少し前にtwitterの投票いただいた結果、新志の「目をあければ隣に君が」とコ哀が同数でした。そんわけで折角なので遅くなりましたが、コ哀でお題「一目惚れ」も書いてみました。
というわけで以下はコ哀小話です。中学生くらいの設定です。
一目見た時、前に英語の先生がしたり顔で語っていた声が頭に反響した。曰く
恋は落ちるんだよ。だから英語では『fall』を使うんだ
聞いた時は、「オヤジが何言ってんだ」って思ったけど、これだったんだ。うん、落ちた。今、オレ、落ちた。
そんな取り留めのない思考の暴走の傍ら視線を一点から動かすことはできなかった。
赤みがかった茶色い髪に透き通るような白い肌がとても映えている。涼しげな切れ長の瞳の色は翡翠よりももっと透明で……そうだ、エメラルドだ。宝石みたいな瞳がこちらに向けられていることに心臓が跳ねた。
「あ、ハイバラさん」
「あら、円谷君。こちらは?」
「転校生の山田君です」
休み時間を利用して自分案内してくれているクラス委員円谷君に紹介されて、慌てて頭を下げる。そうか、彼女は「ハイバラさん」って言うんだ。いったいどんな字だろう?名前は何ていうんだろう?
色々と聞きたいことは湧き上がって来るけど、とても聞けなくてぎこちなく笑顔を作ってなんとか
「よ、よろしく」
と言って右手を差し出した。ハイバラさんは一瞬、キョトンとした後、微笑みながら手を握り返してくれた。思ってたよりも少し冷たいことに心臓のダンスが止まりそうになかった。隣にいる円谷君が「あっ!」っていう表情をしているけど、知るもんか。
と思ってたところに後ろから
「よお、おめーら。何やってんだ」
声をかけられた。振り向くと立っていたのは眼鏡をかけた男子生徒だ。学ランを着てるし同じぐらいの身長なのに、なぜか感じる妙な威圧感に、思わず少し体を引いてしまう。
「あら、江戸川君。今日はずいぶん早いのね」
そんな眼鏡の男に向かってハイバラさんが声をかける。といっても今は昼休みだから、これは一体どういう意味だろう?と目を白黒させているオレに構わず、眼鏡の男はスイっとハイバラさんの前に立つ。
「バーロ、オメーが起こしてくれれば遅刻せずに済んだんだぞ」
「自業自得ね。どうして私が毎朝あなたを起さなきゃいけないのよ」
「どうしてって……そりゃオメー」
目の前で繰り広げられる会話の応酬に呆気に取れているオレに、江戸川はチラリと視線を向けるとハイバラさんの手を握った。
「オメーがオレの彼女だからだろ」
そう言って、驚くハイバラさんの手を握ったまま、二人で廊下の向こうに消えていった。後に残されたのは呆然としたオレと、気の毒そうな視線を向けてくるクラス委員の円谷君。
「山田君……あの、元気出してくださいね?」
立ち尽くすオレにそう声をかける円谷君に力なく頷きながら、オレはこの落下速度で始まった恋が一瞬で終わったことを知ったのだった。
江戸川、大人げねえ……。
以下、拍手の返信です。
>久遠さん
サイト周年祝いのお言葉ありがとうございます。
いつも応援してくださって、ありきたりの感謝の言葉では返せないくらい嬉しいメッセージでした。
お言葉に甘えてばかりのマイペースサイトですが、これからもよろしくお願いします。
というわけで以下はコ哀小話です。中学生くらいの設定です。
一目見た時、前に英語の先生がしたり顔で語っていた声が頭に反響した。曰く
恋は落ちるんだよ。だから英語では『fall』を使うんだ
聞いた時は、「オヤジが何言ってんだ」って思ったけど、これだったんだ。うん、落ちた。今、オレ、落ちた。
そんな取り留めのない思考の暴走の傍ら視線を一点から動かすことはできなかった。
赤みがかった茶色い髪に透き通るような白い肌がとても映えている。涼しげな切れ長の瞳の色は翡翠よりももっと透明で……そうだ、エメラルドだ。宝石みたいな瞳がこちらに向けられていることに心臓が跳ねた。
「あ、ハイバラさん」
「あら、円谷君。こちらは?」
「転校生の山田君です」
休み時間を利用して自分案内してくれているクラス委員円谷君に紹介されて、慌てて頭を下げる。そうか、彼女は「ハイバラさん」って言うんだ。いったいどんな字だろう?名前は何ていうんだろう?
色々と聞きたいことは湧き上がって来るけど、とても聞けなくてぎこちなく笑顔を作ってなんとか
「よ、よろしく」
と言って右手を差し出した。ハイバラさんは一瞬、キョトンとした後、微笑みながら手を握り返してくれた。思ってたよりも少し冷たいことに心臓のダンスが止まりそうになかった。隣にいる円谷君が「あっ!」っていう表情をしているけど、知るもんか。
と思ってたところに後ろから
「よお、おめーら。何やってんだ」
声をかけられた。振り向くと立っていたのは眼鏡をかけた男子生徒だ。学ランを着てるし同じぐらいの身長なのに、なぜか感じる妙な威圧感に、思わず少し体を引いてしまう。
「あら、江戸川君。今日はずいぶん早いのね」
そんな眼鏡の男に向かってハイバラさんが声をかける。といっても今は昼休みだから、これは一体どういう意味だろう?と目を白黒させているオレに構わず、眼鏡の男はスイっとハイバラさんの前に立つ。
「バーロ、オメーが起こしてくれれば遅刻せずに済んだんだぞ」
「自業自得ね。どうして私が毎朝あなたを起さなきゃいけないのよ」
「どうしてって……そりゃオメー」
目の前で繰り広げられる会話の応酬に呆気に取れているオレに、江戸川はチラリと視線を向けるとハイバラさんの手を握った。
「オメーがオレの彼女だからだろ」
そう言って、驚くハイバラさんの手を握ったまま、二人で廊下の向こうに消えていった。後に残されたのは呆然としたオレと、気の毒そうな視線を向けてくるクラス委員の円谷君。
「山田君……あの、元気出してくださいね?」
立ち尽くすオレにそう声をかける円谷君に力なく頷きながら、オレはこの落下速度で始まった恋が一瞬で終わったことを知ったのだった。
江戸川、大人げねえ……。
以下、拍手の返信です。
>久遠さん
サイト周年祝いのお言葉ありがとうございます。
いつも応援してくださって、ありきたりの感謝の言葉では返せないくらい嬉しいメッセージでした。
お言葉に甘えてばかりのマイペースサイトですが、これからもよろしくお願いします。
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