私の町 吉備津

私の町 吉備津

「今日は、どこそこの誰が一番じゃてえな」 

2013-07-15 12:01:19 | 郷土の歴史
 宮内遊廓には、200人を超す芸妓遊女が常時いたのです。その数だけでも相当な驚きです。1年365日、毎日、彼女たちが繰り広げる数々の喧騒が、吉備の中山にこだまして、その繁昌を謳歌していたのです。
 宮内芝居はこの女性たちを大いに利用します。というのは、芝居がはじまると、この女性たちが贔屓する客に芝居の切符を配ります。勿論、相当の金額で客が買い取る仕組みが取られていたのですが、そのようにして、一人の女性が何人の客を芝居に連れてくるかを競わしたのです。これを「線香を焚かせる」と呼んでいました。この線香を焚くことによって芝居はいつも満席であったのだと云われます。特等の桝席は、常に彼女たちによって買い占められていました。そしてその集めてくる客の数の多少によって、その人気を計っていたのだそうです。今回の芝居は「どこどこの誰が一番多く人を集めた」と人気投票のバロメーターにもなったのです。その数を芝居見学者全員に知らせるために、この芝居小屋の花道に「何屋抱何某何人見学」という看板を張り付けていて、「今日は、どこそこの、誰が一番じゃ、もお3っ日目じゃってえなでえな。でえれえもんじゃ」と、噂が会場を飛び回り、それを見足り聞いたりするのも、宮内芝居の見学の楽しみの一つでもあったと言われています。