外交戦略
21世紀前半は地域紛争の時代になるのだろうか。
昨年9月の尖閣諸島をめぐる日中間の争いで現日本政府の外交が
厳しい批判にさらされた。以後、中国との新たな協力関係を維持する
ことも出来ない。日中間の問題だけはない。北朝鮮外交も打開できない。
日ロ関係も領土問題で後退した。
現政府は自民党前政権が米国に過剰に依存して中国を敵対視して
いるとして自主外交を掲げていたが、尖閣諸島問題や
中国の南西諸島進出で日本の米国依存はかえって高まっている。
民主党の外交は普天間飛行場問題でつまづいた。
沖縄の米軍基地負担を是正するという発言は理解できるが、
外交は国際的な規範や制約のなかできまる。沖縄県民は基地の
受け入れを拒否している。
中国の台頭や北朝鮮の挑発に直面している日米両政府は
普天間問題を切り離して「共通戦略目標の見直し」を確認し、
同盟深化に向けた協議の加速で一致している。
また、沖縄については普天間だけでなく米軍嘉手納基地に所属する
F15戦闘機の訓練の一部を米領グァム基地に移転させる合意に
ついても移転の際の費用の日本負担の特別協定の改訂についても
米側は評価するとした。
在沖縄海兵隊8千人とその家族のグァム移転ではグァムのインフラ整備
のための日本側からの低利融資の枠組みが固まったことにも米側は
謝意を表した。
だが、こうした日米間での協力を進めても従来の「対米依存」という
外交戦略なら普天間移設が進まなければ同盟深化の
実効性はおぼつかないだろう。
防衛大綱では「中国の海洋進出を念頭に南西諸島の防衛力強化」
を打ち出している。これは東アジアでの米国の影響力が低下し
多極化に向っていると認めている。ならば新しい環境を
踏まえた政策を打ち出すべきだ。