これもまたジュンク堂池袋店で開催されている文芸誌の編集者によるフェアで出会い、読みたくなったもの。ちなみにこのフェアの本は今回で終わりです。
私もまだ少年だったころ、読んだような気がする。その程度の記憶しか残っていませんでした。
読み始めたら止まらない。小説で笑ったのはいつ以来でしょうか? 奥田英朗の伊良部シリーズ以来でしょうか。伊良部シリーズは、文春文庫に収まっている「イン・ザ・プール」、「空中ブランコ」、「町長選挙」のことで、アンダーグラウンドな精神科医が活躍する話です。そちらも面白いのでよかったら。
で、トムは、話が巧みでいたずら好き。実の母は亡くなっており、ポリーおばさんが母親になっていますが、ポリーおばさんを困らせてばかり。おばさんもおばさんで、根拠のない迷信にすぐ浸って、インチキな商品を買ってはトムに試したりもしているのですが。
教会、学校、家でも「ありのまま」を認めてくれることはなく、おばさんにこっぴどく怒られた挙句、トムは友人二人を誘って海賊になる決心をする。忽然と姿を消し、川の中洲に移住し、盗品と釣りで飢えを凌ぎ、自由を謳歌する。しかし、二人の友人はやがてホームシックに。ここでもトムの機転は働き、こっそり家に帰って情報を持ち帰り、川で溺れて死んだことになった三人のお葬式で「復活」してみせる。
友人の一人、ハックと夜中の墓地で殺人現場を目撃もしてしまう。その後、誰にも言わない約束を交わしますが、裁判の最後になって、無実の罪を着せられた男にトムは親切にしてもらっていたことを思い返し、ついに真実を伝える。トムは男の子らしく、無邪気でいたずらっ子で、名誉欲の塊みたい。だけど、親切にしてもらった人を見捨てることもできない。ガールフレンドが鞭打ちの罰を受けそうになったときも身代わりになったりもする。トム自身が善でもあり悪でもある。その揺れ幅が、読む者の心をもとらえる。こいつほんとにバカだなあと笑ったと思えば、消えたいほどに落ち込んだトムの姿も垣間見る。
裁判が終わっても、真犯人であるジョーは逃亡してしまい、ジョーに殺されるかもという恐怖を拭うことができない日々。ガールフレンドと仲直りもし、彼女の提案でピクニックに行き、洞窟の探検に入る。そこで二人は迷子になってしまうのですが、さて、どうなったのでしょうか? ハックとともに宝探しもしていたトムにとって思いがけない展開が待っていますが、読んでのお楽しみ。
確かに、名作です。こんなにも少年をみずみずしく描き出すなんて。それにエピソードのそれぞれが面白いこと。ちょっとしたセリフに真実味を感じたりもする。
この「トム・ソーヤーの冒険」の続編として、「ハックルベリイ・フィンの冒険」が書かれており、それも近いうちに読むでしょう。トムの親友、ハックが主人公となった物語です。もしかしたらそちらも読んだかもしれないけれど、詳細は覚えておりません。
そういえば、トムには父親もいないのでしょうか? その記述は一切なかったと思います。ハックには両親がいてもケンカばかりで、父親は酔っ払ってばかり。
信頼できる大人に恵まれず、子どもたち自身で冒険に身も心も預ける。その最高に楽しい遊びは、ひとつひとつ、彼らの生きる力となっていく。
規範やルールももちろん必要だけど、それだけで人は生きていけない。堅苦しく、息詰まるようになってしまったとき、トムは子ども時代の自然な活力を再生させてくれる。大人のための物語なのかもしれません。
マーク・トウェイン 著/柴田元幸 訳/新潮文庫/2012
私もまだ少年だったころ、読んだような気がする。その程度の記憶しか残っていませんでした。
読み始めたら止まらない。小説で笑ったのはいつ以来でしょうか? 奥田英朗の伊良部シリーズ以来でしょうか。伊良部シリーズは、文春文庫に収まっている「イン・ザ・プール」、「空中ブランコ」、「町長選挙」のことで、アンダーグラウンドな精神科医が活躍する話です。そちらも面白いのでよかったら。
で、トムは、話が巧みでいたずら好き。実の母は亡くなっており、ポリーおばさんが母親になっていますが、ポリーおばさんを困らせてばかり。おばさんもおばさんで、根拠のない迷信にすぐ浸って、インチキな商品を買ってはトムに試したりもしているのですが。
教会、学校、家でも「ありのまま」を認めてくれることはなく、おばさんにこっぴどく怒られた挙句、トムは友人二人を誘って海賊になる決心をする。忽然と姿を消し、川の中洲に移住し、盗品と釣りで飢えを凌ぎ、自由を謳歌する。しかし、二人の友人はやがてホームシックに。ここでもトムの機転は働き、こっそり家に帰って情報を持ち帰り、川で溺れて死んだことになった三人のお葬式で「復活」してみせる。
友人の一人、ハックと夜中の墓地で殺人現場を目撃もしてしまう。その後、誰にも言わない約束を交わしますが、裁判の最後になって、無実の罪を着せられた男にトムは親切にしてもらっていたことを思い返し、ついに真実を伝える。トムは男の子らしく、無邪気でいたずらっ子で、名誉欲の塊みたい。だけど、親切にしてもらった人を見捨てることもできない。ガールフレンドが鞭打ちの罰を受けそうになったときも身代わりになったりもする。トム自身が善でもあり悪でもある。その揺れ幅が、読む者の心をもとらえる。こいつほんとにバカだなあと笑ったと思えば、消えたいほどに落ち込んだトムの姿も垣間見る。
裁判が終わっても、真犯人であるジョーは逃亡してしまい、ジョーに殺されるかもという恐怖を拭うことができない日々。ガールフレンドと仲直りもし、彼女の提案でピクニックに行き、洞窟の探検に入る。そこで二人は迷子になってしまうのですが、さて、どうなったのでしょうか? ハックとともに宝探しもしていたトムにとって思いがけない展開が待っていますが、読んでのお楽しみ。
確かに、名作です。こんなにも少年をみずみずしく描き出すなんて。それにエピソードのそれぞれが面白いこと。ちょっとしたセリフに真実味を感じたりもする。
この「トム・ソーヤーの冒険」の続編として、「ハックルベリイ・フィンの冒険」が書かれており、それも近いうちに読むでしょう。トムの親友、ハックが主人公となった物語です。もしかしたらそちらも読んだかもしれないけれど、詳細は覚えておりません。
そういえば、トムには父親もいないのでしょうか? その記述は一切なかったと思います。ハックには両親がいてもケンカばかりで、父親は酔っ払ってばかり。
信頼できる大人に恵まれず、子どもたち自身で冒険に身も心も預ける。その最高に楽しい遊びは、ひとつひとつ、彼らの生きる力となっていく。
規範やルールももちろん必要だけど、それだけで人は生きていけない。堅苦しく、息詰まるようになってしまったとき、トムは子ども時代の自然な活力を再生させてくれる。大人のための物語なのかもしれません。
マーク・トウェイン 著/柴田元幸 訳/新潮文庫/2012
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