KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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マラソンに殺されない法 vol.4

2011年11月13日 | マラソンに殺されない法
マラソン人気が高まった要因の一つとして、お笑い芸人やモデルら芸能人がホノルルや東京などのマラソン大会に挑戦し、それをテレビが追い駆ける番組もあると思います。マラソンと言えば、なにやらストイックで過酷という印象を持つ人は少なくないでしょうから、そういったイメージとは程遠い芸能人が完走する様子を見て、

「あんなお笑い芸人にも出来るなら、自分も。」

という根拠の無い自信を持つ方もいらっしゃるかもしれません。いや、数年前まで、僕に真顔で、

「どうせ芸能人なんぞは、キセルとかやっとんやろ?」

と訊ねる人もいました。実際に、30年以上前に、日本のある有名なタレントが海外のマラソンでキセル(途中で車に乗り、ゴール手前で再び走り始める違反行為)を行なった、という事実があるのです。

少なくとも、現在の公認マラソンにおいては、そのような行為をしてもすぐ分かるようになっています。ランナーは全て、発信器をシューズかナンバーカードに付けていて、それによって記録が集計されているからです。

僕自身も、かつて、フォークシンガーの高石ともや氏が、当時39歳で、別府大分毎日マラソンを完走した、という記事に驚き、陸上競技の選手でなくても、別大のような大会に出る事が出来ると知り、これが後に自ら走り始める結果となりました。芸能人ランナーに憧れて、走り始める気持ちを否定するつもりはありません。

ただ、彼らをキセル呼ばわりする人ほどではなくても、どこかで、彼らを舐めてはいませんか?

少なくとも、マラソンにチャレンジする芸能人たちは、皆、有名スポーツメイカーから、最新型のシューズ等、用具の提供を受け、五輪代表ランナーの指導歴もある、有名コーチの作成したメニューに従ってトレーニングを実施しています。
それに、彼らは、

「自分が完走出来ないと、番組が成立しない。」

という重圧を感じつつマラソンに出場しています。いわば、時代劇に出演する俳優が、馬術や殺陣や所作を習得するように、マラソンを走っているのです。

「テレビでバカな事を言ったり、やったりしている芸人でもマラソンが走れるのだから自分も出来る。」

などとは思わない方が身の為でしょう。

ただ、今のマラソン芸能人には僕も首を傾げる部分もあります。先述の高石氏や、現在はリタイアした上岡龍太郎氏、世界一周にチャレンジした間寛平氏らなどは、本業においても、確固たる地位と人気を築いてらっしゃいましたが、今は、マラソンの記録は素晴しいのに、本業の芸の方は、何をしているのかよく分からないような方もいらっしゃいます。

あるいは、今年の夏、70歳を越えるベテランのアナウンサーが、某局恒例の「24時間マラソン」にチャレンジしました。もしかしたら、あれを見て、自分も、と思った方もいらっしゃるかもしれません。ちょうど、あの番組の放映される時期は、東京マラソンの募集期間と重なっています。

ゴールを目指して走り続ける彼の姿に涙した、という方には申し訳ありませんが、僕はあれを「マラソン」とは認めたくありません。

自らの体力や資質も考えずに、定年退職後の第2の人生に田舎暮らしを選ぶ、という人が少なくないと言いますが、還暦や古希といった人生の一区切りに、マラソンにチャレンジ、という人はそれ以上に多いでしょう。何と言っても、田舎に土地や家を買うというリスクに比べたら、マラソンにチャレンジする、というリスクは安いものです。抽選を潜り抜けたら、参加料を支払うだけでいいのです。失敗しても、パチンコや宝くじで損した程度の損失で済みます。金額的には。

ただし、自らの命を落とすかもしれない、あるいは、残りの人生をずっと苦しめることになるかもしれないダメージを身体に残す、というリスクがあることをお忘れなく。

「自分にどれだけの力が残されているのか確かめたい。」

と思ってエントリーされるのもいいですが、残りの人生を生き抜く為のエネルギーを全て、その日1日で使い切ってしまうことになりませぬように。



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