体奏家/新井英夫の予告報告 (DANCE-LABO KARADAKARA)

体奏家/ダンサー新井英夫の舞台活動とワークショップ活動の予告と報告。たまに日々の雑感あれこれなども。

8/23 エドモントンを味わうlast day

2009-08-24 16:33:55 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
朝Gerryとともに一日早く帰国するシブエさんを空港まで送る。帰り道に「ダンス」全般について話し合う。今のダンスが失ってしまったもの、それに対して自分たちに何ができるかというようなこと。お互いダンス歴をそれなりに重ねたアラフォー独立系ダンサーとして本音トーク。

昼食はGerry宅でひさびさ自炊。卵キャベツ炒めホイコーロー式を作って食す。包丁を握ると気分がいいのだった。それから世界一を競うウエスト・エドモントンモールに。とにかくでかい。アジア系の大型スーパー、各種テナント、ミニゴルフ、バンジージャンプ、温水巨大プール、映画館、アイススケート場、飲食街、動物園などなどなどが一体となった巨大施設。まる一日かけてもすべては周り切れない。しかしぼくにはどうも「お金を使わせるための大きな仕掛けと魂胆」がミエミエでちょっとシラけてしまった。しかし日本にもここ10年で各地でみかける風景だし、ウエスト・エドモントンモールはその行く末なのかもしれない。勉強になったしいろいろ考えさせられました。自然発生的だったり、予想不可能だったり、無駄なアソビがあったりするほうが個人的には好きなのだ。わが東京の下町の商店街の迷路感覚の方が肌に合う。これは創ろうと思ってもできるものではないんだな、きっと。足立区荒川区台東区…なんて下町の町並み・商店街・銭湯なんかが「世界遺産」になってもいいんじゃないかと個人的には夢想してしまう。

夜は、Gerryがエドモントンで開催中のシアターフリンジフェスティバルにさそってくれる。White Ave近くの会場地には常設と仮設の劇場がひしめき、大道芸もあちこちで。その中レビューで五つ星のNYのクラウンが参加しているデュオグループの演劇を見る。入り口で観客全員に木彫りカエルのパーカッションがひとつづつ配られる。さりげない観客参加型の演出になっていた。すべての台詞をフォーローできたわけではないが、動きと表情に爆笑。クラウンの技術に裏打ちされた動きもすばらしい。これもダンスだ!

最後のエドモントンでの一日を慌ただしく堪能。明日朝の飛行機で日本に発つ。つづきというか後記は日本にもどってから書こうと思います。カナダでのプロジェクトは今日で「おしまい」ですが、ダンスのみならず新井英夫の活動としては新たな「はじまり」の予感。

お世話になったみなさん、出会ったみなさん、出演者・スタッフのみなさん、本当にありがとうございました。

ということでつづく…です。


8/22 オイルプラント背景のインタビュー

2009-08-24 15:47:53 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
朝起きて気持ちはリフレッシュしても身体的疲れからスローな一日。昼ご飯は、アートギャラリーでライブを聴きつつ食べる。…といってもなんのことやら?かもしれない。絵画展示中アートギャラリーが、土日のランチ時間だけご飯を出してカフェと化してのんびりできる、そこで音楽家の無料ライブもある…という「目と耳と舌の快楽」をいっぺんに堪能できてしまうなんとも贅沢で楽しい企画なのだ。合理的というのか、ともかく絵描きもミュージシャンも飯食いにきた人もみんながうれしい! というスタイルなのだ。こんなの日本にもあったらいいが、あるのかな??
その後、Gerryのスタジオ近くにあるお気に入りのイタリアン街でお土産的買い物をしたり、楽器店をのぞいたりしてぶらぶら。にぎやかだと思ったらこの地域の街のお祭りを丁度やっていた。ここ一帯が歩行者天国状態。イタリアン系、中国台湾系、タイ系、エチオピア系…いろいろな出店。路上マッサージ屋なんてのもあった。

夕刻から、映像作品用に取り残したインタビュー撮影をDavidさんと。撮影場所にはエドモントンの市街から車で5分とかからない!!オイルプラント。ここアルバーター州で出た石油がここに集まる。BadLandsでの取材撮影後、地平線の見える4時間のドライブののち、初めてエドモントンに入るときに目に入ってきたのがこのオイルプラントだったのだ。都市文明が石油に支えられていることを知識でなしに目前の風景として実感した象徴的な瞬間だった。化石がでるBadlandsは石油もでる。石油は化石燃料というるのもごもっとも。今回の旅で、いい悪いは別として太古の自然と今の都市生活が石油を介してつながっているなよう感じがした。なのでGerryにいわせれば「醜い」このオイルプラント前をインタビューの場所にあえて選んでみた。


8/21 Bad Lands (Good Luck)本番!!

2009-08-24 15:19:14 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
たっぷり睡眠をとってから午後から劇場入り。ゲネプロのちサンドイッチの軽食だけにして本番を迎える。やはり本番が自分も含めてすべてのダンサーの動きが一番良かった。エドモントンではこの時期シアターフリンジフェスティバルが開催されていて集客が心配されたが、ほぼ満席。制作スタッフのカトリーナさんに感謝なのだった。事前に新聞3誌、3局のローカルラジオのインタビューも奏功したようだ。

公演後、アフタートークを行う。多くの観客が残ってくれて、マトを得た質問が相次ぐ。尋かれてみて初めて言葉にしてみた「作品意図」もあった。
「BadLandsでみた渓谷の地層が本のページに見えた、地層の下つまり古い地層から順々に地球の歴史が上に重なって描かれている、その最終章のほんの少しページがヒトの存在していた時間と空間の層にすぎないことをちょっと実感した」
「一番上の層、つまり地表に立っているのが自分。自分が踊っていた岩の上に百年前、千年前、一万年前にも誰かが立って踊っていたかもしれない。いや踊っていたに違いない。ネイティブダンサーのエイドリアンがこのプロジェクトに参画したことでそんなイマジネーションが湧いた」
…などなどそんなことを、ボディランゲージたっぷりに語った。ダンサーだからなのか、身振り手振りを使えると話が早いのだ。


終演後は、出演者スタッフと打ち上げ。深夜まで懇談してもどる。すべてが思い通りにいったわけではない。しかし最後はタイトルの通り「Good Luck」な公演になった。みなさんありがとうございます!

ふと一日ロクなものを食べていなかったことに気づく。Gerry宅でみそ汁とのりたまかけご飯で夜食。




8/20 CBC前で街中ダンスと劇場仕込み

2009-08-24 14:59:56 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
タイトなスケジュール。朝から劇場に機材運び入れと設置のサポート。お昼に放送局CBCの入っているダウンタウンど真ん中のモール内で情宣を兼ねて無料ダンス。お昼休みのサラリーマンが足を止めてみてくれる。ビルの中のエレベーターを使ったり、歩行者を巻き込んで自由に踊る。これはCBCが企画している「お昼休み街中フリーライブ」というシリーズ。旬の音楽やダンスを無料で市民に楽しんでもらいつつアーティストには宣伝の場にも使ってもらおうというもの。こういうのは本当に楽しい。

昼食は中東料理。揚げ物と野菜をナンのようなもので包んだもの。美味いけどボリュームありすぎ。再び劇場にもどって音楽先攻でテクニカルリハーサルを夜まで。全てのセクションの担当者にディレクションしなくてはならないので疲労困憊状態になる。屋台骨が出来上がるまでここが一番苦しいところ。

会場のFMホールは1930年代に建てられた石工組合の名を冠した建物。天井が高く美しい。ただしもともともあるステージは小さい。なので今回は床面全部をダンスに使って天井の高い空間全部を活かして変則的に使うことにした。





8/19 稽古続く、G両親と再会

2009-08-24 14:37:54 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
朝から稽古、しかし明日から劇場FMホール入りなので、今日が最終なのだった。ともかく全アイデアを試して通す。ダンサーの動きは昨日より良くなって少し安心。午後に通しを行う。

夕刻、音響担当のジョンさん宅にGerryとシブエさんとで打ち合わせに。写真はジョンさん宅の屋上で。いい機嫌なのは、大の酒豪のジョンさんがふるまってくれたウェルカムドリンクのマティーニのせい。必要機材をリクエストして自宅スタジオを見学。まるで楽器博物館。テルミンを演奏してくれる。まるでこれが「演歌のコブシ」(笑)。生まれて初めてシタールを演奏させてもらう。

のち、Gerryのご両親がエドモントンに遊びにきていて皆で会食。韓国飯やでプルコギ。美味し!!アジア飯はすっとハラに収まるから不思議だ。
牛を育て農場を営むGerryの父上ピーターさんにカナダでの農業についていろいろお話しを伺う。冬はマイナス30℃にもなるなか牛は牛舎なしで放し飼いなのだとか!!よく冷凍にならないものだ。ご自分で捕まえたというビーバーの毛皮も見せていただく。知識でなく体験に基づいた動物の話もたくさん。牧牛業の害獣となるプレーリードッグやコヨーテもご自分で撃つらしい。動物愛護などとは言ってられない自然とぎりぎりのなかでシビアに生きているオトコの逞しさをピーターさんに感じる。

舞台前の反省と微調整をGerryとシブエさんと話しつつ深夜に就寝。シブエさんは音楽再編作業にずっととりかかりきり。みなさんお疲れさまです!!

8/18 稽古は続く、いよいよ全員集合!!

2009-08-24 13:33:45 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
今日からテレサも参加しての稽古。いよいよ全員集合なのだ。写真はもっとも背の高いダンサー・ジニーと日本人サイズ(?)の音楽のシブエさんのツーショット(笑)。

テレサさんの参加部分のシーンを「振付け」る。といってもダンス的ではなく、作品全体を通して舞台にたたずんでいたり歩いていたり石を並べてインスタレーションを造形したりといったミステリアスな役柄を担ってもらうことに。映像テストと音楽と動きとを合わせてはじめての通し稽古。段取りに追われて動きの密度が後回しになる。ダメだしのたびに動きがダンサーが萎縮してしまう。演出としていたらない自分を反省。みんなの持ち味を引き出さなければ! お昼はスタジオ下にあるSapporo SushiのTakeOutを。お世辞にも美味しくない(すいません!)、内陸のエドモントンではがんばっているとは思いつつ。日本でも海外の味をウリモノにしているお店では同じ「誤解」を創っているのかもしれない。こればアートでも
考えなければならない問題だ。「○○風」というのは「○○」を名乗ってはいけない。いっそ別ものとして展開していくほうがいさぎいい。とかなんとかいって空腹からSapporo Sushiは完食する。ごちそうさまでした!!

二人とも居候しているGerry宅にもどって、構成と音楽を擦り合わせてシブエさんとともに深夜まで会議。事前に作ってもらった音楽とここでできたダンスとの相性を考えつつ、ジニーとエレン若手二人の女性デュも追加することに。明日の稽古で試してみることにしよう。到着早々シブエさんにハードな仕事を課してしまうことになった。しっかり応えてくれたシブエさん深謝です。


8/17 舞台に向けて稽古再開!

2009-08-24 13:18:55 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
映像制作は先週の撮影旅行で終わり、今週から21金の舞台公演に向けてダンサーが再集合して稽古がスタート。昨日のGerryとの構成会議をふまえてスタジオにて終日の稽古。なんとか全体像が見えてきた。昼飯はエドモントンの人たちが大好きだというTimHoutonというベーグルとサンドイッチのチェーン店でTake Out。味はともかく安いし町中にたくさんあって便利。舞台公演に向けてもうひとりの参画ダンサー、テレサさんは明日から参加なので、この部分はまだ空白になっさている。

稽古後に、音楽のシブエミカさんを空港に迎えにいく。長旅お疲れさま! 

写真は稽古場での風景。今回の舞台は完全に「振付け」がある部分とそうでなくインプロの部分も多い。ただしインプロも出したいニュアンスはある。そのあたりを言葉で伝えるのが難しい。言葉の壁、迫る締め切り、時間がない。正直ちょっと焦る。新たなチャレンジだから仕方ないのだけれど。動きのおおもとのイメージを言葉で伝えることは日本人どうしでも簡単なことではないのだから、と自分を励ましつつ。

8/16 舞監グイードさんと打ち合わせ

2009-08-24 03:33:45 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
舞台構成を最終的にGerryとつめる。ポストイットにアイデアを描いてぺたぺたと並べる。あーてーもないこーでもない。全体をつなぐコンセプトも重要、それに感覚的に全体のバランスやリズムの緩急を付けることも大切。この感じは料理を作って皿を選ぶのにも似ている。夕方から舞台監督のグイードさん、パートナービクトリアさんと舞台セットと機材の最終打ち合わせと会食。市内のフレンチレストランで。さすがにワインがうまい! 同行の子どもたちはパッファローパーガーを食べる。少し味見させてもらうとこれまた野性味あるおいしさ。バッファローは飼育されていて牛肉より少し高めだが普通の食材だという。

舞台構成に関しては、Badlandsで撮ったシルエットの映像のみ使うことに。コンテンポラリーダンサーの影と、ネイティブダンサーの影が夕日の中で岩山の上で邂逅する美しい映像。装置は昨日入手した石のみ。大中小の石そして砂。これで大きな石から始まって砂まで順々に変化していく大きな螺旋を舞台上に作ることになった。大きな石がさざれ石となって砂になるまでがダンサーの手で舞台の進行に従って変化していく。

「砂は地球のほどけた姿」というのは、野口体操の考え方。マグマからできた岩石は山から雨にうがたれ崩れ川を下るうちに砕かれ磨かれ最終的には砂となって海底に沈み、マントルに再吸収されてマグマとなって再び地上に現れる。生と死を想わせるそんなとてつもない長いサイクルのドラマが地球に存在する。そんなイメージを託した。でもこういうメッセージは伝わっても伝わらなくてもいい。観客に言葉にならなくても感じでもらうこと、ダンサーが舞台で実感して「振付け」以前の踊る手がかりを得ること。そこが重要なのだと思うし、それがダンスの理由なのだとも思う。




8/15 廃品回収と石買い

2009-08-24 03:14:43 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
今日は稽古はないのだが、いろいろと雑事をこなす。朝からGerryのご主人のサチオさんのお手伝いでピックアップトラックに廃品を山と詰め込んでもエドモントン市内の廃品回収所に持っていく。このゴミはサチオさんが管理人をしているアパートの改装で出たもの。大物ばかり。家電や家具、庭で切った木材などなど自分で車に積んでもっていくと無料で回収してくれるというシステムらしい。土日はもちろん混む。約一時間待ちで回収所に収める。この他エドモントンのゴミ回収はリサイクルが徹底していて瓶と缶は別の回収所があって業者が買い取ってくれる。どうりでホームレスの人たちが缶を集めているわけだ。デポジットとしての料金を全ての飲み物容器にあらかじめ上乗せしてあるらしい。

その後は、舞台装置として使う石を入手しに、バイパス沿いの大型店へ。ここはガーデニング(特に石)のみをあつかっている。とにかく巨大。Gerryと子どもたちいっしょにいく。子どもたちは石置き場でおおはしゃぎ。でもしっかりお手伝いしてくれてたすかりました!! 夕食はGerryの作ったパスタ。

夕食後は、サチオさんとベースメントでビールを飲みつつ自称「日本人ナイトクラブ」。そういえば終戦記念日だった。この地でこの日を迎えた感慨を語り合う。



8/14 Pow Wowという儀式・まつりの原風景を体感

2009-08-16 02:54:54 | 09夏カナダダンス滞在制作プロジェクト
今日は基本的にOFFの日。ビデオなどをチェックして来週の本番およびフィルムの編集のアイデアなどを整理する。お昼はホイコーローを作ってGerryと食べる。映画共演のエイドリアンさんから承諾を得て、ネイティブ カナディアン(またはFirst Nation)の
儀式であPow Wowをモントリオールに隣接する先住民居住地に見に行く。夏に北米各地で行われているPowWowが偶然エドモントンでこの日開催されたわけだ。このタイミングもとても超ラッキー。というのもこのPow Wowは観光目的のフェスティバルではなく、あくまでネイティブ・カナディアンの伝統的「儀式」なのだ。エドモントンに長年住んでいても知らない人がいるくらい。メディアでもほとんど告知されない。(ということで観光客のノリで写真を撮ることもはばかられたので、冒頭のものはサイトから引用しています)。

エドモントン中心地から車で20分くらい。突然緑が多くなる。伝統的テントが張られていて中央に屋根付きの会場が。ネィティブの人たちが殆ど。白人チラホラ。たぶん日本人はぼくだけだ。いままでの海外経験でもっとも「部外者」な感覚。今日は3日間づづくというPowWowの初日。ダンスや唄のコンペティションも行われるという。オープニングは各集落の踊り手がバレードしつつ踊る。老若男女なななんと500名!!意匠を凝らした衣裳とメイク。 圧巻というしかない。音楽は太鼓を囲んで男が10名ほどでユニゾンで旋律を唄う。ファルセットのこぶし。太鼓のビートとこぶしに東北のねぷた(ねぶた)や追分の芸能の感じがすっと重なった。ちょっと体が熱くなる。ダンスはとにかく大地を踏む踏む踏む…。重力を重さを足の裏で確かめる。神事としての相撲の四股をつい連想してしまう。言葉を介さない祈りとしての大地へのステップ。野口体操の世界ともどこかでつながっている。

お盆で親族が集まって盆踊り、夏に大地に捧げるステップPowWowのダンス。個人的にはコンテンポラリーダンスを都市型生活の私小説のように綴りたくはない。コンテンポラリーダンスもPowWowも広く同時代のダンスだとしたら、「なぜヒトはおどるのか? そしてなぜボクはおどるのか?」という答えのひとつを今日はっきりと感じたように思う。