ドコモの高品質電話”ボルテ”を試聴して(2014年9月10日)

2014年09月10日 | 随筆

桑原名誉顧問からの投稿

ドコモの高品質電話“ボルテ”を試聴して (2014年9月10日)

関東電友会桑原名誉顧問からの投稿

 ドコモの加藤社長からボルテについて説明を聞く機会があった。ボルテ(VOLTE)とはボイス・オーバーLTEの略である。従来の携帯電話やスマホの通話音声信号は回線交換により接続したデジタル回線で運ばれているのに対し、ボルテはLTE(第3世代の高速版)のパケット回線を用いてIP(インターネット・プロトコル)により音声を運ぶ(これをVOIPという)点が異なっている。

 
 ドコモはボルテのサービスを6月24日に開始した。ボルテは従来の携帯電話サービスに比べて4つのメリットがあるという。高品質であること、スピーディな発着信、高速マルチアクセス、そしてビデオコールである。パケット回線を通して音声通話とデータ通信の両方を行うので、インターネットを行いながら電話をするときも短い時間でつながるし、通話をしながらブラウジングもスムースに行える。またビデオコールは所謂テレビ電話である。ここでは通話品質についてのみ詳述することとしたい。

 
 従来の音声通話は伝送する周波数の帯域が、固定電話を含めて300~3400Hzであった。これに対しボルテでは50~7000Hzと広くなっている。特に高い周波数が広がっているため音声が明瞭に聞こえる。デモではリカちゃんのキャラクターがしゃべる女児の声をボルテと従来のスマホによる通話とを比較して聞かせてくれたが、確かにボルテは澄んだ声だと感じた。

  
 筆者の年齢になると高い周波数の音は聞こえ難い。昨年病院で聴覚テストを行った結果では、8kHzの感度は4kHzに比べてマイナス30db(千分の1)、1kHzに比べると実にマイナス50db(10万分の1)も下がっている。したがって単音で7000Hzの音を聞かせても、恐らく聞くことができない。しかし音声に高調波として含まれた高周波の音をフィルターでカットした時とカットしなかった時とでは、品質に差を感じるものであるらしい。

 
 こうした人間の不思議な感性については、文明科学研究所の大橋力所長から教えて頂いた。彼はハイパーソニック・エフェクト(超知覚高調波を含む音が基幹脳を活性化する現象)を発見、2000年に論文発表している。またバリ島の男性合唱「クチャ」研究の大家で芸能山城組の主宰者としても有名である。85年につくば市で開催された科学技術博覧会のときにはNTT・INS館の展示を“日本のまつり”をテーマとして企画し、山城組を率いて運営に協力して下さった。

 
 高調波が聞こえるという話をある会合で話したところ、友人の藤岡宏衛氏が“ソニービルでハイレゾの音楽を聴き実感した”と共鳴してくれた。ハイレゾは最高周波数がCDの約20kHzと比較して48kHzあるいは96kHzと2倍以上に伸びているが、これも単音ではとても聞き取れない周波数領域である。また昔のLPレコードの方がCDよりも音が良いという意見も出された。

 
 ボルテの広い周波数帯域はアナログ音声をデジタルに変換するコーダー(符号器)とアナログに戻すときのデコーダー(複合器)がペアになって実現しているので、ボルテ対応の端末機同士でないと実現できない(もちろん従来品質による通話は可能)。ドコモは6月にボルテ対応のスマホを4機種発売しており、今後はすべてボルテ対応になるものと思われる。

 
 ボルテの高品質通話、ならびに通話中でもブラウジングがスムースに行える便利さは顧客に歓迎されることであろう。このところLINEなど無料通話アプリの普及により電話サービスの利用が減少傾向にあるのがドコモの悩みであるが、「かけ放題」サービスと相まってスマホによる音声通話利用が復活することを期待していると加藤社長は述べていた。

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