KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
2022年は積極的に更新していく心算です。

箱根の山は天下の・・・vol.2

2005年01月17日 | 駅伝時評
バルセロナ五輪以降、日本の男子マラソンは五輪のメダルに手が届かなくなっているのに、女子はシドニー、アテネと2大会連続して金メダルを獲得することができた。なぜ、男女間でこのような差が生じたのか?

男子にあって、女子にないもの。もしくはその逆を考えていたらこの点に気づいた。


女子には、箱根駅伝がない。


'80年代の「マラソン・ブーム」を支えた、瀬古利彦さん、中山竹通さん、谷口浩美さんらが五輪のメダルには手が届くことなくロードを去り、バルセロナ五輪の銀メダリスト、森下広一さんが故障で再びスタートラインに立つことなく引退していき、彼らの後継者が育つことなく、男子マラソンが低迷していった時期が、実は、全国ネットで完全生中継が実現した箱根駅伝が「国民的行事」に成長していく過程と重なっていたのだった。

僕にとっても、箱根駅伝が最も面白かったのは、'90年代の前半。早稲田と山梨学院大が優勝を争い、そこに中央大が絡み、兄の母校である神奈川大が次第に順位を上げていった時期だった。

しかしながら、この時期の箱根を賑わせたランナーたち、卒業後実業団に進み、マラソンに挑戦したものの、「世界」の壁は高く、厚くなっていた。国内の主要大会でも日本人選手が優勝から遠ざかったことから、「マラソン選手を育成するための大会」だったはずの箱根駅伝が、マラソンの人気を凌駕してしまったのだ。

箱根駅伝そのものも、レベルが向上した。元実業団ランナーを監督、コーチに迎える学校が大半を占め、「プロと同じメニューの練習」で強化するようになった。今年の箱根駅伝。熾烈なのは優勝争いだけではない。10位までのチームに与えられるシード権争いも今年は熱かった。(中継アナがやたら熱くなっていた。)アンカーが区間新記録をマークしながらも、シード権に22秒届かなかった早稲田大。実は、今年の11位のタイムは昨年の3位に相当するのだ!!15位の城西大のタイムも、昨年ならシード権が獲得できたタイムである。

もはや、箱根は「通過点」では済まない大会となった。何と言っても東京都内の中心部からスタートし、主要道路を交通規制して走るコース。沿道に重なる応援の人ごみ。オリンピック中継の次に高いテレビ視聴率。これらが、卒業後のマラソンに対するモチベーションに何らかの影響を与えているのでなければいいがと思わずにはいられない。

20世紀から21世紀にかけて、ようやく、箱根から「マラソンにっぽん」の再建を託したくなるランナーが次々と出現した。藤田敦史、西田隆維、佐藤敦史、藤原正和。さらに武井隆次や尾方剛のように箱根から10年過ぎて、マラソン初優勝を果たしたランナーも現われた。

そして、アテネでは東海大で2区を走った諏訪利成が6位に入賞した。箱根経験者としては、メルボルンの川島義明さん、バルセロナの谷口浩美さんに次いで、戦後3人目の入賞者である!

今回の箱根の中継にゲスト出演した彼に対し、シドニー五輪のサッカーで大馬鹿丸だしの中継をしたアナウンサーが、区間賞の走りをした学生ランナーを「ライバル」呼ばわりしていたのは、はっきり言って失礼じゃないのか?五輪入賞者も随分となめられたものである。

箱根の人気がなぜ、男子マラソンの人気に結びつかないのか?以前から、箱根を主催する新聞社の世論調査で、マラソンが野球に次いで2位の人気を得ているのが疑問だったが、もしかしたら、この調査で、「マラソン」と解答した人の何割かは、箱根駅伝も「マラソン」の内に入れたのかもしれない。あるいは、この新聞社の系列のテレビ局が毎年8月にやっている、芸能人に100kmを24時間かけて走られるマラソンも含まれているかもしれない。

箱根駅伝の人気(テレビ視聴率)が、国内のメジャー大会はおろか、世界選手権のマラソンをも上回っていることは、マラソン界にとって、不幸なことだろうか?

(つづく)



コメントを投稿