あさねぼう

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山本太郎 感染症と文明

2020-04-26 18:55:53 | 日記
「犠牲者をできるだけ出さないようにしながら、共存するしかない」――。新型コロナウイルスの感染は世界124カ国・地域(各国の発表をまとめたサイト「worldmeter」調べ)に拡大し、世界保健機関(WHO)は11日(日本時間12日未明)、「パンデミック(感染症の世界的な流行)」と宣言した。「感染症と文明」の著者で長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授は「封じ込めは不可能」と話し、感染拡大のスピードと致死率を下げる努力をしながら共存するしかない、と訴える。


示唆に富んだ話しです 感染症と社会目指すべきは「共存」 山本太郎・長崎大熱帯医学研究所教授に聞く 朝日新聞
文明の歴史はこれまで、さまざまな感染症によって大きく左右されてきた。新型コロナウイルスが広がりつつある今、感染症の歴史から私たちが学べることは何か。これまでハイチやアフリカ大陸で感染症対策に従事し、『感染症と文明』などの著書がある山本太郎・長崎大熱帯医学研究所教授(56)に聞いた。

ー 私たちは「人類は文明や科学の力で感染症と闘ってきた」というイメージを持っています。
「それは一面の真実ですが、巨視的には『文明は感染症のゆりかご』として機能してきたことも確かです。現在知られる感染症の大半は、農耕以前の狩猟採集時代には存在していなかった。感染症が人間の社会で定着するには、農耕が本格的に始まって人口が増え、数十万人規模の都市が成立することが必要でした。貯蔵された穀物を食べるネズミはペストなどを持ち込んだ。家畜を飼うことで動物由来の感染症が増えた」
「私たちは感染症を『撲滅するべき悪』という見方をしがちです。だけど、多くの感染症を抱えている文明と、そうではない文明を比べると前者の方がずっと強靭だった。16世紀、ピサロ率いる200人足らずのスペイン人によって南米のインカ文明は滅ぼされた。新大陸の人々は、スペイン人が持ち込んだユーラシア大陸の感染症への免疫を、まったく持っていなかったからです」

 医師としては葛藤も
ー多くの感染症を抱えている方が文明は安全、ということですか。
「人類は天然痘を撲滅しましたが、それにより、人類が集団として持っていた天然痘への免疫も失われた。それが将来、天然痘やそれに似た未知の病原体に接した時に影響を与える可能性があります。感染症に対抗するため大量の抗生物質を使用した結果、病原菌をいかなる抗生物頁も効かない耐性菌へと『進化』させてしまった実例もある」
「多くの感染症は人類の間に広がるにつれて、潜伏期間が長期化し、弱毒化する傾向があります。病原体のウイルスや細菌にとって人間は大切な宿主。宿主の死は自らの死を意味する。病原体の方でも人間との共生を目指す方向に進化していくのです。感染症については撲滅よりも『共生』『共存』を目指す方が望ましいと信じます」
「一方で、医師としての私は、目の前の患者の命を救うことが最優先。抗生物質や抗ウイルス剤など、あらゆる治療手段を用いようとするでしょう。しかし、その治療自体が、薬の効かない強力な病原体を生み出す可能性もある。このジレンマの解決は容易ではありません」

 ウィルス撲滅、人類の免疫力に影響及ぼす恐れ
ー新型コロナウイルスについても「共存」を目指すべきですか。
「グローバル化が進む現代は感染力の強い病原体にとって格好の土壌を提供する。流行している地域によって状況が違うので、新型コロナウイルスの真の致死率は明らかではありません。しかし、世界中に広がっていく中で弱毒化か進み、長期的には風邪のようなありふれた病気の一つとなっていく可能性があります」
「一方で、逆に強毒化する可能性も否定できない。原因ははっきりしませんが、1918〜20年に流行したスペインかぜはそうでした」

 防止策弱毒化に寄与
ー最終的にウイルスが広がるのを防げないのであれば、感染拡大を防ぐ努力は無意味ではないですか。
「それは違います。第一に、感染が広がりつつある現時点では、徹底した感染防止策をとることで、病気の広がる速度を遅くできます。さらに言えば、病原体の弱毒化効果も期待できる。新たな宿主を見つけづらい状況では『宿主を大切にする』弱毒の病原体が有利になるからです。集団内で一定以上の割合の人が免疫を獲得すれば流行は終わる。今、めざすべきことは、被害を最小限に抑えつつ、私たち人類が集団としての免疫を獲得することです」
「従来の感染症は多くの犠牲者を出すことで、望むと望まざるとに関わらず社会に変化を促したが、新型コロナウイルスは被害それ自体よりも『感染が広がっている』という情報自体が政治経済や日常生活に大きな影響を与えている。感染症と文明の関係で言えば、従来とは異なる、現代的変化と言えるかもしれません」
(聞き手・太田啓之)

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