新聞を読んで

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天声人語(OCN朝日新聞デジタル)

2013-06-24 05:56:13 | 日記

2013年6月24日
天声人語 よく晴れていると、自宅近くの私鉄駅の高架ホームから富士山が望める。そのたびに、しばし見入ってしまうことになる。〈風に靡(なび)くふじの煙の空に消えて行方もしらぬわが思ひ哉(かな)〉西行(さいぎょう)。いまは煙は上がっていないけれど、やはり物思いを誘う▼霊峰の世界文化遺産登録は、そこに三保松原(みほのまつばら)も含めるという驚きの結果となった。45キロも離れていて「山の一部」と考えられないとされていたが、各国が「一体だ」と応援し、判断が覆った。日本の主張がわかってもらえたのは喜ばしい▼富士といえば松。おなじみの共演は、古今の美術や文学はもとより、ごく身近な場所でも少なからぬ日本人の目に触れてきた。銭湯を飾るペンキの背景画である。かつて足繁(しげ)く通った身としては、湯船から見上げた雄大な絵柄が忘れられない▼いまや希少な存在となってしまった都内のペンキ絵師、丸山清人(きよと)さん(77)に電話をすると、「三保松原も一緒でよかった」と嬉(うれ)しそうだった。50年以上かけて描いた背景画は、ざっと1万から1万2千枚という。もちろん富士に松は欠かせない。「でないと、どうも様にならない」▼銭湯は減り続ける。背景画もペンキに代わりタイルが増えた。描き直しの注文も少なくなった。今は月に3、4軒を回る程度という。このたびの慶事を機に「どんどん仕事がくればいいけれど」と笑う▼市井に深く根を張った景色の記憶。それも今回の各国への働きかけを支えたと思いたい。丸山さんらの働きにも乾杯、である。


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