私の町吉備津

岡山市吉備津に住んでいます。何にやかにやと・・・

無言で再び舞う皇后

2016-06-05 11:03:13 | 日記

 夫である允恭天皇の「娘子の名は!!!」という問いかけに答えを、とっさには言えなかったのでしょうか。よく考えてからと思われたのではないでしょうか、皇后は、またしても、舞いを披露します。その舞いが終わった後も、そんな妙案などあろうはずがありません。しぶしぶと、皇后は「娘子を奉りましょう」と言わざるをえなかったのです。すると、再び、天皇は、そのような皇后の思い悩みがあろうことなどとは知らずして尋ねられます。「娘子の名は誰ぞや」と。その辺りの模様を「日本書紀」には、次のように記しております。それを見てください。是は江戸末期の天保年間に出版された「日本書紀」です。

                  

 

   ”皇后不獲巳而奏言<キサキ ヤムコトヲ エズシテ  マウシテ モウサク>と書いてあります。

 皇后は舞いの最中、ずっと考えたのですが、これという娘子の名は思い浮かびません。でも、舞後の、やいのやいのという天皇からの催促です。致し方ありません。自分が知っている娘子の名は、ただ、一人しかいません。でも、ここでその名は出したくはありません。

 「どうしよう。言いたくはない。でも、言わなくては、この場の雰囲気が壊れてしまう。どうしよう。どうしよう。」

 と、その時の皇后のやるせない気持ちがありありと目に浮かぶように書いております。

            ”不獲巳<ヤムコトヲ エズシテ>”

 と、です。どうでしょうか。「やむをえず」ではないのです。「やむこと」をです。何と素晴らしい書きぶりではないでしょうか。古事記しかりです。それら昔の人の持つ語感の鋭さに、今日も感心すること仕切りです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿