台風21号の直撃から一夜明けた5日、高潮などの被害で閉鎖に追い込まれた関西国際空港(大阪府泉佐野市)では、職員らが被害確認や復旧作業に追われた。タンカーの衝突で対岸と結ぶ連絡橋が通れず、利用客ら3000人以上が孤立。同日朝になって、臨時の高速船で脱出を始めた。復旧のめどは立っておらず、1日7万人超が利用する同空港の閉鎖が長期化すれば、経済的な影響も懸念される。

 21号により、強風で倒れた建物の下敷きになったり飛来物が当たったりして、大阪府と滋賀県、愛知県などで11人が死亡。各地でけが人が相次いだ。

 関西空港では4日午後、強風にあおられたタンカーが連絡橋に衝突し、動けなくなった。タンカーの乗組員11人は同日夜までに全員救助されたが、橋は空港行きの道路部分の橋桁がゆがむなどし、通行不能に。3000人以上が孤立し、停電したターミナルビルなどで一夜を明かした。

 空港の運営会社は5日早朝から関空と神戸空港(神戸市)を結ぶ高速船を臨時に運航させ、利用客の救助を開始。ピストン輸送で順次神戸空港に運んだ。午前8時すぎからは、連絡橋の通行可能な道路を通って臨時バスでも移動を始めた。

 橋にめり込んでいたタンカーは同日未明、タグボートで引かれ、撤去された。近くに停船し、朝から海上保安庁などが原因調査をしている。

 台風に伴う高潮で、空港は滑走路が最大約50センチ冠水するなど、敷地の多くが海水に覆われ、一部は建物に流れ込んだ。水は引き始めているが、誘導車など運航の作業に使う多くの車両も被害を受け、5日中の運用再開は不可能という。

 航空各社の整備工場や貨物倉庫も被災。管制施設なども点検を急いでいるが、まだ被害の全容も確認できていない。

 連絡橋は損傷した道路の修復に相当掛かる見通しで、鉄道部分も補修が必要とみられる。十分な輸送量がないと、乗客や貨物が滞留する恐れがあり、課題となっている。