あさねぼう

記録のように・備忘録のように、時間をみつけ、思いつくまま、気ままにブログをしたい。

「デジタル元年」

2020-01-19 18:19:19 | 日記
政府は、2020年を「デジタル元年」と位置づけると発表した。この背後には、「知識やデータが新しい経済価値を生み出すようになった」という、経済構造の大きな変化がある。この変化に対応することができれば、世界的に見て低い水準にある日本の生産性を高めるための、切り札になるだろう。これまで、経済的な価値を生み出す資産としては、工場、機械、建築物などの物的な資産が重要な役割を果たしてきた。しかし、それに代わって、知識、情報、データといったものが、新しい経済価値を持つようになったのだ。だが日本の経済は、知識やデータが価値を生み出す構造にはなっていない。

企業の時価総額でも、知的生産物の価値が重要な意味を持つようになっている。
これはとくに、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と呼ばれるアメリカの企業群について顕著だ。最近時点での時価総額は、グーグル(アルファベット)が9229億ドルだ。1ドル110円で換算すれば、102兆円になる。またフェイスブックが5853億ドルで64兆円だ。この2社の計で166兆円になる。この大部分は、ビッグデータの価値であると考えられる。少なくとも、オフィスビルやサーバーなどの物的資産だけでこれほどの価値になるわけではない。他方で、2019年末における東証1部上場企業の株式時価総額は、648兆円である。グーグルとフェイスブックだけで、この約4分の1にもなるのだ。グーグルは1998年に、フェイスブックは2004年に創業された新しい企業だ。これからも分かるように、上で見た変化は、この20年程度の間に起こった新しい変化なのである。
2社の時価総額だけで、日本の知的財産総額を超える経済構造の変化を反映して、国民経済計算でも、2016年から「知的財産生産物」の価値が計上されるようになった。17年末の知的財産生産物(ストック)は141.6兆円で、総資産の8.1%を占める。
ここに含まれるのは、(a)研究・開発(110.0兆円)、(b)鉱物探査・評価(1047億円)、(c)コンピュータソフトウェア(31.5兆円)だ。コンピュータソフトウェアは、総資産の1.8%を占める。知的財産生産物と時価総額は、評価の対象も方法も違うので、単純には比較できないのだが、グーグルとフェイスブックの2社の時価総額(166兆円)だけで、日本の知的財産総額(141.6兆円)を超えていることに注意すべきだ。

GAFAの研究開発費は8.3兆円 、日本の研究費はあまりに少ない
知識やデータの価値が増加しているため、これを得るための投資活動が世界で活発に行われている。国民経済計算では、知的投資(フロー)の計数も計算している。それによると、2018年度の日本の知的投資は29.5兆円だ。その内訳は、つぎのようになっている。(a)研究・開発(19.2兆円)、(b)鉱物探査・評価(332億円)、(c)コンピュータソフトウェア(10.3兆円)。
この規模は世界の現状と比べてどの程度なのか。まず、これをGAFAの研究開発費と比較してみよう。首相官邸の「未来投資会議」の資料によると、18年度の研究開発費は、つぎのとおりだ。アマゾン3.2兆円、アルファベット2.4兆円、アップル1.6兆円、フェイスブック1.1兆円。この4社の合計で8.3兆円となる。これは、国民経済計算における日本の研究・開発投資の43.2%になる。中国では、フィンテック投資だけで, 日本の研究費総額の15%

つぎに、フィンテック投資と比較しよう。アクセンチュアの最新調査によると、2018年のフィンテックベンチャー企業への投資額は、全世界で553億ドル(約6兆円)だ。そのうち中国が255億ドル(約2.8兆円)になっている。これだけで、日本の研究・開発投資総額(19.2兆円)の14.5%になる。なお、日本のフィンテック投資額は、5億4200万ドルだ。これは、全世界の1%程度でしかない。

日本の「デジタル投資」は不十分であり、世界の大勢に大きく遅れていることが分かる。以上で見たのはアドホックな数字だが、。時系列的な変化を詳しく見ていくと、さらに問題が浮き彫りになる。

「知的財産」の比率は、2010年以降、低下傾向
まず、フロー面から見てみよう。国民経済計算によって、総資本形成に占める「知的財産生産物」の比率を見ると、この比率は、1990年代の半ばには12%台だったが、上昇を続けて2003年には20%を超え、00年代の終わりには25%に近づいた。しかし、10年にピークになり、その後は低下している。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿