あさねぼう

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海のシルクロード

2020-09-20 18:26:06 | 日記
NHK特集『シルクロード』は、中国・西安を出発点にローマまでの道をたどる第1部『絲綢之路』(全12集)、第2部『ローマへの道』(全18集)のシリーズでいったんは完結した。しかし、それから4年後、今度は地中海から西安へ海路をたどる『海のシルクロード』の放送が始まった。シリーズ誕生の経緯や壮大な旅の中で遭遇した出来事などを振り返る。
1980(昭和55)年4月から1年間にわたって放送された第1部『絲綢之道』は、中国電視台との共同取材が実現。世界で初めて中国領土内のシルクロードを紹介して大きな反響を呼んだ。続く1983年からはユーラシア大陸、地中海、ローマへと至る道を紹介。この2本のシリーズがきっかけでシルクロード・ブームが巻き起こった。

その4年後、1988年4月から放送されたのが西から東、ローマから中国を目指す第3部『海のシルクロード』だ。
きっかけとなったのは、1984年4月に第2部『ローマへの道』取材班が東地中海シリア沖の海底に沈むアンフォラの山を発見したことだった。アンフォラとは、ワインやオリーブ、穀物などを入れて運ぶ大型の壺だ。アンフォラの山の下には難破船が埋まっているケースが多く、世界の考古学者の注目を集め、1985年には日本・シリア合同調査団が組織され、海底遺跡への調査が始まった。そこから急速に第3部『海のシルクロード』企画が具体化していった。
当時のグラフNHKには、「シリアの海底を出発点に、西から東へ海の道をたどろう。旅の始まりは地中海、そこから紅海、アラビア海、インド洋、東シナ海を経て、ゴールは中国の西安。ここで私たちのシルクロードは壮大な輪を描いて完結する」と取材センター特報部のスタッフが全体構想を語った言葉が掲載されている。
こうして、海の道をゆくもうひとつのシルクロードが、船出した。

地中海の海底遺跡発掘の様子から放送がスタートした『海のシルクロード』は、ナイル川をさかのぼり紅海へと向かう内陸の道をたどった。大量の中国古代の陶磁器がナイル川のほとりから発見・発掘されているからだ。誰がどこから、どの道を通って内陸の地に中国の陶磁器を運んだのか。東西交易の秘密を探るため内陸の海の道をたどり、紀元前10世紀、繁栄を極めた伝説のシバ王国(南アラビア=現在のイエメン)ヘ。さらに紅海からアラビア海を抜け、インド洋をアラビアンナイトの時代と基本構造が同じだという木造帆船“ダウ”に乗り、東方の宝の国・インドを目指した。

大航海時代、ヨーロッパ商人は“宝”といわれたこしょうを求めてインドに船出したという。中国がこしょう貿易に進出した10世紀から海のシルクロードの主役となったインド産のこしょう。2千年前にこしょうを求めてきたシリア人の子孫が今も暮らす町などを訪ねた。

そして仏教の聖地・スリランカへ。海のシルクロードを行き来する船乗りたちにとってのオアシスだったスリランカでは、シナモンと宝石にまつわるエピソードを紹介。そこからインドと中国、2つの世界を結ぶ道をテーマに黄金半島と呼ばれるマレー半島を陸路で横断し、シャム湾から再び船で東進するという古道をたどる旅に挑戦した。そして、ヨーロッパや中国から伽羅木を求めて船乗りが目指したベトナムへ。海道の王国として栄えたベトナム海岸線2000キロを北上。“中国の門”と呼ばれた西沙、南沙諸島、さらに海都・泉州から中国南海道を帆走し、揚子江の水運をたどり、旅の最終目的地・長安(現在の西安)に向かった。

旅の最後には世界初の撮影にも成功!
シルクロードの出発点・長安に戻る旅『海のシルクロード』。その最終集では陶磁器の一大生産地・景徳鎮を訪れた。インド洋、アラビア海、そして中国に至る長い旅路で多くの陶磁器を見た取材班にとって「立ち寄らなければならない場所」(スタッフ談・グラフNHKより)だったからだ。
磁都として1千年の歴史を秘めるこの地に幻の窯がある。8年前にNHK特集取材班が内部の撮影を拒否された窯だ。『海のシルクロード』でも取材を申し込んだのだが、その交渉段階で下見に訪れたときのこと。ちょうど窯入れのときに当たり、工場と直接交渉した結果、なんと許可が下りて、ロケが瞬時に開始されることになったのだ。「運にも恵まれました」(同上)と振り返るが、世界で初めて300 度の炎が舞う窯室内部をテレビカメラで撮影することができた。
そしておよそ10年の歳月をかけたシルクロードの旅の最後のロケーションとなった大雁塔と鐘楼。エンディングカットに思いを込めて撮影したという取材班だが、実は撮影時には思いがけない苦労があった。カメラを据えたのは西安消防署の高さ30メートルまで伸びるハシゴ車の上。そのハシゴをゆっくりと上下移動しながら撮影するのだが、ハシゴ車は本来火事を消すためのもの。当然、消防士たちはいかにスピーディーにハシゴを操作するかを競っている。それなのに取材班からは「最低の遅さで」と真逆の注文をされたのだ。これには彼らも四苦八苦。上と下でのやりとりが延々と続けられたという。
長安に始まり長安に帰る10万キロのシルクロードの旅は、こうして終わりを迎えた。

NHK特集 海のシルクロード
第1集 海底からの出発
第2集 ナイル・熱砂の海道
第3集 ハッピー・アラビア
第4集 帆走・シンドバッドの船
第5集 十字架の冒険者
第6集 インド胡椒海岸
第7集 ブッダと宝石
第8集 黄金半島を越える
第9集 海道の王国
第10集 中国の門
第11集 ジャンク 海都をいく
第12集 長安に還る~遙かなる長江の道~

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