徒然なるままに・・・

映画よりJAZZにシフトチェンジ中・・・。

【映画感想・カ行】 空中庭園 ★★★☆

2005-11-10 | 【映画感想・カ行】
ストーリー:
外の団地に住む京橋家には、
家族に秘密は持たないというルールがあった。
長女のマナは、
自分の“出生決定地”が近所のラブホテルだったことを聞かされ、
朝から落ち込んでいた。最近マナは高校に行っていない。
中学生の弟・コウもさぼりがちのようだ。
ラブホテルには窓がないと知って興味を持ったコウは、
見学したいと不動産屋を訪ねる。
そこでコウを接客した女性・ミナと話が合い、
彼女に家庭教師を頼むことに。
母の絵里子は喜んでミナを家族の夕食に招待した。
ミナを見て、父・貴史は驚く。ミナは貴史の愛人だったのだ。
(goo映画より引用)

出演:
小泉今日子、大楠道代、板尾創路、鈴木杏、ソニン

監督:
豊田利晃

家族のカタチとは何か? 家族の絆とは何か?
「個」の時代にあって、この映画の題材は興味を抱く。

「何事も包み隠さない」「秘密を持たない」という京橋家のルール。
そのおかげで、夫・貴史、妻・絵里子、長男・コウ、
長女・マナの4人が仲良く暮らしている。
娘マナが自分が仕込まれた(命を授かった)場所がラブホテルだったと、
自分の母親がそんなことを語る家庭なんて極めて少ないだろう。
朝の光景から映画は始まるが、会話も楽しげであるのを見ると、
一家が実に仲良く絆が繋がっていることを印象付けられる。

しかし、家族の光景、京橋家の暮らす団地の風景が、
回転しながら映し出される不安定な映像を目の当たりにすると、
(三半規管が弱い人は、酔ってしまいそうになるので注意。)
この幸せそうな家族には、
それぞれ秘密を持っていることを予期させる。

絵里子は、愛情を注がれず、引き篭りの子供時代であったため、
理想の家族を作るべく、若い頃から計算して今の家族を作り上げた。
そして、いつも弛まぬ笑顔を見せているが、
その裏にはフラストレーションが溜まっている。
貴史は、絵里子との関係がなく、その腹いせなのか不倫をしているし、
マナは、学校に行けばいじめられるから、通ってもいない。
コウは、父の愛人に家庭教師を依頼し、隠れて何かしている様子。

そんな家族の姿が露呈される絵里子の母親の誕生日会の席。
絵里子も冷酷な一面を見せてしまい、家族は一気に空中分解してしまう。
完璧な家族のカタチに拘る絵里子。隠し事のない絆の強い繋がり。
それは結局の所、絵空事だったのだ。
つまり、思い込みが強いために、本質を見ることに盲目であったのだ。
絵里子の傾向は、コウからも言われていた。
確かに彼女の言動は自信に満ち溢れている。
家族に対する信頼していることもそうだが、
やはり、絵里子が計算して作り上げた家族だったからだ。
彼女の言う家族は、「家族」というイミテーションでしかない。

本当の家族というのは、絵里子の母が語る、
「やり直し、繰り返し」というセリフにある通り、
そのスパイラルにより、家族の絆を強固にすることができる。
絵里子は、やり直すことと繰り返すことを怖れていたのであろう。
物事の本質を知ること、失敗したらやり直すということ。
それに気づいた時、絵里子に降りかかる血の雨が妻の心の痛さを表している。

家族のカタチというのは、当たり前な日常の繰り返し。
それを再認識させる映画である。
シンプルなメッセージには、大いに共感を抱くことができるはずだ。


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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
原作、後追いで読みました。 (あかん隊)
2005-12-19 02:16:02
「対岸の彼女」は、既読でしたから、角田光代さんの語り口は、なんとなく想像できていましたが、映画は、映画でよく出来ていたと思います。原作は、この映画ほど印象的ではありませんでした。(自分には) 観ている側を不可思議な空間に引き込んでしまう映像センスは、格別…と思います。が、これも「薬」のせい?と想像してしまうのが哀しいです。頑張って、再生していただきたい監督さんです。
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コメントありがとうございます。 (kazuki-kt)
2005-12-19 23:08:37
あかん隊さん、コメントありがとうございます。



私も映画を観た後で、原作を買いました。

まだ、読んではいないのですが…。

家族のカタチを考えさせてくれる内容ですが、

あの回転する映像は、薬のせい…だと思いたくないですね。
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TBありがとうございました (ミチ)
2006-01-19 08:50:16
こんにちは~♪

映画のラストの方が個人的には好きです。

赤い雨に打たれた後、家族が用意した白いプレゼントの数々に希望を持つことができましたから。

あのカメラワーク、ちょっと酔いそうでした(笑)
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 (kimion20002000)
2006-04-05 02:06:39
TBありがとう。

「やり直し、繰り返し」たしかに。

でも、自分勝手なわがまま母親だったけどね。

結構、世代的に、僕は、観ました。
返信する
コメントありがとうございます。 (kazuki-kt)
2006-04-06 22:48:35
>ミチさん

うわぁ~、コメントするの忘れておりました。

映画のラスト、光明が見出せるのがいいですね。

家族は「やり直し、繰り返し」なんでしょうね。

カメラワーク、酔いそうでした。ヤバかったです。



>kimon20002000さん

家族の絆は、

「やり直し、繰り返し」なんでしょうね。

ワガママなお母さんだけど、言っていることは的を得ていました。
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