桑原名誉顧問からの投稿
VAD法がIEEEマイルストーンに認定された (2015年6月19日)
線路部門出身の貝淵氏の話では「高品質光ファイバー量産製法として用いられるVAD (Vapor-phase Axial Deposition)法」が米IEEE(電子電気学会)のマイルストーンに認定され、IEEE本部の責任者から受賞したNTT、古河電工・住友電工・フジクラの4社へ銘盤を伝達するセレモニーが5月21日に都内パレスホテルで行われたとのことである。
IEEEマイルストーンという賞は電気・電子技術やその関連分野における歴史的偉業に対して与えられるもので、1983年に制定された。認定されるには25年以上にわたり世の中で高く評価を受けてきたという実績が必要であり、日本からは指向性短波アンテナ(八木アンテナ95年認定)や東海道新幹線(2000年認定)など現在まで約25件が認定されている。NTT関連ではG3ファクシミリ(12年認定)、携帯電話用音声圧縮符号化方式(14年認定)がある。
広帯域通信に広く用いられている光ファイバーというのは直径0.125ミリメートルほどの極めて細いガラスの糸で、純粋な石英ガラスの中心部(光ファイバーの中心部をコア、周辺部をクラッドと称する)にゲルマニウムを少し混ぜて屈折率を高くし、光がコアの外へ出ないように工夫してある。
1970年にコーニングが世界に先駆け20dB/㎞という従来よりも格段と損失の少ない光ファイバーの実用化に成功し、構造並びに製造法について特許を得た。コーニングの光ファイバー自身もマイルストーンに認定されている。
コーニングの発明に続きベル研究所マクチェスニー氏が74年にMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法による光ファイバーの製法を編み出した。日本語では内付気相堆積法と呼ばれるこの製法は純粋石英のガラス管の内部にゲルマニウムを含浸させる方法であり、損失率約1dB/㎞が達成された。
これに対し77年、NTT茨城研究所の伊澤達夫氏がVAD法による製法を発明した。VAD法はガラス管を製造する過程で混合部分を同時に作成するので製造が容易である。電線3社の協力を得て80年には損失0.2dB/㎞が得られ、現在ではMCVD法に比し100倍の製造スピードが得られている。
VAD法
銘盤伝達のセレモニーに続く祝賀会の挨拶でNTT鵜浦社長が「在任中に音声符号化と併せ2件が認定を得られまことに喜ばしい」と述べたという。
ところで、NTT関連の認定は3件目と言われていたようだが、実は逓信省時代に実用化された依佐美送信所が09年に認定されている。