エクストリーム四十代のかもめ日記

野球を中心に、体力気力に任せて無茶をしがちな日常を綴る暑苦しい活動記。

私の野球観戦史を変えた選手・監督

2020-07-12 15:56:03 | プロ野球
長年野球ファンをやっていると、何人もの「思い出の選手」「思い入れの
ある選手」がいるものだと思います。
今回は、私の野球観戦の感覚や価値観を変えた選手・監督を挙げて語って
みたいと思います。
ラインナップは以下の通り。

ボビー・バレンタイン:ロッテの歴史を劇的に変えてくれた。
サブロー:外野守備の究極は「すでに、そこにいる」だと教えられた。
里崎智也:「投手が楽に投げられるリード」を教えられた。
荻野貴司:プロ1年目の数々の走塁の凄まじさを超える奇跡は存在しない。
大谷翔平:四十年以上野球を見てきてまだ「夢」が見られるとは…。

〇ボビー・バレンタイン(ロッテ監督)※肩書きは当時。
かつて、ロッテオリオンズは暗黒だった。
不人気な「パ・リーグ」においても群を抜く不人気さ。いつもガラガラの
本拠地・川崎球場は、プロ野球界の盛大な「ネタ」でしかなかった。
千葉に移転して少しはマシになったが、ピンクのユニフォームの時代、
やはりロッテは不人気球団だった。不人気なだけでなく、負け犬根性が
しみついて「優勝なんか無理」という感覚で野球をやっている、暗くて
情けない球団だった。(ファンが言うのもなんだけど。笑)
そのチームにボビー・バレンタインが魔法をかけた。
おかげで千葉ロッテは「いっぱしの球団」になれた。ボビーの力と遺産で
日本一も二度経験できた。
「ボビー前」と「ボビー後」で、ロッテという球団はまるで違う。
「ファンはいるものの、客観的には愛される価値が感じられない球団」が、
「熱いファンに後押しされた楽しくて魅力的な球団」に変わった。
ボビー・バレンタインは真実、「魔法使い」だったと思う。
今の「千葉ロッテマリーンズ」は、ロッテ球団を土台にボビーが創生した…
川崎時代からのファンの私は、ボビーをそのくらい「神」だと思っている。
今もロッテを思ってくれる素敵な歴史的偉人。
先日はロッテグッズまみれのコロナ見舞いの動画をありがとう!

〇サブロー(ロッテ外野手)
それまでは、普通に「ファインプレーを連発する選手」が名手なのだと
思っていた。「守備範囲が広くてなんでもキャッチ」+「送球で的確に刺す」
が守備の名手だという認識。かつてのロッテの小坂と、今なら広島の菊池が
典型的な「守備の名手」のイメージ。外野手も跳んだり跳ねたりしてナイス
キャッチする人が名手なんだと思っていた。
だが、サブローの守備を見ていて新しい価値観に開眼した。
「上手い外野手は、『すでに、そこにいる』」

テレビでなく球場で野球を見るようになってから、不思議なことに気づき
はじめた。バッターが打つ方向がどこであっても、サブローがイージーに
キャッチする。「なんで都合よく、今回ここにいたんだ?」というところに
いつもいて、普通に捕球する。結果、何も起こらない。
そこにファインプレーはないが、毎度「都合よく」そこにいる。やがて、
「これは偶然じゃないんだ」ということを察知した。
そして、あわやホームランという打球の時、サブローがゆるーく追って、
フェンス直撃のボールを内野に返す様子を見ていて、はっとした。
「これ、フェンスまで追ったら1つ余計に進塁させてるよな!」
全力でフェンスまで追って、跳ね返ったボールを追いかけ回して、さらに
長い距離を投げて内野にぽーんとボールを返すより、「直接は捕れない」
という判断が早めにできたらクッションボールをベストの位置で処理して
進塁を阻むほうがいい。サブローの動作はユルく見えるが、実は最善を
最短で実現しているじゃないか。

つまり、追いつける打球の時には「すでにそこにいる」し、追いつけない
時にはクッションボールに最短で的確にアプローチしている…
「そうか、上手い外野手は、跳んだり跳ねたりするんじゃなくて、打球が
来るところに的確にいるから、結果として何も起こらないんだな…」
ほんとはこの「何も起こらない守備」は、サブローの前の、大塚明から
そうだったんだと思うのだけど、私が球場でそれを見て気づいたのは
サブローの時代からなのであった。
サブローが選手間投票でオールスターに選出されたのは、この守備あって
のことだろう。「どこに打っても、苦もなく捕られるぞ!?」と思った
他球団の選手がたくさんいたんだと思う。
このサブローのさらに上をいって「どこに打っても何も起こらないうえに、
届くはずのない位置に飛んだ打球まで全部捕る」だったのが岡田幸文。
でもとにかく、サブローのゆるく見える守備が実はすごい、と気づいた時、
野球の見え方がまた大きく変わった。野球って面白いと改めて思った。

〇里崎智也(ロッテ捕手)
これについては詳述を避けるが、里崎のリードは「決め球は1球投げれば
いい」という組み立てになっている。よく2ストライク目に一番いい球を
使ってしまって決め球に四苦八苦したり、外角低めの球ばかり要求して
苦しいピッチングにしたりするリードを見るが、里崎にはそれがない。
本人の著書にもあるが「2ストライクから1球外すのは無意味」。実際、
サトのリードは3球勝負も多い。これは球数が無駄に増えなくていいし、
「3球勝負で来るか、3球勝負はしないのか?」という点でも打者を
迷わせたほうがいい。
ただしサトのリードは、ある程度点は取られるリスク込み。「3点くらいは
取られるものなんだから、それで負けたらバッテリーの責任ではない」と
割り切っている。投手に完璧を求めて自爆するようなこともない。
とにかくいろいろな面で「投手が楽に投げられる」方法が追求されている。
こんなに「投手主義」なキャッチャー見たことない。
里崎は「リードは結果論」と言っているが、実際はピッチャーの精神面、
体力面の消耗までケアする渾身のリードをしている。
球場で野球を見て、また、野球について真剣にいろいろ考えて見るように
なって、さまざまな点で、サトの言うことがよくわかるようになった。
理論派に見えるけどボビー信者でロッテ球団大好きだったりする感情的な
面も垣間見えて、里崎には共感できて親しみが持てる。
里崎に教わったもの・ことは、とにかく多い。

〇荻野貴司(ロッテ外野手)
イケメンで鳴らす荻野だが、私は彼の見た目にはまったく興味がないし、
とくだんファンというわけではない。だが、荻野貴司の1年目はほんとに
ほんとにすごかった。私の野球の常識を打ち破ったドすげえ選手だった。
荻野のデビュー当時、私はすでに三十年以上野球を見てきていたベテラン
ファンだったのに、それまでに見て知っていた野球の物理法則では決して
ありえないスピードがそこにあった。
ライト前二塁打とか、普通のショートゴロが内野安打とか、送りバントで
普通に自分もセーフとか…。塁に出ればいつでも盗塁、フォアボールが
3塁打に化ける。いつどこで荻野が物理法則を超えてみせるかが、常に
楽しみだった。
荻野のすごさはスピードだけではなくて、野球勘、野球感覚がとにかく
すさまじかった。自分の打球がどこまで飛ぶから自分の脚ならどこまで
進めるか、それを脳内で感覚として認識する正しさがハンパなかった。
自分が前に進めるギリギリ・スレスレに可能な限界まで前進した。
足の速さもすごすぎるのに、進める限界を見定める能力もすごいとは…。
「今日も、荻野がすごいことをやるかもしれない」という夢にあふれた
あの短い春…
でも、人間は奇跡を起こし続けて生きることはできなかった。
荻野の能力は人間の生身を超えていたんだと思う。

ケガから回復したものの、「奇跡」は起こせなくなった荻野。
だた、ある年のロッテのファン感謝デーのリレーで、荻野の秘密の一端を
見ることができた。
リレーのアンカーは、ともに超俊足の荻野と岡田。二人はほぼ同時に
スタートしたのに、荻野が一瞬にしてドバーと圧倒的加速を見せた。
「そのへんの超俊足」じゃまるっきり追いつかない、異質の加速力だった。
塁から塁への短い距離を走ることの多い野球では、あの加速力こそが
奇跡を産むのだなとよくわかった。
今も、「今日も奇跡が見られるか?」と連日興奮のるつぼだった日々を
思い出すだけで「あれはほんとに幸せだった、すごかったな」と思う。
もしかして、荻野1年目のあの春が一番、野球を見ていて楽しかったの
かもしれない。そのくらい、荻野貴司はすごかった。

〇大谷翔平(日本ハムの投手であり野手)
もうこの肩書の書き方じたいが↑変になっちゃうレベルで野球の常識を
凌駕している大谷翔平。
私は編集の仕事をしているわけだけど、もしも私の手元に「主人公は、
プロ野球で投手として160キロの球を投げて、ホームランもバンバン
打つんです」という設定の物語が持ち込まれたら、「そんな嘘くさい
物語、読者が共感できないですよ。ありえなすぎて読者ドン引きです」
って答えるだろうな。
ましてや「投手なのに先頭打者ホームランを打ったり、自分で完封して
1対0で勝利して優勝を決めたりするんです」「最後にはプロ野球の
公式戦で『エースで四番』をやって、大リーグに移籍するんです」とか
言われた日にゃあ「私も野球ファンを四十年以上やってますが、そんな
現実感のない、ありえないヒーロー、バカバカしすぎてまるっきり
読む気になれません。書くならもっと現実的な設定にしないと…」って
全否定しちゃうね。
「あっ、しかも、足も速いし、外野を守らせると肩も素晴らしくて
ライトから三塁へ酔いしれるようなぐんぐん伸びる球を投げるんです」
投手が外野をやると肩がいい、というのはアリだが…そこまで何もかも
できるドすげえ選手なんて、ありえなすぎてもはや寒いわ。
…でも、ありえてしまったね。その、ありえない奇跡が。
でも荻野と同じで、やっぱり人間の能力を超えてしまっていたようで、
ケガ、手術を経ることになった。メスを入れた影響を受けることなく、
これからもっと「ありえないだろそれー」と言わせてほしい。
2016年が大谷の最高の輝き、なんてことにならないでくれよ!


以上、プロ野球は何十年見ていても新しい驚きをもたらしてくれて、
知れば知るほど面白くてやめられない。
一対一の対戦でありチームプレイであり、アクションゲームであり
シミュレーションゲームであり、理論であり「理屈ではない何か」で
あり、有限であり無限でもある。
荻野貴司デビュー年、私は38歳。大谷の日本キャリアハイの年、
私は44歳。こんな年齢になって「こんなすごいことをこの目で見る
なんて! 奇跡だ!」と思えるって、なんて素敵なことだろう。
私のつまんない凡人頭をたたき割り、価値観をひっくり返してくれる
素晴らしき野球の世界。一時、野球を見るのをやめていたのだけれど、
私をまたプロ野球観戦に引き戻してくれたボビー・バレンタインに
あらためて感謝したい。ロッテファンやっててよかった!