ねぇ、お父さんはどんな人だった?
お父さんは2003年に死にました。
お父さんはお仕事です。
飼育日誌を書くテル。
メモを見ながらまとめるというように上手くできています。
それを見た三浦はほとんど感嘆の声。都古に報告しています。
褒められるテルはちょっと得意げ。
古賀にも見せました。目を見開く古賀です。
都古ちゃんは明日で動物園をやめます。明後日からは来ません。
ハイ・・・意味をはかりかねたようなテルの顔です。
都古は最後の出勤。古賀にテルを頼みますが曖昧な返事。しかし都古は見抜いて
いました。「自閉症のことよく知ってるのでしょう?」そして今までのベールを脱ぎ
古賀も正直に話しました。
ああ、よく知っている。勉強したけど何の役にも立たなかった。
自分の息子を前にすると。どうしていいかわからなくなる。
どうしても息子が自閉症だってことを認めることができなかった。
既に離婚して7年経ち、その後一度も息子に会ってないこと。
そして、その話をしたのは都古が初めてだということ。
都古は衝撃ですね。自分が小さい頃から自然に受け入れてきたテルの自閉症と
同じ症状の子を持つ古賀は自分の子どもを認めていない。
いよいよ花束を受け取り都古はあの一本木のところでテルとバイバイと
いつも通り別れました。帰ったテルは手洗いをし、うがいをしこれもいつもどおり。
翌日も淡々とルーチンをこなしていますが、後ろに聞こえる獣医の声は都古では
ありません。ちらっと見やりつつも、無言で掃除をしていました。
都古はもうここにはいないと、はっきりと胸に刻まれたでしょうか?
でも都古はこの世に生きて引越し先に向かえば会えるということはわかっています。
翌日、テルの休日に何をするかと聞きますが、都古のところに行くといいます。
「結婚」した都古のところにはあんまり行ってはいけないの。
どうして?
そういうものなの。
テルには結婚がやはり飲み込めていません。掃除を机の写真を見てやはり都古の
ところにいこうと思います。リナに行き方を尋ねるテル。
都古の家まで行ってしまいました。上がって・・よく来れたね。優しい都古はテルを
気遣っていますが、これからご飯を食べてすぐに病院の仕事があるという都古。
今まで一緒に仕事をしてきたのに今はテルではなく河原さんと仕事をしている。
テルにはまだ事態が飲み込めません。どうして?
約束したから。
結婚というのはずーっと一緒に仲良くしようと約束することなの。
私は河原さんと約束したの。
二人がご飯を食べているのも立ちつくしたまま見ていたテルでした。
そのころ里江はリナからテルを都古のところに行かせたことを知り、都古はもう
結婚したのだからテルはあまり関わらないようにしたほうがいいと言います。
都古には都古の人生があるんだから。それに応えるようにリナも・・
私、大学を卒業したら家を出るつもりだから
私には私の人生があるから。
一瞬、複雑な顔をした里江ですが、にっこりと笑い、応援すると言いました。
テルが帰りました。無言です。いつもどおり手洗いうがいと続きます。
そして・・もう、都古ちゃんのところには行かないと言いました。
しかし、再びうがいするテル。何かがテルの心に重くのしかかってるようです。
いつもの手紙を書くテル。
都古ちゃんへ。
今日は都古ちゃんの家に行きました。
都古ちゃんは河原さんと約束しました。
都古ちゃんの家にはもう行きません。
職場のテルはマレーバクの説明文を読んでいます。一度読むと頭に入るのでしょう
か?羨ましい才能ですよね。古賀がテルのことが気になるようで何度もよびます。
しかしテルは淡々続きをと読んでいます。思い切って古賀はテルのもとに来ました。
動物のこと覚えているの?ハイ。覚えるの得意だからな。ハイ。
ねえ、おとうさんってどういう人だった?質問が抽象的かな?
お父さんは2003年に死にました。
お父さんと遊んだ?遊ばなかった?
遊ばなかった。お父さんはお仕事です。
古賀は思い出しました。電話の奥から子供の叫びとも呻きともとれるなんとも
不思議な声が聞こえてくること。子供の情緒が安定しない時、手がかかり家事が
滞り、助けを求めている妻なのに、仕事と称して公園で時間をつぶしていたこと。
苦い思い出はテルを通して少しずつ自分の悔いと向き合うようです。
帰り道、いつもの一本木。夕日に照らされて赤いテル。待っていても都古ちゃんは
いません。そこをいつものロードレーサーが通りかかります。
なかなか帰らないテルに夕食の家族は心配ですが、兄は誰かに迷惑をかけるかと
そればかり心配しているようです。ようやく帰ってきましたが、テルは食事をしても
再びうがいと何度も席を立ちます。安定しないテルのことを聞く兄です。
都古ちゃんのところに行ってから様子が変だというリナ。どういうこと?
テルの強くこだわる様子を真樹に説明しています。ストレスがたまると行動が
こだわりになるんだ・・理解できたのかどうか「たいへんね~~」真樹にはしょせん
他人の出来事なんですね。一番の関心は幸太郎のテストですかね?
そこに都古からTEL。もううちには来ないとハガキに書いてあったから気になったと
いうのです。ようやくわかったのかも。結婚したら違うということが。職場は今まで
通りに行ってるから大丈夫よ。都古を巻き込まないようにしている里江ですが、
リナには不満です。テルが気になり一泊のドックを見送ろうかという母ですが、リナは
それこそ里江には健康でいてほしいから必ず検診を受けてほしいといいました。
一泊ぐらい自分がいるから大丈夫よ。う~ん・・悪いけどリナ・・・不安です(苦笑)
しかしその夜から更にテルのこだわりは強くなり、
いつものハガキは2枚書いてしまいました。
都古ちゃんのところにはもう行きません。
このフレーズが非常にテルの心を打ちのめしているのですね。
朝も、出ようとしながら何度もドアに手をかけまた戻り、なかなか外に出られません。
リナも不安が広がっています。黙って見送るリナです。
朝礼。テルがいません。遅刻してきました。初めてですよね。古賀が気にしています。
イスを直し、デスクの備品を整列させ、人が置いた無秩序な置き方も瞬時に直し、
やはり様子がおかしい。古賀が三浦にテルのことを気にかけるように促しています。
家では真樹が秀治に訴えています。里江も不在でリナは遅くなるというし、自分一人
では安定していない状態のテルが不安でしょうがない。分かった早く帰るから・・。
そのころリナは精神科のカウンセリングにいました。都古のところにもう行かないと
言ってからこだわりが強くなり様子がおかしくなったことを説明しています。
結婚とは何かということを短い箇条書きにして文章にするのが有効だと助言。
帰り際につぶやくように言うリナ。
私は私の人生を生きていいのでしょうか?母は好きにしていいと言いますが
ずっと兄のことを見て欲しいのでは。そうしなきゃいけないんじゃないかって。
しかし、リナは振り返り、今の聞かなかったことにしてといいました。
医師はにっこりと話したいことはいつでもどうぞと言ってくれました。
実際に、このような症例を抱えた場合、家族がまずみるのが普通ですから、
それを世間も求めているわけです。しかし、それでは子供をおいて親は死ねない。
自分亡き後を心配して道連れにする事件が多いのも世相を反映するようです。
現在のシステムがそうなってる以上、医師ですら軽がるしく答えは出せません。
職場。園長は結婚記念日に奥さんにあげるプレゼントを忘れたととりにきました。
古賀は感心しています。自分には縁のないこと。古賀は思い出してしまうのです。
子供がいなくなったから、方々手配して花屋の前にいることがわかったので
すぐに行ってほしいと妻からの電話。着いてみると耳を押さえ奇声を発する子供が
そこにいます。しかし取り巻く人だかりは、気味悪いものを見るように誰もが
首をかしげ、眉間にしわを寄せています。そんな人だかりを後ろから見て、古賀は
そのまま立ち去ろうとしました。そこに妻がやってきます。目が合いました。
知らん顔して立ち去ろうとした自分を妻は見ていたのです。睨む妻。情けない・・。
この日から恐らく古賀は子供と別れたのでしょう。既に心では決別していたのか。
でも、違うでしょう。子供を愛していても自閉症の症状を愛することができなかったと
いうことではないですか?慣れとか理解とか受け止めることには要因があるでしょうが
まず、無条件で愛せるかどうかを神様は試したのでしょうね。
そして古賀は敗れてしまったということなんですね。
「カレーはやっぱりチキンカレー。カレーはやっぱりチキンカレー。
カレーはやっぱりチキンカレー。カレーはやっぱりチキンカレー。」
落ち着かなくつぶやくテル。大写しにされた皿には牛肉。真樹が切ってる肉は鶏肉。
笑いました。。帰ってきた秀治は遅いと睨まれています。幸太郎はびっくりの顔。
その夜、真樹は確認するのです。もしも里江に何かあった場合、テルは施設に預ける
ことでいいのね。ああ、いいよ。結婚当初からの約束だったのですね。これが現状。
テルは夜中に何度も起き、明かりをつけたり、消したりしています。
いよいよ都古のいない動物園にストレスを抱えたか。
翌日、テルの姿が見えないことに三浦が慌て始めます。このごろこだわりが強く
なっていたという古賀の報告になぜ自分に知らせてこなかったと怒る園長。
これが表に出たら・・・
テルの失踪が表に出たら自分の責任だということでしょうか。ちょっと園長は先週の
マスコミといい、実は表面を着飾ることだけの人だったのでしょうか。ちと残念。
自宅は留守。古賀は思い切って都古に電話。都古も二通同じハガキがきていて
心配していた矢先でした。心あたりはないですか?
テルは都古と縁のある一本木のところで寝ています。
ロードレーサーがテルを見て微笑み自分の上着をかけてくれたようですね。
そこに都古と古賀がやってきました。
大竹さんには驚いています。最初は一緒に働くのは無理だと思っていましたが
側にいる人間がどう接するかで彼の可能性はどんどん広がるんだなあ。
古賀さん、息子さんに会おうとは思わないんですか?都古の問いかけにもう自分は
死んだことになってるから。そのココロは会いたいけど会えないということでしょうか?
でも死とは何かということをテルは理解してないと思います。そして都古はテルへの
手紙を託して帰っていきました。
目を覚ますテル。一緒に帰ろうという古賀。都古からのハガキを渡します。
大竹さんのお父さん、大竹さんが頑張って喜んでいるよ。きっと。
空を見上げるテル。
お父さんは2003年に死にました。お父さんは遠くへ行きました。
いつ戻ってくるのかなあ。いつ戻ってくるのかなあ。
立ち上がってじっと空を見ています。
待ってるの?
古賀は、半泣きです。
二人の沈黙が静かに染み渡り、古賀は涙が止まりません。
いつか許される日がきたら息子に会いにいけるだろうか?
いつまでもいつまでも泣き続ける古賀。
テルは都古ちゃんからの手紙を読みました。
テルへ。テルは動物園の飼育係です。
テルの動物園の動物たちが元気でいられるように
一生懸命にお世話してください。 約束です。
「やくそくです」・・・そっと呟くテル。
またまた泣かされました。
古賀の心境に変化が表れました。
きっと子供に会いにいけるでしょう。
その大きな役割をテルが果たしたとしたら感激です。
自分の子供だから正視できなかったという古賀が非常に辛いですよね。
そして血を分けた家族でもない真樹の態度は当然なのでしょう。
家族が抱えた三様の姿。
無条件でテルを愛する母と、兄妹の関係であるリナはまた複雑。
自分が将来テルを背負うのかと心配でもあり
その責任を持たなければならないのかと医師に相談もしています。
その行く末は、理解度と経済力に大きく関わっているともいえる為
医師ですら答えることはできません。
都古がいなくなり、母も不在のある日、
テルの心が非常に不安定になった夜は何度も起きていました。
二人の母がいる状態だったテルは現在、一人の母、都古から卒業したのですが、
それと同時に、一人の理解者を増やしました。
テルが一つのハードルを乗り越えた瞬間だったともいえます。
こうやって、真樹もテルのよき理解者となる日がくると思いたいです。