亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

パラレルストーリー おじさんと女子高生

2018-08-28 23:22:40 | 美月と亮 パラレルストーリー
「お前ら、とっとと帰れよぉ。」

もうすぐ最終下校の時間だ。
俺は校内に疎らに居残る生徒に
声をかける。
居心地がいいんだろうな。
街に出れば、座って落ち着く場所は
金がかかる。

「はあい。じゃーねー長内くん。」

「気をつけろよぉ。」

教師には二種類いてさ。
生徒から「○○先生」って呼ばれる人と
「○○くん」って呼ばれるやつ。
俺は、聞いての通り後者。

「長内先生は、生徒と馴れ合いすぎですよ。」

学年主任の岩倉先生がいつも言ってる。

「子供だって、威厳を持って接して
いかないと。態度に出してきますからね。」

岩倉先生は50絡みの、いかにもな思想で
子供たちとの関係を築いていて
そんなことは子供らも百も承知だ。
逆に中身がすかすかなのに偉ぶる大人を
子供たちは上手にあしらっている。

「はあ。そうすね。」

俺は暖簾に腕押し、しだれ柳で
かわしていく。
さすがに35にもなってこんなこと
注意されてる中堅教師もどうかと思う。
高校生にマウント取るのは
普通の神経してたら結構しんどいよ?
だから、俺はダメなんだ。

俺はもたもたと帰り支度をして
職員室を出る。

職員玄関に出る渡りを歩いていると
また、植え込みに生徒の影を見つけた。

「昇降口閉まるぞ。はよ帰れよ。」

気楽にいつもの声かけ。
一人だと思ったのに、よく見れば
男子と女子だった。ヤバイな。

「長内くん。」

二人は俺のクラスの生徒で
坂元賞平と鷺沼美月だ。
ふたり、日頃から仲が良いが
こんな人目につかないところに
しけこむような仲だったかな。

「じゃね。長内くん。」

美月は賞平に目もくれず、さっさと
一人で昇降口へと消えた。

「邪魔、しちゃったか?」

俺が少し申し訳なく思い
謝ると、賞平は笑顔で応じた。

「いや。もう用はすんだから。」

用、か。
ひと通り終わったってこと?
でも想像出来ないな。

賞平は俺より背も高くガタイもいい
イケメン理系男子だ。大人びてて
クラスでも兄貴的な存在だ。
美月は一見、男の子と見紛うほど
背が高く、体はスレンダーで
ショートカットの髪をなびかせながら
悪ガキのように暴れまわる。
やんちゃ坊主な女子高生だ。
賞平の妹分のようなポジションで
一緒にいることも多いんだけど
男と女だなんて匂いはしてこない。

キスくらいは、するのかな。

やっぱり、想像出来ない。


俺が職員玄関から正門を出ると
とっくに帰ったと思ってた美月が
人待ち顔で立っていた。

「美月。」

賞平を待っているのか。
だったら、一緒にいたらよかったのに。
俺が声なんか掛けたから、気まずかった?

「ごめんな。別に誰にも言わないし
遠慮しないでいいんだぜ。」

美月は真っ直ぐに俺を見る。
俺は何故か、動けなくなり
軽口が叩けない雰囲気に胸が詰まった。

「教えて欲しいことがあるんだ。」

美月は学年でも5本の指に入ることも
珍しくない秀才だ。特に生物、地学に
秀でていて、学年で1、2を争う。
まあ、争ってる相手が賞平なんだけど。

「なんだ?明日、昼休みにでも」

「誰にも内緒にしてほしいんだ。」

美月の瞳が、潤んだ。
こいつ、こんな目をするんだ。
息が苦しくなる。
誰にも、内緒って。
賞平とのことでも相談してくるのか?

俺のこの予測は当たっていたけど
俺が想像していたような話ではなかった。

「好き、とか。つき合うとか。
どうしたらいいのかな。」

「は?」

「だめ!ここじゃ誰かに聞かれちゃうよ!」

美月は俺の手を取り、きゅっと握って
ぐいと引っ張った。

「誰にも聞かれないとこ!」

誰にも、聞かれないとこって。お前。

俺は悩んだあげく、自分のアパート
近くの公園で話をすることにした。
最寄りの私鉄で3つほど先の駅で
降りる。歩いて10分ほどのところに
俺のアパートはある。
この辺には、うちの生徒はあまり
住んでない。公園という場所は
微妙だと思ったが、駅前の喫茶店や
商業施設よりは見咎められる確率が
低いかと思った。
俺も、美月のすがる妹モードに
やられていたのかもしれない。

「話が終わったら、車で送ってって
やるから。」

「うん。ありがと。」

あれ?車に乗せる方が、喫茶店で
話をするより、もっとヤバくないか?
ここらへんで、自分の磁場が盛大に
狂っていることに薄々気づいたが
何故か修正する気持ちになれなかった。

俺たちは、二人、連れだって
住宅地の奥へと歩く。
俺からしてみれば、一緒に家に帰る
途中みたいなものだ。

見慣れた近所の公園。
いつもはベビーカーを押したママさんたちや
手にゲーム機を持った中学生が座る
ベンチに、美月と並んで座った。

「はい。ここなら多分、聞かれたくない
やつには聞かれないはずだよ。」

美月は、モジモジしてなかなか
切り出さない。辛抱強く待っていると
膝の上できゅっと握りこぶしを作った。

「賞平くんから、好きだって言われた。」

「は。はあ。」

まだ、そこだったんだ。

「つき合わないかって。」

「それで?」

「断った。」

え。それ、すげえタイミングで
声かけちゃったんだな俺。
イチャイチャしてるとこに割って入る
よりもある意味罪深いじゃないか。

「お前ら、仲良いじゃん。
賞平じゃダメなのか?」

俺は賞平が少しばかり気の毒になり
プライベートだとわかって、つい
立ち入った確認をしてしまう。

「だって。好きとか分かんないもん。」

美月は事も無げにあっさり言い捨てた。

「それにつき合うとかいうのも
ピンと来ない。」

えー。そこからか?
お前、18年間何を考えて
生きてきたんだよ?

「そういうの。よくわかんないんだよ。
長内くん。教えてよ。」

美月は俺の左から肩を上るようにして
すがりついてくる。

「切ない、とか。ドキドキする、とか。
どんな感じなんだ?どうすればそうなるんだ?」

「はあ?!お前そういうのは教わる
もんじゃなくて自然となるもんなの!」

「えー!じゃああたし一生好きとか
思えないかも!結婚も出来ないよ!」

俺は心底、賞平に同情した。
こんなやつ、好きになって
これなら他のやつに負けて
すっぱり振られる方がまだましだろう。

「本当に男に対してドキドキしたり
したことねぇのか?」

「うん。」

美月はけろっとしてにっこり笑う。

「こんなことされると、自分の女を
意識して、へんな気持ちにならないか?」

俺は美月の肩を抱いた。

「長内くんの手、暖かくて気持ちいい。」

俺じゃあそれこそ、ちょっと若い
叔父さんみたいで美月に意識を掻き立てる
ような結果には結び付かない。

「男の体にドキドキしてこないのか?」

なんか、むきになっていく自分を
自覚した。どうせ何とも思わないんだろ。
俺は美月を自分の胸に抱いて
髪を撫でる。シャンプーの甘い匂い。
美月の体の暖かさを今度は俺が
受けとる。あんな暴れん坊のわりに
随分と柔らかい女の子だ。

「ん。気持ちいい。」

美月は自分から俺の胸に
体を擦り寄せてきた。

「俺も。気持ちいい。」

美月は俺の首、顎のあたりに
頬を寄せて言った。

「肌と肌。気持ちいい。」

え。ヤバい。
なんだこれ。
美月は俺の首にしがみついて
今度は頬に頬を擦り寄せてくる。

「なんか。ドキドキする。」

俺は美月を押し退けて、必死に
気持ちを逸らしながら言った。

「ほら!明日、賞平にしてやれ!
ちゃんとくっつけばドキドキするんじゃんか。
美月だって女の子だってことだ。
結婚だってちゃんとできる。」

美月はすごく寂しそうにうつむいた。

「なんだろ。よくわかんないけど。」

「いや、分かったろ?ドキドキすんの。」

美月は、俺の膝に指先で触れる。

「賞平くんとは。したく、ない。」

「え?」

まずい。ヤバい。
これは、いかん。
苦しい。胸が。詰まる。

「なんでかな。なんか、他のやつと
してもドキドキなんかしない気がする。」

美月は俺の肩にコツンと頭を乗せる。
美月の頭蓋骨が柔らかな皮膚に包まれ
ふわりと髪が覆う、そして暖かな体温で
立ち上る美月の匂いが俺を襲う。

かわいい。

ここまで気持ちが昂ったのは
何年ぶりになるだろうか。
ここ10年ばかり、ろくに恋なんか
していなかった。甘くて苦しい痛みが
容赦なく無防備な俺を痛めつける。

「帰るよ。もう。」

美月は俺からスッと離れて立ち上がる。

「送っていくから。」

俺は胸がズンズン地震みたいに揺れるのを
感じながら、美月を引き留めた。
引き留めたのだ。
もう少し、感じていたかった。
こいつと、一緒にいたい。

「うん。わかった。」

美月は俺の左に寄り添い、指で
ちょこちょこと俺の手に触れた。

「気持ちいい。手も。」

「……………手。繋ぐ?」

俺は完全におかしくなった。
美月の指に指を絡めて、手を握った。

「これが、恋人繋ぎ。」

馬鹿だ。何ぬかしてんだ。俺は。

「こいびと?」

「そうだ。恋人。」

俺は、自分の部屋には上がらず
駐車場から車を出した。

「うしろ、乗れ。」

あえて突き放した。

「どう、して?」

美月はすこしショックだったのか
沈んだ顔になるが、何がショックなのか
測りかねていて目が泳ぐ。

「運転になんないし。まっすぐ
送ってやれなくなるかもしれない。」

美月に通じるわけないと思ったが
一番は半勃ちになった股間を見られたく
なかったのだ。だらしがねぇ。

「わかった。運転の邪魔しないよ。」

美月はたぶん別の思いで聞き分けた。










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