川越だより

妻と二人あちこちに出かけであった自然や人々のこと。日々の生活の中で嬉しかったこと・感じたこと。

安曇野   「きいちご」8号から

2011-07-29 05:31:29 | 韓国・北朝鮮

27日(水)にRさんから「きいちご」が届いたというメールがありました。北朝鮮を脱出してきた方です。超多忙な日々を過ごされているにもかかわらず、きちんと返事をくれます。お子さんたちと「きいちご」を読みあった「親と子の夜」が想像されて僕も嬉しくなります。

 

     「お元気ですか。昨日、きいちご(나무딸기)多文化共生基金ニュース

     第8号が届きました。家族みんなで読みました。安曇野と松本城の

     第12回きいちご移動教室の楽しさを思い出しながら話しました。

     美しい風景、きれいな水と空気、皆様の幸せな様子、素晴らしいバス…。

     昨日もおかげで、楽しい一晩を過ごしました。ありがとうございます。」

 

「きいちご」第8号の目次はきいちご基金のHPに出ています。

  きいちご多文化共生基金●http://www.geocities.jp/kiichigokikin/kiichigo.html

 読んでいただける方がいたら連絡してください。お届けします。

5月の「移動教室」では長野県の安曇野を訪ねました。10代で北朝鮮に渡った韓さんの文章を紹介します。

 

 

    安  曇  野     韓 錫圭 (ハン・ソッキュ)  

 
 安曇野のわさび畑へ行った。流れる水の中に植えられたわさびを見ながら 
「ああ、彼女が毎日のように言っていたわさび畑というのがこれだったのだ」と思うと涙が溢れそうになった。 
 
 北朝鮮にいたころ、私にはSさんという強制収容所から出てきた友人がいた。
彼女は収容所の中での過酷な生活のせいで、ひどい心臓病を患っていて強制収容所から出された後、何年も生きてい
られなかった。
その短い年月の間に、彼女は私にしょっちゅう故郷の話をしていた。特にわさび畑とワサビの栽培については専門家の
ように具体的なことまでよく知っていた。私は
「この人はわさびについてどうしてこんなに良く知っているんだろう」といつも不思議に思っていたものだった。
 
 彼女がわさび作りについて話すとき、彼女の眼は光り輝き、限りない懐かしさと、愛情をこめて情熱的に話をした。わさび
はきれいな山の清流の中でしか育たないという事、苗は土の中ではなく小石の間に植えるという事、その小石は夏の大水
に流されないように金網の中へ入れて苗床を作るのだと、私の眼の前にパノラマのように描き出して見せた。
 
 その話を聞くたびに私は
「自分がもう余命いくらもないと知って、何の罪も犯していないのに自分と家族を破滅させたこんな酷いところで死にたく
ないという思いがこういう形で表現されているのかもしれない。」と思うと、哀れさが胸に迫るのだった。
彼女が亡くなってもう20年近くなる。でも情熱的だった彼女の姿は昨日のことのように思い出される。美人で聡明だっ
Sさん。
Sさん、あなたが言っていたわさび畑へ来ましたよ。あなたが自分で来ていれば飛び上がって喜んだでしょうに、私だけ
が来てごめんなさい。本当に良いところですね。私の目を通してみる安曇野の景色で我慢してください。」
Sさんに話しかけながら見て回るわさび畑は本当に感慨深いものでした。
名水画像
 
                        

 

 

 


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