記紀神話の中で天岩戸隠れの際に、八咫鏡と八尺瓊勾玉は作られています。
八咫鏡と八尺瓊勾玉が一般名詞であるならば、瓊瓊杵尊が天照大神からもたらされた鏡と勾玉が岩戸隠れの際のものと同一であるとは限りませんが、ヤマト政権のご先祖はどうやら八咫鏡と八尺瓊勾玉を作ることができたようです。
八咫鏡と同じサイズと思われる平原王墓出土の大型内行花文鏡は仿製鏡だと考える研究者が多く、このことからも八咫鏡は自らで作成可能な鏡であると推測できそうです。
対して天叢雲剣はヤマタノオロチの体内から出た剣とされます。
ヤマタノオロチを退治したスサノオの十握剣(天羽々斬剣)ではなく、敗者の側の剣が天皇のレガリアとなっていくのです。
天叢雲剣とはそれほど別格なものなのでしょうか。
スサノオの十握剣が欠けたというのですから鉄剣のように思われるのですが、江戸時代に熱田神宮の神官が盗み見たところによると「長さ85センチほどで刃先は菖蒲の葉のようになっており、剣の中ほどは厚く魚の背骨のような形。色は白っぽくサビがなかった」といいます。
この刃の形状は銅剣だけなのだそうで、また錆びやすい鉄が白っぽい色のままの状態というのも考えにくく、鉄剣ではなく銅剣なのかもしれません。
ヤマト政権には服従(連合に加盟かもしれませんが)したクニの神剣がたくさんあったことでしょう。
その中でなぜ出雲神話の中でスサノオが倒したヤマタノオロチの剣が別格となったのでしょうか。
これはヤマタノオロチが特別視されたということと考えてもよいのでしょうか。
古事記では「高志のヤマタノオロチ」と記されています。
ヤマタノオロチの人身御供となるはずだった櫛稲田姫は、私見ではクシイ・ナダ姫です。
越のヌナカワ姫の祖父・父神の名に共通する久辰為(くしい)こそが越であると考えています。
ナダは蛇の古語であり、ヤマタノオロチに関連する姫の名前としてクシイ・ナダ姫が相応しいと考えます。越の蛇のお姫様です。
ヤマタノオロチは越の国と関係すると考えて間違いないように思います。
草はクシの訛りで、蛇のことをナギともナダとも言います。
すると草薙もクシナダ?
ヤマト政権にとって「越」が特別だったということなのでしょうか。
越には何か秘密がありそうです。