kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

異端の鳥

2021年01月01日 | ★★☆☆☆
見た目もタイトルも暗いが中身も暗い作品。

モノクロの画面に描かれる東欧のどこかの寒村。いきなり名もなき少年が子どもたちのイジメ(というかリンチ)に合う。少年は家庭の事情で叔母に預けられているようだが、この叔母が急死した上、失火により家は全焼。

生活の場を失った少年は荒野をさまよった後に別の寒村にたどり着くが、そこでも悪魔の使いとして虐げられた挙句に川に逃げることに。
今度、たどり着いた農家では老主人(ウド・キアー!)と若い妻、そしてその妻とねんごろになる使用人が際どい関係を続けていた。妻の不貞に気付いた老主人は狂気の行動にでる。

おまけに上空にはドイツ軍の十字マークをつけたシュトルヒ偵察機が飛び交い、少年はナチ占領下に足を踏み入れていく。

こうして、少年は行く先々で人間の「悪」の部分を散々見せつけられる。人間の欲の根源、性欲にまつわるものも多ければ、ナチのホロコースト、ナチについたコサックによる虐殺、ソ連軍の進軍と戦争にまつわる残虐行為も描かれる。

少年はこれらの人間の悪に残酷に巻き込まれ、悪の中で生き残りをせざるをえなくなる。物語もして何かを声高に語るわけではなく、諸悪の行為も事実として淡々と語られる。

寂寥としたモノクローム映像は時として残酷、時として物静かに状況を語る。さっと引くような編集もあって、何とも言えない印象を残す。

キャスティングも先のウド・キアーをはじめ、ハーヴェイ・カイテル、ステラン・スカルスガルド、バリー・ペッパー(また狙撃兵役!)と不穏な空気のオンパレード。

2時間40分の殺戮ツアーは時として「デッドマン」、時として「ソドムの市」を思い出させ、救いのない気分にしかさせないが、ラストシーンでわずかな希望を感じさせる。

人にオススメするにはなかなか厳しい作品でした。

題名:異端の鳥
原題:The Painted Bird
監督: ヴァーツラフ・マルホウル
出演:ペトル・コトラール、ウド・キアー、ハーヴェイ・カイテル、ステラン・スカルスガルド、バリー・ペッパー、ジュリアン・サンズ

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