおしまいなんだな。僕はその場を後にした。
 懐中電灯を素早く動かしながら探索を続ける。いつどこから奴らが現れるか分からない。動きは遅いが奴らは音を立てずに近づいてくる。向こうは暗闇に目が慣れている状態で懐中電灯の光が目に入るのだから、当然こちらの存在に気づくはずだ。しかし、人間のように眩しく感じたりはしないようだ。奴らの目は劣化している。奴らの目に懐中電灯の光を当てても全く怯みもしないのは、きっとそのせいだろう。劣っていることがプラスに働くことの悪い例だ。不愉快極まりない。おかげでさっきから冷や汗が止まらなし、息も荒い。
 俺は探索を途中で投げ出して来た道を引き返した。二階の、怪物の死体などが一切落ちていない綺麗な部屋で休むことにした。ソファーに横になり、仮眠を取る。


 

第二章【躊躇無き殺害】

2013-02-05 20:09:56 | 自作小説
 ドアを開けると、そこには数体のアレが見えた。
 弾は六発しかないし、ナイフすら持っていないのだ。僕は走って彼らの横を抜ける。
 ドアを開け、次の部屋に進む。あいつらがいっぱいいる。どうやら彼らは感覚が鈍く、大きな音でも立てない限りこちらに気づかないようだ。
 そう思った僕は、彼らの横を音を立てないようにゆっくりと歩いてみた。
 すると......アイツは突然動きだして、僕の片腕を掴んだ。慌てた僕は思わず銃の引き金を引く。
 大きな音がなった。アイツは音も立てずに倒れ込んだが、他のやつらがこちらに向かって歩き出した。
 僕は次のドアまで走り、急いでドアを開け、次の部屋へと向かった。
 この部屋は......談話室かな? 机と椅子があるが、次の部屋へのドアがない。
 よく見ると、向こうの方に人が倒れている。
 近づいてみる。男だ。胸にナイフが刺さっている。見た感じ自殺っぽい。
 僕は人の死体を見ても特に何も感じなかった。そんなことより、その死体のすぐ横に落ちている手帳が気になった。
 僕はそれを手に取り、パラパラとページをめくった。

 ――ある男の日記――
 7/7 今日は甘裸教団のオフ会があった。Twitterでしか会話したことのない沢山の教団員たちと出会えた。教祖である甘裸さんが、今の社会に対する痛烈な批判を語り、僕たちは、少なくとも僕はとても感銘を受けた。ファミレスで皆に食事をおごってくれるなんて、おまけに素晴らしい話を聞かせてくれるなんて。今日は本当に楽しかった。
 
 7/14 今日のオフ会では、甘裸教団の教義について教えてもらった。仏教の誤りは偶像崇拝であるとして、皆が無我の境地、悟りに到れるように、このような楽しい集会を定期的に開くべきだと語っていた。キリスト教敵側面と仏教的側面を併せ持った、真の幸せを追求するための教団だと語られた。本当に素晴らしいと思った。次回の集会が楽しみだ。
  
 7/21 今日はついに甘裸教会でのオフ会だ。最初建物を見たときにはあまりの不自然さにびっくりした。まさに異世界という感じだった。僕はとてもわくわくしながら中へと入った。まっすぐ進んだところにある扉を開けると、とても広々とした場所に出た。しばらくすると甘裸様の説教が始まった。人間が執着を捨てきれないのは、自分に対して何らかの期待を持っているからである、とか、天井の絵は菩薩が人々に救いを与える様子であり、偶像崇拝を避けるため、菩薩は黒く塗りつぶされるのだ、とか。とてもためになる話を沢山聞いたように思う。今日も本当に素晴らしい一日だった。甘裸様はなんて素晴らしいお方なんだろう。
 
 7/28 今日のオフ会は皆で注射を受けるようだ。誰でも悟れる薬というものが開発されたらしい。まだ、一般には出回っていないが、僕たち神聖なる甘裸教徒は、最初にこの注射によって悟りを開くことができる選ばれた人間なのだそうだ。速効性はなく、悟りまでにはしばらく時間がかかるようなので、僕たちはしばらくここで生活を送ることになった。食料などは全部甘裸様が用意してくれる。僕は悟りの日をわくわくしながら待つことにした。

 8/1 ......注射を受けた仲間の一人が何も喋れなくなってしまった。甘裸様によると、多少の副作用が起こるのは仕方がないことだそうだ。僕も喋れなくなるのかな......

 8/2 喋れなくなった。他の皆ももう喋れない。甘裸様は人々を悟りに導いた後で悟りを開く菩薩となるべきお方なのでまだ喋れる。甘裸様はこの薬によって全ての人間を悟りに導くことができるはずだと言ってた。本当にそうなのか? 悟りってそんなに大事なのか? 喋れなくなってでも悟るべきなのか? そんな疑問が生じた。
 
 8/3 仲間の一人が発狂して他の仲間を襲った。甘裸様はすぐにそれを銃で撃ち殺した。どうして銃を持っているんだろう。もしかして、彼がこうなることは最初からわかっていたんじゃ......? いや、教祖様を疑うのは良くない。甘裸様は、彼は注射恐怖症だったのに無理に注射してしまったからこんなことになったんだと説明している。信じよう。甘裸様はきっと僕たちを救ってくださると。

8/4 仲間が次々と発狂し、銃で撃ち殺されていく。こんなのどうかしている。僕は甘裸に説明を求める旨を書いた紙を突きつけた。甘裸は言った
「この薬によって君たちはどんどん劣化していく。喋れなくなり、敵と味方の区別がつかなくなり、最後には顔が醜くなるだろう。こんな残念な君たちに生きる意味などあるだろうか? 否、死ぬべきである。君たちは自我を失い醜いゾンビと化す。おめでとう。君は選ばれ、もうじき悟ることができるんだ。無我の境地に至った君たちの処理は私に任せてくれ。心配ない。君たちは苦しみを感じることなく死ねるはずだ。だって自我を失っているのだから。」
 僕は生きてるのが嫌になった。奴を殺したところでもう僕は助からない。僕にとってもう全ては無意味だ。これが悟りか? 僕は自ら死を選ぶことにした。まだ自我があるうちに、そう死ぬんだ。ナイフがある。どうしてこんなものを持っているのかは忘れてしまったがとにかくある。これで死のう。意味はないけど日記は最後まで書いた。これで安心して死ねる。ああ、これが悟りなのかな。
――――――日記はここで終わっている

 ......じゃあ俺がさっき殺した怪物って......。
 僕は躊躇なくアイツを殺せた。
 あいつの顔は醜く、襲われたら当然のように殺した。
 もしもあれが発狂した美少女だったらどうしていたんだろう......。
 結局見た目なのか、殺すときに可哀想だなどと思って躊躇うのは結局見た目の影響なのか。
 動物愛護団体はあるのに、ゴキブリ愛護団体なんてものは見たことがない。
 ゴキブリは躊躇わずに殺そうと思うのに、猫や犬だとちっとも殺せそうにない。
 大きさの問題ではないだろう。
 もしも人間並みに巨大なゴキブリが出たら躊躇なく殺そうと思うだうし、僕は人だった醜い何かを殺した。
 ......おっと、こんなところで考え込んでいる暇はない。これについては無事生還してからじっくり考えよう。
 探索を再開する。自殺に使われたであろうナイフはありがたく回収させてもらった......この部屋にはもう気になるものはない。
 さっきの部屋に戻るか......。僕はなんとなくドアを開けた。

第一章【使えない知識】

2013-02-05 15:59:31 | 自作小説
 中は明るかった。
 そして誰もいないように思えた。
 階段は見当たらないが、右や左に奥へつながる通路のようなものが見えるし、前の方に大きなドアが見える。
 僕は迷わず直進した。そして大きなドアを開ける。
「うぉっ!」
 そこはとても巨大な空間だった。
 ずっと遠くの方に教壇のような物が見える。
 椅子が整列しており、天井には絵が描いてある。真ん中が黒く塗り潰されており、その周りに沢山の人のような者が群がっている。
「......気味が悪いな」
 僕はまた前へ歩き始めた。
 教壇にどんどん近づいていく。
 部屋の真ん中くらいに差し掛かったとき、突然電気が消えた。
「!?」
 真っ暗だ。何も見えない。僕は歩くのをやめ、周囲を見渡すが何も見えない。
 僕は光を求めて先程の部屋に引き返すことにした。つまずかないようにゆっくりと歩く。左右の椅子を手で確認しながら慎重に前へ進む。
 どうやらドアの前まで無事たどり着けたようだ。
 僕はドアを勢いよく開けた。
 .......何かいる。部屋の真ん中に人のような者がおり、この建物の入口の方を向いている。
「あ、あのー。すいません。」
 僕は声をかけてみた。いや、この状況で無視するという選択肢はないだろう。
 人のような者は微動だにしなかった。僕は近づいてみることにした。
「あのー、誰かいませんか?w」
 ......その人のような者がゆっくりとこちらの方を向き直った。
 音もなく、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
 怖い。早く何か喋ればいいのに。黙って近づいてきやがる。
 僕は後ずさりした。そいつはよく見ると人ではなかった。
 いや、こんなの人間の顔だとは思えなかった。
 僕は後ずさりしていき、先程のドアの前まで追い詰められた。
 ......仕方ない。僕は素手で戦う覚悟を決めた。そしてそいつを殴ろうとした瞬間
「!!」
 右側から大きな音がした。そしてそいつの頭が吹っ飛んで身体は地面に倒れた。
 僕は右側の通路の方を向く。見ると女の人が銃を構えながらこちらに近づいてくる。
「あなたは誰?」
「えっ」
「喋れるってことは人間なのね」
 彼女はそう言って銃をおろした。
「あなたは?」僕は尋ねた。
「そんなことはどうでもいいわ。はいこれ。」彼女はそう言って僕にハンドガンを手渡す。
「あの......これは......」
「回転式拳銃[リボルバー]よ。撃ち方くらいは学校で習ってるはず。弾は今六発入ってるけど自分で調達して。じゃあね」
 彼女はそう言って立ち去ろうとする。
「あの、待ってください! ......弾の詰め方が分かりません。」
 彼女は呆れたような顔をした。
「そんなことも知らないの? まあいいわ、教えてあげる。」彼女はそう言って実演してみせた。
「なるほど。できれば他の種類の拳銃の弾薬の詰め方も教えてもらえませんか?」
「......しょうがないわね」彼女はそう言って、彼女が持っていた自動拳銃[オートマチック]と散弾銃[ショットガン]と小銃[ライフル]の弾薬交換を見せてくれた。
「なんとなく分かりました。ありがとうございます。」僕がそう言うと、彼女は
「じゃあね、私急いでるから」と言って反対側の通路へと消えて行ってしまった。
 あ......僕は先ほどの怪物についてまだ何も聞いていなかったのだが、仕方がない。彼女はもう行ってしまった。
 これからどうしよう......僕は銃を構えつつ、彼女が現れた通路の方に行ってみることにする。女の後をついて行ったらストーカー扱いされると思ってしまったからだ。
 ......大体銃の撃ち方なんて習ってねーし。なんだよ。てか学校ならそれくらい教えてくれてもいいんじゃないか? こういう不測の事態はいつ誰に起きるかも分からない。いざ起こってしまうと、その知識があるかないかで生死が決まってしまう。こないだ日本の東の方で起こった原子力発電所の事故のニュースを見ていた思ったことだ。人々の生死に関わることなのに、可能性が低いから対策しませんでした? 本当にそれでいいのか。実際、もし彼女が現れなくて僕が銃だけ持っていたとしても、先程の怪物を倒すことはできても、弾が切れた後、補充できずに他の怪物に殺されるだけだろう。きっと他にも怪物がいる。僕は何故だかそう確信していた。
 ここでふと重大なことに気づく。
「おいおい、この建物の玄関のドアって普通に開いてるんじゃね?www」
 僕は走って、来た道を戻った。そしてドアの前に着いた。
 ドアを開けようとする。もちろん簡単に開いた。拍子抜けだ。
 しかし、外は真っ暗だった。本当に闇以外の何物でもないと感じた。
 僕は仕方なく先ほどの通路まで引き返すことにした。ああ、面倒くさい。
 無駄な体力を使ってしまったが仕方ない。外が真っ暗なことくらい最初から分かっていたはずだ。
 僕は考え事をしつつ銃をいい加減に構えながら前へ前へと進んでいった。
 そして、ドア。目の前にドアが見える。ここから先は敵がいっぱい出てきそうな気がする。
 僕は深呼吸した後、ゆっくとそのドアを開けることにした。

序章【夢も現実も】

2013-02-04 23:37:29 | 自作小説
 仮タイトル【まっすぐ歩いた】(とりあえず今考えたところまで) 


 僕は歩いた。
 周りなど全く気にならなかった。
 ただ黙って前へ進むだけだった。
 余計なことは考えなかった。
 任務は遂行した。
 後は帰るだけでいい…。

「……あれ? 拠点ってこんなに遠かったか?」
 足が止まる。
 そして思わずうしろを振り返る。
「……何もない」
 本当に何もなかった。
 いや、闇があったというべきだろうか。
 吸い込まれそうな闇だった。
 自分がどうしてここにいるのか忘れてしまいそうになった。

 我に帰ってまた歩き始める。
 そしてすぐまた立ち止まった。
「ここは何処だ?」
 目の前には大きな建物が見える。
 宗教施設か何かだろうか。
 とても現実のものとは思えなかった。
「……入ってみるか」
 道に迷うはずはないのだが、迷ってしまった以上どうしようもない。
 こんな人気のない場所にこんな奇妙な建物があるなんて。
 入ってみたくなるじゃないか。

 気がついたら布団の中にいた
「・・・・・・なんだ、夢かよ」
 時計をみるとまだ朝の7時だった。
 朝食なんて食べない。
 僕は布団の中で惰眠を貪った。
「僕にとってはこれこそが至上の快楽なんだ」
 そう自分に言い聞かせた。
 僕は昼食すら食べないことがある。
【適度な断食(夜だけ食べる、など)によって記憶力が高まる】などという論文をネットで見かけたからかもしれない。他にも自然治癒力の向上など様々な効果があるようだが
正直興味ない。決してイスラム教徒のように神に祈りを捧げたりはしないのだが、何故か誤解されてクラスの連中からヤバい奴だと思われているかもしれない。友達なんていない。
僕の断食はあくまで朝の快適な眠りと昼食代の節約及び夕食を楽しむためだというのに......。
「……にしてもあの夢は一体なんだったんだろう?」

 僕は時間になったので布団から飛び起きて急いで着替え、学校へと向かった。

 学校はいつも通りだった。
 特に変わったこともなく、夢と現実は全く交錯しない。
 正夢なんてものは見たことがないし、夢で体験したことをもう一度現実で体験しなければならないなんてとても面倒くさいことだと思う。
 そんなことを考えながら家へと向かって歩いていたはずなのだが・・・・・・
「・・・ここは何処だ?」
 帰り道を間違えるなんてそんな馬鹿なことあるはずない。
 学校が終わったら考え事をしながらまっすぐ家に帰るのはいつものことだ。
……何かがおかしい。
 僕はうしろを振り返った。
 すると突然あたりが暗くなった。
「!?」
 僕は訳が分からなくなった。
 他にどうしようもないのでまっすぐ歩く。
 
 気がついたらどこかで見覚えのある建物の前に着いた。
 「……これは!?」
 そうだ、あの建物だ。
 別の世界に迷いこんでしまったかのような不思議な感覚を与える独特の建物。
 僕は間違いなく夢で見たあの建物だと思った。
 混乱しつつも、僕の頭の中は、その建物の中に入ることでいっぱいだった。
 それ以外考えられなくなった僕は、ドアを開けてその建物の中へと入っていった。