格下げ

大手格付け会社のS&Pが、日本の国債の格付けを下げた。ちょうど昨年の今頃、日本の国債のアウトルックを「安定的」から「格下げ方向で見直し」としていたものを、一年たって実際にAAからAAマイナス、アウトルック「安定的」に格下げしたもの。ちなみにAAマイナスって、中国、クウェート、サウジアラビア、台湾などと同じで、ついこないだスペイン危機を起こしたスペインよりも下。外貨準備高が潤沢な中国の格付が日本より低かったってのが、経済的要素だけで格付けが判断されていないこと、政治とか社会の安定が勘案されていること、がわかって面白い。

今回の格下げは、今まで経済学者や政治家が「日本には膨大な個人の金融資産があるから大丈夫」として、痛みを伴う政治的に不人気な財形再建に本腰を入れてこなかったことに対する警告だ。だから菅首相の「そういうことに疎い」とかいう発言の上げ足をとって、あ～だこ～だいう自民党のほうが重罪だったりするし、この期に及んで解散して国民の信を問うなどと口走る財政通をなのる弱小野党の党首もど～かと思う。

そもそも政治と金の問題って、「あんたたち」の問題だし。それを、どうして国会審議を遅らせるツールに使うかね、しかも、あたしたちの税金使って。そういうのってどっか別のところでやってもらって、「あたしたち」の問題をさっさと処理していってくれないかな。そのために政治があるんでしょうが。

誰が与党とか誰が野党とか、そういうのって沈みそうになっている船の乗船員がやることじゃないでしょ。過去の問題が政権交代で露呈した部分が大きいのに、過去の自分たちの政治に対する反省もなく、自分が与党にならないと協力しないっていう自民党って、与党やらせてもダメなだけじゃなくて、野党にすらなれない政党だったんだと思うしかない。民主党も民主党で素人より酷いのではないかと絶望的な気分だ。ぶっちゃけ裏切られたという気持ちが99%。日本の政治を格付けするならジャンクボンド以下で、あたしはびた一文投資しない。が、悲しいかなこの国の納税者なので、無理やり投資させられておる。

だから今回の格下げは、そういう一般国民が感じるような政治に対する不信感や絶望感と、そこから生じる将来に対する不安感を数字にしただけで、当然しごく、っていう気がする。日経新聞にS&Pのアジア担当者のインタビューが掲載されていたけど、それはもう、日本の政治に期待が持てないから格下げしたと言っているようにしか取れなかった。

いわく

「いくらいい改革案をつくっても法律にして国会を通せる可能性は非常に小さいというのが正直な実感だ。一体改革を実現できるという確証が出てくれば評価するが、アイデアだけなら誰でも出せる。問題は政治が実行に移せるかだ」

「３年間で３回も選挙に勝たないと国会をコントロールできない日本の政治制度そのものが財政再建にはネガティブに働いている。予算案も関連法案が通らなかったら半分しか執行できない」

「（政府の財政健全化の目標は）あってないようなものだ。名目で18年間成長していない間に債務が積み上がり、経済の負担能力と釣り合わなくなっている」

政治の問題＝現政権の問題、だけじゃないことは、S&Pのインタビューからも明らかだ。なのに、そんなことお構いなし、自分が野党だと苦しくてしょうがない、だから自分を政権与党にしないかぎり協力しないと最大野党の自民党が言ってるうちに、どんどん国民の生活は痛んでいくのである。それをあおるメディアも、いい加減正気に戻ったほうがいいと思う。

「国債は日本人が買っているから」などと自己満足して財政再建に無頓着でいたりしないで、仕分けは徹底的に行い、経済成長のための政策は大胆に打って、構造転換も迅速に図っていかねば、そうやって少しずつ借金を返していかなきゃダメってこと。海外には、今後２～3年で日本は立ち行かなくなることを想定して投資をしているファンドもある。

今回の格下げが目覚まし時計となって、痛みを伴う改革が始まるよう願うしかない。