体奏家/新井英夫の予告報告 (DANCE-LABO KARADAKARA)

体奏家/ダンサー新井英夫の舞台活動とワークショップ活動の予告と報告。たまに日々の雑感あれこれなども。

9/14 フィラデルフィア最終日 子どもWS&ダンサーWS

2010-09-15 17:49:06 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
9/14 明日帰国の途につくので、今日が実質フィラデルフィア滞在最終日。
ワークショップ2本立て。15時半から子ども向けWS。小学生の7~11歳の10名が集まってくれた。ムーブメントや音を使ったからだ遊びを日本と同じようにやってみた。反応はいろいろ。集中を要するものはちっと苦手な子が多いようだった。ただ「個性を発揮」するような「人と違う事をすると面白い」ものについては、工夫度が高い。特にリズム感に関しては、何人かのアフリカンアメリカンの子は秀逸だった。家庭でいつもいい音楽を聴いているのかな?

18時から、熟練ダンサーに向けてのワークショップ。こちらは野口体操をダンス色抜きに伝えることをメインに試みた。みなさんとても関心が高い。「力を抜く」という観点からの身体メソッドが北米には各種あるようだが、それと比較しても野口体操のユニークさは際立つと思う。あっという間の2時間だった。写真は「教材」の和紙と参加者の方たちと。


こちら時間で明日9/15朝に発って、日本時間の9/16に帰国の予定です。
秋から春にかけていろいろな企画が続くのだが、フィラデルフィアでつかんだ「感覚」をいいカタチでつなけでいきたい。


9/13 オフのようなオンのような一日 新聞に公演の好評記事 / 過去と今と未来を想う 

2010-09-15 16:46:10 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
9/13 フィラデルフィアの地域紙に今回の公演「Japan House」の批評が掲載された。ざっと読んだところ、かなり好意的な記事でほっとする。インターネットの時代に新聞の批評が今後どれだけ権威を持つか? とも思うのだが、ちゃんと取材して署名記事で書いてくれているのはありがたい。





今日はきむらみかさん、ベンシルバニア大学で日本の近代の歌についての講義をされることになっている。その資料として「こんにちは赤ちゃん」と「同期の桜」の映像と音声の準備のお手伝いを午前中する。昭和のわずか20年あまりの間に唄われる歌が、ライフスタイル・価値観の変遷に対応して、ガラリとかわっていることに驚く。お昼は、鶏肉照り焼き風、キャベツとほうれん草のあえもの、みそ汁(インスタント)を自作してみかさん・リアさんらと食べる。

午後からは別行動。Danny Yungという香港の舞台作家の作品を見に行く。ライブだと思ったら、過去の作品の映像とレクチャーとデモンストレーション(中国の昆劇?の歌唱と舞踊)。1920~40年代に欧米でクロスカルチャーな活躍した中国人の実在Acterをモチーフにした、映像との複合作品の紹介だった。やはり生のデモンストレーションが秀逸。公演後、中国劇の伝統的女形歌唱と動きを披露しくれたXiangPing Xiaoさんと写真を撮る。背筋の伸びたかっこいい若者。指先だけで、キマってますね。


今日は比較的自由時間があったので、リアさんとゆっくりあれこれ話をする。彼女が16年前サイトスペシフィックダンスをはじめてから今に至るまで。貴重な過去のビデオも観せてもらった。彼女の仕事はどこのダンスカンパニーにも似ていないと思う。彼女のカンパニーのサイトにある最近の作品「Urban ECHO」ポーリンオリベロスとの共作。声と動きのつながり・コーラスグループとの共同製作。面白い!! http://www.leahsteindance.org/video.html


彼女と話していて、「1994年ころ何してたか?」という話題に。リアさんがサイトスペシフィックダンスをはじめたころ。ぼくは電気曲馬団という劇団(というかダンスもあった身体表現集団でした)の代表をしていた。埼玉県の旧大宮市の駅前の再開発地域のビルの谷間で、十五夜の晩に「野外劇」を投げ銭歓迎形式で3年続けてやっていた。94年は電気曲馬団として野外劇に引き続き、荒川区の当時廃校になった小学校の体育館でダンス公演をしたりしていた。今から思えば、かなり「サイトスペシフィック」なのだった。リアさんとの共同製作を今フィラデルフィアで終えて思うのだが、なんだか糸がつながっていたような気もする。

この先に何が起きるのか? 今回の旅で受けた体験はまだ未整理なのだけれど、ぐるぐる新たな構想がめぐりだしています。


9/12 オフのようなオンのような1日 LIVE ARTSフェスティバル取材

2010-09-15 00:24:24 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
9/12 到着からずっーとオフ日がなかったのだが、この日はいちおう「休日」。といっても「仕事」がないというだけで結構朝から、忙しい。サンフランシスコにもどる共演のロコさんを空港に送って、今回のプロジェクトですばらしいビデオを撮ってくれたマイケルさんのアトリエを訪ねる。実は画家であり、庭園のデザイナーでもある彼。作品を見せてもらう。のち、LIVE ARTS FESTIVAL&PHILLY FRINGEhttp://www.livearts-fringe.org/の取材をかねて市街に公演を見に行く。一本目がリアさんのダンスカンパニーのメンバーでもあるシャポンヌさんの振り付け演出作品「The body in Lines」。アジア系、アフリカン系の男女3名が、自身の出自を語りながら時にシリアスに時に軽妙に踊る。いわば「ドキュメンタリーなダンス」。ダンサーたちの日常に取材しその編集なのだけれど、ダンスそのものの強度がしっかり全面に出ていてすっとコチラの体に入ってくる作品だった。冒頭写真はシャボンヌさんです。


「人の良さそうな面構え」に見えてしまうフィラデルフィアの路面電車。古き良きアメリカの工業デザインという感じでしょうか。

昼食後、移動して2本目。Pig Iron Theater Companyhttp://www.pigiron.org/の「Cankerblossom」という演劇というか、オブジェクトシアターのようなMixedメディアのような作品。この作品が大当たり!! 全編段ボールを使った仮面や衣装。映像と動きの自然な使い方つなぎ方。ライブの歌と音楽…。おはなしもわかりやすく深い!!

フィラデルフィアでは老舗の人気集団なのだそう。会場は大人たちで満員。「Hideo、パペット=人形を多様した面白いShowがあるから観るといい」と推薦してもらったので、親子客が多いかと思ったら会場はアダルトばかり。しっかり大人向けの表現ジャンルとして確立しているのだった。大好きだなーこういうの!! CGとか画像処理とか最新技術を使っていても、映像に使われる体ではなく、映像を使う体がしっかりとある。ちょっとしたアイデアと、それを深めた表現力、チーム力(複数のディレクターが恊働)に脱帽でした。


もし私にお金も地位もあったなら、ぜひ日本に呼びたい表現集団なのでありました。



チケットと終演後の隠し撮り写真(すいません)。脱ぎ捨ててあるのが、段ボールで作ってあるマスクと衣装。タコとシロクマ。

9/11 公演楽日! 満員御礼感謝感激

2010-09-14 23:21:52 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
9/11 公演楽日。16時、18時の2回公演というなかなかハードなスケジュール。各回とも満員のお客様を迎える。観客は、松風荘の中で(1)北の縁側、(2)東向の縁側、(3)南の長ーい縁側、(4)室内の畳のふた間、(5)南縁側から庭全景が見える位置、(6)家屋を出て、庭の丘から建物全体を望む位置…とシーン毎に移動して違う場を「借景」したダンスを見てもらうことになっている。冒頭写真は(5)のところでお客さん全員が縁側にぞろぞろいるところ(ダンサーたちは庭で踊ってます)。このときみなさんの靴は??というと縁側の下に並べて置いてもらっている。日本以外で、このずらーっと靴が並んだ風景も妙に面白かった。(6)ではまた靴を履いて庭に出てもらうのだが皆さん文句もいわずこちらの趣向を楽しんでくださった。

終わって、撤去して解散。一日2公演さすがに疲れました。が、充実。共演者・スタッフのみなさんに深謝なのでありました。



↑こちらの写真はシーン(6)のため建物から庭の丘の上に移動中のお客さま。靴を脱がされまた履かされたりとご苦労様です。でも皆さんピクニック気分のご様子!?



↑シーン(6)の庭の丘の上からの観客視線からの写真。建物全景が見える。

9/9と10 公演初日と2日目 大盛況!!

2010-09-12 00:14:34 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
9/9 いよいよ公演の初日。リアさん、ロコさん、みかさん近所のカフェで昼食後松風荘へ。ランスルー(通し稽古)のあと、あっという間に本番なのだった。開演直前まであれこれ微調整。サイトスペシフィックな(=場に即した)作品だけに、天気(太陽の方向・風・気温)も大いに関係する。幸い晴天にめぐまれる。もともと劇場でない伝統的日本建築・庭園での公演なので、観客は最大80名収容がいいところ。ほぼ満員御礼だった。
公演中の写真は、もちろんぼくは撮れないので、後日アップしますが、冒頭の写真右はじに写っているのが今回特別参加のナラーニちゃん(9歳)。白い衣装でダンス公演中、「背景」をゆっくり歩いて通り過ぎたりしてもらう重要な役を担ってもらった。実はこのアイデア、ぼくが提案した「座敷童=ザシキワラシ」なのだった(笑)。おどろいたのは、ナラーニちゃんのお父上のルーツであるカンボジアにも「座敷童」的子どもの妖怪が家に住んでいる、という民間伝承があるそうだ。子どものおもちゃを供物として、窓先に捧げる風習も残っているのだそう。日本と同じくこの妖怪イタズラもイイコトもするそうだ。ナラーニちゃんの知り合いはこの妖怪に「宝くじのあたり番号を教えてもらった」という!?

公演後は、フィラデルフィアのEAST地区のアジア系レストランで打ち上げお疲れ様会。このEAST地区、ぼくが滞在しているNorthath地区とまったく違うただずまい。ロコさんによると現在は所得の低いアフリカンアメリカンの方達が多く住んでいるところなのだそう。かつてアジア系住民とアフリカンアメリカン系住民の激しく悲しい対立があったのだという。古い立派な建築と最近立ったようなコーポが混在している不思議な風景。古い建物はかつてこの地域が富裕層の住宅街だった名残り。その「未整理」の混在がいまここの活気を生んでいるように感じる。たとえるなら成城と新大久保が混在している感じ!?。


9/10 公演の2日目。早めに松風荘に集合。今回の公演プログラムには「Directer=監督演出」はあっても「choreographer=振り付け」という記載がない。事前のリサーチに基づきリアさんとロコさんが構成の大枠のアイデアを考えておいてくれた。そこにぼくを含めた各ダンサーが各担当箇所を創って、または即興で踊る…というスタイルなのだ。そんな訳でぼくの「担当」の廊下を使った遠近変化の利いた奥行き空間のシーン、ふたつの畳の間がつながって障子やふすまで区切られたの空間のシーン。この2カ所の打ち合わせを本番前に共演ダンサーたちと行う。ラストシーンも微調整、より祝祭的なエンディングに。この日もおかげさまでほほ満員御礼の大盛況であった。

公演後は、リアさん、ロコさん、みかさん、マイクさん(画家ですが今回はビデオ担当)と、East West地区ジャーマンタウンとよばれるあたりのアフリカンアメリカンのレストランで食事。まったく記憶のインデックスにない味の世界。こういうのは美味しいも不味いも判断不能。さて、このあたりリアさんの住まいのご近所地域なのだ。レストランの壁には経営者ご家族の歴代写真があり、このお店の繁盛記になっている。その服装のうつろいだけみても米国の黒人史を生々しく想像してしまう。

9/7と8 稽古6と7日目 お披露目パーティー&習字芸とゲネプロ 

2010-09-10 12:43:45 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
9/7
上の写真は衣装合わせ風景、短めの午後の稽古を終えて、すぐにぼくの滞在しているディナ&ウォルター夫妻の館に移動。今日は18時から関係者知人に向けてのプロジェクトのお披露目パーティがここである。ダンサー集合して20分ほどの即興ダンスをお客人に披露。プロジェクトの説明そしてご寄附もお願いする。その後の歓談タイムで宴会芸&余興として習字パフォーマンスをする。お名前を漢字にして書いて差し上げる。例えばKateさんだったら桂人に(万葉仮名方式)。ありがたいことにこれがバカ受け。調子に乗って、飼い猫の名前、お孫さんの名前まで次々漢字音訳して習字にしてプレゼントする。


下の写真、こちらがお世話になっているディナ(=出菜)&ウォルター(=潤太)の建築家ご夫妻。となりの写真が実はぼくが滞在しているかれらの大邸宅!! 改装前の古ーい写真です。しばらく廃屋となっていたこの屋敷を建築家であるご夫妻自身の手で改装されて今にいたるのだそうだ。キッチンだけでぼくの東京の住まいより広い(軽くショック!)。


9/8 本番前日にて入念なリハーサル。全体像が見えてきた。ダンス作品のタイトルは「Japan House」全体の構成も試行錯誤を経てようやく決まる。
プログラムは以下のように・・・。いよいよ明日本番なのだ!!
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○The Journey /Crossings: 旅/交わり

  ○Preamble/Wondering 前景/何だろう

   #1:Embarkation/Landing 出国/上陸

    #2:Encounter 出逢い

 #3:Disorientation 混乱

  #4:Gut Level 腑に落ちる

 ○Long View 遠景

 ○Departure/Integration 旅発ち/ひとつになる

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このフィラデルフィアにはかつて岩倉使節団がアメリカ大陸横断の後到着、4日間滞在したという。途中のチャプターを4つに分け観客は、松風荘の内部4箇所を移動しつつダンスを鑑賞するという趣向。異国異文化に触れる長旅、この地への4日間の滞在、そして帰国の途に。そんな心象風景のうつろいをダンス構成の柱としてみた。

9/5と6 稽古4と5日目、散歩とコンタクトインプロと造形作家の宮森敬子さんと再会

2010-09-09 02:24:21 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
9/5 いい天気。暑からず寒からず。朝からリアさん きむらみかさんと宿泊しているディナさん宅近所のフェアモント公園http://www.discoveramerica.com/jp/pennsylvania/fairmount-park.htmlを散策。公園といっても巨大。3723ヘクタール以上の敷地に渓谷森林など自然が残る。キラキラ光る岩石が露出していると思ったらこの地は雲母
の産するところとして有名なのだそうだ。冒頭の樫のドングリが、大きくなったのが下の写真。30分といって出発した散歩があまりに面白くて2時間になってしまう。公園の各所にかつてリアさんが「サイトスペシフィックダンス公演」をしたという場所がある。都心部から車で15分たらずでこういう「自然」があるのが「普通」(世界標準)で、東京のほうが都市の規模が異常に巨大なのかもしれない。



この牧場は20年前にリアさんがはじめてサイトスペシッフックダンスをしたという記念すべき場所。


落ちていた葉っぱで忍者!?この後、コンタクトインプロのワークショップをリアさんロコさんと受講する。のんびり和気あいあいとしたクラス。地元のダンススタジオで。「いかにもモダンダンス」というクラスも開かれていた。移動して午後からみっちり稽古。もどってひさびさにお米を炊いてゴーヤチャンプルをつくって自炊。美味し。胃袋満足。


翌9/6松風荘での稽古5日目。この日はこちら勤労感謝の日。松風荘もお休みで観覧者なしなので終日稽古。
フィラデルフィアに10余年滞在、現在NYにスタジオを移し活躍中の造形アーティスト宮森敬子さんと再会し旧交を暖める。こちら宮森さんのHPです、ぜひ。街・人・自然とをつなぐようなお仕事に深く共感→http://www.princewoods.com/

稽古後、宮森さんとフィラの名物チーズステーキ(超高カロリーメタボ食)のお店の前で。
大きすぎて半分こして食べました。食べにきてる人たちも大きい人が多い。


宮森さんの作品のひとつ。フィラ市内の一角に設置されている「City Root」。街路樹の根を掘り起こして、樹脂のキュープに封じ込めている。根には空き缶やブロックなど都市の記憶がからまっている。コミュニティのアートといえるような作品。静かな迫力と美しさがある。


新井は影でダンスして勝手にコラボ。

9/4 稽古3日目 全員集合とCityでBBQ

2010-09-09 01:51:14 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
午後から稽古3日目、全員集合の稽古になる。冒頭写真は今回きむらみか さんとともに音楽担当の打楽器奏者トシ・マキハラさん、フィラデルフィアに在住している日本人、もと舞踊家でもあり、ダンスと音の領域横断的なパフォーマンスをされている。

http://www.toshimakihara.com/


下の写真はロコ・カワイさんと。在住のサンフランシスコから大陸を横断して到着。「時差ぼけ」なのだという。国内旅行で「時差ぼけ」とはあらためてアメリカの大きさを感じる。


この日は全員でコンセプトの確認。部分的に通しをやってみる。全体像がだんだんと見えてきて楽しみ。

夜から参加ダンサーのダニエルさん宅でバーベーキューをやるので、どう? とお誘いを受ける。今ぼくが滞在(居候)しているのは、郊外のフェアモント公園の閑静な住宅街(邸宅街!?)のディナ&ウォルターさん宅なのだが、City・Down Townの取材も兼ねてお邪魔する。アフリカンアメリカンが比較的多く住む「下町」的地域。空き地で何組かの家族が合同でバーベーキュー大会をしている。ぼくの住む荒川区町屋で、お祭りで町内会で焼きそば焼いてわいわいやっている感じ。親近感あり。ダニエルさん宅のバックヤードでバーベキュー。彼女のパートナーや
友人知人・リアさんのカンパニーのダンサーも混じって食と会話を楽しんだ。


ダニエルさん宅のすぐ裏手にイスラム教のモスクがあり、夜なのに人の出入りが激しい。ラマダン(断食)が終わって、やはり人々が集まってわいわいやっているらしい。ちなみに来週水曜はユダヤ教の「元旦・新年」なのだそうだ。夜空を見上げれば、ちょうど新月とリンクしている。天体の運行・お天道さまのもとに、宗教の違いはあれ、われわれの生活が回っている…というようなことを具体的に感じる。

街中の家の庭のバーベキューです。写ってないところでガンガン焚き火もしてます(大丈夫か!?・笑)。





9/3 稽古2日目、「借景」のダンスとは?

2010-09-04 22:25:26 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
稽古は午後からなので、フィラデルフィアの町をリアさんに案内してもらう。

リアさんとは、2007と2008年伊豆の大仁の古民家「知半庵」での滞在型ダンス製作「Izu House」からのご縁。この時の参加メンバーだったのが日本側=新井、きむらみかさん、米国側=リア・シュタインさん、ロコ・カワイさん、トシ・マキハラさん。今回は、このプロジェクトを米国フィラデルフィアに移しての続編に位置づけられる。詳細は知半アートプロジェクトのこちらのサイトを。http://d.hatena.ne.jp/chihan_project_jpn/

リアさんは、サイトスペシフィック・ダンスというジャンル先駆的仕事を20年ほど前から多く手がけている。サイト=場、スペシフィック=即した、ダンス。劇場以外のところで、その時、その場限りのダンスをつくる・おどる。振り付け=作品化=再演可能=再生産可能…といった近代の都市の劇場システムとちょっと違った、ある時間・空間で一期一会に成立する、芸能の始源に近いようなダンスなのだ。あるいは、場に潜む「物語」をダンスによって表象させる「借景」のダンス。あえて全部自分で創らない。場に既にある、音・空間・歴史的背景…それらすべてが「主役」として踊りだすように、ヒトはむしろ「脇役・介しゃく役」、絵でいえばフレームのような役割を担っていく。

冒頭写真は15年前にリアさんがサイトスペシフィック・ダンスを行ったという、運河とボードウォークと橋が交錯するダイナミックなランドスケープ。同行のきむらみかさんが唄うと声が橋の橋脚に反響して魅力的な音場になる。リアさんと新井はうれしくなって即興でおどりはじめる。みかさんとともにリアさんに市内を案内してもらいつつ、公園・ビルの空き地…などフィラデルフィア市内各所で「リアさんたちが、かつてダンスした」ところを何カ所も見て回る。

午後から松風荘で今日も3時間の稽古。フィラデルフィラ在住の音楽家トシ・マキハラさんも加わり音も入って雰囲気がいい感じで変わる。ウォームアップ後に、参加者全員でコンセプトについてミーティング。座敷童・曖昧な領界・におい・質感・記憶・借景・間(time space・empty・room)・直線と曲線・Privateとpubric…などのキーワードが浮かんでくる。日本家屋庭園でのサイト・スペシフィック・ダンスの公演なのだけれど、「日本」から距離を置いての作業であるぶん、ぼくにとって異なる文化圏・言語圏にも通じる「もの・こと」としてこの場の意味を再考するいい機会になっている。日本人どうしだと「あたり前」のことを再認識して再言語化して再発見していく過程。おかげで厳島神社の気持ちよさとか、京都のお寺法然院で聴いた鐘の周期などいろいろ面白い感覚体験を思い出した。稽古は明日も続く。

晩ごはんはChinese Frenchという看板を掲げるレストランで。値段と味。まぁまぁでそこそこ。なぜかショパンが流れる中で(笑)、中華を食す。そういえば米の飯を2日以上食べていなかった。胃袋が歓ぶ。「郷に入りては」とわかっていても、ぼくの食の価値観はめんどうなくらい保守的なようだ。

(こちらはリアさん、稽古前の松風荘縁側で昼寝の図。「ここはフィラデルフィアですよ念のため」と書きたくなるくらい縁側にいると、何処がわからくなる)

9/2 稽古スタート松風荘(日本家屋庭園)で!

2010-09-04 21:54:38 | 10夏米国ダンス滞在制作プロジェクト
ここフィラデルフィアにある日本建築(家屋と庭園)でサイトスペシフィック・ダンスプロジェクトJapan Houseの稽古がスタート。松風荘というこの施設は、1953年にNYでの展覧会のため日本から米国に贈られ大好評を博したのち、1958年にフィラデルフィアに移築された。その後の保存管理がゆきとどかず、廃屋化していたものを改修して現在のいたる…、というものなのだ。調べてみるとフィラデルフィアには岩倉使節団も来ていたりする。こうしてこの地で、この場所で、日米のダンサーが共に踊るというのも何かの縁を感じてしまう。(写真は、即興で踊る参加ダンサーのひとりダニエルさんと新井)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~jshofuso/

今日は初日のということもあって、自己紹介を兼ねてかなり自由なセッション。
丸く輪になって、ひとりずつ自分のウォームアップ技を紹介、それを順にみんなで試してみる。言葉によらない自己紹介だけれど各々の「人柄・キャリア」が表れて面白い! 柔軟体操系あり、声あり、マッサージあり、接触系あり…。その後縁側、畳の間、庭園を使ってソロ、デュオ、トリオのインプロ。互いの動きや奏でる気配や音を五感で感じて関係を創り合える。今までの経験上、こういう関係は実は簡単ではない。入力ができて出力もきる頼もしい人たち。双方向のコラボレーションが一気に通じてしまう心強ーいメンバーなのだった。3時間の稽古はあっという間に終了。明日はフィラデルフィア在住で音楽担当のトシ・マキハラさんも加わる。大いに楽しみ。

(こちらの写真はもまじめな顔で縁側ミーティング中。左から参加ダンサーのデビット、ダニエル、ジョシー、後ろ姿が日本からともに参加の声楽家きむらみかさん)